アニメドラゴンボールZ85話のカニが最強だったとする。 作:鵺崎ミル
一番苦労したところ、この世界線でどうやって魔人ブウ復活すんの?という致命的問題の解決。
「か・め・は・め・波────────!!!」
「ギャアアアアアアアアアア!!!!?」
セルの悲劇からまた時が経った。
カニフライエフェクトで捻じ曲がったこの世界では、圧倒的なインフレ特急が発生していた。甲殻類風情に宇宙最強の座を奪われている事等、サイヤ人が認められるわけもない。必然的結果であり、当然、彼等の仲間も積極的に鍛え上げるのだから地球は魔窟と化している。
今、悟空によって消し飛ばされた悲劇の人物の名はメタルクウラ・コア(とビッグゲテスター)。
破壊されるたびにアップデートで強化していく仕様に加え、素材がある限り無限湧きするという
既に超サイヤ人2の限界へ届こうとしている2人を前に、メタルクウラ達はアップデートすら追いつかず次々と爆散していく。多勢に無勢というべき数の差を埋めるに足る実力にはビッグゲテスターもドン引きであり、逃走前にせめてピッコロ達を餌にしようと優先標的を変える始末。だが、ピッコロ達もアプデ強化されたメタルクウラ相手に粘れる強さだったせいで結局コアまで到達した悟空により消滅の運命を迎えたのだった。奇跡は2度もなかったようだ。
「どうだ悟空、ナメック星人の皆は守り切ったぞ!」
「おかげでオラもクウラに集中できた、サンキューな」
なお、劇場版では変に扱い悪かったりするクリリンも、真面目に活躍するレベルまで地球戦力は強化されている。
インフレ特急に乗り込めず、カニの子孫を駆除する企業を立ち上げていたクリリン達だが、鍛えることをやめたわけでは無い。寧ろカニビジネスが成功したことで、地球の為にできる役割は自分達もあるという自信がついたのだ。結果的に原作よりも強化速度があがっていた。
当然、こんな異常事態の引き金となったカニは相変わらず何も知らない。子孫が結構な数水揚げされているのだが、関心の欠片もない。平和が一番とばかりに餌を喰らい、水中を泳ぎ、縄張りで作り上げた棲み処にて微睡むスローライフを満喫している。いつものことだ。
あの世一武道会で悟空が生者として特別参加し優勝したり、ベジータが300倍重力下*1で鍛錬を重ねている事を思えば慢心の極みとも言えるかもしれない。だが、カニからすればそもそも最強という座にいること自体には自覚などなく、そのようなものに本能を向ける知性も有していないのだからしょうがない。
そして時はエイジ774、セルの悲劇から7年の歳月が過ぎた頃──。
魔人ブウが復活し、蟹生最大の恐怖が訪れる事となる。
◇
この世界にいる神々とは、役職的な存在意義が強く、明確な序列が存在する。
惑星を監督する神、その数多の惑星が集う銀河を管理監督する界王、その界王たちを束ねる大界王、そしてその大界王よりも上位にいる、宇宙とあの世を管理監督する最も偉い神が界王神である。正しき全世界の王とも呼称される界王神だが、これは単体の宇宙に限っての話で、『各宇宙』となるとまた上が出てくるのだが今は割愛する。
悟空達のいる宇宙における界王神は他の宇宙に君臨する界王神達と比較すれば若く未熟であるが、世の理を愛し、正しい未来へ進むために命を賭して*2働く善き神であった。
「え、えぇ……?」
そんな宇宙で一番偉い存在であるはずの彼は、目の前の光景を前に激しく混乱していた。
彼の心中に占める思いは1つ。
なぜ、こんな辺境の星にいる戦士達が意味不明な程強いのか。
「だだだだだだだ!!」
「むぅ、しつこいなぁ!!」
今、界王神の前には最も恐るべき存在だったはずの魔人ブウ。そしてその絶望的脅威を前に一歩も引かず接近戦を仕掛けるベジータの姿があった。界王神の付人キビトは鼻水すら垂らし絶句、悟空達はじっと警戒しつつ戦いの趨勢を見守っている。
「い、いけるのでは……? ま、魔人ブウを倒せる逸材がここにいたんだ……!!」
混乱しつつも、希望があると自覚した界王神は半開きの口を笑顔に変えつつ、拳を握っていた。悟空達が険しい表情を浮かべているのだから、楽観視は早いと悟ってほしいものである。
事の始まりは、邪悪な魔導師バビディが地球にある魔人ブウの封印玉を暴いて復活させようと暗躍している事実に気が付いた時からだ。界王神は、キビトを伴い地球へ降臨。その際に地球の優れた実力者達を見初め、その高い向上心と精神性を見込んで協力を要請。神と融合した事で、界王神の事を知るピッコロや、界王から情報を与えられた悟空は快諾。
悟飯を復活エネルギーの囮にするなど、いささか強引な手法でバビディの拠点を探すことにはなったが、これ以上ない布陣をもって事態解決へ動いたのだ。
結論から言えば、協力要請は正解であり失敗であった。
行動の結果だけを言えば、だいたいベジータのせいである。わざと洗脳魔術を受け入れるような真似こそしなかったが、世の因果は無情だった。
そもそも破壊神ビルスの存在を知る彼からすれば、ご大層な肩書きを持つくせにそれに頼ろうとすらしない界王神への不信と慢心があった*3。結果、そんな些事に関わる暇があればカニを上回るべくカカロットと殴り合いたい理由で元気よくバビディの宇宙船を破壊。あっという間にダーブラとバビディ以外全員消し飛んでしまった。
『ブゥーーーーーーーーー!!!』
これをきっかけとして魔人ブウは復活してしまう。本来であればこういう経緯での復活はフルパワーに満たない存在が蘇るべきなのだが、魔人ブウはしっかり蘇っていた。
理由はある。
まず初手宇宙船破壊に至った根本的な経緯として、ダーブラによる犠牲者が存在しない事だ。
バビディの計画では魔人ブウは邪の無いエネルギーを多量に注ぐ事で復活する手筈であり、宇宙船内にて邪悪な手駒達が戦士達を甚振ることでエネルギーを吸収する魔術システムを構築していた。すなわち、界王神たちが自身の計画を察知して阻止に動くことを織り込んだ罠を張っていたのである。
その為、ダーブラが宇宙船内へおびき寄せる為の挑発として、何人か殺してしまおうと不意打ちをしかけたのだが、これはあっさり防がれていた。
1番弱いキビトを消し飛ばそうとしたらピッコロに蹴り飛ばされ、ならばとツバによる石化を狙おうとしたが戦闘勘が研ぎ澄まされていたピッコロは回避。おかげで界王神の注意が間に合い情報が共有された*4。
これで警戒心を跳ね上げたダーブラはやむなく、言葉だけの挑発に留めて急ぎ宇宙船内へ戻っていったのである。
犠牲者が出ていない以上、宇宙船内へ乗り込む理由がベジータに生じるはずもなかった。しかもダーブラから感じ取った強さはせいぜい7年前のボージャック程度。暗黒魔界の王と言っても所詮はこの程度かとやる気の欠片も湧きはしない。魔人ブウもたかが知れているに違いないのだから半端に蘇っても構いはしない*5と行動に移るのは必然だった。
そしてこれは界王神側にとっての想定外だが、魔人ブウ復活のエネルギーは実は既にある程度充填されていた。
それはバビディたちが地球へ降り立ち封印の玉を回収した直後の話になる。
場所を移動し、宇宙船を地中へ埋めて、獲物が網にかかるのを待つ。地球人たちが有するエネルギーの乏しさからみて、界王神が手勢を引き連れるまで待った方が良いと結論を出した。潜伏期間は相応になるだろうと、手駒達の食糧確保の為、適正食糧を魔術で捜索・回収していく。やたら大量に湧いていた甲殻類を回収し、海産物が好物の手下が貪った瞬間。
なんかエネルギーが充填され始めた。
どういうことだと困惑し、調べた結果どうやらあの海産物たちは強さの割には芳醇なエネルギーを有していたらしい。こいつらを噛み砕くというダメージがそのままエネルギーに変わっていたということだ。ならばとバビディはこの甲殻類達を盛大に食らうことにした。戦士らがアレルギー発症しかねない勢いでカニパーティが開催され貪られていく。バビディの腕ではびくともしない甲羅でも、ダーブラやヤコンであれば容易に砕くことができる。そして中身は中々の美味であった。
加えて、界王神を釣るために外でエネルギー回収役を担っていた捨て駒2匹がどうやったのか
2割の不足分は謎だが、ベジータの運命的やらかし要素による補填か何かかもしれない。あるいは爆死する寸前まで大量のカニを喰らっていた手下たちの貢献か。
ともあれ魔人ブウは蘇った。ピンク色のぽっちゃり生物という見た目にこそ困惑したがバビディは歓喜し、ダーブラは面構えと雰囲気からブウを侮蔑し、界王神は勝手に絶望していた。これが先程迄の話だ。
「ちぇりゃあああああああ!!」
「む~~~!!」
流石に責任を感じたのか今こうしてベジータは戦っている。
頼っておきながらその強さに唖然としている界王神とキビト。手を出したら怒られるので見守る悟空、悟飯、ピッコロ、クリリンがこの場の全てだ。
ちなみに今、バビディはこの場にはいない。歓喜したのもつかの間、フリーになっている悟空たちが襲いかかってきたからだ。ダーブラが盾となり、初撃は防いだがそれまでだった。
『ぐっ、馬鹿な、300年前は地球にこれほどの存在など……!』
『おメェの実力はだいたいわかった……だが石化のツバといい魔術って奴は油断ならねぇ、一瞬で決めさせてもらう!』
『なめるなぁ!!』
『は──────!!!』
『ぐぼぁ!!?』
舐めプしない悟空*6とかいう、鬼畜難易度を前に暗黒魔界の王はあっさり消滅する。
当然バビディは逃げた。ダーブラが稼いでくれたわずかな時間を用い、「パッパラパー!」と転移魔術を駆使してまで逃げた。バビディの気は覚えた以上、瞬間移動で追いつけると判断した悟空は警戒すべきは魔人ブウだと優先度を変更、おかげで彼の命はギリギリ繋がっていた。界王神が「魔人ブウを再封印できるのはバビディだけだ」と殺すのを嫌がったのもあるが。
魔人ブウの肉体は柔軟性に優れ、再生力も極めて高い。そこから生じる素早く、重く、間合いが変化する攻撃は極めて厄介だ。しかしベジータはそれに適応、伸びる腕を弾き、懐に潜り込んで強烈な腹パン。ぶにょんと拳がのめり込んだところで気弾を連続発射する。
「む!?」
「だあッッ!!」
気弾を撃ち込みながら殴り抜くという、一歩間違えれば自らの拳が焼かれかねない高等技術をもって、魔人ブウの腹に風穴を開ける。再生に意識を向けたことにより穴は一瞬で塞がるが、衝撃が除かれたわけではない。上空へ吹き飛ぶ魔人ブウへ嵐を思わせる拳の連撃を撃ち込み続ける。
「だああああああ!!!」
「ぐっ……むぅ……!!」
魔人ブウの頭が吹き飛び、腕が千切れ、腹部は塞がるそばから穴が空く。
無論すべて再生してしまうのだが、ベジータは気にしない。気にせず攻撃を休めないのでブウからしても厄介だった。一瞬で再生するにしても絶え間ない攻撃は鬱陶しい。お腹に大穴が空けばさすがにちょっとは痛いしイライラしてくる。
ブウは全身から蒸気を吹き出し、さらに気を増大させる。一度でも怯めば、全方位にエネルギー攻撃をして何もかも吹き飛ばすつもりだった。
「お前なんか……きゅえ!?」
「やらせん!!!」
ベジータからすれば、そんな動作は隙でしかない。再生も、チャージも、今のベジータにとっては攻撃を打ち込むチャンスだ。彼の仮想敵はそんな能力無くとも強い。サイヤ人のカカロット。そして只管に頑強であり、追い詰めても脱皮してパワーアップするふざけた甲殻類だ。
確かにトリッキーで攻撃力も無視できない。オマケに再生は気が全く減らない出鱈目な性能を有する厄介な敵だが、勝てない相手ではないとベジータは判断していた。いまのままであれば。
(大きく怯ませたところを完全に消滅させてしまえば仕留められるとは思うが……それはこのデブがこのままでいる前提になるな、くそったれ……!)
研ぎ澄まされたセンスが、サイヤ人の本能が、理解している。魔人ブウとはこの程度ではない。何か、もっと恐ろしい力を宿している。
どれだけ鍛えても勝てる気がしないカニのせいだ。今日もカニフライエフェクトは無駄に発揮されている。
◇
「どうなってんだよ、おかしいでしょこんなの! ぼ、ぼくのダーブラがあんな簡単にやられるどころか、復活した魔人ブウでも勝てないなんて!」
魔導師バビディは必死に逃げていた。転移した後も安心できずにあてもなく飛び回っている。彼の魔術を用いた瞳には、魔人ブウが追い込まれているようにしか見えなかった。
「世界の王になるべきなのに! なにか、なにか手は……!?」
逃げながら打開策を、手駒を欲する。邪心を見抜く瞳では、奴らを洗脳できそうもない。一番可能性がある男は今まさに魔人ブウと激闘を繰り広げていて期待できない。歯噛みし、それでも可能性があるなら実行するべきかと悩んだ時。
「ん、あいつら……なにか恐れてるのか? 魔人ブウ……違う、なんだ……?」
そして気付く。彼らの心の内にいる、真に警戒されし者がいることを。彼等の中から洗脳相手を探していたからこそ気付けた、奇跡のような事実だった。界王神に付き従っているあいつらの敵ならば邪心を有しているに違いない。
「ち、地球にいるのかな? あるいは魔術で引っ張ってこれるところにいるなら……!!」
全神経を、全感覚を、全魔力を持ってバビディは彼等の敵を探知する。地球上にいるならば、見つかる筈だ。
見つけた。
「は? なんでこんなのがあいつらの敵なんだ?」
カニだった。
海岸にて棘のついた巻貝を器用に割って中身を鋏で啄んでいる。
意味が分からなかったし、なにより脳が理解を拒む。
あの馬鹿げた強さを持つ彼等は、あんなのを警戒、ひょっとしたら恐怖を抱いているというのだろうか。
「け、けどやってみるしかないよね……!」
確かに、魔人ブウ復活のエネルギーに役立っていたのもコレに似た甲殻類たちだった。ひょっとしてアレの親玉なのかもしれない。
バビディは賭けに出た。こうなれば寧ろ好都合だろう。下等生物ならば、邪心関係なく洗脳魔術を弾かれる心配もないのだから。
「はあああああ……!!」
バビディの洗脳魔術は対象を認識していれば距離など関係ない。その気になれば地球全ての知性体に念話を飛ばすことも容易いし、受信した相手を遠隔で殺す事すら可能な規格外の魔導師である。
そんな魔導師の放つ魔術にカニが囚われるのは必然だ。身体がビクリと痙攣し、鋏から貝を取りこぼす。まるで怯えたように跳ね回る。だが抵抗は無意味だ、憐れなダンスもすぐに収まっていく。
甲羅に模様が浮かぶ。支配を受けた証であるMの文字だ。
「やった、やったぞ!!」
両拳を強く握り歓喜に震えるバビディ。
転移魔術を駆使して手元までカニを持ってくる。支配して気づいた、なるほどとんでもないエネルギーを有している事が伝わってくる。ひょっとしたら魔人ブウよりすごい存在を手に入れたのかもしれない。
「いいぞいいぞ! うひひひひ……すぐに奴らのところへ送ってやるんだ! 奴らに絶望を味わわせてやる!! パッパラパー!!」
カニが紅く、より紅く変色し始めている事など意にも介さず、よせばいいのにバビディは再び戦場に戻る。
◇
「お前らーーーー!!」
「「「「「!?」」」」」
戦場となった荒野が荒れ果てて行く中、バビディがのこのこ現れ叫んだ。何かを抱えて勝ち誇った様子の魔導師に、皆理解が追いつかない。ベジータもブウも困惑が先に立ち自然と手が止まっていた。
「へっへっへ……ぼくがわざわざ戻ってきた理由がわかるかい? わかるかい!? 勝ちを確信したからだよ! 魔人ブウすら追い詰めたのは認めてやるさ、でもぼくが一枚上手だったよ……!」
「あいつなにいってんだ?」
「俺が知るか。あの間抜けは貴様の主だろう」
「あるじ? オレをふういんできるだけでイヤなやつだぞ」
戦いの情勢を全く理解していないバビディに、魔人ブウも思わず素でベジータに問い、ベジータも呆れて返してしまう。素直な返答に、ブウも毒気を抜かれたように本音をぶちまけた。
「ッ!?」
だがそんなブウの言葉を咀嚼する前に、ベジータの表情が凍りつく。バビディの両手の上にいる存在に気がついたからだ。観客席にいるのが板についてきた悟空達も遅れて気付く。そして、あの魔導師が何をもって勝利を誤認してきたのかを理解した。
「お、おメェ……そのカニは!!」
「へへーん、気がついたか!! お前らが1番恐れているのはコイツだろう!! 支配してやったのさバーカ!!」
手を掲げ、カニを見せびらかすバビディと慄く悟空達。何も知らない界王神からすればシュールを通り越して出来の悪いコメディショーを見せられている気分だった。あれだけ頼もしく感じていた戦士達はなんでカニに怯えているのだろう。
「お前達の反応で確信したよ、こいつは下等生物だけどとんでもない強さを秘めている……お前達よりも! さぁ、命令だよ! 今すぐこい……?」
はしゃぐバビディの手に微かな衝撃が走る。
無意識に空を見上げれば、カニが宙を舞っていた。掲げた手にはまだ重みがある。降ろしてみれば、手に納まっているのは抜け殻だった。支配されたMの文字輝く立派な甲殻だった。
「え?」
急に脱皮した下等生物を、抜け殻と交互に見つめる。鋏が紅く、紅く滾るように光り輝いている。
そして気づく。
「は?」
バビディが最期にみたものは、生物的激昂をもって放たれた気功波だった。
カニには嫌いなものがある。
縄張りを荒らすもの、餌を奪うもの、そして寄生するものだ。
カニの最強は後天的なものであり、カニは天敵を自覚している。特にカニを恐怖せしめるものは寄生生物だ。
呑気に食事を楽しんでいた時、不気味な何かが、神経回路に侵入してきたことを認識した。抵抗すらできないことを理解した時、カニの本能は恐怖した。
『
だが、カニはそれを可能とする。いや、させられる。この世界において『最強』を体現するとはそういうことなのだから。
バビディがあれこれ喋っている間にカニは準備を終えていた。
全身の気を滾らせ、拒絶するように、弾き出すように脱皮する。支配後の命令が入っていなかった事が幸いした。ニュートラルな状態故に、そして高い忠誠心を有する程の知性を持っていなかった故にカニは命を守る行動に移せたのだ。
複眼が全てを捉える。
犯人は呆けた顔をした緑色だ。きっと寄生の成体とか母体なのだと認識した。
許せるはずもなかった。
バビディはあっさりと頭部を消し飛ばされる。
倒れ伏す肉体が痙攣している様を、まだ生きていると解釈し更なる気功波でもって全てを消し去る。地表がそこそこ抉れたが今のカニにはどうでもいいことである。
だが、元凶を殺したはずなのに、全身はいまだに不愉快な何かに支配された感覚だ。不充分だったのだと、カニは更なる脱皮を決意する。元来不可能な行為を可能とする力こそ『最強』所以だが、必死に実行する意思はカニが有する強い生存本能だ。
だから、意思に応えた肉体はそれを成功させる。
外殻を脱ぎ捨てた先程のそれとは違い、全身の何もかもを一新するようにカニは全身を輝かせる。
銀色の気が吹き出したかと思えば、まだ柔らかい甲羅の内へと吸い込まれるように消えていく。
「にっ、逃げろーーーーっ!!!!」
「「「「「!!?」」」」」
そして、何もかも消し去るようなエネルギーがカニを起点に爆発した。
2ヶ月経つの早いなぁ……ブウ復活させて、カニを現地へ運ぶだけでこんな苦戦するとは思いませんでした。次回に続きます。どうにか悪ブウか純粋ブウ引き摺り出せないかな……
・メタルクウラ
今回の犠牲者。ごめん。悟空を超サイヤ人にしたから仕事完了してるんだけど、存在してる以上はメタルクウラも処理する必要でてきたので仕方ない事だった。彼本来のポテンシャルは是非劇場版を観てほしい。絶望演出として神がかっていると今でも思います。
・ダーブラ
今回の犠牲者その2。ごめん。一応鈍ってると言っても悟飯相手に良い勝負してるのだから真面目モードとはいえ悟空に瞬殺されるのかという疑問はある。ただカニ時空の悟空は原作よりも地力が更に違います。超えるべき壁があるのとないのとでは伸びが違うのです(これはマジの話で、悟空達の強さは上を認識すると修行効率と実力が滅茶苦茶跳ね上がる)。
・バビディ
今回の犠牲者その3。こいつには謝らず、感謝しよう。よくやった半天狗!
増えすぎたカニの子孫を乱獲して地球環境に貢献した上、カニさんを戦闘現場へデリバリーしたのだから今話のMVPである。だからサブタイにしました。
・魔人ブウ
カニ時空だと復活困難だったが、バビディがカニの子孫でカニパ開いたことで復活目処が立った。ベジータは目覚めた直後にやり合う相手としては面倒で少しイラついてたが、それはそれとして戦いは楽しんでいた。
原作ドラゴンボールのラスボス。今の無邪気ブウは違うけど。イカれた再生力を有する肉体に、多彩な技や、相手の技をすぐ見切って真似する天性のセンスを有する。更に吸収能力で強化もできるまさに宇宙の災厄に相応しい魔人。再生に関してはセルと違って消耗すらしないチートっぷり。つまりこいつ殺すには完全消滅級の一撃必殺技しかない。
メタ的にはギャグ補正を有し、それを再生に振っているバトルキャラと言える。ブウ同士だと消耗するのはギャグキャラあるいはカートゥーンキャラ同士の闘いだからと解釈できるだろう。コメディ属性有した超ゴテンクス君も良い線いったし。つまりハジケリストなら勝負できる可能性がある。カニさんは不条理の権化だが果たして。
・ベジータ
今回は良い活躍!今のブウ相手に上手く戦えている。原作の洗脳王子よりは強いが、悪ブウ相手だと勝てない位置の実力。原作でも純粋ブウ相手に死にかけながらも持ち堪えていた点からみても、やはり不足していたのは目標地点か。
・悟空
この世界では観客ポジションにいがちというか、ドジな一面が全然出せてない。なんかずっと真面目な一面でいる。ちなみに超サイヤ人3にはとっくに変身可能で慣れた状態。ベジータに言い出せてないのでバレたら滅茶苦茶怒られる。
ベジータと同じく、今の魔人ブウなら倒せると考えていたが、まだ上があると睨んで警戒度をあげていた。それはそれとしてベジータが負けたら次はオラがいくとワクワクもしていたが、カニが来た。
・カニさん
7年経って片手では収まらないサイズにはなっている。脱皮するたびに肉体強度もあがっているので、修行要らず。支配魔術を寄生されたと認識して発狂した。カニビルはまだ許せたかもしれないがフクロムシは許さないカニさん。図らずも子孫達の仇を討っている。
余談だが、この7年でサタンが水辺で黄昏れたり遊んだりトレーニングしている時に運良く会えるたび餌付けされている。サタンもサタンで奇縁を無碍にしないタイプなので、水辺に行く時は干し肉やらお菓子やら持って行くようになった。カニの寿命や、世界各地のビーチや川沿いやら湖畔で見かける異常には深く考えず流している。