【完結】えっ、ここからでも入れる保険があるんですか???   作:らいらいてー

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 一年戦争時の日本の戦況がよく分からないので完全にオリジナル展開&設定捏造が多くなります。


宇宙港奇襲

 ――沖縄本島、新那覇基地。

 

 食堂の窓から海を眺めると、海面に沈むことになった旧那覇基地の跡地が目に入った。

 南国の太陽の光に照らされたかつての連邦軍基地の跡地は輝き、光ってるように見えて、思わず目が奪われてしまう。

 かつては旧那覇基地周辺では美しい白い砂浜が存在していたそうだが、コロニー落としによって急激に海面が上昇したことによって、もはやその面影を伺う事は出来ない。

 

 広州からの撤退作戦後、高雄に設置された司令部に北京陥落の報が入ることになった。

 

 北京防衛指揮官であったチェン少将は徹底抗戦の構えを見せ、紫禁城の司令部が陥落した後も地下に潜り部下を率いて散発的に攻撃を行い、ザビ家の兵隊共相手に一歩も退かずに戦った。

 が、勢いに乗る敵軍相手に次第に追い詰められて、決別の電報を高雄に送った後に残存部隊を率いて敵基地に肉薄攻撃を仕掛ける。

 

 結果はどうなったかは分からないが、それ以来通信が途絶した事から北京は完全に敵の手に落ちたと考えて良いだろう。

 

 その為、極東の地球連邦軍の拠点は台湾、そして日本地域の最後の拠点である沖縄を残すだけとなった。

 

「大尉、沖縄に来ても食べるのはジャガイモなんだな」

 

「仕方ないだろう、届くのはそれぐらいしか無いんだし」

 

 うんざりした様子でマッシュポテトを頬張るライラ中尉がぼやいている。

 彼女の気持ちは痛いぐらい分かる、沖縄に来たからにはその土地特有の料理を口にしたいのだろう。

 

 しかし、コロニーが落下したことによって発生した急激な気候の変動によって作物は不作となり、食料品の価格は異常とも言えるほどに急騰している。

 

 そのせいで沖縄市民に対しても配給制が実施されている程だ、こんな状況でゴーヤチャンプルを暢気に食べるわけにはいかない。

 

 しかし、ライラ中尉は納得してない様子で、むすー、と不機嫌そうに頬を膨らませ始めた、男勝りな一面もあるが、やはりこのような仕草を見ていると彼女もまだ子供なのだと感じる。

 

「ま、そんな顔するな、ライラ中尉。日本から敵軍を追い出せたら軍人が贅沢しても許されるようになるだろうさ」

 

「本当か! じゃ、私アレ食べたい、あのー、握った酢飯に刺身を乗せてるやつ!」

 

「寿司か? ははは、カニンガン少将に日本解放の暁にはご馳走して貰うとしようか」

 

 少将に広東料理に加えて回らない寿司をご馳走して貰ってもいい筈だ、それぐらいの戦果は俺たちは残してる訳だし。

 

 ライラ中尉の不機嫌そうな顔が一転し、やる気に満ち溢れた様子の表情を見ていると、後ろから声がかけられた。

 

「大尉! 食事中の所悪いが、高雄から出撃命令だ! 十分後には格納庫に集まってくれ、との事だ」

 

「分かった、山崎中尉。君も出るのだろう?」

 

「勿論ですよ、コールサイン『オメガ』の実力をお見せします。お嬢さんと大尉の援護はお任せください」

 

 さて、戦争の犬の仕事を始めるとしよう。

 

 

 

 

 

 

 ◇◆◇◆◇◆

 

 

 

 

 

 

 

 

 セイバーフィッシュのコックピットから周囲を見回す。

 横一列に並ぶ形で俺を中心に、左にライラ中尉、右に山崎中尉……コールサインオメガが展開している。

 そして後ろには地球連邦のワークホースたるミデアが四機。

 

 目的地は北東の方角、このまま行けば日本本島に近づく事になるな、レーダーに引っかからないように超低空飛行で飛んではいるが、見つかり次第敵の防空部隊が飛んでくるだろう。

 

 時計を確認、そろそろ開封時刻だ。

 作戦概要が書かれた紙が入ってる封蝋が押された封筒を開く、機密性がかなり高い作戦なんだろうな。

 

 作戦概要を確認、要約すると日本に潜伏している連邦軍スパイによってジオン本国から補充物資を満載したザンジバル級機動巡洋艦が種子島宇宙港に停泊しているという情報をキャッチした。

 

 現在、種子島では壊滅した日本駐留の連邦軍敗残兵達が山中に潜み、ゲリラ戦を行っている。それによりミノフスキー粒子が戦闘濃度で散布されている為、接近は難しい事ではない。

 

 超低空飛行で日本に駐留していた連邦特殊部隊、特殊作戦群と第一空挺団から選抜した人員をミデアに満載し、敵の種子島飛宇宙港へと強行着陸。

 補給物資を降ろすために停泊しているザンジバル級を強襲し鹵獲、その後は彼女のメガ粒子砲で港設備を破壊した後に那覇へと退却するべし。

 

 との事だ。

 

 これマジ……? 重要作戦の割に参加している航空戦力が貧弱すぎるだろ……。

 

 いや、敵にこちらの狙いを感づかれないようにするためには少数で行動するのが一番良いんだろうが、宇宙港には防衛部隊が当然展開されているだろうし、防空兵器もそれはもうハリネズミのように配置されているだろう。

 

 またカニンガン少将、俺に無茶ぶりする気だな……? ま、仕方ないか。

 

「『各機、作戦概要は確認したか?』」

 

 僚機であるセイバーフィッシュ二機から了解と言う返答が返ってくる、まぁ流石に二人とも今回の作戦の無謀さを理解して声が震えていたが。

 

 こういう時こそ、隊長として彼らを励まさないとな。

 

「『俺が先陣を切って敵の防空網をズタズタにする、その後に二人とも続け』」

 

 不本意ながらも、部隊の精神的な支柱として担ぎ上げられているんだ、そのように振舞うしかない。

 

 絶対的に切り札らしく、エースらしく、そう、窮地の時こそ不敵に笑おう。

 

「『ワイルド・ウィーゼルと行こうか』」

 

 

 

 

 

 

 ◇◆◇◆◇◆

 

 

 

 

 

 

 

 

 種子島が見えてくる、幸いな事にレーダー網に引っかからない低空飛行と、ミノフスキー粒子を連邦軍残党との戦いの為に散布しているお陰かこちらに気が付いてる様子は無い。

 

 そもそもこんな少人数で宇宙港を強襲するとは向こうも考えもしてないのかもしれないだろうが、好都合だ。

 

 推進剤を湯水のように使って一気に加速、新那覇基地に戻れる分の推進剤があればそれで充分。

 

 Gで全身が締めつけられてしまうかのような錯覚を覚えるが、それを無視して宇宙港へと肉薄、流石に急加速して近づいてくるこちらの姿に気が付いたザビ家の兵隊共の防空火器が向けられて来る。が、奇襲効果はあったようで対応が遅い。

 

 狙いを定める。レーダーと通信設備が増設された敵の指揮所と思われる場所。

 機首をわずかに下方向に傾けてゆきながら更に加速、スイッチを押し込んで翼下に装着された500キロ爆弾を投下。

 指揮所の外壁をぶち抜いて爆弾が内部に突っ込んで起爆、数百キロの高性能爆薬によって粉々に指揮所が吹き飛び爆炎が上がる、その爆炎を突っ切ってゆきながらインメルマンターンの要領で急上昇。

 

 指揮所が破壊された事によってただでさえ空からの奇襲によって混乱していた敵軍の混乱が更に広がる。

 

 とは言え相手も正規の軍人、こちらに向かって宇宙港の至る所に設けられた対空機銃や有線式のミサイルが飛んでくる。が、セイバーフィッシュを捉えるには至らない。

 

 インメルマンターンを途中で切り上げてそのまま背面急降下、狙いは脅威度の高い有線式ミサイル。

 まさか突っ込んでくるとは思わなかった様子で、発射管から放たれて誘導されていたミサイルはこちらのすぐ横を通ってすり抜けてゆき、ミサイルと入れ違いになる形で空飛ぶ死神となった太刀魚がその鎌を振り下ろしてゆく。

 

 二十五mm機関砲が火を噴く、発射管を蜂の巣にして地上要員を殺傷する。

 

 基地内に展開していたザクのマシンガンがこちらに向けられるが、ワンテンポ遅い。

 

 地上要員を殺傷した勢いのまま機首を地上に激突するスレスレで戻して、地上から凡そ十数メートルほどの位置のまま更に加速、放たれてきたザクマシンガンを左にバレルロールして回避。

 主翼が地面を掠めるギリギリを通った気がして一瞬肝が冷えたが、狙い通り敵の放ったザクマシンガンの弾幕は基地内に設置された対空機銃に直撃したようだ。

 

 フレンドリーファイアしてしまった事に気が付いて、ザクのパイロットも動揺したのか弾幕が止まる、致命的な隙。

 

 そのまま敵の胴体部めがけて翼下に搭載された誘導装置を無くすことによって炸薬の量を増やした無誘導爆弾を突っ込ませてゆく。

 

 盛大な爆発音、一つ目の巨人の巨体がその場に崩れ落ちる。

 

 いくらザクと言えども500キロ爆弾が直撃すれば機体が無事だとしても中のパイロットは衝撃で無事では済まないだろう。

 

 無敵を誇るザビ家の兵隊共の栄光の象徴が地に倒れ伏すのを目の当たりにした地上要員達に動揺が走る、その上、誤射によって味方が吹き飛ばされてしまったことにより、これ以上の誤射を恐れたのか超低空飛行で宇宙港の防空設備を蹂躙するこちらの機体への弾幕も薄くなる。

 

 それはちょっと誤りかもしれない、この局面だと誤射を恐れず味方ごと吹き飛ばすつもりで機体を撃墜した方が良いだろうが、そこまで思い切った判断を彼らは出来なかったようだな。

 

 ザクを撃墜した勢いそのままに次のミサイルに機銃を放ち、地上で撃破してゆき、更に混乱を拡げてゆく。

 

 注目がこちらに集まる、狙い通りだ。

 

 こちらの翼下にペイントされたメビウスのマークを見せつけるかのように、ミサイル発射管が破壊されて逃げ回る敵兵の頭上を通り抜ける。

 

「『大尉、人間なんですか?』」

 

「『オメガ、俺は人間だぞ。敵の混乱は拡がっている、戦果を拡大しろ』」

 

 失礼な事を言いながら俺に少し遅れて突入してきたオメガとライラ中尉の機体が翼下に搭載された無誘導爆弾を投下していって、防空兵器を無力化していき、地ならしして後続が突入するための道を作る。

 

 あ、オメガ機に対空砲が直撃した。

 

「『オメガ、イジェークト!』」

 

 パイロットは脱出したようだが、機体の方は宇宙港の設備に突っ込んでいって爆散する、上手く後続の特殊部隊の連中と合流してくれると良いんだが。

 

「『ははは、大暴れだな、お前ら! 後は俺たち肉弾部隊に任せろっ』」

 

 至る所で黒煙が上がっている宇宙港内にミデアが突入、ミデアに搭載されていた兵員を満載したトラックが、ザンジバル級が停泊している区画めがけて飛び出してゆく。

 

 肉弾となって飛び込んでいった彼らを確認するとミデア部隊は後方へと退避開始、これで退路は無くなった。

 

「『航空支援を継続する、ザビ家の女を寝取るのは任せたぞ』」

 

「『へへへ、軍隊らしい俗な言い回しですな、その言い回しは嫌いじゃないですよ大尉!』」

 

 種子島内の連邦軍残党を制圧していた敵戦車隊も異常を察知して戻って来たようだな、この様子だとザクも近いうちに来るだろう。

 

 ……まぁ、一つ目の巨人が来るよりも先にこちらが制圧するのが早いだろうが。

 

 宇宙港内へと突っ込んできて、兵員が満載されたホバートラックめがけて主砲を向けていたマゼラアタックめがけて急降下、装甲が見るからに薄いトップ部分めがけて機銃掃射を行う。

 コックピット部分と思われるキャノピーを貫いて兵員を殺傷、主砲は放たれない。

 当然と言えば当然であるが、この兵器を開発した連中は地上戦のちの字も知らないと思われる。

 

 そんな弱点丸出しの兵器で戦車名乗るなんて各方面に失礼だろ。

 

 ただでさえ少ない人的資源に対して配慮が出来てると思えないマゼラアタックを一台、また一台とキャノピー部分に機関砲を叩き込んでゆく事で行動不能に追い込んでゆくと、艦の制圧に成功したようで信号弾が打ち上げられる。

 

「『大尉! ザンジバル級の鹵獲に成功! 操縦法もシミュレーターを使って覚えておきましたのですぐに出航させます!』」

 

「『了解した、出航すると同時に宇宙港の設備にメガ粒子砲を乱射して戦果を更に拡大しろ、それと、僚機が落とされた。そちらで回収はしたか?』

 

「『ええ、山崎ですよね? 合流して戦ってくれましたよ、パイロットよりも特殊部隊の方が向いてると思います』」

 

 ほっと胸を撫でおろす、そう言えばあいつ、自己紹介の時に元特殊作戦群で航空機パイロット不足だったので引き抜かれたとか言ってたな。

 

 鹵獲を防ぐために爆破する時間さえもなく、彼女は連邦軍兵士の手によって空へと上がってゆく。

 そして、搭載されたメガ粒子砲が基地内の施設へと向けられて次々と放たれていき、基地全体が爆炎に包み込まれてゆく。

 

 ジオン軍の中でも屈指の高性能艦だと噂されるザンジバル級が鹵獲されて、恐慌状態に陥ったザビ家の私兵共が基地から逃げまどいながら逃走を始めた。そのお陰で弾幕も止んだが、まぁ一時的なものだろう。

 すぐに他の基地から増援がやってくるだろうし、種子島で掃討戦を行っていた部隊も戻ってくるはずだ、長居は無用。

 

「『エスコートする。連邦軍へと加わった彼女を新那覇基地まで届けてくれよ』」

 

「『は、了解であります大尉! 今日は良い酒飲めそうですな!』」

 

 燃え盛る種子島宇宙港を横目に、鹵獲されることになったザンジバル級の両側面に俺とライラ中尉の機体が付いて南西へと進路を向ける。

 

 ああそうだ、ここに急行して来る連中にはお礼を言っておかねばならないな。

 

「『ザンジバル級から平文でザビ家の兵隊共に伝えてほしい事がある』」

 

「『了解です』」

 

「『サイド3と言う遠方からわざわざ連邦に贈り物を届けてくれて感謝する、と連中に送っといてくれ』」

 

 カニンガン少将らしい無茶な作戦であったが、成功してよかった。

 ただ、エースが活躍する前提の作戦を立てるのはもう勘弁してほしい物だ、今回みたいな作戦を繰り返していると心労で禿げそうになるしな。

 

「『ははは、きっとあいつ等顔真っ赤にしながら怒り狂うでしょうな! ですが、実際彼らの【贈り物】は素晴らしいですよ。フル装備のザクが六機に予備部品が多数、それにパイロット育成用のシミュレーターも搭載されてますしね』」

 

「『この際、誇りとか抜きにして連邦でもザクを量産して前線に配備してくれたらいいんだがなぁ……そうもいかん事情でもあるのかもしれんな』」

 

 実際、ガンダムやジムの数を揃えるよりも先に間に合わせでいいので陸戦型ザクを前線に配備してくれたらかなり楽になるんだがなぁ……。

 そんな事を考えていると、ライラ中尉からの通信が入った。

 

「『大尉、今回の作戦は大成功だったな。帰ったらうんと褒めてくれよっ』」

 

 誇らしげに通信機越しにそう語る彼女の声を聞いて、思わず俺は頬が緩んでしまうのだった、ああ、今日は大戦果だ、彼女が満足するまで褒めてやるとしよう。




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