虎杖悠仁に成り代わった男の青春物語   作:ブルアカ大好き

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それでは、どうぞ!


二十四話 『罪』と『罰』そして『これから』 

『たとえ虚しくても、それは今日最善を尽くさない理由にはならない。どんなに辛くても、それは抗わない理由にはならない。』

 

これを心に決めたのは、いつだっただろうか?昔のことはあまり覚えていないから、記憶が曖昧だ。

 

気づけば、私は銃を握っていた。自分が生き残るために。

 

渡される銃を頑なに拒み、今も尚手本にあるのが、その時握ったアサルトライフルだ。

 

酷いことをたくさんしたと思う。人だってたくさん傷つけたし、色々な物を奪った。

 

時には返り討ちにされることもあったけど、それでも私は諦められなかった。自分が生きることを。

 

内乱が激化するまでは、それでなんとか生きれていた。明日への不安がない夜はなかったけど、『生きたい』という意思を離すことはしなかった。

 

だけど、その時は来た。

 

いつか報いを受けるだろうとは思っていた。たくさんの物を奪って、大勢の人の命を危険に晒した私は、然るべき罰を受けるだろうと。

 

だから私は、今の環境を『罰』だと思っている。どうしても生きることへの執着を手放せなかった私に対しての、神様からの罰。

 

それに逆らうことは、出来ないだろう。なにせ、神様から与えられたものだから。

 

時には、辛いと思う時もあった。『どうして私がこんな目に?私はただ、生きたかっただけなのに』って。

 

だけど、それは違う。

 

『この日々を送ることこそが、私が今まで迷惑をかけた人達への償いであり、その罪を清算する唯一の方法なんだ。』私はそう、結論付けた。

 

それから、『辛い』と口に出すのは止めた。

 

…‥…‥でも、それでも私は、諦められなかった。

 

黙ってその罰を受け入れることが、私にはできなかった。

 

だから決めた。たとえどれだけ辛くても、どれだけ虚しくても、抗うことを。

 

体は痛かった。心は段々動かなくなっていった。

 

ある日、遂に体調を崩した。朦朧とする意識の中、心のどこかで『やっと、終わる』って思ってた。

 

『待ってくれ!』

 

そんな時、目の前に大きな背中が見えた。

 

『だ、大丈夫ですか?』

 

『ヒヨリ、どう?』

 

『顔が熱いですぅ…‥』

 

『…‥とりあえず、目立った傷の処置はしよう。アツコ、何でもいいから布と、絆創膏持ってる?…‥オッケー、ありがとう。』

 

初めてだった。誰かに助けられたのは。

 

私の体を触る手が嫌だと思わなかったのは初めてで、不思議な感覚に陥った。

 

その間に聞こえてきた会話で、教官があの人を追い詰めているのが分かった。少しだけ開けていた目で、彼女が腰の銃に手をかけようとしているのが見えた時、『戦う選択が、あるんだ。』って心の奥底で思った。…‥私は、決断できなかったから。

 

『よくやったな。サオリ。…‥後は任せろ。』

 

私達よりも少しだけ低い声。今まで何回か見かけたことはあったけど、声を聞いたのは初めてだった。

 

(…‥なんだか、あんしんする。)

 

私は、あの二人の後ろに安らぎを覚えた。

 

それは、生まれてから持ったことがない感情だった。

 

後に分かった、その気持ちの名前は

 

『愛』だった。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

「…‥無茶すんなって、前も言ったじゃないか。」

 

「…‥ごめん。」

 

以前も見たような光景だ。

 

訓練の最中(さなか)、アズサが無理矢理俺の体を後ろに引っ張ってきた。何事かと思ったら、俺が受けるはずだった攻撃をアズサが受けていたのだ。大した怪我ではなかったがそれでも怪我は怪我。去ろうとするアズサを引き留め、こうして治療をしている。

 

「…‥最近というか、知り合って時間がたったから分かったことがある。」

 

「アズサ。君は何を恐れているんだ?」

 

これは、本当に最近分かった事だ。

 

今日もそうだが、アズサは誰かが傷つく事を極度に恐れる。…‥いや正確には、俺が傷つく事、か。その時の表情は酷いものだ。まるで何か、見えない敵を見ているように。

 

「…‥なにを言ってるか、分からない。」

 

アズサはそう言い捨て、顔を背ける。

 

「普段の君は、とにかく純粋な子だ。配給にいつもと違う物があったら喜ぶし、無表情だけど実は感情表現豊かなのもの知ってる。」

 

「でもたまに、何かに追い詰められているような顔をする。」

 

「無理には聞かない。でもこうやって無茶を続けるなら、俺はアズサを止める。」

 

「教えてくれないか?何が、君をそこまで追い詰めているか。」

 

丁寧にゆっくりと、決して怖がらせないために、言葉を紡ぐ。

 

「…‥昔の、話だ。」

 

「うん。」

 

俺の説得が届いたのか、アズサはポツリポツリと話し始めた。

 

「私は、ずっと何かを奪って生きてきた。食べ物も衣服も住みかも、全部。」

 

「きっと、私が奪ったせいで無くなった命がある。」

 

その表情は、あまりにも辛そうで。

 

「その罪と、私は向き合わないといけない。」

 

「罪人は罪人らしく、贖罪をしなくちゃならない。」

 

過去を悔やむような、決して償えない事をしてしまったかのような顔で、絞り出すようにアズサはそう言った。

 

「…‥アズサ、話してくれてありがとう。」

 

「!…‥」

 

言葉を聞き終えた後、アズサを抱き寄せる。

 

「いいかい?アズサ。落ち着いて聞いてくれ。」

 

これから俺が言うことは、この子からしてみれば受け入れられないものだろう。しっかりと前置きをしてから、慎重に口を開く。

 

「君は、悪くない。」

 

「そんなはずがない!私が、私が全部悪いんだ!」

 

「落ち着いてって言ったろ?とりあえず、最後まで聞いてくれよ。」

 

暴れようとするアズサを押さえ、俺の考えを伝える。

 

「君はとっても賢い子だ。普通、そこまで考えが回らない。…‥だからこそ、そうやって自身を追い詰めてしまってるんだろう。」

 

「…‥」

 

「たとえ君が、どれだけそのことを罪だと思っていたとしても。」

 

「そのうえで、俺は言う。君はなにも、悪いことなんてしちゃいない。強いて言うなら、環境が悪かったんだ。」

 

「そんな責任を全部放棄するような考え方、許されるはず…‥「いいんだ」」

 

「許されていい。だって俺達は子供だ、間違いなんていくらでもする。そこからどう学んでいくかが重要なだけで、失敗をいつまでも引きずっていく必要はない。」

 

「それは許される度合いの時に限った話だろう?私は確かに、この手で命を危険に晒したんだ。…‥もしかしたら、これが原因で死んでしまった人もいるかもしれない。」

 

「ならその分、生きなくちゃ。」

 

「死者に対して生者ができることはただ一つ、目一杯生きることだよ。」

 

「その人達が生きれなかった明日の分まで生きる。それだけが、生者が死者にできる唯一のことだ。」

 

「…‥でも。」

 

「うん。この程度で取り払えるほど、軽いものじゃないんだよね?」

 

「私にはできない。開き直って何かに責任を押し付けることも、前を向いて生きていくことも…‥」

 

「なら、俺も一緒に背負わせてくれないか?」

 

「!?」

 

「そうすれば、アズサが背負ってるものも少しは軽くなるだろ?」

 

「なんで…‥なんでここまでしてくれるんだ?赤の他人じゃないか…‥」

 

「んー…‥気色悪いって思われるかもしれないけど、アズサのことは家族のように思ってるからかな。」

 

「家族、家族か…‥それは、あなた達の特権だと思ってた。」

 

「特権っていうか、いつの間にか集まってただけなんだけどね。」

 

「…‥私も一緒で、いいのか?」

 

「元々、俺達だって他人同士だ。それから皆で作っていったのが『家族』っていう形なだけ。…‥遠慮なんて、いらないさ。」

 

俺がそう言い終えると、アズサは黙って泣き出してしまった。

 

「…‥今は思う存分、泣いていいよ。誰も見てないから。」

 

そんなアズサを優しく抱き、顔を決して見ないように、頭を撫でるのだった。

 

夕陽がこの世界を照らす中、彼女は泣いた。

 

その涙に込められているのは喜びの感情か。はたまた、今まで押さえつけていたものが溢れてしまったのか。もしくは、その両方か。

 

 

 

 

 

 

 

「…‥私達は何も見ていない、聞いていない。いいな?」

 

「うん。」

 

「はい。」

 

「コク」

 

四人分の足音が辺りに響いたが、それを気に止める者はいなかった。




この回は、自分が特に書きたいと思っていた一つでもあります。自分の語彙力が足りず上手く表現できたか分かりませんが、彼の罪との向き合い方、罪を悔やんでいる者に対してどう寄り添うのかを、一生懸命表現しました。楽しんでいただけたなら、幸いです。
…‥まぁそもそも、本当に環境が悪いと思いますけどね。

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