【完結】えっ、ここからでも入れる保険があるんですか???   作:らいらいてー

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 誤字脱字報告、いつもありがとうございます。


大槌作戦

『これはリスナーさんからの個人的なおたよりとなります。松尾芭蕉の俳句より――』

 

 カンコク沿岸部、インチョン。

 コロニー落としによって発生した急激な海面の上昇によって沈んだインチョン国際空港の跡地を眺める事が出来る、この土地を占領したジオン軍によって新築された港湾施設。

 

 沖合には空港に積み上げられていた大小さまざまなコンテナが浮かんでおりコロニー落としによる被害の大きさを物語っていた。

 

 キュウシュウ地方に地球連邦極東方面軍が上陸したことによって、機動戦力の大半が輸送の為にプサンに集結。

 

 彼らの後背を守る為に急造されたジオン軍のトーチカの中で、ルーイ少尉はタイワンから流れる電波を拾ったラジオを聞きながら、うぅむ、と唸り声を漏らす。

 

 戦闘濃度で散布されたミノフスキー粒子のせいか時折ノイズが走るラジオをちらりと見た後に、机の方へと視線を向けて地図を広げてゆく。

 

「オカムラ大佐の予想通り、連邦軍の反撃があるとするならばオキナワ伝いで侵攻できるキュウシュウだったが、タバルザカの防衛ラインは守り切れるかな?」

 

 広げられた地図を指でなぞり、クマモトに構築されたジオン軍の防衛ラインを確認してゆく。

 

 カゴシマに上陸した敵軍には鹵獲されたゴッグが配備されており、橋頭保を構築。

 後続を揚陸し、ハカタを目指して連邦軍が北上を始めた。 

 それに呼応するかのように各地に潜伏していた連邦軍残党が決起し、こちらへの妨害を行っている。

 

 タイワンでの手痛い敗北によってジオン軍極東方面軍の航空戦力は減少しており、効果的な航空支援は行えず、そもそもニホン全土を守る為の戦力はニホン方面軍には配備されておらず、制空権を確保し北上を開始した敵軍に守備隊は敗走を続けるしかなかった。

 

 ニホン方面軍指揮官のオカムラ大佐はキュウシュウにおける決戦の地をタバルザカに決定し、大陸方面軍に増援を要請、勢いに乗る連邦軍を叩き潰すためにソウルに展開していた部隊をプサンに集結させてユーコン級やファットアンクルを使って運び込む構えを見せている。

 

 徴用した民間船も使用し、歩兵三個師団を最終防衛線に展開するためプサンに集められた。

 

 オカムラ大佐がタイワン攻略戦が劣勢になりはじめると同時に考案していた防衛計画、今の所はその計画に従って順調に進んでいる。

 

「各員、気合を入れろよ。ここがジオン軍の重心だ」

 

「ですが少尉、ソウルに配備されたモビルスーツは少ないですけど、対空戦闘も可能なマゼラトップ砲を装備したザク一個小隊に、対空装備を増設したハリネズミギャロップが三台、マゼラアタックもソウル市街地に展開していてガチガチに固められてるんですよ? 航空戦力が主力の連邦軍相手にはここが落ちるとは思えませんがね」

 

 トーチカに設置された無反動砲を構えつつ、海面を警戒している部下の一人はそう呟いてゆく。

 

 ジオン軍側もこれまでの経験から航空戦力をモビルスーツの脅威と判断し、対空陣地の構築はより綿密に行われるようになった。オカムラ大佐が発案した対空用の新兵器もチバで組み上げられているという情報もある。

 

 大陸方面軍の司令部も半島における重要拠点であるソウルの防衛には力を入れており、市民を強制疎開させることによって閑散としたビル街にはハリネズミのような対空砲陣地が構築され、機雷がばら撒かれて機雷原とかしたインチョン沖から命知らずのアースノイド共が強襲上陸を仕掛けてきた時に備えてマゼラアタック一個大隊が配置されている。

 

 それに加えて陸戦型ザクが少ないとも言えども一個小隊、移動対空要塞と呼んでも良いギャロップが三台、その他歩兵が一個師団ここに展開しているのだ。ゴッグは鹵獲されてると言えども少数、上陸してきたとしても返り討ちにできるだろう。

 

 だが、楽観的な部下の言葉を聞きつつもルーイ少尉は腕組みを崩さなかった。

 

 『友人』から聞いた話ではあるが、タイワンの工場で水陸両用モビルスーツであるゴッグが組み立てられるという情報もある。ジオン製のモビルスーツのデッドコピーでしか無いだろうが、それでも敵軍にモビルスーツが『製造』されるのはジオンにとってはかなり大きな意味を持つ。

 

 ここで作られるのはデッドコピーだとしても、連邦はモビルスーツの製造ノウハウを取得する訳で。

 

 ノウハウは金では買えない重要な物であって、それは今後連邦が独自に開発するモビルスーツに大いに役立つことになるだろう。

 

「それよりも隊長、聞きましたか? 連邦に鹵獲されたザクがジャブローを探してた偵察部隊を撃破したって話」

 

「ザク一個小隊が壊滅することになったアレだな。確か敵の鹵獲ザクに乗っていたのはレビルで、大々的にプロパガンダとして戦果を喧伝しているな」

 

 連邦側のプロパガンダ放送に過ぎないが、曰くレビル将軍はニュータイプでモビルスーツの操縦に天才的な才能を持っていて前線に出て兵達と共に戦う気概がある勇将であるそうだ。

 

 それに比べてギレンは後方で陰険な謀ばかり行う、前線に出て兵達と肩を並べるだけの勇敢さも持ち合わせてない卑怯者であると。

 

 レビルがニュータイプ云々かどうかはさておき、そして自らの手でザク一個小隊を葬ったかどうかもプロパガンダで戦果を誇張して宣伝してるに過ぎないだろうが、ギレンについての評は正鵠を射ていると口には出さないが少尉は思った。

 

「噂によれば陸戦型ザクがジャブローで量産されているそうですけどねぇ、相手のザクに対抗するためにこちらも新型機を早く送ってほしいもんですよ」

 

 そう部下はぼやきながら、ぷかぷかと浮かびながら湾港施設へと近づいてくるコンテナの方へと視線を向ける。

 

 その光景を横目に見ながら、この情報もブラフだろうなと判断する。

 陸戦型ザクの量産はあくまでこちらを混乱させるための情報で、本命のモビルスーツは既に完成しつつあるのだろう、と。

 

『秋深き 隣は何を する人ぞ』

 

 ふと、少尉は港へと近づいているコンテナへと視線を向ける、岸へと近づきすぎじゃないか…? と

 

 ――いや、あれは幾ら何でも不自然だ! 何かに牽引されて近づいてる!

 

「総員、第一種戦闘警戒! 敵襲だ、警報を鳴らせ!」

 

 その言葉が響くと同時に、コンテナの上面が開いていって、中から巨人が飛び出す。

 

 連邦軍所属を示すマークが胸部に刻まれたトリコロールカラーに塗装されたジオン軍勝利の象徴が、コンテナから飛び上がったかと思うとスラスターを吹かせて港湾施設へと上陸。

 

 赤いモノアイが、まるで獲物を探し求めるかのようにぎょろり、と動いた。

 

 

 

 

 

 

 ◇◆◇◆◇◆

 

 

 

 

 

 

 

『上陸に成功、機雷を先んじて排除してくれた特殊部隊の皆さんには感謝だな』

 

 いや本当、機雷を先んじて排除してくれたフロッグマンの皆さんには感謝してもし切れないな。バレずに除去してくれてなかったらこんなにスムーズに上陸は出来なかっただろうし。

 

 港湾施設へと上陸し、ザクマシンガンを構えさせてゆきながらトリガーを引かせる。歩兵対策に構築されたトーチカ群を蜂の巣にして後続の為の突破口を築く。

 

 トーチカが破壊された場所から、タイワンで製造されたゴッグのデッドコピー機達が上陸し、メガ粒子砲の代わりに搭載されることになった四丁の90mmマシンガンを警報を聞いて集って来たマゼラアタックめがけて斉射。

 所謂ジムマシンガンと後に呼ばれることになる、ザクの装甲を易々と貫く機関砲弾が敵戦車を貫いて爆散させてゆく。

 

 アイアン・ネイルの左手がボップミサイルに換装され、胴体部には重いメガ粒子砲の代わりにジムマシンガンが搭載され、軽量化が図られることになったタイワンの施設で作られたデッドコピーゴッグだ。

 防水加工が施されたマシンガンとボップミサイルの砲口には防水用のキャップが装着されており、攻撃時には油圧式で開く事が出来る。水中では使えない上陸作戦しかできない装備だが今はこれが必要だ。

 

 ゴッグのカタログスペックの2/3程度しか発揮できない間に合わせ品の粗悪品でしかないが、軽量化した分装甲を機体各所に増設していて敵の弾幕をものともしない。モノアイ部分には連邦製モビルスーツ特有のバイザーが装着されていて胸部には連邦所属のペイントが施されている。

 

 トリコロールカラーに塗装されたこのゴッグの見た目をしたデッドコピー品の事を俺は尊厳破壊ゴッグと呼んでいる、こんな機体でもこちらにとっては貴重な戦力だ。

 

 連邦仕様ゴッグの製造案を考案した技術者の名前から取ってトヨタゴッグという愛称が付けられているが、俺は尊厳破壊ゴッグと心の中で呼び続けることにしよう。

 

 極めてなにかゴッグに対する侮辱を感じる見た目をしているしな。

 

『ライラ中尉の機体とララァの機体はこのまま湾港施設の占領を。トヨタゴッグの装甲は分厚いが油断はするなよ。所詮はデッドコピー機だ』

 

 トーチカが破壊された事によって作り出された突破口にめがけて、ライラ中尉の機体とララァの機体が突入し、湾港施設に配備された防空陣地や歩兵用の塹壕を踏みつぶしてゆく。

 

『操縦性が良くて装甲も分厚いのが救いだけど、陸戦だと陸戦型ザクの方が使い勝手が良さそうだな、大尉』『私もそう思います、大尉。見た目は可愛いのだけどね』『えっ、マジで言ってるのかララァ』

 

 ジオン軍兵士はキメラめいた見た目をしたゴッグに恐れ戦き、市街地の方へと退避していく。海から現れた化け物に勇敢に立ち向かおうとする者もいるが、左手から放たれたミサイルによって掃討されてゆく。ここの確保は彼女たちに任せても良さそうだ。

 

 あの重装甲だ、実弾兵装が殆どのジオン軍の攻撃をモノともしないだろう。

 

『オメガ機は俺に続け。市街地に展開した防空陣地を潰す。その重装甲だったら撃墜されることも無いだろう?』

 

『俺だって好きで撃墜されてる訳じゃないんですがね、でもこの重装甲ならば落とされる気はしませんよ』

 

『トヨタゴッグの陸上での活動時間は一時間ほどだ。迅速にビル群の防空網を蹂躙して航空支援を行えるようにするぞ』

 

 ビルが並ぶ市街地へと俺の陸戦型ザクと、他の尊厳破壊ゴッグよりもより重厚に、戦車の装甲を何重にも積み重ねてより混沌とした見た目になった重戦車が後ろに続く。

 整備士さんたちが何時も撃墜されて戻ってくるオメガの為に用意してくれた超重装甲ゴッグだ、機動力は鈍重だがビーム兵器以外の実弾攻撃はほぼ弾く、筈だ。

 

 情報によれば、市街地に残ってるザクの数は少なく、防空網は分厚くビル群を上手く使った陣地が大量に構築されているらしい、が。

 

 見せてやるとしよう、ジオンが生み出したモビルスーツの陸戦における圧倒的な優位性を。

 

 

 

 

 

 

 ◇◆◇◆◇◆

 

 

 

 

 

 

『おい! 増援はどうなっている! このままだと突破されるぞ!』『近隣の街で住民が決起! こちらの進軍を妨害しております!』『ポイント193で謎の爆発を確認! ポイント201で第三十八歩兵中隊が足止めを食らってる!』『このタイミングで住民の決起だと!? 最悪のタイミングだな!』

 

 ラジオの電波によって流された暗号を聞いたレジスタンス達が一斉に決起し始めた。今回の作戦は彼等がどれだけ時間を稼ぐかにかかっている、奮戦を期待したいところだ。

 

 鉄槌作戦、カニンガン少将が発案した作戦。

 タイワン攻防戦によって消耗したジオン極東軍への反攻作戦は3つのフェーズに分けられる。

 まず第一段階でヤマシタ准将隷下の師団が航空支援の下、カゴシマに上陸、北上しキュウシュウを制圧してゆく。

 

 ジオンも当然、この動きに対応してくるはずだ。

 だが、長大な海岸線を防衛するため上陸予想地点には最低限の部隊しか配備していない彼等は、機動軍を特定の場所に展開し、敵軍の上陸に合わせてぶつけると言う戦法を取らざるを得ない。

 

 キュウシュウの防衛にソウル駐在の機動軍は輸送の為に必ずプサンに集結する、ニホンに戦力を送るにはあそこに集めるのが最も効率が良いからな。

 インチョンに比べたらの話になるが、港湾施設の被害もまだマシであるし。

 

 そこで、作戦の第2フェーズに移る。

 虎の子であるモビルスーツの大部分がプサンに集まったところでソウルに鹵獲したザク、及びデッドコピー品のゴッグを矛先として上陸を開始、防衛ラインを突破する。

 

 インチョン、及びソウルには膨大な数の対空兵器が展開してるという情報は情報部が察知しており、今までのように航空作戦を行うわけにはいかんからな。

 俺やララァなら入り組んだビル群を対空砲を避けつつ飛ぶという芸当は出来ないことは無さそうだが無用なリスクを負う必要はあるまい、モビルスーツがあるんだしな。

 

 矛先が対空陣地を貫くと同時にミデアに満載された歩兵隊が降下、その次に輸送艦で戦車を運び込み、チョウセン半島をソウルから横断。

 

 同時にプサン沖合にはカニンガン少将が搭乗している【ケストレル】、及びセイバーフィッシュを中心とした航空隊が睨みを利かせる、敵の航空戦力による圧力が減った今だからこそ出来る芸当だな。

 

 そこから作戦の第3フェーズ。

 つまり、プサンに集結した敵軍を撃滅する。

 沖合に展開したこちらの航空隊に睨まれて身動きが取れないチョウセン半島南部に閉じ込められることになったジオン軍を刈り取る訳だ。

 

 今回の作戦はキュウシュウの解放ではない、チョウセン半島の敵野戦軍の撃滅だ。

 

 もし、今回の作戦の意図が読まれてソウルに展開された敵部隊が移動を開始しなかった場合は、そのままキュウシュウを解放するという手筈になっていたが、まぁ交通の要衝でもあるかの地を守る動きをするに決まってるよな。

 

 ソウルを攻略できないと今回の作戦は破綻する、レジスタンスによる敵軍の妨害が重要になる、が。

 

 あの人また俺に無茶振りしてるよ、陸戦型ザクで対空陣地潰して後続のために道を作れとか。

 

 ま、軍人として最善は尽くしますか。

 

 市街地に構築された対空砲陣地に対してクラッカーを投擲、着弾と同時に炸裂して兵員を殺傷すると同時に防空兵器を薙ぎ倒す。

 

『敵ギャロップ接近! オープントップ型のようですな』

 

『ウォーワゴンと呼ばれるタイプか、アレを空から攻撃するのは流石の俺でも躊躇するな』

 

 陣地を踏み潰し突き進むこちらに対抗してか、オープントップ型のカーゴに高射砲や有線式対空ミサイル、更には迫撃砲まで搭載した移動陣地が二台接近、その護衛としてマゼラトップ砲と呼ばれる兵装を装備したザクが三機、この方面に展開している機動戦力を突破阻止のために展開してきたか。

 

 地面を蹴って飛び上がり、スラスターを吹かせて空中で姿勢制御、左手に握られたヒートホークを投擲、マゼラトップ砲を向けて来たザクの脚部を切断。

 転倒を確認、残りのザクがこちらに狙いを定めて砲弾を放ってくるが…遅い。右手に握られたスモークグレネードを投擲、同時にスラスターを横に吹かせて横に飛びのく。

 展開された煙幕の中からギャロップに搭載されたありとあらゆる火砲による弾幕が放たれてゆくが、ビルの側面に隠れた俺の機体とオメガの機体は損傷を受けていない。

 

『オメガは正面から、俺は側面から行く。敵の機動戦力をここで潰せたら大きいぞ』

 

『了解! 注意を引きつけます!』

 

 弾幕が途切れた所を見計らってジオンと連邦の忌み子が飛び出して煙幕の中を駆け抜けて敵機へと接近する。

 煙幕にうっすらと浮かび上がった化け物のシルエットに対してまずはマゼラトップ砲の砲弾が直撃するがものともしない。その次に迫撃砲の砲弾が上から降り注いで爆破しようとしてゆくが無駄だ。

 

 オメガ機が重装甲を活かして注意を引きつけてる内に機動性に優れた陸戦型ザクがビルを遮蔽にして視線を遮りながら敵機の側面へと回り込む。

 展張された煙幕が晴れると同時にキメラの右クローが弾の切れたマゼラトップ砲からヒートホークへと持ち替えたザクの胴体を貫いて仕留めるのを確認。

 

 流石の超重装甲と言った所だろうか、追加装甲として張り付けられた戦車の装甲は砲撃を受け止めてゆくうちに脱落していったが本体自体はほぼ無傷と言って良い。

 

『なんだこのゴッグは!?』『か、硬い、硬すぎる……! 戦艦の主砲が必要じゃないのか!?』『相手の動きは鈍重だ、関節を狙え!』

 

 敵の通信機の会話が混線してるお陰か聞こえてくる。注目がゴッグへと集まる…このタイミングだな。

 

 ビルの陰から飛び出し、予備のヒートホークを構える。

 

 煙幕を突っ切って突っ込んできたオメガ機の関節にヒートホークを叩きつけようとしているまだ無傷の一つ目の巨人に勢いを乗せたショルダータックルを叩き込み攻撃姿勢に入っていた敵機の姿勢を崩させる。

 

『まずは一機』

 

 ヒートホークをコックピットに叩きつけて叩き斬る、敵機の沈黙を確認。

 

『ちっ、側面から回り込んできたか!?』『撃て撃て! 近づけるなっ』

 

 おっと、ソウルと言う重要拠点を守ってるだけあって動きが早い。

 

 移動式の防空要塞となったギャロップから機関砲弾の雨が水平射撃でこちらに降り注いでいこうとする…が、丁度いい壁があったな。

 

 沈黙させたザクを掴んで抱え上げて敵の砲弾を受け止める壁にして、そのまま要塞へと接近。通信機越しに悪魔だと鬼だとか聞こえてくるが今は気にしない。それに、俺に注意を向けていていいのか?

 

『必中距離、頂いた!』

 

 弾幕がこちらに向いた隙をついてトヨタゴッグがギャロップ・ウォーワゴンに肉薄、胴体部に装備された四連装の90mmマシンガンが火が吹く。

 車体を蜂の巣にしてオープントップ式のカーゴに設置された陣地部分も蹂躙、敵の移動要塞が一機沈黙。

 

 狂ったようにこちらに弾幕を放ってくるギャロップに機関砲弾を何発も受け止めてボロボロになった一つ目巨人の残骸をカーゴの陣地に投げ付けて対空火器を使用不能にし、先程転倒させたザクが落としたマゼラトップ砲を抱えて、コックピットに突きつけ引き金を引く。

 

 爆発音、コックピットが破壊されて中の人員を殺傷、続けてクラッカーをコックピットにねじ込み、その場から飛びのく。

 

 ザビ家の兵隊で作られた命の輝きの花が一瞬の間を置いた後に生み出された。

 

 

 

 

 

 

 ◇◆◇◆◇◆

 

 

 

 

 

 

 

 旧国会議事堂の移動防空要塞と化したギャロップを沈黙させる頃には、遠方から迫るミデアの隊列が確認できた。

 

 主要な対空陣地の殆どを潰したお陰か対空砲火もまばらで、あの様子ならば被害も殆どなく歩兵部隊の上陸は完了し、ソウルの解放も成る事だろう。

 

『大尉、今日は整備長から小言貰うだけで済みそうです』

 

『オメガ、お前は毎回機体を壊すからなぁ。整備長も呆れていたぞ』

 

 旧国会議事堂に掲げられていたジオンの軍旗をへし折りながら、装甲が脱落しながらも健在なオメガ機へとモノアイを向ける。

 損害は受けて稼働時間も限界寸前であるが、後続の為の突破口を開くという役割をこなした以上、十分仕事をしてくれただろう。

 

『九月五日、この日は連邦軍反撃の開始として後に語られることになるでしょう。俺たちは歴史に名を残したんです』

 

 史実よりもはるかに速い反撃、極東地域と言うジオン軍の主力が置かれた地域ではない場所での勝利。

 

 歴史が大きく変わりつつあるのかもしれない。それが良いか悪いかは、俺にはまだ分からなかったが。

 

『パイロットとしての責務を果たしただけだ。お前も驕って調子に乗るなよ』『ははは、気を付けます!』

 

 そのような会話をしていると、ライラ中尉の機体とララァの機体がホバートラックに乗った歩兵部隊と共に旧国会議事堂に向かってくるのに気が付いた。彼女たちも無事のようで何よりだ。

 

『大尉、私達の事を心配してくれるのは嬉しいけど、私達も兵士なんだから今度から危険な場所にも連れて行ってくれよ』

 

『後続の為に港を制圧するのも大切な役割だ、役割分担ってやつだよライラ中尉』

 

『嘘ついてますね? 大尉。……全くもう、大切にしてくれるのは嬉しいですけど、それはそれで私の気持ちを考えてくれてませんよね?』

 

 ララァから通信機越しに複雑な感情が混じった言葉を投げかけられて、思わずは俺は苦笑いしてしまった。

 

 やっぱり彼女には嘘は付けない。ガチガチに固められた敵陣地にまだ子供の彼女達を連れて行きたくなかったんだが……。

 

 あ、オメガは別だ。あいつ機体が潰されても歩兵として戦って何とかできるだろうし、人間なんだろうか?

 

 

 

 

 

 

 ◇◆◇◆◇◆

 

 

 

 

 

 

 

 その後、上陸してきた後続の機甲師団がチョウセン半島の横断に成功、南端に敵の機動軍を孤立させた。

 

 プサンから身動きが取れなくなったニホンへの増援を尻目に、キュウシュウへの上陸に成功し勢いに乗る連邦軍はジオン軍防衛ラインに到達。

 

 プサンからの増援が望めないと判断すると防衛ラインに展開していたジオン軍は後退を開始、ダザイフの司令部を捨て本州へと後退。

 

 カンモントンネルを破壊し、事実上の敗北宣言を行う事となった。

 

 数日後にはハカタを解放し、司令部にヤマシタ准将から以下の通信文が届くこととなる。

 

『ワレ、タバルザカヲ、トッパ、セリ』

 

 と。




やりたい展開を詰め込みました。
後、レビル将軍が実際に前線に出てザクを潰したか、それともプロパガンダ放送で連邦が大法螺吹いてるか、解釈は皆さんに任せたいと思います。
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