【完結】えっ、ここからでも入れる保険があるんですか??? 作:らいらいてー
『君が【ジオン軍が最も恐れた男】か、その活躍は聞いているぞ、君は連邦軍の誇りだ。奮戦に感謝する』
『は、お会いできて光栄です! レビル将軍』
タカオ基地の会議室、そこで画面越しに面会することになっているのは我らが地球連邦軍の総大将、レビル将軍その人だ。
と言うか連邦側からそんな二つ名付いてたのか、大仰すぎやしないか?
極東で活躍しているエースに会って話をしたいとの事で、俺の事をここに呼び出したって訳だ。
『本当ならばジャブローに呼んで君に直接、戦功賞を与えるべきなんだろうが……チュウゴク方面の敵軍が集結しつつあるという情報もある。敵の侵攻が近い状況で、防衛の要である君を呼び出すわけにはいかなくてな』
『八月に入ってから、こちらへの偵察が増えてきましたからね、昨日の夜もスクランブルすることになりましたし』
夜間に敵の偵察機の動きが活発になったせいでこちらが寝る間もない、ライラ中尉とララァには夜にはもっとしっかり寝てほしいのだがな、二人ともまだ子供なんだし、寝る子は育つという格言もあるし。
昨日の夜は護衛の戦闘機もついていたせいで激しい空戦になり、基地に戻る頃にはもう夜が明ける頃だった。
なのでもうそろそろ昼になるが、子供二人は睡眠中だ。
オメガの方は被弾無しで珍しく撃墜されずに戻って来たので、その祝いと称して普段迷惑をかけてしまっている非番の整備士達に自費で買ってきたノンアルコールのビールとご馳走で宴会中だ。
まぁオメガの方も緊急出撃に備えて、整備士達も酒を飲めないのが辛い所だな。
意外と気配りができる奴で、眠っているライラとララァの二人には街で売られていたスイーツを買ってきてくれたそうで、俺にはノンアルコールのビールをケースで送ってくれた。
『レビル将軍、小官の部下たちにも格別の配慮をお願いします、それと、もうちょっとまともなビーム兵器を送ってきてください』
機体上部にポン付けする『モルガン』はそれはもう大火力のお陰でザクやら、ドダイやらを叩き落としてくれるのだが、継戦能力は少ない上に機動性も落ちるし、はっきり言って欠陥だらけだ。
データ取りやら、モビルスーツに有効打を与えるためやらの理由があるのは分かるが、人命軽視も甚だしいと思う。
毎回対地攻撃するときに背面を向かないといけないんだぞ、しかも敵の攻撃を避けるために背面状態で高速機動することになるんだぞ。
このパイロットを死へと誘う妖婦をどうにかしてくれというのが切実な俺の願いだった、この兵装使うの俺じゃなかったら多分五回は死んでたんじゃなかろうか。
『ふむ、そうしたいのは山々だが、まだ開発途上でね。後一か月ほど待ってくれると助かる』
出来れば今すぐほしいんですがダメですか、そうですか……。
『……は、現状の戦力で最善を尽くします』
『実を言えば、あの癖のある兵装を使いこなす君の事をニュータイプだと言う技術者も居るが、君は実感はあるかね?』
面白い事言うなこの人、俺がニュータイプだと?
こほん、と一つ咳払いして、画面越しにレビル将軍の目をジッと見つめる。
『これは、小官の考えでありますが。この世にニュータイプと呼ばれる新人種は存在しないと小官は考えております。ですので小官はニュータイプではありません』
『ほう? その根拠は?』
『ニュータイプと言うのはジオン・ズム・ダイクンによれば、宇宙に適応し変化した新人類であると。その定義に当てはめるならばスペースノイドは全て新人類ではないでしょうか? 彼らは宇宙という無限の荒野を開拓し、自らの住む場所を作り出し、適応し、そして生きてきました。彼らの事をニュータイプだというのならば、確かにそうなのでしょうな』
『続けてくれたまえ』
レビル将軍の眼光が鋭くなる、こちらを射抜くように見つめて来る、これは正直に答えた方が良いだろうな。
『つまり、私が何を言いたいかと言うと……。ニュータイプと呼ばれそうな方々も宇宙に適応した人達なだけであって、普通の人でしかないという事なのですよ』
これは、ララァと接してると本当に思う。
確かに少し浮世離れした所はあるが、あの子は普通の女の子なのだ。
だからこそ、争いからは離れた場所で静かに暮らして欲しかったんだが、ままならんね。
『眉唾物として語られる超能力じみた能力を持つ、ニュータイプと呼ばれそうな人も居るかもしれませんが、例え物凄い力を持っていたとしても争いが無くなるわけではないとは思いますね、人類の革新とは少し違うのではないでしょうか』
ニュータイプ、人類の革新が争いを起こさない者達だとするのならば、所謂ニュータイプと呼ばれる者達はその定義から大きく外れてるような気がする、新人類とは言い難いだろう。
『どちらかと言うと新人類よりも超能力者が近いのかもしれませんね、そんな人たちがいるのならば、ですが』
まぁ居るんだが、ララァを怪しげな組織に預けたりはしたくはないし今の所は黙っておくか、ジオンも酷いが連邦も大概だ。
こくり、とレビル将軍は一つ頷いて、満足気に笑みを浮かべた、良かった、グッドコミュニケーションを取れたようだ。
『うむ、君の考えが聞けて良かった。ああ、そうだ、シミュレーターは役に立っているかね?』
『ええ、それは勿論』
因みにモビルスーツシミュレーターでの対戦成績はライラ中尉には大幅に勝ち越し、オメガには全勝、ララァには三十戦三勝二十七敗という凄惨な成績になってしまった。
やっぱ俺は戦闘機乗りだわ、うん。
『ふむ、そうか、それは良かった。私もデータ収集に協力した甲斐があったよ』
あの陸戦型ザクのデータはレビル将軍のかよ……。
◇◆◇◆◇◆
レビル将軍との面会を終えて、食堂へとやって来た俺はスイーツを頬張るライラ中尉とララァの姿に気が付いた、頬張っているのは、確かオメガがお土産で買ってきたパイナップルケーキってスイーツだったかな?
ライラ中尉はララァにあーん、してパイナップルケーキを頬張らせてゆきながら俺の気配に気が付いた様子で視線を向けてきて、にこっ、と元気な笑みを浮かべて来た。
やっぱりまだ彼女たちも子供だな、甘い物に目が無いらしい、ララァもライラ中尉から食べさせてもらったパイナップルケーキを頬張りながら、表情の起伏は少ないが目を輝かせている。
「大尉、オメガが買ってきてくれたこのスイーツ凄い美味しいよ! 大尉も食べないか?」
「ははは、ライラ中尉とララァにとオメガが買ってきてくれたものだろう? 俺の事は気にせずに二人で食べきると良い、スイーツも俺のような野郎じゃなくて可愛らしい女の子達に食べさせてもらった方が喜ぶだろうさ」
我ながらキザな事を言った気がする、これ俺がエースパイロットで実績残して無かったら許されないセリフだよな。
と言い終わった後にちょっと恥ずかしくなって、赤くなった顔を隠すように厨房の方へと視線を向けて、二人に何が飲みたいか聞いた後にコックさんにお願いして三人分の飲み物を用意して貰う。
お盆の上に飲み物を乗せて二人の方へと持ってゆきながら、俺もコーヒーカップ片手に適当な席へと座ると、ララァがジト目でこちらを見て来た、そんな目も出来たんだなお前。
「大尉、何時か女の人に刺されますよ?」
「年頃の女の子の男性観を破壊するのはどうかと思うけどな、私も」
ライラ中尉もこちらを責めるような視線を向けて来た、うーむ年頃の女の子の気持ちと言うのは分かりづらいな、ある意味空戦よりも何十倍も強敵かもしれない。
空戦ならば敵機をどう撃墜するかの最適解が脳に思い浮かぶのだが……まぁこれはこれで異常か。
「まぁ、二人とも良い相手を見つけると良いさ、戦争が終わったら時間はたっぷりある。色々な人と出会い、色々な経験を積んで失恋も経験し、二人には健やかに育ってほしいと思っているよ」
嘘偽りのない本心だ、この戦争が終わったら二人とも、素敵な人を見つけて一緒になってくれたらそれで良い、近況報告に手紙でも貰えるならばそれがベストだな。
だからこそ、この子達が、まだ二十歳にもなってない子供達を生き残らせる責務と義務が、俺たち大人にはある。
まだ何も知らない雛鳥なのだから、彼女達は、世界と言う大空を知らないまま死なせて良い人間ではない。
俺? 空と言う恋人がいるし……。
「やはり、分かってませんね、大尉は」
「分かってないよな、本当。はい、ララァあーん。あ、あたしの事はお姉ちゃんって呼んでいいぞ~」
二人ともジト目でこちらを睨んだ後に、ライラ中尉の方はララァにまたあーんと台湾生まれのスイーツを頬張らせてゆく、年下の子が自分の隊に入ってきたのでお姉ちゃんぶりたいのだろう。
ララァもまんざらではない様子だ、上官である俺への態度が少し気になるところではあるが、まぁ二人が仲良く過ごしてくれてるならばそれで良い。
椅子へと深く腰掛けてゆきながら、コーヒーを飲んでゆきつつボーっと暫く二人の様子を眺め続けるのであった。
◇◆◇◆◇◆
タイワン海峡上空、敵機接近の報告を受けた俺達の隊は空へと上がることになった、敵は総力を挙げてこちらの島を落としたいらしい、先遣隊と思われるドップだけでも数十機は展開している。
『こちら、カニンガン。機動巡洋艦【ケストレル】において作戦指揮を執っている。既に知っての通り、敵軍の本格的なタイワン侵攻作戦が始まった』
カニンガン少将が司令部機能を移している連邦の女となったジオンの技術の結晶が空へと上がり、彼女を中心に制空部隊が展開してゆく、タイワン上空の守りの要は間違いなく彼女だ。
『ジオン軍も極東方面軍の思わぬ粘りに焦っているのだろう、小細工無しの総力戦を仕掛けてきた。制空戦闘機数百機、爆撃機百機以上、ガウ級攻撃空母十機、更にはザンジバル級、そして対潜哨戒機よりタイワン沖合にユーコン級の反応も確認した、間違いなく水陸両用モビルスーツも上陸を仕掛けてくるだろう』
水中から爆発音、そして暫くした後にゴッグと思わしきモビルスーツの部品が浮かんでくる。
機雷網に引っかかってしまったのだろう、だが、これ一機だけとは到底思えない。
タカオ市の海岸沿いに大挙して巨人が押し寄せてくるのは間違いない。
『更に、ドダイ爆撃機にザクが搭乗しているのも確認された。――君たちも視認できるだろう?』
先遣隊であるドップの後ろには、豆粒ほどの大きさであるが、平べったい特徴的な外見のドダイと呼ばれる機体の上に乗った忌々しい一つ目の巨人の姿が確認できる。
数えられる範囲で二十機以上、更には後続も控えてる事からこの作戦にドダイに乗ったザクは五十機は存在してるだろう。
『その上、情報によれば輸送機が五十機、歩兵を満載して先遣隊が橋頭保を確保すると同時に乗り込む準備が整えられているとの事だ。オキナワでの戦いのように簡単にこの戦いを乗り切れると思っているのならばその認識は今すぐ改めて欲しい』
歩兵だけで二万人近くはいそうだな、ドダイ付きザクの事も考えると制空権を確保され、タイワンに橋頭保を築かれた時点でこちらの敗北は決定的となる。
『だが、我々は一歩も退くつもりは無い。タイワンには極東の至る所から疎開してきた民間人たちが居る。君達の双肩に友や、家族達の命がかかっている事を忘れないでほしい。そして、彼らを泣かせるんじゃないぞ、一人でも多く生き残って彼らに無事な顔を見せてやれ!』
その言葉と同時に、カニンガン少将の号令の下、『ケストレル』のメガ粒子砲がドップの後ろに展開しているドダイ付きのザクめがけて放たれてゆく、幸運なことに、あるいは敵軍にとっては不運な事にメガ粒子砲の一撃はタイワンを目指して飛んでいたドダイを貫き、ザクごと海面へと堕ちてゆく。
『各機、揃っているな』
『こちらライラ、大尉の傍に!』『こちらオメガ、今回も絶対に生き残ってやりますよ!』『こちらララァ、貴方の背中はお任せください』
『よろしい、では』
メガ粒子砲の一撃が開戦を告げる号砲となる、先遣隊のドップが十機ずつに分かれて、正面、右翼、左翼、三方向から迫ってくる、機数で言えばこちらの方が上だ、敵の狙いはこちらの陣形を乱させてドダイとそれに乗せた巨人の損害を減らす腹積もりだろう。
タイワン上空には次々と味方機が上がってゆき、後方へと浸透してきた敵部隊に対して打撃を与える構えを見せているが、敵軍の主力は海峡に展開した俺達が食い止めることになりそうだな。
鹵獲したゴッグは敵の上陸地点になりそうな場所に配置済み、住民を山岳部に疎開させて閑散としている沿岸沿いの市街地には対MS地雷が仕掛けられ、歩兵隊がビルに隠れて上陸してきたモビルスーツを狙い撃つ構えを見せている。
が、制空権が万が一奪われた場合はドダイ付きザクが降下していって瞬く間に橋頭保が築かれる事になるだろう、航空隊の責任は重大だな。
『右翼から叩いていきつつ、こちらの防空陣形を突破して来た奴らに打撃を加えて相手の侵攻の意志を挫くぞ』
真っ先に海峡に展開した防空網へと突っ込んできた敵機を捕捉、狙いを定めてトリガーを押し込む。
『モルガン』のビーム砲から死神の刃が飛ばされてゆき、勇んで飛び込んできた相手の隊長機を撃墜しパイロットをヴァルハラへと送ってやる。
隊長機が撃墜されて混乱が広がる、その混乱を見逃さずに僚機達が食らいついてゆき、相手が隊列を整えようとした所に高度を高く取り、相手の頭上を取ったこちらの機体がパイロットを死へと誘う妖婦の眼差しを向けてゆく。
二連射、狙い通り敵の機体のエンジン部を貫いて突っ込んできたライラ機を上限から挟み込むように動いていた敵機をスクラップにしてゆく。
『敵機の反応あり! 敵の戦闘機が更に迫ってくるぞ! 持ちこたえてくれよ!』
【ケストレル】から敵の増援反応の報を聞きながら、くるりとバレルロールする形で急上昇、更に高度を取りながら次の獲物を探す。
今日は、長い一日になりそうだ。
◇◆◇◆◇◆
『敵機撃墜!』『ドダイに取り付いた、下からの攻撃を食らいやがれ!』『大尉、こちらも撃墜しました、ドダイ付きの奴です』
まさしく極東方面のジオン軍の総力を挙げての大攻勢、途切れる事なく襲い掛かってくる敵機に対して、カニンガン少将隷下の部隊は良く持ちこたえている。
ライラ機はドダイ付きの護衛へと急降下、加速してゆきながら一撃離脱の要領で護衛機のエンジン部を機関砲で貫き、そのまま海面スレスレまで急降下して敵の護衛機の注意を引きつけた後に、オメガとララァの機体がタイワンに上陸された場合は脅威となりえるザクを載せたドダイを叩き落とす。
そして海へと巨人が墜落してゆくのを確認した二人の機体はライラ機へと取り付いたドップへと敵機の上を取るという空戦においての絶対的なアドバンテージを活かして囮を救出する、何度も連携訓練を行ったお陰でその動きに乱れは無い。
一番技量で劣るオメガ機はララァ機の援護を行い、不死身の男のセイバーフィッシュの機関砲弾が相手の回避行動を誘った所に別方向からパイロットとしては凄腕と言って良い彼女の弾幕によって叩き落とされる。
うちの隊だけでドップとドダイ付きザク合わせて三十機は落としたんじゃないか? まぁ、一個小隊だけでやれる事には限りはあるが……それでも一つの戦場ではエースの存在は大きな意味を持つ。
『なんだあいつら……おい、またザクがドダイごと落とされたぞ!?』『おい、あちらに向かうな、落とされるぞ!』『左翼側から回り込め! ゴッグ隊が上陸したお陰で弾幕も薄くなってるはずだ!』
タカオ市の方からは激しい砲音が聞こえてくる、対潜網を潜り抜けて突っ込んできたゴッグ隊に対して配備されていた榴弾砲の雨が降り注ぐ音だ。
榴弾砲の砲撃が合図となり、韓国や中国方面から退避してきた連邦軍戦車残存部隊が集中砲火を浴びせてゆく。
後続が来ない事にはなぶり殺しにされる事が確定しているゴッグ隊であるが、彼らに注意が向かったお陰で島側からの対空弾幕も薄くなる、こちらの部隊を避けて退避しようとしたようだが、無駄だ。
『メビウスに遅れをとるなよ!』『大和魂を見せてやれ!』『くたばれジオン兵共! タイワンには上陸させねぇぞ!』
主翼に日の丸が描かれたセイバーフィッシュが弾幕が薄い所から突入しようとした敵機へと食らいついてゆく、気合が充実し、士気が高い彼らの猛攻によって突破を図ろうとした敵は瞬く間に壊滅した。
戦略的には意義は少ないかもしれないが、やはり戦術的にはエースの存在は大切だな、こちらが敵機を落とすことによって敵の士気は下がり、逆にこちらの士気は目に見えて上がる。
とは言え、そろそろこちらも弾が尽きそうだ、一時的に母艦に戻ろう。
母艦に戻ろうと機首を向けた所で、こちらの主翼を掠めるかのようにメガ粒子砲が飛んできた、そちらの方へと視線を向けるとザンジバル級一隻とガウ級攻撃空母二隻、そして護衛のドップが多数。
敵は攻撃の要である母艦を前線に出し、メガ粒子砲による対空砲撃、及び対地攻撃によって上陸を援護しようとしているようだな。
地上からの有線式対空ミサイルの援護は……無理そうか、ユーコンから飛んできてる巡航ミサイルへの迎撃に手一杯であるようだし。
上陸してきたゴッグへの対処で手一杯である地上、ここにザンジバル級やガウからの空爆が加われば戦線が一気に崩壊しかねない。
だが、逆にはこれはチャンスだな。
ここで敵の攻撃の要を落とせれば戦局はこちらが一気に優位になる!
『各機、俺を先頭、後ろにライラ中尉、その横にララァ、そして最後尾にオメガの菱形陣形を取れ。エースの仕事をするぞ』
こちらの指示通りに、そして連携訓練通りに僚機は隊列を組んでくれる、隊列が組まれた事を確認すると、ブースターを吹かせて加速、死神の鎌となって敵艦めがけて飛び出す。
接敵まで残り十秒、接近するこちらに気が付いた敵ザンジバル級が主砲を向けて来る、狙いを予想し一気に操縦桿を上に引いて急上昇、味方機もこちらの動きについてきてくれたようでメガ粒子砲を回避。
接敵まで残り五秒、更に加速。Gがこちらに襲い掛かるが構わずに、味方機よりも更に前に進んでバレルロールの戦闘機動を取り、その途中で機動を切り上げて背面飛行状態となり、狙いをこちらへと向けられつつあるガウ級に増設された対空砲に向けて連射、貫いて弾幕を薄くする。
ザンジバル級と接敵、半回転し機首を戻してそのまま対空火器めがけて機関砲を乱射、沈黙させてそのまま音を置き去りにするほどの速さで敵艦の上を潜り抜けてゆく。
対空砲火が少なくなった所に味方機が飛び込み、搭載されたミサイル弾や機関砲で敵艦への損傷を拡大させてゆく。
が、後ろから勘の鋭い敵機が母艦の強襲を守ろうと近づいてきて、ララァ機の後ろを取ろうとした、強襲のために隊列に綻びがあったせいかすぐに敵機を迎撃できない! これはヤバいか!?
と思ったが、その次の瞬間にオメガのマークが描かれたセイバーフィッシュの機首がガウへと向けられたかと思うと、突如としてコックピットから元特殊作戦群の筋肉ムキムキマッチョマンの変態が飛び出してゆき、おもむろにロケットランチャーを構えたかと思うとララァ機の後ろを取ったドップへと向けて発射。
常識ではありえない行動を見て呆気に取られていたドップパイロットを守るキャノピーにロケット弾が着弾し、爆炎をあげてゆきながら墜落、そして乗り捨てたセイバーフィッシュはガウへと突っ込み、断末魔のような爆炎をあげてゆきながら海めがけてどんどん高度を下げていった。
……あいつ本当に人間なのか? ランドムーバーを使って海へと慣れた様子で降下してゆくオメガを見てると首を傾げざるを得ない。
ララァが撃墜される心配は無くなったが、まだ目標のザンジバル級は沈められてないな、インメルマンターンの逆の機動、スプリットSによって降下し、加速してゆきながら機首を敵の正面へと向けてヘッドオンの姿勢。
『死神が来る!』『おい、近くにいる戦闘機を早く集めろ!』『対空弾幕は……無い! 誰か助けてくれぇぇぇぇぇぇぇぇ!』
ミノフスキー粒子による通信の混線によって敵の指揮所の混乱具合がよく分かるが、こいつを生かしておけばタイワンが陥落しかねないので無視はできない、妖婦の眼差しを彼女の顔へと放つ。
勇者を死へと誘う妖婦の眼差しから、ジオンが誇る最新鋭艦も逃れることは出来ない、一発目が着弾したその瞬間に爆炎が上がり、動きが鈍り、更に二発、三発と打ち込んでゆくと爆炎が広がってゆく、艦首を海面へと向けて降下し始めたザビ家の艦の爆炎を突っ切ってインメルマンターンの要領で急上昇。
残りのガウはララァ機のミサイルがコックピットに叩き込まれる事によってどんどん高度を下げていった。
敵の数的に、第一陣でしか無いだろうが、この時点で相当な損害を受けた以上、一時的に後退せざるを得ないだろう。
俺の予想通り、ザンジバル級が海へと沈んでゆく光景を目の当たりにしたジオン兵は再編の為に後退し始めた、そして上陸し後続部隊を待っていたゴッグ隊もついには猛砲撃と歩兵の肉薄攻撃で沈黙したようだ。
まだ緒戦でしかないだろうが、それでも相手の士気を挫くことには成功した、勝利を祝う歓声が通信機から聞こえてくる。
緒戦で攻撃の要となるザンジバル級を失ってしまった事が響いたのか、その後のジオン軍の攻撃は精彩を欠き、初日以上の大規模攻撃を仕掛けることは無かった。
小競り合い程度の戦闘がその後一か月ほど続くことになったものの、ジオン軍司令部はタイワン攻略作戦の中止を発表。
極東に連邦軍の反攻拠点が残されることになるのであった。
最近のレビル将軍のストレス発散によく使われているのがモビルスーツシミュレーターです。
気に入らねぇ軍の高官が居る事をイメージしながらビッグトレーをなます切りにしてるそうですよ。