虎杖悠仁に成り代わった男の青春物語   作:ブルアカ大好き

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ということで、閑話スタートです。全三話を予定しておりますが多少の増加があるかもしれないので、あくまで目安だと思ってください。
最初は『まぁ、こうなるでしょうね。』と自分が思ったことです。

それでは、どうぞ!


閑話
目を反らし続けた末路


「…‥な、なぁ?」

 

「どうした?」

 

「皆近くないか?というか片付けが終わった途端、表情が…‥」

 

このアリウスで初めて行った食事会は無事に終わり、後片付けまで問題なく終えられた。最高の結果だったと、今後もやっていきたいなぁと考えている時、先に部屋へ戻ったカナデを除いた5人が詰め寄って来た。

 

その表情は先ほどの笑いあっていた顔とは正反対で、まるで感情がないかのような無表情だった。

 

「当たり前だろう。私達がどれだけ、どれだけ我慢したと思っている。」

 

「全員、行くぞ。」

 

サオリの合図に、俺を除いた全員が動き始める。

 

「ユウジ…‥大人しくしててね?」

 

その瞬間俺はアツコにお姫様抱っこをされ、光りが灯っていない目を向けられながら、そう告げられる。

 

「は、はい。」

 

そのあまりの怖さに、俺はされるがまま連れて行かれるのだった。

 

 

 

 

 

 

 

「…‥よし、着いた。」

 

「ここって…‥」

 

「あぁ、お前の部屋だ。」

 

道中は誰も口を開かず、静寂の中五人分の足音が響き渡るのみだった。アツコが止まったことから目的地に着いたのかと思い前を覗くと、そこは俺の部屋の前だった。

 

「アツコ、頼む。」

 

サオリはドアを開け、未だ俺を抱っこしたままのアツコを部屋に入れる。それにミサキ、ヒヨリ、アズサが続き、最後にサオリがドアを閉めながら、入って来た。

 

「…‥俺も、さ。そこまで察しが悪いわけじゃないから、こうなる理由に思い当たるところはある。…‥ここまで我慢させて、ごめん。」

 

そう口にした途端、サオリ以外の全員が俺に飛びついてきた。多少の衝撃は感じたが倒れる程ではなく、俺は片腕でなんとか全員を抱けないものかと悩んでいた。

 

「ばか!本当にばか!私は貴方のために生きてるって言ったのになんで死のうとするの!なに?私に死んでほしいの!?」

 

「そんなことない。俺はミサキに生きてほしかったから、あの約束を結んだんだ。」

 

「なら…‥なら!もう二度とこんなことしないで!もう二度と…‥一人で行かないで!」

 

「…‥約束する。」

 

「ぜったい、ぜったいだから。…‥こんどおいていったら、ゆるさないから。」

 

「最初に片腕が無いユウジを見た時、不安が収まらなかった。死んじゃうんじゃないかって、本気でそう思ったんだぞ!それなのに気にも止めないし…‥もっと自分の体を労れ!」

 

「あの時はサンキューな。アズサのおかげで、あれ以上皆が傷つけ合わずに済んだ。」

 

「ユウジは…‥自分が傷つくことをなんとも思ってないのか?ユウジだって沢山傷ついたのに、まるで他人事だ。」

 

「俺が傷つくことで皆が平和に暮らせるなら、俺はそれでいいと思ってる。…‥君達は優しいから、これをよしとしないと思うけどね。」

 

(なんでユウジが、そんな顔で笑うんだ?…‥私だ、私が弱いせいで、ユウジは傷ついてしまうんだ。なら、もっと強くならないと。それこそ、貴方より何倍も。そうすれば貴方は…‥私を守らなくて済むだろう?)

 

「ユウジさん…‥うわぁぁぁぁん!色々言いたいことがありましたけど、言葉にできません!」

 

「落ち着いて。ゆっくりでいいから、聞かせて欲しいな。」

 

「え、えっと…‥ユウジさんの傷だらけで片腕がない姿を見た時、凄く怖くなったんです。し、死んじゃうんじゃないかって。」

 

「うん。」

 

「も、もう二度と一緒にご飯を食べれないんじゃないかって。…‥もう、私に笑いかけてくれないんじゃないかって…‥」

 

「よく頑張ったね。…‥大丈夫、俺はいなくなったりしないよ。」

 

「う、うわぁぁぁぁぁん!」

 

「…‥」

 

「アツコ…‥」

 

「ねぇ?ユウジ。私とずっと一緒っていうのは、いや?」

 

「…‥いやでは、ない。」

 

「ならもう、一生一緒にいない?もう貴方から、目を離したくない。離したら、私は安心できない。」

 

「…‥それは」

 

『君のためにならない』と出かかった言葉を飲み込み、どうすればよいか思案する。

 

(俺が、悪いんだろうな。不安にさせ過ぎた、そのせいでアツコの精神を不安定にしてしまった。…‥なら俺も、覚悟を、決めるか。)

 

自身を有らん限りの力で抱き締めているアツコを、片腕で力強く抱き寄せる。

 

「分かった、あの時君に言った約束を守るよ。寂しさは、不安は、感じさせない。」

 

「!これって、結婚?」

 

「それはまだ待ってほしいかな!?」

 

「黙って聞いていれば、なにやら聞き捨てならないことが聞こえてくるんだが?…‥アツコだけ、なのか?」

 

「サオリの言う通りだ。私達は仲間外れか?」

 

サオリとアズサを尻目に、他の2人も俺に対し捨てられた子犬のような目を向ける。

 

(そう、だったな。俺はこの子達を愛してるってやっと自覚出来たんだ。…‥なら、この子達が自分で俺から離れることを選ぶまでは、愛してもいい、よな?)

 

人を愛することは、怖いことだ。それを失うかもしれないという恐怖が常に付きまとうし、向ける愛が相手に伝わるとも限らない。

 

だけど

 

愛するということは、それら全てを踏み越えるもの。少なくてもこの子達は、俺を愛してくれていると思う。なら、それを返そう。

 

「サオリもここに来てくれないか?…‥あの時以来だけど、皆で抱き合いたいんだ。」

 

「!…‥分かった。」

 

「アツコ、ごめんな。ちょっと退いてくれ。」

 

「むぅ…‥しょうがない。」

 

アツコを開放し、ゆっくりと歩いてくるサオリを、片腕を開いて待つ。

 

やがてすっぽりと、サオリは俺の胸元に収まった。

 

既に俺に抱きついている4人を含め、6人が密集する。それはこれまで感じたことのない温かさを感じさせ

 

常に張っていた精神が、落ち着いていくのを感じた。

 

「やっぱりユウジは、温かいな。こうしていると、あの頃の自分に戻ったような気さえする。」

 

「別に戻ってもいいんだぞ?…‥もう、気を張る必要はないんだから。」

 

「…‥なら、その…‥ユウジ、私ね?ずっと寂しかったの。」

 

「うん。」

 

「独りで寝ることに慣れる時なんてなかった。いつも私は、人の温もりを求めてた。今こうしていられることが、私は何より嬉しい。」

 

「俺も、同じ気持ちだよ。」

 

「そっかぁ…‥えへへ。」

 

まだ二人でいた頃の懐かしさを覚えながら、抱き締める力を少し強める。

 

「…‥初めて、サオリのこんな姿を見た。」

 

「昔のサオリ姉さんは、こうだった。今みたいな威厳なんて一ミリもなくて、甘えん坊。…‥それでも、太陽みたいに眩しかった。」

 

「わ、分かる気がします。あの頃のユウジさんは私達を守ってくれる大人のような存在で、サオリさんは常に笑顔で私達を照らしてくれる太陽のようでした。…‥それは、今も変わらないかもしれません。」

 

「…‥サッちゃん、良かったね。」

 

「…‥よく考えたら、皆の前でこの姿を見せるのは恥ずかしくなってきた。」

 

「えぇ~、俺はまだ見ていたいけどな。」

 

「駄目だ駄目だ!」

 

それを言った後、サオリは俺の耳元に小声で

 

「これは、二人きりの時にね?」

 

妙に色っぽく、そう言った。

 

「!…‥オッケー。」

 

心臓が跳ねるの感じたが、気のせいだと振り切る。家族にそんな感情を覚えるはずがない。

 

…‥そろそろ、かな。

 

「皆、今から大事な話をする。どうか取り乱さず、聞いてほしい。」

 

あえて声を低くし、場に緊張感を持たせる。俺の目からも皆が驚いているのが伝わってきて申し訳なさを覚えるが、意を決して口を開く。

 

「ベアトリーチェは、確かにここからいなくなった。だけど皆が思っているような、存在が消えたわけじゃない。…‥奴は、生きてる。」

 

その言葉に、全員の心臓の鼓動が速くなるのを感じた。

 

「…‥理解した。つまり、もう一度現れるかもしれないということだな?」

 

「あぁ、そうだ。…‥俺が不甲斐ないせいで、ごめん。」

 

「なら、それまでに強くならなくてはならないな。…‥今度は、守れるように。」

 

最後は小声で聞こえなかったが、何かしらの決意でもしたのだろうとあたりを付け、聞き返しはしない。

 

「サオリはほんと、流石だな。」

 

(だけど、サオリみたいに強い子ばかりじゃない。他の皆は…‥)

 

サオリから目を離し、アツコ達のほうに目を向ける。すると、俺でさえ怯えてしまうような怒気を感じた。

 

「へー…‥生きてるんだ。」

 

「そうか、それは…‥悪くもあり、良くもあるな。」

 

「え、えへへ。私は怖さが勝ちます…‥」

 

「…‥へぇ。」

 

「み、皆?そ、その、ちょっと落ち着こう?顔が凄く怖いんだけど…‥」

 

「ユウジ、無駄だ。…‥全員、怒っているんだ。これまでも確かに許せなかったが、今回は訳が違う。お前の片腕が失くなってしまったから、その怒りは最早収まらん。私も、同じ気持ちだしな。」

 

「と、とにかく、気を付けなくちゃいけないってことを言いたかったんだ。…‥後この事は、ここにいる全員だけの秘密だ。カナデにもな。」

 

「なんで?対策するなら、皆で考えた方がよくない?」

 

「アツコ、それはだな…‥皆は今安心してるんだ、『解放された』って。それを崩してしまったら、今度こそ復帰できなくなってしまう。ならこれは俺達の秘密にして、内密に立ち向かう方が良い。」

 

「…‥私達には、言って良かったのか?」

 

「サオリ達の事を信頼してるんだ。…‥それと、一人で抱えてられる自信がなかった。」

 

「ふっ、お前も変わったな。前までなら、絶対に話してくれなかっただろうに。…‥嬉しいぞ。」

 

「はは…‥俺もずっと変わんないままってのもな。」

 

それを最後にサオリから目を離し、全員を捉える。

 

「皆、一緒に戦ってくれ。」

 

それはやっと言えた、弱さ(強さ)の証。自分自身で何でもは出来ない。それを嫌というほど痛感したからこそ、『人に頼る』ことが(ようや)くできるようになった。

 

「ふふっ。…‥私も頼ってくれて嬉しいよ、ユウジ。勿論、一緒に戦おう。」

 

「私の言ったことが少しは効いた?…了解。」

 

「こ、怖いですけど…‥ユウジさんの頼みなら、受けないわけにはいきません!」

 

「ヒヨリ、無理はしなくていいからな。」

 

「わ、分かっています!」

 

「…‥あくまで、ユウジが戦うことは止めないんだな。」

 

「それが、俺自身を許せる唯一の方法だから。」

 

「分かった…‥白州アズサ、これより虎杖ユウジの指揮下に入る。なんでも命令してくれ。」

 

「う、うーん…‥それじゃ、これからも俺を信じてくれ。」

 

「…‥それは前提だから、命令にはならないぞ?」

 

「えぇ…‥うーん…‥とりあえず、これからもよろしく。」

 

アズサは無言で頷いた。

 

「これまでお前に、そんな事を言われたことはなかった。ずぅっと私の前を走っていたお前と、漸く並べた気分だ。」

 

「この錠前サオリ、全てをお前に捧げよう。」

 

「…‥アズサもだけど、女の子が軽々しくそういうことを言うんじゃありません。だけど…‥あぁ、覚悟は受け取った。」

 

(思えばサオリに対しては、今までずっと負担をかけてばかりだった。またそうなってしまうのは忍びないけど…‥)

 

キリッとした、まるで一流の戦士のような顔付きの彼女を見て

 

(何故だか、サオリなら大丈夫だと思ってしまうんだよなぁ…‥せめて少しでも負荷を減らせるよう努めよう。)

 

「それじゃ、もう時間も遅いし寝ようか。…‥そ、その…‥分かった!分かったから!」

 

自分が暗に解散の意を示すと、全員がまたあの無機質な目で見つめてきた。ここが俺の部屋なこともあり逃げられはしないため、求められていることを了承する。

 

「ベッドめちゃめちゃ狭くない?」

 

密集状態を解放し、どうやって寝ようかと考える。

 

「別に床でもいいだろう。…‥毛布を敷けば、あの家の頃よりは寝心地もいいはずだ。」

 

「…‥まぁ、確かに。」

 

俺のベッドにある薄い毛布一枚を敷き、なんとか全員を中に入れようとする。

 

(…‥さっきから思っていたけど、女の子の匂いが濃すぎる!今は大丈夫だけど…‥成長した後この距離感だと、俺の理性は無事なのだろうか…‥)

 

今の状態を簡単に説明すると、俺に直に密着しているのがサオリとアツコ、足だけが触れ合っているのがヒヨリとミサキとアズサだ。

 

(…‥はぁ、こんな考えがよぎる自分が恥ずかしい。皆は純粋に、ただ一緒にいたいだけのはずなんだ。それなのに俺がこんなんでどうする。)

 

(今はただ、この幸せな時間を味わっていよう。)

 

色々と考えているうちにいつの間にか意識は混濁し眠るかと思ったその時、あることが脳裏に浮かんだ。

 

(やっべ、建物の話黒先としてなかった。)

 

そうなのだ。このアリウスには確かにトイレや風呂などの生活に必須な物は用意されているが、その全てが老朽化が激しく、それはこの寮棟も例外ではない。

 

(一刻も早く改修工事をしないといけない。そのためには…‥)

 

耳を澄ませば、可愛らしい5人分の寝息が聴こえてくる。最新の注意でそこから体を抜け、部屋を出る。

 

(誰かが起きる前に終わらせないと。)

 

彼は変わらない。誰かのことを考え続けるその姿勢が止まることは、恐らく永久(とわ)にないだろう。

 

それが、彼が背負った『宿命(呪い)』なのだから。

 




次回は黒服回です。ここでは仮にも先生としての立場を得た彼は、どのように変化するのでしょうか?楽しみです。

最後まで読んでいただきありがとうございます。お気に入り登録や、感想を書いていただけると作者が狂ったように喜びます。
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