冥界の機械人が新エリー都に来るそうです   作:プティパット

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[Episode 14]Mission Start(ミッション開始)

 

 

ヴィジョンの監視拠点

 

 

「さあみんな!そろそろ列車に着くわよ!」

 

 

ニコがそう告げ、抜け道の出口を抜ける。

そうして辿り着いたのは、ヴィジョンの監視拠点…目的の列車はすぐそこだ。

 

 

「作戦内容は至ってシンプル──」

「──守衛を倒す、列車を奪う、そのままずらかる、以上よ!」

 

『守衛を倒すってことは…いいんだね、やっちゃって!?』

 

[うん、いいよ!思う存分やっちゃって!]

 

ソードマシンが剣を持ち直して嬉しそうに軽く振るい、それを見たリンがそう告げる。

そんな中V1は抜け道の方をじっと見つめている…まだ何か気がかりはありそうな様子だったが、V1はため息を吐くような動作をした後にリンたちの方へ見つめ直す。

 

 

『へえ、珍しいな…んな面白そうなことをプロキシが許可するなんて。』

 

[あ、やりすぎもダメだからね?]

 

『分かってる……と言うより、今回は暴れたいわけじゃねえ。』

 

[あのV1が暴れるのを拒んだだって?…何かあったのかい?]

 

『毎度毎度、俺をなんだと思ってやがる…まあけど、気分じゃねえって事だ。』

 

 

アキラのちょっとした冗談にV1は困惑しながらツッコみながら、淡々と告げる。

そうしてそんな談笑をしていると、背後から何かが聞こえた。

 

 

「── ドンドドドドン、ドンドンドンドン。ドンドドドドン、ドンドンドンドン。ドンドドドドン、ドンドンドンドン……」

 

『…………えと?』

 

 

アンビーが相槌を打ちながら何かを口ずさんでいる…そのリズムはどちらかといえばBGMに近いかもしれない。

 

 

「…アンビー、もしかして緊張で壊れちゃった?」

 

「いや…多分BGMで盛り上げようとしてるんじゃねえか?十中八九、映画の影響だ。」

 

『!……なぁ、アンビー。』

 

 

V1はアンビーへとゆっくり近づき、アンビーも頭に「?」を浮かべながらV1を見つめ直す。

 

 

「どうしたの、V1?」

 

『お前──』

『──口でやるよりも、本物の方が気分上がるだろ?』

 

「!…V1、あなたって天才ね。」

 

 

V1はそう言ってどこからかラジカセを取り出し、そこから音楽を流そうとするが、アキラに止められる。

 

 

[待った…V1、今やってしまえば、せっかく回り込んで奇襲するつもりが台無しだろう?そのBGMは後にしてくれないか?]

[それに、BGMをつけてしまったら、V1も暴れないと言っておきながら、暴れてしまうんじゃ?]

 

『……それもそうだな、悪い。』

『アンビーもすまねえ。BGMつけてもっと気分を盛り上げようとしたんだがな。』

 

「大丈夫、プロキシ先生の言う通り。BGMは後ででも大丈夫。」

 

「大丈夫よ!…そんなものなくたって、この作戦の重大さはみんなわかってるはずだわ。」

 

 

ニコが2人にそう告げた後、再びリンの方へと振り向く。

 

 

「プロキシ、運転はあんたに任せたからね。そっちの準備はどう?」

 

[ふっふっふ〜、腕がなるねぇ〜♪]

 

[相変わらず、やる気は十分だね。作戦の成功が最優先だから、あまり興奮しすぎないように。]

 

『よし、それじゃあ行くか!』

 

 

V1の声を合図に、皆はヴィジョンの兵士へと奇襲を仕掛け、列車の強奪を開始するのだった。

 

 


 

 

「な、なんだッ!?て、敵襲──」

 

「みんな、一気にやるわよ!」

 

「「「了解 !!」」」

 

 

それぞれの言葉と共に皆は一斉に攻撃を仕掛ける。

 

 

「出力最大っ!」

 

アンビーは電流鉈で切り伏せ。

 

「スターライト、ここに輝くッ!!」

 

ビリーは二丁の銃で兵士たちを撃ち抜き。

 

「バイバイ、おバカさん達!」

 

ニコはエーテル弾を発射して兵士をまとめて制し。

 

「どこもかしこも穴だらけ、にゃあッ!」

 

猫又は自前の二刀流剣術と速さで兵士たちを翻弄する。

 

 

『おー!みんな張り切ってるね〜!』

 

 

そんな感じで敵を薙ぎ倒している邪兎屋と猫又を横目に、V1とソードマシンの2人はプロキシの警護に回り、拳や剣の峰だけで制圧をしている。

 

 

[ありがとう、2人とも!でも、いいの?あの中に混ざって暴れなくって。]

 

『別に問題はない。それに万が一っていうのもあるからな。』

『仮にあ(・)い(・)つ(・)ら(・)がここまで付けてきてるってなるなら、尚更……』ボソッ

 

[え、今なんて?]

 

『…なんでもねえよ、気にすんな。』

 

『…………』

 

 

ソードマシンがV1から何かを察するように見つめていると、猫又達はすでに制圧を終わらせたことをFairyが報告する。

 

 

「マスター。邪兎屋と依頼人、猫又一行が制圧を完了しました。列車への移動をお勧めします。」

 

[了解。みんな、行こうか。]

 

 


 

 

そうして皆が列車の方へと移動し、到着直後真っ先に猫又がパールマンに飛びかかって拘束する。

 

 

「グハァ!」

 

「命をなんとも思わない大悪党め、大人しく降参しろ!」

 

「猫又、そいつも連れてって!アンビーとビリーが運転室に向かってる。」

「プロキシ、ホームで乗車を待つよう住民たちに知らせて!」

 

「お、おまえたち…まさかあのスラムの連中を列車で連れ出すつもりか?」

「させん!させんぞ!連中が外に出て何かを言おうものなら、私とヴィジョンは終わりだ!」

 

 

そう悲願の声を上げるパールマンを横目に、兵士のうちの1人が懐からボタンを取り出す。

それを見抜いたV1が軽くそいつの頭を殴った後にボタンを取り上げる。

 

 

『何をしようとしたかは分からんが、見過ごせねえな?』

 

「く……このッ!」

 

『ふむ、爆弾のスイッチか。』

 

 

V1がスキャンをすると、このスイッチに接続されている爆弾はこの先にある路線に位置している。線路ごとを爆破して進路を塞ごうとしたわけだ。

 

 

『惜しかったな。』

 

 

そう言葉を投げかけると同時に、パールマンの方へ振り向くとパールマンは情けなく助けを求めていた。

 

 

「誰でもいい!どんな手を使ってでもこいつらを阻止しろォ!じゃなきゃ私も、ヴィジョンも!何もかもが終わりだー!!」

 

「うるさいぞ、だるまのおっさん!静かにしろ!」

 

『……こうなりゃ、一回眠らせーー』

 

 

V1がそう言い、パールマンの方へ歩き出そうとした時…突如として謎の咆哮と何かが崩れる音が響く。

その瞬間、Fairyからの警告が通話に鳴り響く。

 

 

「警告。予定ルート上の予期せぬ破断。何らかの生命による破壊を検出。計画は失敗です。」

 

[そんなっ!?]

 

「そんな!ニコ、まずいよ!線路が破壊されちゃった!」

 

「なんですって!?ちょっとあんた!何したのよ!」

 

「し、知らない!本当だ!!」

 

「な、ななななんだと!あの線路は新エリー都に繋がる唯一の道だぞ!」

「我々が撤収した後に破壊する予定が、これじゃスラムの連中だけでなく、我々も閉じ込められてしまったではないか!」

 

 

パールマンが叫んだあと、アンビーが焦った様子で伝えにくる。

 

 

「ニコ、西方から増援が来てる!」

 

「あーもう!そのおっさん連れて、列車の中に籠るわよ!」

 

 

ニコに言われるがまま、皆は列車の中に立て篭もる……増援の1人が無線越しに尋ねる。

 

 

「パールマン長官、列車付近で身元不明の人物から襲撃を受けました。負傷者も出ておりますか、人数や物資では我々の方が有利と見られます。」

「襲撃者は列車の中で立て籠っております。火力で突入しますか?長官、指示を!」

 

 

しばらくの間、無線から沈黙が流れる……そして無線からパールマンは怯えたような声で叫ぶ。

 

 

「と、突入はするな!私は今その運転室だ!邪兎屋の侵…くっ、紳士淑女に捕まっている!!よく聞け、絶対に動くんじゃないぞ!この私が少しでも怪我を負ったら、会社はお前たちの責任を問う!」

 

「…………。」

 

 

パールマンの声に増援はただ警戒体制を緩めないまま構えている……そんな中で皆はしばらく安堵の息をつく。

 

 

「あのおっさん、意外と役に立つな〜。」

 

「これでしばらくは攻撃してこない…けれど、計画は失敗に終わった。」

 

『ああ、列車の確保は出来た…が、肝心の線路が無くなっちまった。住人たちを運び出すことは出来ねえ。』

『それにさっきの咆哮…いや、あの叫び声はーー』

 

 

V1は再び何かをぶつぶつと呟いている…それを見かねたアンビーはV1は声を掛けようとする。

 

 

「……ねえ、V1。さっきから聞きたいことがーー」

 

「……ふふっ。」

 

「おいおい子猫ちゃん、こんな時になに笑ってんだ!絶体絶命のピンチって時に!」

 

「ううん、あんたたちのことを笑ったワケじゃなくて。…これ、さっきたまたま見つけたんだ。ーーあたしの家族の、形見。」

 

 

そう言いながら猫又が見せたのは、写真の入ったペンダントだった……写真に写っているのは、猫又ともう1人。その人物はーー

 

 

「写ってるのって、あんたと…これ、赤牙組の『シルバーヘッド』?」

 

 

猫又は小さく俯き始め、そしてぽつりぽつりと話し始める。

 

 

「実は騙してたんだ、あんたたちの事。赤牙組に形見を奪われたってのは嘘…私は、昔カンバス通りの近くに住んでて、組に引き取られた孤児の1人なの。」

「昔の赤牙組には、理想があった。みんなで故郷を守ろうって、お互いに誓い合ったんだ。」

「だけど、あんたたちも聞いた通り。組は日に日にひどくなっていって…次第に私は組を抜けて、もうここへは戻らなかった。」

 

 

ペンダントを見つめ、目を細めながら猫又は続ける。

 

 

「でも、どんなに組に失望しても…それでも『シルバーヘッド』が引き取ってくれたのは事実だし。あたしにとってあの場所は、一番『家』に近い場所だったんだ。」

「『シルバーヘッド』がホロウにおびき寄せられて死んだって聞いて、私は復讐のためにあんたたちをデッドエンドホロウに連れていった。」

「だけど、あんたたちは想像と随分違ってた…子供を助けるためにホロウを駆け回ったり、ヴィジョンの陰謀を知った後も、躊躇わず残ることを選んでくれた。」

「結局『シルバーヘッド』を殺したのはあんたたちじゃなかったし…あたしはもうあんたたちに復讐する理由がない。かつての組の誓い、住民たちを守ること…それを破って同じ過ちを繰り返すのを、黙ってみるわけにはいかないんだ!」

 

 

猫又はパールマンを担いで、扉の前に立って言い放つ。

 

 

「覚悟はできてるーー安心して、あたしにはパールマンっていう切り札があるし。私が赤牙組出身って知れば、交渉にも応じてくれるはずだから…。」

 

 

重い扉に手をかけ、飛び出すように出ていってしまった。

 

 

「依頼人さん!猫又!…おい、戻ってこい!」

 

「猫又!猫又ってば!」

「…アンビー、ビリー、早くドアを開けて!」

 

 

アンビーとビリーが力を合わせて開けたり、壊そうとしたりしたが、どれも全て頑丈だった。

 

「ダメだ、ニコの親分!この車両、窓もドアも信じられねえほど頑丈だ!」

 

『十中八九、あのパールマンがわざわざ頑丈にしたんだろうよ。』

 

 

扉の前に立つV1にソードマシンが近づいてどうするかを尋ねる。

 

 

『どーする?扉ぶち抜く?』

 

『…申し訳ねえが。もし俺やソードが今この扉をぶち抜いたら、猫又の覚悟が台無しになった上、蜂の巣になっちまうだろうな。』

 

「ああもう、クソッーー」

 

 

そうニコは苛立ちながら、そして一同は息を殺すしか無かった……猫又が交渉のためにこの場を離れていくまで。

 

 

 

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