更新が遅れてしまい、申し訳ありません。出来る限り頑張りますが最近リアルのほうが忙しく、これからも更新は遅くなると思います。
それでは、どうぞ!
アズサと会った日から数日後。いつものように訓練をしていると、いきなり教官から『お前は今日から別の部隊だ。この紙に書いてある場所に向かえ。』と言われた。
今は紙に書かれている道案内通りの道を歩きながら、『別の部隊』という言葉に対して思考を巡らせている。
(別の部隊ねぇ…‥まさか落ちこぼれすぎて教官とマンツーマンとかになったりして。)
「流石にないか。…ここかな?」
紙と見比べ、指定の場所がここであることを確認する。
「失礼します。」
「!」
「ユウジさん!?」
「まさか、最後の一人って…‥」
「…‥驚いた。」
「!?」
無機質な扉を開け中へと入ると、そこには自分の何よりも大切な家族達と、先日知り合った白州アズサの姿が見えた。
俺は驚きと困惑に支配され、現状を把握しようと必死になった。
「ま、待ってくれ!皆はなんでここにいるんだ?俺は今日から別の部隊に行けって言われたから来たんだけど…‥」
「わ、私達は『喜べ。今日から貴様ら四人は、名誉あるアリウススクワッドのメンバーとなるのだ。』と言われて、ここで残りのメンバーを待っている……先ほどアズサが来たが、まさかユウジが来るとは…‥」
「アリウススクワッド?なんだそれ?」
「それは、私の口から説明しましょう。」
「「「「「「!?」」」」」」
サオリの発言の中に分からない言葉があったためそれを聞こうと発言すると、後ろから最も聞きたくない声が聞こえてきた。
今の俺にとって一番憎悪を向けている相手であり、この虚しい日々を造り出した元凶。
ベアトリーチェが、そこにいた。
俺とサオリは奴を認識した瞬間、他の皆を庇うように前に立ち、臨戦態勢へと移行する。
「そう身構えないでください…‥今は何もしませんよ。」
「…‥信じられ、ません。」
「下手な敬語など使わなくて宜しい。いずれ、その精神もへし折ってあげますからね。…‥貴方には説明していませんでしたね、説明してさしあげましょう。」
そう言って、ベアトリーチェは話し始めた。
アリウススクワッドとは自身を守る特殊部隊であり、特に優秀な兵士のみを編成するものであること。これから先、ここから外での任務の際真っ先にその任務を振られる立場であること。そして
『自身の考えた特別メニューでの訓練』をこれからこなすことも、言っていた。
「光栄に思いなさい、あなた達はこの偉大なるベアトリーチェの直属部隊となれるのですから。」
「…‥質問しても、いいですか?」
「どうぞ?」
「なんで、俺が選ばれたん、ですか?」
そう、そうなのだ。奴の言う通り優秀な兵士しか編成されないのであれば、俺が選ばれるはずがない。
俺の成績は恐らくではあるがこのアリウスの中でドベであり、俺より優秀な人なんて幾らでもいるはずだ。その中で、なんで俺が選ばれたのだろうか?
「なに、簡単なことです。貴方はこのアリウスにいる全ての兵士の中で、一番『頑丈』だからですよ。」
「…‥つまり、タンクということ、ですか?」
「物分かりが良いですね、その通りです。…‥喜びなさい、虎杖ユウジ。あなたが望んだことですよ?」
奴はそう言った後、俺に近づき、耳元で
「家族を、守りたいんでしょう?」
と、俺以外に聞こえない声量で言った。
「!」
(こいつ…‥何を企んでいる?守れるものなら守ってみろってことか?…‥舐められてる?)
「…‥俺は、俺が出来ることをするだけです。」
「その強情が、いつまで続くか楽しみです。…‥貴方への説明はこのぐらいでいいでしょう。」
奴はそう言いながら俺の耳元から離れ、全員の視界に入る位置まで移動していく。
「本格的に訓練を開始するのは明日となります。…‥今日は、話し合いでもしていなさい。」
「どうせ、まともに話せるのは今日だけですからね。」
意味深なことを言いながら、ベアトリーチェは去って行った。
「…‥急だったけど、これからは一緒にいれるってこと?」
「そ、そうなんですかねぇ?」
「俺も分からん…‥でも、そんなに良い話があるか?」
「…‥警戒は、怠るべきではないだろうな。」
「コク」
「あ、アツコ。ちょっと見ててな。」
ユウジは、手をまるで言葉を話しているかのように動かす。
-おはよう、元気?-
それは、手話であった。
ベアトリーチェによって話すことを禁じられた秤アツコが唯一コミュニケーションをとれる手段であるが、同年代からすれば中々難しいものがあり、今の今までそれで意志疎通がとれたことはなかった。
アツコは動揺を隠せず、急いで聞き返す。
「!」
-どうして!?-
「実は倉庫に手話の本が置いてあってな。それをこっそり持ち出して部屋で勉強してたんだ。これで、アツコとも話せるようになったぞ。」
その言葉は、秤アツコにとってなによりも嬉しいものだった。
家族達には自身の身振り手振りでも言いたいことが伝わっていたから特に不便には感じていなかったが、やはり"誰かと話したい"という思いはあり、寂しさを感じていたのだ。
ようやく、ようやくである。
この年の子が口を意識的に閉ざさなければならないというのは、想像を絶する苦痛であろう。
その苦痛を、彼は少しとはいえ解消してみせたのだ。
この限りなく限界に近い状況の中他者を思い、行動することを止めていない。
その姿は
彼の憧れである『虎杖悠仁』に、少しではあるが迫ったことを証明していた。
秤アツコは最早自身の感情が押さえられず、彼に抱き付く。
「っとと…‥そんなに嬉しかったか?」
「…‥ユウジ、後で私にも教えろ。」
「あぁ、これから皆にも教えるさ。」
「アツコ、あの時言ったろ?」
「もう二度と、寂しい思いはさせないって。…‥ちょっと遅くなっちゃったけど、許してくれ。」
確かに、彼は未熟だろう。
本物の虎杖悠仁に比べれば子供もいいところだ。感情的になって視野も狭くなるし、上手くいかなかったら強行手段をとろうともする。
だが、それでも
一歩ずつではあるが、彼は
あの『百折不撓』の男に、成っていっていた。
「そんじゃ、また明日。」
「少し、聞いてもいい?」
「なんだ?」
先に家族達を帰らせた後、自身も自室へと戻ろうとすると、アズサが声をかけてきた。
「あなた達はどういう関係なの?随分仲よしに見えたけど。」
「あぁ…‥俺達はさ、ここにくる前から一緒にいたんだ。言うなれば、家族ってやつかな。」
「家族…‥なるほど、納得がいった。」
「なににだ?」
「サオリ達の顔が貴方が来た途端に変わってたから、なにか理由があるのかなって。…‥皆、貴方が来て嬉しかったんだ。やっと分かった。」
「…‥俺は虎杖悠仁だ。自己紹介してなかったな。」
「ユウジか…‥これからよろしく。」
「あぁよろしく。じゃ、また明日。」
「うん。」
扉を閉め、部屋を後にする。廊下を歩きながら、先程の言葉を思いだす。
(……いったい、サオリ達とどういう関係なんだ?あんなこと聞いてくるなんで…‥俺がいないところで、なにかあったんだろうか?)
少しの疑問を持ちながら、自室へと歩を進めるのだった。
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