虎杖悠仁に成り代わった男の青春物語   作:ブルアカ大好き

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それでは、どうぞ!


十二話 最後の日常

錠前サオリと強さ

 

 

最近、サオリが一人でどこかに行くことが増えた。

 

少し危険な気もするけど、たまには一人の時間も欲しいだろうと思い特に触れていなかったが、先日、見過ごせない事態が発生した。

 

サオリの手に少し傷がついていたのだ。

 

バレないよう服で隠していたが、少しの隙間から見えてしまった。流石に見過ごせなかったが、本人に聞くのもどうかと思ったので…‥

 

(絶賛尾行中…‥ってとこかな。)

 

尾行することにした。

 

(うーん、今はただ歩いているだけで特に怪しいところはないけど…‥あっ、止まった。)

 

気づかれぬよう細心の注意を払いながらサオリの後を尾けていると、多少の木々が生えている場所で足を止めた。

 

「…‥やぁっ!」

 

(!?木を素手で殴ってる!?…‥ストレス溜まってたのか?…‥嫌、流石に違うか。雰囲気からもそんな感じはしないし…‥)

 

「とりあえず、止めさせなきゃな。」

 

物陰から体を出し、サオリの背後に近づく。

 

「!誰!?」

 

今まで聞いたことがない、警戒が表に出ている声を出しながらこちらに顔を向けると、俺に気づいたのか少し気まずそうに目を反らした。

 

「俺だよ…‥さて、何をしていたのか説明してくれるか?」

 

「…‥バレちゃったか。流石だね、ユウジ。」

 

「それほどでも。…‥それで、なんで木を素手で殴ったりなんかしてたんだ?」

 

「…‥強く、なりたくて。」

 

「…‥理由は?」

 

「皆を守るため。勿論、ユウジのことも。」

 

サオリは確固たる決意を感じられる目をして、そう言った。

 

「前にさ、いきなり襲われたことがあったでしょ?まだ私とミサキとユウジしかいなかったころ。」

 

「あぁ、あの時のことはよく覚えてるさ。」

 

「その時に傷ついたユウジを見て思ったの。

『私が弱いからユウジが傷つく。それなら、私が強くなって守ればいい』…‥って。」

 

「理由は分かったけど…‥それでなんで木を?」

 

「これを壊せれば強くなれると思って…‥」

 

「…‥手も傷つくし、なによりその年でやることじゃない。…‥よし!じゃあ俺と修行しようか。」

 

「…‥ユウジと?」

 

「おう。自惚れかもしれないけど、この年にしちゃあ強い自信はあるぜ?」

 

(…‥ユウジが強いのなんて、とっくのとうに知ってるよ。)

 

「…‥分かった。これからよろしくお願いします、師匠。」

 

「うぇ!?し、師匠って…‥別にそんな畏まらんくていいよ。むしろ楽な気持ちでやった方が伸びも早いと思うし。」

 

「じゃあいつも通りで…‥まずは何からすればいいの?」

 

「そうだなぁ…‥今のサオリの実力を知りたいから、俺と組手しようか。」

 

「組手?」

 

「戦うってこと。…‥ほら、かかってきな。」

 

先ほどまでの柔らかな雰囲気から一変し、対面している相手にプレッシャーを感じさせるような鋭い眼光になる。

 

「!?嫌だ!私はユウジとは戦わない!守りたい人をわざわざ傷つけることなんて、私には出来ない!」

 

「大丈夫、戦うって言ってもこれは訓練みたいなものだから。…‥それとも、サオリは俺よりも強いって?」

 

(…‥厳しいことを言ってると思うし、申し訳ない気持ちでいっぱいだけど…‥サオリが強くなろうとしてくれることは嬉しい。…‥もし、俺が居なかったらあの子達を任せられるのは…‥サオリ、君しかいない。)

 

「!…‥ごめん、私はユウジを信じきれてなかったみたい。……いくよ!」

 

「こい!」

 

お互いに構え、勝負が始まる。互いに見つめ合っている中、先に動いたのはサオリだった。

 

(速い!)

 

ユウジには元々先に仕掛ける気はなく、今回はサオリの実力を見極めるのに注力する気であった。

 

しかし自身の想定とは異なり、彼女にはかなりのスピードがあった。

 

そのことに対し彼は認識を改め、スイッチを入れ直す。『子供の相手をするのではなく、敵の相手をする』という感覚に、自身を変えていく。

 

「っ!」

 

(防がれた!)

 

「…‥どうした!それが全力か!?」

 

「…‥まだまだぁ!」

 

圧倒的とは言えずとも、子供の喧嘩とはとても言えぬレベルの拳の応酬。サオリが攻撃し、ユウジがそれを防ぐ。そんなやり取りを繰り返しながら、互いに少しずつヒートアップしていく。

 

(…‥ここまでやれるとは思ってなかった!もう呪力まで使ってるのに、段々手が痺れてくる…‥なんだ、もう十分強いじゃん。)

 

「はぁ…‥はぁ…‥どう?私、やっぱり弱い?」

 

サオリは息を整えながら、俺にそう尋ねる。俺は少し考えた後、率直に思ったことを口に出す。

 

「いや、弱いなんてことはない。むしろ強過ぎて驚いたよ。ただこうなると…‥正直俺が教えられること、ほとんどないな。」

 

「…‥えぇー」

 

俺の言葉にショックを受けたのか、サオリはそう言って座り込んでしまう。

 

「…‥そんなに凹まないでくれ。サオリはもう、十分強いってことなんだから。」

 

「…‥じゃあ!私はユウジより強くなる!ユウジより強くなったら、ユウジは私をもっと頼ってくれるようになるでしょ?」

 

「…‥別に、今でも頼ってるだろ?」

 

「いざって時はあんまり頼ってくれないもん!私はそういう時に頼られたいの!」

 

「…‥なら、頑張らないとな?俺はそんなに甘くないぞ。…‥あぁ後、これから修行する時は必ず俺を連れて行ってくれよ?心配するからな。」

 

「…‥ごめん。」

 

「いいよ…‥よし、じゃあ帰ろう。これ以上遅くなると、今度は皆を心配させちゃうからな。」

 

「うん!」

 

 

 

 

 

 

 

戒野ミサキと少しの憂鬱

 

 

とある日の昼下がり。ユウジとミサキ以外は外に出ていて、今は二人きりである。

 

ユウジが「たまには少しゆっくりしてようかな」と思い少しの眠気に誘われていると、ミサキが何も言わずそっと近づいてきた。

 

「…‥」

 

「…‥」

 

(…‥なんだ?急に近づいてきたと思ったら、なにも言わずによりかかってくる…‥)

 

「…‥なんかあったか?」

 

「…‥うるさい。」

 

「えぇ…‥」

 

(どうしよ…‥別に困ってるわけじゃないけど…‥)

 

なにかあったのかと事情を聞こうとしても、半ば投げやり気味に答えられる。どうしようかと頭を悩ませていると、ミサキがゆっくりと口を開き始めた。

 

「…‥最近、変な夢を見るの。」

 

「!」

 

「その夢だと、皆が一人ずつ消えていくんだよね。…‥私だけを残して。」

 

それを語るミサキの姿はとても5歳とは思えず、まるで今にも消えてしまいそうな儚さを感じさせた。

 

「…‥俺達はミサキを置いていったりしない。」

 

断言する。この子を安心させるために、この子に不安を感じさせないために。

 

「分かってる。貴方はそんな人じゃないし、皆も優しいから…‥でも、不安なの。」

 

「だから…‥今だけは、側に居て?」

 

思い返してみると、ミサキがここまで俺に弱さを見せたのは初めてだ。

 

(俺も、信頼されてきたってことでいいのかな?)

 

「…‥勿論。辛い時はいつでも、頼ってくれていいからな。」

 

「…‥ありがとう。」

 

 

 

 

 

 

槌永ヒヨリと初めての料理

 

 

(私は最近、思っていることがあります。それは…‥)

 

「皆、どんどん食べていいからな!」

 

(ユウジさんは、食べなさすぎなんじゃないかってことです。)

 

普段の光景を思いだしながら、考える。

 

(ユウジさんは優しい人です。食事の時はいつも暖かい料理を作ってくれますし、今までのお腹が空いていた生活とは違って、お腹いっぱい食べることが出来るようにもなりました。でも…‥)

 

「?どうした?そんなに俺を見たりして…‥」

 

「い、いえ…‥なんでもありません。」

 

「…‥そっか。」

 

(それでユウジさんがお腹いっぱい食べれないのは、ダメなことだと思います。)

 

(だから私、決めました!今までのお礼を込めて、料理を作ろうって!)

 

「やりますよ…‥」

 

「…‥なんだか分からんけど、頑張れよ。」

 

「!は、はい!」

 

数日後

 

(よ、よし。ある程度の材料は揃いました…‥まずは火ですね!)

 

「あ、あれ?確かユウジさんはこうやって火を着けてたのに…‥やり方が悪いんですかねぇ?」

 

「はぁ…‥はぁ…‥な、なんとか着きました。次は…‥水を入れて、泡が出るまで待つ…‥でしたよね?」

 

「…‥用意した鍋から泡が溢れそうです。…‥もうそろそろ、具材を入れましょう!」

 

「うわーん!どれくらい火を通せばいいのか分かりません!」

 

「…‥これくらいで、いいんですかね?…‥よし!ユウジさんに持って行きましょう!」

 

 

「…‥あ、ヒヨリ…‥何持ってるの?」

 

「ミサキさん…‥実はいつものお礼にと思って、ユウジさんに料理を作ってみまして…‥今から持って行くところなんです!」

 

「…‥ふーん、いいじゃん。ユウジが食べたら、その後皆でも食べようよ。」

 

「は、はい!」

 

 

 

「ユウジさん!」

 

「お、ヒヨリ…‥って!何持ってんだ!?」

 

「料理です!…‥いつも暖かい料理を作ってくれるお礼がしたいと思ったので、自分で作ってみました!…‥食べて、くれますか?」

 

「!…‥うっ…‥」

 

「!?ゆ、ユウジさん!?な、何で泣いてるんですか!?…‥やっぱり、迷惑でしたか?」

 

「いや違う…‥嬉しくて…‥ありがとう、いただくよ。」

 

その料理は、とても良い出来とは言えぬ物であった。出汁もとっていないし、具材の火の通り具合もバラバラ。料理を少しでも嗜んだことのあるものは、皆顔をしかめるだろう。

 

だが、その料理には、他の料理にはない。彼女にしか込められない

 

特別な想いが、籠っていた。

 

(美味しい…‥美味しいなぁ…‥今俺、酷い顔してんだろうなぁ…‥)

 

「…‥ヒヨリ。」

 

「は、はい!」

 

「ありがとう。俺、すっごく嬉しい!」

 

「!…‥よ、良かったですぅ…‥」

 

この後、皆でヒヨリが作った料理を食べた。

 

サオリもミサキもアツコも皆喜んでいて、ヒヨリもとても嬉しそうだった。

 

…‥また、作って欲しいなぁ。

 

 

 

 

 

 

秤アツコと秘密の花園

 

 

「…‥きれい。」

 

 

 

 

「ユウジ、ユウジ。」

 

「お、どうした?」

 

「これみて」

 

「ん?…‥!久しぶりに見たな。」

 

「なんなのか、わかるの?」

 

「あぁ、これは花っていうんだ。」

 

「はな?」

 

「おう。これはその中の…‥ユリ、なのかな?」

 

「…‥ゆり。」

 

「これ、どこにあったんだ?」

 

「…‥いうより、みてもらったほうがいいとおもう。ついてきて。」

 

「分かった。」

 

移動中

 

「ここ」

 

アツコに連れられて来た場所には、数本の白いユリが生えていた。

 

地面は荒れきっていて、周りには植物など一個もない中、そのユリだけは力強く根を張っていた。

 

「…‥すげぇ」

 

その姿に、俺は思わず感嘆の声が漏れる。

 

(…‥ん?あっちの方…‥花の匂い?)

 

「ユウジ、どうしたの?」

 

花に見惚れていると、鼻の中に少しばかりの花の匂いが入ってきた。

 

「…‥アツコ、ちょっと着いてきてくれるか?」

 

「分かった。」

 

 

 

 

 

「…‥もしかしてと思ったけど、本当にあるとは…‥」

 

「わぁ…‥」

 

今二人の目の前に広がっているのは、地面が見えない程にびっしりと辺り一面に生えている花畑である。

 

ユウジは前世で一度だけ見た光景を思い返し、感傷に浸る。それに対しアツコは、初めて見る衝撃的な景色に目を輝かせている。

 

「よし。アツコ、出来たぞ。」

 

「…‥なに?これ」

 

「花冠って言ってな、お花で作った王冠だ。ほれ」

 

「…‥にあってる?」

 

「あぁ…‥まるで、物語に出てくるお姫様みたいだな。」

 

「…‥ユウジには、ひめさまってよんでほしくない。アツコっていって?」

 

「!そうだな…‥良く似合ってるよ、アツコ。」

 

「…‥えへへ。」

 

 

 

 

 

 

 

 

虎杖悠仁と呪術

 

 

『闇より()でて闇より黒く、その穢れを禊ぎ祓え。』

 

そう呟くと、虎杖悠仁の頭上を中心として小さな黒い膜が降りてきた。

 

「よし…‥とりあえず降ろせたな。」

 

(後はこれに条件を付け足せるかどうかだけど…‥やってみるしかないな。)

 

「解除して、もう一回…‥『闇より出でて闇より黒く、その穢れを禊ぎ祓え。』」

 

(今度は中にあるものを隠しきるイメージで…‥帳という名のテントを張るように…‥)

 

先ほどと同じように、虎杖悠仁の頭上から黒い膜が降りてくる。

 

帳を降ろせたことが確認出来たため、帳の外へと移動し、中を視認できるかを試してみる。

 

(んーーー…‥見えるなぁ。…‥あれ?考えてみたら、術者本人も確認出来ないって致命的じゃね?ちょっと誰か呼んでくるか)

 

 

 

 

 

 

「呼ばれて来たけど…‥何をすればいいの?」

 

「サオリには、俺が今からこれをあっちに投げるから、それが見えるかどうかを確認して欲しいんだ。」

 

「?…‥わ、分かった?」

 

「…‥ごめん、俺の説明の仕方が下手だな。まぁサオリなら、見れば分かってくれると思う。…‥いくぞ。」

 

ユウジが手に持っている石をある場所に投げると、その石がスッと消えた。

 

「!?消えた!?」

 

「消えた?消えたか?」

 

「う、うん…‥ユウジ、どういうこと?」

 

「…‥前に呪術については説明したよな?それの一部だと思ってくれ。」

 

「へぇー…‥こんなことまで出来るなんて、やっぱり便利だね、呪術って。」

 

「あぁ。」

 

(…‥これで計りたかったことはもう一つある。それは『俺に結界術の才能があるかどうか』だ。…‥帳が降ろせた時点で安心していたけど、条件までつけられるなら…‥出来るのか?領域展開を!)

 

「…‥手伝ってくれてありがとうサオリ、帰ろうか。」

 

「…‥」

 

「?」

 

家に帰ってから色々と考えるか。と思い、サオリと帰ろうとするが、なぜかサオリはその場に止まったまま、手を前に出している。

 

「…‥…‥!なるほど」

 

俺は少し考えた後に答えが分かり、その差し出している手をとる。

 

「こういうことだろ?」

 

「…‥うん。」

 

手を繋ぎながら、家へと歩を進めた。




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