投稿のペースを何とか週一で保っていますが、向こうの連載と放置している短編にもそろそろ手を着けないとなぁ…‥と思う今日この頃です。
それでは、どうぞ!
「んっと……‥虎杖悠仁、です。」
先ほどの経験もあり身構えながら振り向いたが、そこにいたのは俺と同じくらいの少女で拍子抜けしてしまい、正直に名乗ってしまう。
「いたどり…‥ゆうじ…‥」
「はい…‥」
「…‥きいたことない」
「そりゃ、初対面だし……」
「あのひとたちもはなしてなかった、あたらしいひと?」
「んまぁ…‥新しくはあるかなぁ…‥」
(ただの侵入者だけど…‥)
「ふーん…‥ゆうじ、あれはなんていうの?」
「?…‥カレンダー?」
「!かれんだーっていうんだ!かれんだーって、どいういものなの?」
なにかを試すように聞かれた質問に少しの疑問を感じながら答えると、先ほどとはうって変わり、興味を全面に出しながら更なる疑問をぶつけてきた。
「日付とか、年とかが書いてあるもの。つまり、今が何月何日何曜日か分かる物…‥かな?」
その疑問に対し自分の持てる限りの語彙力で説明するが、少女は少し難しい顔をしていて、あまり伝わっていなさそうであった。
「…‥ちょっとむずかしい…‥でも、わたしがきいてちゃんとこたえてくれたの、ゆうじがはじめて。」
「…‥今までは、教えてくれなかったの?」
「うん。わたしは『ろいやるぶらっど』でひめさまだから、なにもしるひつようはないって。うまれてから、ずっとここにいるんだ。」
「ロイヤルブラッド?…‥高貴な血?それと姫様?…‥後、ずっとここにいる?」
「ねぇねぇゆうじ!あれはなんていうの?」
気になる単語が飛び出したが少女の勢いに押されてしまい、考え込む前に聞かれたものに対する説明を始める。
「あぁ、あれはだな…‥」
その後も聞かれるがまま、色々な物の説明をした。
「はぁ~…‥ずっとしりたかったこと、いっぱいしれてうれしいなぁ…‥」
「…‥良かったな。」
「うん!」
(…‥何故だ?なんでこの子が、ずっとここに閉じ籠られているんだ?『ロイヤルブラッド』って…‥なんなんだ?)
少女の質問攻めが終わり落ち着いたため、ここに迷い込んでからの疑問について思案する。
そもそもとして、どのような理由があってこの少女がこの場所に半ば軟禁のような形で閉じ込められているのか?
『ロイヤルブラッド』とは、なんなんのか?
軟禁の理由に『ロイヤルブラッド』という物が関係している。という推測は出来るが、それ以上が思いつかない。
…‥だが、どんな理由があれこんな薄暗い牢屋のような場所に軟禁している時点で、俺はここの奴らが気に入らない。
(!?足音!?)
様々な思案を脳内に巡らせている時、突如として二人分の足音が聞こえてきた。
(やっべ!ここで見つかったらなにされるか分からん!隠れないと…‥)
「?どうしたの?」
「なあ、ここに隠れられる場所ってあるか?」
「…‥かくれるって、なに?」
「…‥俺が見つからない場所って意味だ。」
「それなら…‥あそこのしたとか?」
少女が指で指し示したのは、煌びやかな装飾が施されている高級そうなベッドの下だった。
(確かにあそこしかないか…‥てか、この部屋椅子とベッドしか家具がないってどういうことだ?…‥って、今はそんなこと考えてる場合じゃない。速く隠れないと!)
「俺のこと、なにも言わないでくれよ!」
少女に対してそう言い残し、一目散にベッドの下へと走り出した。
「…‥良かった、姫様にはなにもないようだ。」
「これで一安心ですね…‥」
戦場から確認のため少しの間離脱し、姫様の安否を確認する。いつも通り椅子に座っている様子を見れたため、ホっと胸を撫で下ろす。
「敵軍の中に先日の忌々しい奴がいなかったから、てっきり姫様を奪いに侵入されているのでは?と思っていたが、余計な心配だったようだな…‥」
「…‥ねぇ、なにかあったの?」
「姫様はなにも気にしなくていいですからね。…‥ロイヤルブラッドである貴女は、ここに存在しているだけでいいのです。」
「…‥そっか。」
(しかしどうしたものか…‥奴がいないとて戦況はこちらの不利に変わりはないないし、このままではジリジリと攻められ、気づいた時には…‥なんてことになってしまう)
「…‥やはり、あの条件を飲むべきか?」
「っ!本気で言っているんですか!?」
「…‥口に出てしまっていたか。…‥しかし、もうこれ以上我々に出来ることは…‥」
「足掻きましょうよ!多少の戦力差がなんですか!奴らの好き勝手にされて、今までのアリウスを捨てるんですか!?」
「…‥お前はまだ若いからそう言えるんだ!お前には分からないのか!?あいつの底知れなさが!」
「だからって!姫様を差し出すつもりですか!?」
「私だってこのような判断はしたくない!だが…‥もうこれ以上、死者が増えるのは…‥」
「っ!」
「…‥本来であれば、ロイヤルブラッドである姫様に適切な教育を施し、正当な後継者として育てなくてはならないところを、存在を悟られぬよう必死に隠してきたというのに…‥何故存在を認知されているのだ…‥」
その声色からは、彼女の行き場のない後悔が感じられた。
「…‥」
その言葉に対しては、彼女の部下は今までのような勢いで反論することは出来ず、黙ってしまう。
「分かってくれ…‥これは、お前達を守るためなんだ。」
「ですがそれは!姫様がどうなってもいいと言っているのと同じことですよ!?奴らに姫様を渡したら、なにをされるか!」
「…‥分からない。だが、この争いを私達の代で終わらせられるなら、私はやる価値があると思っている。」
「…‥今、それを伝えに行くつもりですか?奴に。」
「いや、これはあくまでも最終手段だ。本当にどうしようもない状況になるまでは、この手は使わない、というより使えない。ただ…‥選択肢の一つにいれるというだけだ。」
「…‥すみません、熱くなりすぎました。」
「いいさ…‥お前はそのぐらい、アリウスの事を思っているということだからな。…‥戻ろう、戦力はいくらあっても足りない。」
「はい。」
(ふぅ…‥なんとか間に合った…‥)
「ー」
(…‥なにか言い合ってるみたいだけど、なにも聞こえん…‥)
「ーか!」
「ー」
「ーか!?」
(うーん…‥そうだ!耳に呪力を集中させれば…‥)
「ーなさが!」
(おっ、聞こえてきた…‥)
「だからって!姫様を差し出すつもりですか!?」
(…‥はぁ?)
「ー」
「ー」
(…‥しまった、動揺して呪力を解いてしまった。戻さないと…‥)
「ーためなんだ…‥」
「ですがそれは!姫様がどうなってもいいと言っているのと同じことですよ!?奴らに姫様を渡したら、なにをされるか!」
「…‥分からない。だが、この争いを私達の代で終わらせられるなら、私はやる価値があると思っている。」
(…‥駄目だ、これ以上呪力を練っていられない。)
その後もなにかを言い合っていたが、少しするとどこかへと行ってしまった。
(途中途中よく聞こえなかったけど…‥)
「…‥?」
(この子を…‥生け贄にするつもりなのか?)
「…‥どうしたの?すごくこわいかおをしてるけど…‥」
「…‥いや、なんでもない。」
(…‥利用するつもりなのか?自分達の事情に、この子を巻き込むつもりなのか?…‥っ!いや…‥)
考えが段々と暗い方向へといってしまうのを察知し、無理やり今の思考を絶ちきり、先ほどの会話を鮮明に思い返す。
(片方の人は反対していたし、その発言をしていた人も声色が少し震えていた…‥きっと、あの人達も本意ではないんだ。…‥だけど)
(このままだったらこの子は…‥自由も与えずこんな場所に閉じ込め、『なにも知る必要はない』と知識すら教えなかったというのに、今度は生け贄?…‥ふざけるなよ。)
「…‥なぁ、自分の名前って分かるか?」
「…‥ちょっとまって…‥たしかあったような…‥あっ!おもいだした!」
「あつこ!はかりあつこっていうんだった!」
「そっか、アツコか。…‥なぁ、アツコ。」
「ん?」
「ここから…‥出たいか?」
「!うん!そとがどうなってるのかすっごくきになるんだ!…‥ださせてくれるの?」
「…‥」
(…‥本当にいいのか?この子はなにも知らない、分からないんだ。自分の選択がその後にどう影響するかなんて分かるわけがない…‥)
ここの暮らしは、確かに不自由なことが多いだろう。だが、どれだけ不自由であったとしても、命の危険まではなかったはずだ。
…‥いいのだろうか?自分の勝手な判断のみで、この子を…‥アツコを、今までとはまったく違う世界に連れ出しても…‥
(…‥必要なのは覚悟のみ、か。)
「…‥アツコ、行こう。」
「!うん!」
「そんじゃちょっと失礼して…‥」
「…‥だっこ?」
「あぁ。俺がきた道をそのまま辿るから、しっかり付いて来いよ。」
「わかった!」
「わぁ~…‥…‥これが、そとなんだね…‥」
俺は決めた。自分の選択には、自分で責任を取ることを。
アツコを…‥皆を、護りきることを。
…‥家族の笑顔を、絶やさないことを。
「…‥どうだ?…‥思ってたのとは、違ったか?」
「…‥あんまり、きれいじゃないなとはおもったけど…‥ここは、くるしくない!」
「…‥‥そっか。…‥じゃあ、行こう。俺の家族にも、アツコの事を紹介しないとな。」
「どんなひとなの?」
「…‥他者を思いやる事が出来て、この環境でも優しさの心を忘れない人達。…‥そうだな、アツコに分かるように言うならー」
「すっげぇ良い人達…‥かな?」
その時の俺の顔はきっと、笑顔だったと思う。
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