UA40000突破、お気に入り400件突破本当にありがとうございます!これからも誠心誠意頑張らせていただきます!
それでは、どうぞ!
『たとえ虚しくても、それは今日最善を尽くさない理由にはならない。どんなに辛くても、それは抗わない理由にはならない。』
これを心に決めたのは、いつだっただろうか?昔のことはあまり覚えていないから、記憶が曖昧だ。
気づけば、私は銃を握っていた。自分が生き残るために。
渡される銃を頑なに拒み、今も尚手本にあるのが、その時握ったアサルトライフルだ。
酷いことをたくさんしたと思う。人だってたくさん傷つけたし、色々な物を奪った。
時には返り討ちにされることもあったけど、それでも私は諦められなかった。自分が生きることを。
内乱が激化するまでは、それでなんとか生きれていた。明日への不安がない夜はなかったけど、『生きたい』という意思を離すことはしなかった。
だけど、その時は来た。
いつか報いを受けるだろうとは思っていた。たくさんの物を奪って、大勢の人の命を危険に晒した私は、然るべき罰を受けるだろうと。
だから私は、今の環境を『罰』だと思っている。どうしても生きることへの執着を手放せなかった私に対しての、神様からの罰。
それに逆らうことは、出来ないだろう。なにせ、神様から与えられたものだから。
時には、辛いと思う時もあった。『どうして私がこんな目に?私はただ、生きたかっただけなのに』って。
だけど、それは違う。
『この日々を送ることこそが、私が今まで迷惑をかけた人達への償いであり、その罪を清算する唯一の方法なんだ。』私はそう、結論付けた。
それから、『辛い』と口に出すのは止めた。
…‥…‥でも、それでも私は、諦められなかった。
黙ってその罰を受け入れることが、私にはできなかった。
だから決めた。たとえどれだけ辛くても、どれだけ虚しくても、抗うことを。
体は痛かった。心は段々動かなくなっていった。
ある日、遂に体調を崩した。朦朧とする意識の中、心のどこかで『やっと、終わる』って思ってた。
『待ってくれ!』
そんな時、目の前に大きな背中が見えた。
『だ、大丈夫ですか?』
『ヒヨリ、どう?』
『顔が熱いですぅ…‥』
『…‥とりあえず、目立った傷の処置はしよう。アツコ、何でもいいから布と、絆創膏持ってる?…‥オッケー、ありがとう。』
初めてだった。誰かに助けられたのは。
私の体を触る手が嫌だと思わなかったのは初めてで、不思議な感覚に陥った。
その間に聞こえてきた会話で、教官があの人を追い詰めているのが分かった。少しだけ開けていた目で、彼女が腰の銃に手をかけようとしているのが見えた時、『戦う選択が、あるんだ。』って心の奥底で思った。…‥私は、決断できなかったから。
『よくやったな。サオリ。…‥後は任せろ。』
私達よりも少しだけ低い声。今まで何回か見かけたことはあったけど、声を聞いたのは初めてだった。
(…‥なんだか、あんしんする。)
私は、あの二人の後ろに安らぎを覚えた。
それは、生まれてから持ったことがない感情だった。
後に分かった、その気持ちの名前は
『愛』だった。
「…‥無茶すんなって、前も言ったじゃないか。」
「…‥ごめん。」
以前も見たような光景だ。
訓練の
「…‥最近というか、知り合って時間がたったから分かったことがある。」
「アズサ。君は何を恐れているんだ?」
これは、本当に最近分かった事だ。
今日もそうだが、アズサは誰かが傷つく事を極度に恐れる。…‥いや正確には、俺が傷つく事、か。その時の表情は酷いものだ。まるで何か、見えない敵を見ているように。
「…‥なにを言ってるか、分からない。」
アズサはそう言い捨て、顔を背ける。
「普段の君は、とにかく純粋な子だ。配給にいつもと違う物があったら喜ぶし、無表情だけど実は感情表現豊かなのもの知ってる。」
「でもたまに、何かに追い詰められているような顔をする。」
「無理には聞かない。でもこうやって無茶を続けるなら、俺はアズサを止める。」
「教えてくれないか?何が、君をそこまで追い詰めているか。」
丁寧にゆっくりと、決して怖がらせないために、言葉を紡ぐ。
「…‥昔の、話だ。」
「うん。」
俺の説得が届いたのか、アズサはポツリポツリと話し始めた。
「私は、ずっと何かを奪って生きてきた。食べ物も衣服も住みかも、全部。」
「きっと、私が奪ったせいで無くなった命がある。」
その表情は、あまりにも辛そうで。
「その罪と、私は向き合わないといけない。」
「罪人は罪人らしく、贖罪をしなくちゃならない。」
過去を悔やむような、決して償えない事をしてしまったかのような顔で、絞り出すようにアズサはそう言った。
「…‥アズサ、話してくれてありがとう。」
「!…‥」
言葉を聞き終えた後、アズサを抱き寄せる。
「いいかい?アズサ。落ち着いて聞いてくれ。」
これから俺が言うことは、この子からしてみれば受け入れられないものだろう。しっかりと前置きをしてから、慎重に口を開く。
「君は、悪くない。」
「そんなはずがない!私が、私が全部悪いんだ!」
「落ち着いてって言ったろ?とりあえず、最後まで聞いてくれよ。」
暴れようとするアズサを押さえ、俺の考えを伝える。
「君はとっても賢い子だ。普通、そこまで考えが回らない。…‥だからこそ、そうやって自身を追い詰めてしまってるんだろう。」
「…‥」
「たとえ君が、どれだけそのことを罪だと思っていたとしても。」
「そのうえで、俺は言う。君はなにも、悪いことなんてしちゃいない。強いて言うなら、環境が悪かったんだ。」
「そんな責任を全部放棄するような考え方、許されるはず…‥「いいんだ」」
「許されていい。だって俺達は子供だ、間違いなんていくらでもする。そこからどう学んでいくかが重要なだけで、失敗をいつまでも引きずっていく必要はない。」
「それは許される度合いの時に限った話だろう?私は確かに、この手で命を危険に晒したんだ。…‥もしかしたら、これが原因で死んでしまった人もいるかもしれない。」
「ならその分、生きなくちゃ。」
「死者に対して生者ができることはただ一つ、目一杯生きることだよ。」
「その人達が生きれなかった明日の分まで生きる。それだけが、生者が死者にできる唯一のことだ。」
「…‥でも。」
「うん。この程度で取り払えるほど、軽いものじゃないんだよね?」
「私にはできない。開き直って何かに責任を押し付けることも、前を向いて生きていくことも…‥」
「なら、俺も一緒に背負わせてくれないか?」
「!?」
「そうすれば、アズサが背負ってるものも少しは軽くなるだろ?」
「なんで…‥なんでここまでしてくれるんだ?赤の他人じゃないか…‥」
「んー…‥気色悪いって思われるかもしれないけど、アズサのことは家族のように思ってるからかな。」
「家族、家族か…‥それは、あなた達の特権だと思ってた。」
「特権っていうか、いつの間にか集まってただけなんだけどね。」
「…‥私も一緒で、いいのか?」
「元々、俺達だって他人同士だ。それから皆で作っていったのが『家族』っていう形なだけ。…‥遠慮なんて、いらないさ。」
俺がそう言い終えると、アズサは黙って泣き出してしまった。
「…‥今は思う存分、泣いていいよ。誰も見てないから。」
そんなアズサを優しく抱き、顔を決して見ないように、頭を撫でるのだった。
夕陽がこの世界を照らす中、彼女は泣いた。
その涙に込められているのは喜びの感情か。はたまた、今まで押さえつけていたものが溢れてしまったのか。もしくは、その両方か。
「…‥私達は何も見ていない、聞いていない。いいな?」
「うん。」
「はい。」
「コク」
四人分の足音が辺りに響いたが、それを気に止める者はいなかった。
この回は、自分が特に書きたいと思っていた一つでもあります。自分の語彙力が足りず上手く表現できたか分かりませんが、彼の罪との向き合い方、罪を悔やんでいる者に対してどう寄り添うのかを、一生懸命表現しました。楽しんでいただけたなら、幸いです。
…‥まぁそもそも、本当に環境が悪いと思いますけどね。
最後まで読んでいただきありがとうございます。お気に入り登録や、感想を書いていただけると作者が狂ったように喜びます。