【完結】えっ、ここからでも入れる保険があるんですか??? 作:らいらいてー
それと、誤字脱字報告ありがとうございます、助かってます!
狙いを定める、トリガーを引かせる。
俺の愛機となった陸戦型ザクのマシンガンから100mmを超える大口径弾が放たれてゆき、土嚢という障害物ごと後ろに隠れていた61式戦車を貫いて爆発炎上させてゆく。
シミュレーターで再現された連邦軍戦車も負けじとこちらに砲塔を向けてゆき、次々と砲弾が放たれてゆくが、陸地での機動力に優れる陸戦型ザクを捉えることはできない。
地面を蹴って横に飛びのく。
砲弾は風を切る音を響かせてゆきながらこちらの機体すぐ横を通り抜けてゆく、当たればザクと言えども損傷は確実な火力だ。
当たれば、の話だが。
砲弾を放ってきた敵にマシンガンを放ってゆくと、戦車の弱点である上面装甲を貫かれて次々と爆散、残骸となった彼らを踏み越えて作戦目標に向かう。
「一体誰がビッグトレーのデータなんて流しやがったんだ」
戦車数両に護衛される形で移動司令部が飛行場の中心に鎮座していた。
基地内部はキャリフォルニアベースを精密に再現されている、ジオンのスパイの情報収集能力はかなりのものと言って良いだろう。
移動司令部へと迫るこちらを迎撃せんとフライマンタが爆撃を行おうとしてゆくが、甘いな、所詮はシミュレーターか。
馬鹿正直に正面から突っ込もうとしてきた戦闘爆撃機の鼻っ面にマシンガンを叩き込んでゆく。
一機撃墜、大口径弾が叩き込まれた敵機が空中で爆散する。
やはり航空機はマシンガンが直撃すれば一撃だな。
弾が切れた連邦の死の象徴をその場で投げ捨てて、ルウムで戦艦をなます斬りにしたヒートホークを構え、姿勢を低くして加速、ジグザグに動いて敵に狙いを定めさせない。
ビッグトレーの副砲がゆっくりと旋回してこちらに向くが、遅い。
手前に居た戦車を踏みつけて踏み台として跳躍、艦橋部分へと取り付き、ヒートホークを振り下ろす。
マゼラン級の装甲でさえ耐えられない熱せられた刀身による一撃は艦橋を易々と破壊してゆき、敵の動きは止まる。
これでシミュレーターは終わりだろうか? と、他に敵機が無いか確認するべくモノアイを周囲に向けてゆくと、こちらに近づいてくる敵機を確認。
敵はこちらと同じく陸戦型ザク、噂によればジャブローのV作戦を推し進める高官がデータ収集に協力したと言われる仮想敵だ。
どこぞの高官から得た通りに動くその機体はスラスターを吹かせてゆきながら地面を飛び跳ねるようにしてこちらに向かってゆきつつ、その手に握られたザクマシンガンを放つ、一発機体をかすめる、損傷アラートが鳴る。
咄嗟に撃破したばかりのビックトレーの側面に隠れ、弾幕をやり過ごしつつ、ヒートホークを片手で握りながらクラッカーを構える。
チャンスは一瞬。
陸戦艇の残骸から機体上部だけを出す、遮蔽物を最大限有効活用できるのがモビルスーツの最大の利点とも言えるかもしれない。
こちらへと狙いを定めてマシンガンを放ってきた敵機の足部めがけてヒートホークを投擲、投擲した肩が撃ち抜かれたが構わない。
ヒートホークによって足が両断されて転倒した敵機めがけてすかさずクラッカーをコックピット部分めがけて投擲、炸裂、撃破判定。
シミュレーター終了を告げるブザーが鳴り響き、俺の視界は暗転した。
◇◆◇◆◇◆
真夏の日差しが窓から差し込んでくる、その窓から外をぼんやりと眺める。
新ナハ基地、かつてのナハ基地が水没したことによって新たに作られた軍事拠点内へと重機が出入りする事によって轟音が発生し、俺の鼓膜に直接的なダメージを与えようとしていた。
窓の外を眺めてみると、飛行場に着陸したミデアが、民間人を搭載している。
このペースならば市民たちの疎開もスムーズに進むだろう、アツギ基地からのニホン駐在連邦空軍の残存もしっかり彼らを守ってくれることだろう。
基地内の至る所にはニホン本土失陥の際に持ち出された新旧様々の兵器が並べられて点検されていた、99式15榴なんてどこから引っ張り出して来たんだろうか?
ニホンで転戦し、師団から大隊規模にまで戦力をすり減らすことになった士魂部隊の残存兵もオキナワの内陸部の至る所に設置されたトーチカ内に配備されている、上陸への備えは万全と言えるだろう。
沿岸部には有線式の無人トーチカが設営されていた、トーチカの砲塔には回収されたものの修理が不可能だと判断された六十一式戦車の砲塔が利用されている。
ニホンに潜入させているスパイからの情報から、オキナワへの大規模攻撃が近い事を察知した連邦軍は現在、総力を挙げて防衛ラインの構築を行っている、上陸予想日には防衛網は完成する事だろう。
実戦配備されたジオン軍の水陸両用モビルスーツ部隊対策に、機雷もオキナワ周辺には敷き詰められている、戦後の事を考えると恐ろしい事をしてる気がするが、散布には島民も協力してくれた。
生活の糧を生み出す海を汚され、蹂躙され、そして沿岸部も水没させたジオンに対する彼らの怒りは凄まじいものであった、島民の一部は疎開せずに民兵として連邦側で戦ってくれる者も居るほどだ。
先ほどのモビルスーツ操縦シミュレーターでの疲れもあってか、ボーっと窓の外を眺めていた俺にライラ中尉が近づいてきた、何やら目を輝かせている。
「大尉! モビルスーツの操縦も一級品なんだな! さっき大尉が攻略した任務形式のシミュレーション、最高難易度だっただろ? あれ攻略出来たパイロットは連邦軍内でも数えるほどしかいないんだってさ!」
「あくまで、俺は戦闘機乗りのつもりなんだがな」
私も大尉に負けないように頑張るっ、と気合を入れているやる気に満ち溢れたライラ中尉の姿に思わず笑みがこぼれてしまう。
初々しいが、やる気に溢れてるのは良い事だ。
それに彼女が気合を入れているのは、うちの隊に後輩が入ってきたのもあるのだろう。
戦闘機乗り用のシミュレーターで模擬戦をしているオメガとララァの方へと視線を向けると、今日五回目の撃墜判定を貰って呆然としている不死身の男が視界に入った。
ララァのパイロットとしての才能はずば抜けている、彼女本人の気質は兎も角として連邦軍でもトップクラスと言って良いだろう。
……彼女自身が志願しての事ではあるが、それでも彼女には戦場には出てほしくない。
アニメ本編では戦争に巻き込まれた挙句、命を落としてしまった彼女の幸せを願うのは、大人として当然の事だとは思いたい。
大人たちの都合によって始まった戦争に、子供を巻き込んでいい道理など本来は無いはずなのだ。
本来ならばライラ中尉もララァも戦争には巻き込みたくないし、大人としての立場上は何としてでも止めなくてはいけないのだが、戦闘機で戦えるパイロットが少ない以上、カニンガン少将がララァを戦闘機に乗せるという判断を下したのも理解できる。
仕方ない、仕方ないのだが…。
大人が子供に武器を握らせて、人殺しをさせるなんて。
「寒い時代になったもんだな、本当」
思わず、ワッケイン司令のような言葉を呟いてしまった。
◇◆◇◆◇◆
「要約すると、だ。この武装ならザクの装甲も簡単に貫けるという事だな?」
「は、そうであります大尉。従来型のメガ粒子砲は設備が大型になってしまって、戦闘機に搭載することは困難でしたが、新技術エネルギーCAPの実用化によって大幅な小型化に成功しました。試作ビーム砲『モルガン』ならばザクどころかガウの装甲も貫け――」
「だが機体上部に搭載されていては、陸上攻撃は不可能ではないかな?」
俺の愛機のセイバーフィッシュの上部に搭載されたビーム砲、通称『モルガン』と言うらしい。
何と言うかその名の通り、某ゲームに出てくるラスボス機のような見た目をしている、セイバーフィッシュの均整の取れた機体の上部に外付け式のビーム砲がポン付けされている。
機動性を損なっているのは明白だ、これで敵戦闘機に絡まれたら流石に何とかできる自信は無いな、味方を頼る必要がありそうだ。
「ああ、それはですね。敵モビルスーツを攻撃する際は背面飛行状態で攻撃を行ってください、という事です」
「……対空用としてなら兎も角、対地兵器としては欠陥品も良い所であるという事はよく分かった」
ジェット戦闘機の戦闘速度で機動しながら背面飛行状態となって地上目標を狙うというのは俺にしかできない芸当だろうしな。一部のパイロットしか使えない装備を量産し始めたらその軍隊はもう終わりだと思う。
「ですがレビル将軍は貴方ならば使いこなせると信じてるようですよ? だからこそ我々技術部にこの装備を貴方の元へと届けさせたのですから」
レビル将軍も、俺の事を高く買い過ぎだと思うんだがなぁ…。ま、エースとして期待されてるという事だろうし、その期待に応えてこその一流のエースだろう。
「分かった、最善を尽くそう」
「ああ、それとレビル将軍から言伝を預かっております。連邦が誇るエースとして期待している、との事です」
◇◆◇◆◇◆
カノヤ基地の司令所で、ニホン方面を担当しているオカムラ大佐はルッグンから送られてくる戦況報告を聞いてふぅむ、と思わず声を漏らしてしまった。
『曇り空の下上陸を開始したゴッグ十二機は事前情報通り機雷がほぼ仕掛けられていなかった、新ナハ基地周辺に上陸、橋頭保を確保』
『敵の抵抗も散発的で、沿岸部のトーチカ群も制圧完了。ファットアンクルによる歩兵部隊の上陸も成功、後続を至急送られたし』
「あまりにも、上手く行きすぎている」
そもそも、オキナワ上陸作戦自体、トウキョウでふんぞり返っている親衛隊士官の発案によって行われることになった作戦だ。
曰く、反抗的な極東のアースノイド共にジオン軍の力を見せつけさせて抵抗運動の意志をへし折る、らしい。が、机上の空論が過ぎると言うのがオカムラ大佐の率直な意見であった。
機雷原の一部に穴が空いてる情報も、親衛隊が察知した情報であり、オカムラ自身は偽情報だと思っていたがその情報も正しかった。不自然な程に。
普通の士官ならば水陸両用モビルスーツを警戒し、島の周辺に満遍なく機雷原を設置しガチガチに固めて守りを固める、それがまるで意図的に防衛設備が削減されているのだ。
指揮官がとんでもない馬鹿か、或いは何かの作戦があるのかの二択だが、ルウムでの英雄であるカニンガンが指揮を執っている事を考えると後者である可能性が高い。
罠であると警戒している指揮官も現場には居るだろうが、それでも上陸に踏み切ったジオン兵達、それには理由があった。
ジオン共和国時代からの士官であるオカムラは直観的に理解した、これは明らかに罠であると、誘い込まれていると。
ジオン全体に漂う楽勝ムード、アースノイドを侮る新兵たち、赤い彗星のように武功を上げようと躍起になる若手士官。
アースノイド如きに苦戦を強いられるはずが無いという慢心が彼らのどこかにはあった。
「勝ちすぎるのも考え物だな。司令部より各隊に、突出しすぎず、橋頭保の確保に専念せよ」
その指示が空中管制機であるルッグンを通じて各部隊に伝えられると同時に、前線から劣勢を知らせる報告がオカムラの元に入ることになった。
◇◆◇◆◇◆
『おい! こっちの基地の中には何も残されてないぞ!』『こっちのトーチカは張りぼてだ! 中に人は居ない!』『どこもかしこももぬけの空だ……静かすぎる!』『クソ! 基地の中に地雷が仕掛けられている、皆気を付けろ!』
オキナワ上空で空中待機している専用塗装のドップを駆るフランシス大尉は、ミノフスキー粒子が戦闘濃度で散布されてるせいで混線している通信機から各機の悲鳴のような声を聴きとっていた。
後続部隊の到着を待たず、功を焦って前進したゴッグ隊は静かすぎる街中に困惑し、海岸沿いを連邦兵の掃討の為前進していた歩兵部隊は、先程モビルスーツ部隊によって破壊されたトーチカ群が張りぼてである事に気が付いている。
『……誘い込まれたか、各機、警戒を厳にせよ、特に雲のあたりだな』
今オキナワに上陸しているのはニューギニアを攻略した部隊の一つだった筈だ。先の戦勝によって慢心しているようだが、フランシスと彼の部下たちに油断は一切無かった。レーダーを遮る粒子が展開されているせいで確認しづらい、どんよりと曇った雲へと視線を向ける。
隊列は横隊、何時でも制空戦を行えるようにしておく。
――その次の瞬間に、雲間から雷霆の如き勢いで敵機が急降下してくることに気が付いた。
『敵機発見! マークは……一瞬しか見えなかったがリボン付きだ! 地上の機体にも伝えろ!』『地上から入電……なぁに? リボン付きだぁ? ヘマした奴らの空想上の存在だろ? アースノイド如きの戦闘機で無敵のモビルスーツが負ける訳が……』
突出していたゴッグ隊はそう返答したその次の瞬間に、急降下してきた機体上部に謎の装置を搭載したリボン付きの機体、背面飛行で飛んでいるソレから放たれた光線によって脚部が貫かれてゆき、その場に崩れ落ちてゆく。
まるでそれが合図のように、島内の至る所から砲声が響き、橋頭保に展開していたジオン兵へと雨のように降り注ぐ。
通信機越しに爆裂音と悲鳴、怒号を聞きながらちっ、と思わずフランシスは舌打ちした、地上での戦いなんだからアースノイドに分があるのは当然だろうに! と怒鳴りつけたくなる気持ちを抑えてゆきつつ、砲撃によって巻き起こった爆炎を突っ切って次のゴッグへと狙いを定めた宿敵へと機首を向ける。
鋭い機影を描いて急降下、狙いは敵セイバーフィッシュの主翼。
やはり、大型のビーム砲を外付けしてるせいか、機動性は劣る! 脚部を貫かれて転倒した仲間へと助けに向かおうとしたゴッグを貫いて、木乃伊取りを木乃伊にしてゆく敵機の上を取る。
味方機が次々と地に伏すのを見て恐慌状態に陥ったのか、後ろを見せて逃走を開始しようとした海の王者の膝裏を貫いてゆく、膝裏を貫かれたゴッグはその場に倒れ伏してゆく。
一分も経たずに背面飛行の状態からモビルスーツの弱点である膝関節部を貫いて転倒させてゆく敵のパイロットの技量に冷や汗が額を流れるが、怯まずに更なる目標へと狙いを定めて敵機へと急降下。
こちらの機体の動きに気が付いて背面飛行状態からバレルロールを行い、無理やり姿勢を制御した敵機はインメルマンターンの要領でこちらの弾幕射撃を回避する、これがエースか! と思わずフランシスはコックピット内で呟いた。
『そちらのペイント……インドからの帰りでやりあった奴か!』
『【クメールの嵐】、フランシス大尉だ、貴様の名を聞いておきたい!』
相手のインメルマンターンの機動に合わせて、こちらも機首を上に向けて急上昇、やはり最高速ならばセイバーフィッシュの方が上だが、運動性ならばこちらの方が上! 敵機へと狙いを定める。
『アレス・ピクトン、階級は大尉だ、貴様も良い腕をしているな……だが!』
こちらの弾幕をインメルマンターンを途中で切り上げてバーナーを吹かせながら落下、敵の主翼をわずかに霞めるものの致命傷には至らせる事が出来ない、海面から高度十メートルほどの位置まで急降下した敵機へとなおも食らいつく、が。
後ろから衝撃、機体の制御が不可能になる!
『……! そちらに集中しすぎたか!』
『この状況だったら一対一ならば負けていたかもしれんが、生憎俺には頼りになる友軍が居るのでね』
海面へとどんどん機体が落下してゆくのを感じながら、空を見上げる、友軍機は日の丸のペイントが施されたセイバーフィッシュ達に苦戦を強いられ、異常を察知して海中へと逃げようとしているゴッグの背中にはΩのペイントが施されたセイバーフィッシュが突っ込んでいってゴッグを破壊してゆく。
寸前でセイバーフィッシュからベイルアウトした所を見るに、あのパイロットはベイルアウト慣れしてるらしい。
味方を輸送してきた輸送機も次々と飛び立つ前に日の丸が描かれた太刀魚の弾幕によって破壊されてゆく。
空を見上げると敵へと下ったザンジバル級。
雲の中に隠れた機動巡洋艦内に戦闘機を、こちらがオキナワに橋頭保を構築し戦力物資と揚陸した後に内陸に潜ませていた砲兵部隊による砲撃支援を合図に制空権を確保。
『……狙いはこちらの撃滅か! こちらフランシス、残存の味方機に伝えろ! 離脱しろと! 責任は私が取るっ』
その通信を僚機に行うと同時に、ベイルアウトして空へと飛び出し、ランドムーバーを使って衝撃を殺しながら着水。
救難信号を発信しながら空を見上げていくと、主翼にこちらに見せつけるかのようにリボンが描かれた機体がインメルマンターンで空中で一回転し、急上昇した後に地上部隊へと襲い掛かってゆく姿が目に映る。
味方が蹂躙されてしまってるというのに、フランシスはその機体に目が釘付けになってしまっていた。
後に、オキナワ攻防戦と呼ばれる一連の戦いは連邦軍の勝利で終結した。
ジオン側は先遣隊であるゴッグ十二機が全損、橋頭保が築かれた後にファットアンクルによって空輸されてきた歩兵部隊二千人も砲撃に晒され壊滅。
危機的状況に陥った味方の救援に駆け付けたカノヤ基地の航空戦力によって、残存の航空部隊と、撃墜されて海を漂っていたパイロットたちは救出されたものの、ジオン軍の敗北は誰の目にも明らかであった。
多分、ビーム搭載のセイバーフィッシュの名はキャノンフィッシュとかです。