活動報告にも書いたんですけど、なんかやばいの(アリウスメインストーリー)が来ちゃいました。…‥その内容がどうであれ、この世界線はこの世界線ということで、お願いします。
それでは、どうぞ!
「ほう、ほうほう。ほうほうほう…‥呪力というエネルギーは随分万能なようですね…‥意識的に扱えるという点では、神秘に勝ると言っていい…‥」
「身体検査はこのくらい?」
「いえ、もう少し呪力が体を流れる様子を観察させて下さい。…‥機械に通すにはまだ速い。未知を研究する際に従来の知識は意味を成さない。私自身の頭脳を持って、全く新しい世界を見い出さなくては…‥」
途中からブツブツと呟いていてよく聞こえなかったが、『研究者らしいな』、と切り捨てる。
(ジーッと見られてるだけだと、なんだかむず痒いな…‥)
「質問です。呪力とはどの程度自由のきくエネルギーなのですか?先ほど貴方は身体能力を強化出来るとだけおっしゃいましたが、他には…‥例えば、神秘を持つ生徒達のように、何か特殊な現象を引き起こすものがあったりは?」
「そうだな…‥」
(ま、今日はここまで見せて、あとは秘密にするか。)
「お前も見ただろ?俺は血を扱うことが出来る。再演してやるよ。」
前回行った穿血は両手を扱って行使したが、今自身には片腕がない。故にあの時咄嗟に使用した『オリジナルの方法』で、それを再現する。
手を拳銃のようにし、人差し指と中指の間に手の中の血管から『百斂』を作成。それを二本の間に引き伸ばし、圧縮。
(圧縮、圧縮、圧縮…‥百斂)
「穿血!」
「…‥あれは呪力由来の技だったのですね。あたりは付けていましたが、今この目で見て確信が持てました。」
「逆にお前分かんなかったわけ?推測ぐらい出来ただろ?」
「未知に対し、己を過信することは禁物ですので。私は自身が観測した事象のみを、データとして記録しています。」
「…‥お前さ」
「何でしょう?」
「ほんとう、ちゃんとしてんのな。」
「お言葉ながら、その年齢で自立しようと気概を見せる貴方の方が、よっぽどちゃんとしていると思いますがね。」
その会話が終わった後、黒先は紙に今回の結果らしきものをまとめ始めた。
「じゃ、今日はこのぐらいでいい?速くしてくれないと、もしかしたら皆が起きて来ちゃうかもしれないんだよね。」
「のんびりやって行くつもりでしたので、貴方が言わずとも今回はここで終わりの予定でした。それでは建物の件でしたね?手っ取り早いのは私が機器を駆使し修繕することですが…‥」
「ダメだダメだ。お前は見た目が怪し過ぎる。」
(機械を貸してもらうにしたって、その出所を追及されたら俺は何も言えない。どうしたものか…‥やっぱり、この手段しかないか。)
「…‥俺に、教えてくれ。」
「まぁ、それしかないでしょうね。建材は融通して上げましょう。」
「助かる。」
そこからは、夜通し建築学の勉強をした。建物を崩さないように上手く補修をするやり方や、建材をどう使うかなどだ。
「ふぁ~…‥眠い。」
「…‥よく頑張りましたね。ぶっ通しで6時間もたちましたよ?」
「そんなたった?…‥あ、速く帰らないとやべぇ!」
席を立って走りだそうとする俺を、黒先は止めた。
「お待ちなさい。帰り道が分かるのですか?迷ったらそれこそ時間ロスになり、本末転倒ですよ。」
「今、ここまで貴方を案内した者を起動させました。急ぐよう指令を出していますので、貴方のスピードにも劣らずに動けるかと。」
「ありがとう!じゃ、また連絡してくれ!」
「はい。次回は建材を用意しておきますので、荷物は覚悟してくださいね?」
「手持ちなの…‥?」
「カバン程度は準備しておきますが、全てを入れられるほど容量は大きくないかと。」
「まじかぁ…‥ま、なんとかなるか。それじゃ!」
「お気をつけて。」
黒先がドアを開いてくれていたため、そのまま部屋を飛び出す。
『ジジョウハハアクシテイマス、サイソクデムカイマスノデ、ハグレナイデクダサイ。』
「上等!」
そこからのプロトのスピードは、俺の全速力と殆ど遜色ないものだった。呪力を使って走らないと置いて行かれるレベルとは…‥
「はぁ…‥はぁ…‥ありがっ…‥とう。」
『オクリトドケマシタノデ、シレイヲシュウリョウシマス。』
そう言い残し、プロトは行きとほぼ同じスピードで帰っていった。
「さぁてと…‥途中で起きて来てて俺がいないことがバレてるとかは止めてくれよ…‥」
確認したところ全員ぐっすり眠っていて、安心することができた。
あれから数ヶ月。何度か黒先のところに通い、既に建物の改修は終わらせた。勿論皆鋭いので建材をどこから用意したか問い詰められたが、自分で用意したと言って押しきった。
「プロトまだかな?」
今日も今日とて実験日。ここまでは呪力のことを聞かれたり、術式のことについて説明したりした。多少肉体に負荷のかかる実験もあったが許容範囲であったため、いい関係が築けていると思う。
「!…‥誰だ?」
「ユウジ…‥こんな遅くに、外で何してるの?」
「あ、アズサ!?」
(ま、まずい!もしここでプロトが来たら言い逃れは不可能に)
『ユウジさま、おまたせしました。くろせんさまがおまちです。さっそくいきましょう…‥おや?きょうはひとりではないのですか?』
「な、なんだこれは!?機械…‥いや、そうにしては人間過ぎないか?まぁ、これがなんにせよ…‥」
「ユウジ、しっかり説明してもらうぞ?」
「…‥そ、その、この場は一旦見なかったことにして帰ってもらうっていうのは「無理に決まってるだろ。」ですよね~…‥」
(しかたない、か。)
「…‥分かった。じゃ、着いてきてくれ。プロト、今日は急がなくていい。ゆっくり、最初に俺を連れていった時ぐらいのスピードで案内してくれ。」
『わかりました。』
いつもと比べ、穏やかなスピードで進んでいくドローン。プロトはここ数ヶ月で目覚ましい進化を遂げ、全ての性能が大幅に向上された。
発せられる言葉は淀みがなく、まるで人間のようだ。あいつ曰く、処理速度も段違いになったらしい。
「また、隠し事をされたな。」
「うぐっ…‥ごめん。」
「はぁ…‥あんまり、心配かけさせないでくれ。」
「善処します…‥」
歩きながら、何回目か分からないお叱りを受ける。
「どこまで行く気だ?」
「んーっとね、廃墟地帯って言ったら分かる?」
「寮の窓から少し見える、あそこか?」
「そそ、そこまで行くよ。」
「ここまで離れていたというのに、私は今まで気づかなかったのか…‥」
(今回も例の如く帳を張ったからなぁ。ドアから覗いただけじゃ気づけない。…‥まぁ後、頻度が大体月2~3回だったのも幸いしてたな。)
『おなまえをうかがってもよろしいでしょうか?』
「わ、私か?白州アズサだ。」
『しらすあずささま…‥とうろくかんりょういたしました。えいきゅうけんげんはげんざいじょうげんにたっしておりますので、かりけんげんをはっこう…‥かんりょうしました。これで、しらすあずささまもとびらをあけることができます。』
「プロトお前、あの扉と繋がってんの?」
『えぇ。いまやあのしせつにあるすべてのこんぴゅーたーはわたしといったいかしています。』
「な、何がなんだか分からない。というか、暗すぎて怖くなってきた…‥」
「そのまま俺の袖掴んでていーよ。どっちみち、こっから複雑になるから。」
更地を抜け、廃墟地帯へと入る。袖から伝わってくる少しの振動から、アズサが震えていることが分かった。…‥俺はもう慣れたけど、確かにこの暗さはちょっと怖いかもな。
手元は見えないし、プロトが出す淡い光が無かったら本当に真っ暗だ。
「…‥」
「大丈夫大丈夫。なんにも出てきやしないし、もし出ても俺がいるから。」
「そ、それとこれとは別問題だ!ひっ!い、今あそこに何かいなかったか!?」
(…‥初めてかもな。この子のこんなに子供らしい姿を見たのは。)
これは、少しずつ彼女が年相応になっていっている予兆なのかもしれない。昔の彼女なら多分、ここまで表に出すことはなかっただろう。
「わっ!」
「ひゃぁ!…‥ユウジ!」
「ごめんごめん。つい面白くって。」
可愛らしい悲鳴を上げて少し恥ずかしがっているアズサを見て、改めて決意を固める。
(この子が、この子達が感情豊かに暮らせる日々を作り上げ、守っていこう。…‥二度とあの時のような、苦しくて辛いだけの日常には戻さない。)
平和を守っていくこと、それは簡単ではない。これからもきっと様々な試練が俺を、俺たちを襲うだろう。それらをどう切り抜けるかを、俺は考え続けないといけない。
それが、曲がりなりにも"アリウス生徒会長"の名を背負った者の役割だろうから。
「次やったら一日は口をきかないからな!」
「もうしません!」
ふざけながらもプロトに着いていき、段々と奥へと進む。
『ゆうじさま、あずささま、ここからしたにいきます。ゆうじさまはわかっているでしょうが、ぜったいにわたしをみうしなわずに。』
「あぁ。アズサ、ここからは絶対、俺の袖を掴んでろよ。」
「わ、分かった。」
最初に来た時よりも複雑化した、まるで迷路のような地下通路を抜け、あの扉の前に立つ。
『あんない、かんりょうしました。くろせんさまがなかでおまちです。』
「おっけ、いつもありがとな。」
『いえいえ、それではまた、かえりにあいましょう。』
その言葉を最後に、プロトは充電場所へと戻っていった。
この数ヶ月で、この場所も大きな変化を遂げた。機械類があり得ないほど多くなり、最早一種の専門機関のようだ。
『虎杖ユウジ様・・・永久権限を確認。白州アズサ様・・・仮権限を確認。開きます。』
「一ヶ月振りですかね?ユウジさん。それと今回は…‥可愛らしいお嬢さんをお連れのようで。」
その姿を視認した瞬間、アズサは臨戦態勢に入った。
「おやおや、初対面で随分な嫌われようで。」
「黙れ!何者だ!?ユウジとどんな関係なんだ!?」
(まぁこうなるよなぁ…‥)
「アズサ、ちょっと落ち着いて。」
「落ち着けると思うか!?こいつからはベアトリーチェと同じ雰囲気を感じるんだ!」
「お前さぁ…‥本当、その風貌どうにかならないわけ?」
「…‥この姿は代償そのものですので、こればかりは変えられませんねぇ。」
「ユウジ、答えてくれ。これまでずっとこいつと会っていたのか?もしそうなら、何をしていたんだ?もしかしてまた、あの時のようになってしまうの…‥か?」
俺にも伝わる程の、極度の不安感。…‥当たり前か。トラウマってのは、そう簡単に消えるもんじゃない。
「順を追って、説明するな。」
それから、黒先と出会ってからこれまでのことを話した。契約を結び生活を支えてもらっていること、勉学を教えてもらっていること、その代償として、ちょっとした協力をしていること。大まかに、こう話した。
「…‥ちょっとした協力というのは、なに?」
「アズサも、俺のこの力は知ってるよな?ヘイローがない俺がこうまで強い訳。」
「うん。確か『呪力』っていう、人間の負の感情を元にしたエネルギーのことだよね?」
「それにこいつが興味を示して、その研究に協力してるって感じだ。俺もまだ詳しいことが分からないから、お互いに利益のある話なんだよ。」
(まぁこういうていってだけで、めちゃめちゃ知ってるけどね。)
「…‥それは、ユウジが傷つかない範囲なのか?」
「おう。前に一緒に風呂入った時も、傷なんてどこにもなかったろ?」
「…‥信じて、いいの?」
再度の、念を押した確認。こういう時は自信を持ってしっかり答えないと不安を煽るだけだ。
「あぁ。…‥後もし騙されてたら、俺自身で今頃こいつを倒してるよ。」
「話合いは済みましたか?」
「…‥あなた、なんていうの?」
アズサは恐る恐るといった感じで、探りを入れるようにそう問いかけた。
「これは名乗り遅れました。黒先と、彼には言われています。良ければ、貴女もそのようにお呼び下さい。」
「黒先…‥私はあなたのこと、信用も信頼もしない。ユウジに何かしたらただじゃおかない…‥から。」
「重々承知しております。契約を遵守するのが私のやり方なので、彼女とは違うと思ってください。」
「!ベアトリーチェを、知ってるの?」
「…‥えぇ、多少は。」
黒先は言い淀みながら、目を反らしながらそう言い、話を切り替えた。
「それではユウジさん、今日はいかがいたしましょうか?」
「前回俺の番だったから、今回はお前の番だ。授業頼むぜ。」
「彼女はどうするのですか?」
「アズサ、いきなりであれだけど訓練ってどう?」
「望むところだ。」
「それなら…‥黒先、俺のデータを取るために用意してた仮想敵があるよな?あれのレベルを落として、アズサに使わせてやってくれ。」
「ほう…‥レベルを落とすとはいえかなりの強敵ですが、よろしいのですか?」
「あぁ、アズサには強くなってほしいんだ。」
それからアズサは戦闘訓練、俺は勉強と分かれ、数時間の時を過ごした。
「もうそろそろまずいのでは?彼女も疲弊していると思いますし、ここらで切り上げるのが懸命かと。」
「そうだな。」
長時間椅子に座っていたことから凝り固まっていた体をほぐし、訓練場へと向かう、
「アズサー、終わりにしよ…‥マジで?」
「…‥ユウジ疲れた、眠い…‥」
そこには、もう二度と使えなさそうなぐらいにひしゃげたロボットの残骸の山が形成されていた。
「渡しておいた停止スイッチ使った!?休憩室使った!?」
「そんなズルしない…‥全部倒した…‥」
「うっそだろおい。」
(いくらレベル下げたとはいえ、約三十体を完全に倒しきるなんて…‥ここまで強かったっけ?)
「監視カメラで度々確認していましたが、この年にしては異常なほどに強いです。荒削りですが、動きの一挙手一投足に細かな技術が差し込まれています。…‥いい実験台に」
「おい、分かってるよな?」
「怖い怖い…‥冗談ですよ、冗談。」
「油断も隙もない奴だ…‥アズサ、帰ろうな。」
「うん…‥」
「お気を付けて。」
道は今回ようやく覚えられたのとアズサと二人になりたかったためプロトの案内を断り、疲れているアズサをおぶって帰り道を歩く。
右腕で持ち、血で形成した左腕は添えるだけ。俺の右腕一本でも軽く持ててしまうほど、アズサは軽い。もっと食わせてやらないとな…‥
「なぁアズサ。今日のことは、皆に秘密にしてくれないか?」
まだ日が登りきっていない絶妙な明るさの中、背負っている彼女が完全に眠ってしまう前に言いたかった内容を伝える。
「…‥なら今度から、私も連れてって。」
「分かったよ…‥」
ここから、白州アズサは急激な成長を遂げる。
それこそ____
「…‥彼は、不思議です。」
"虎杖ユウジ"と表紙に書かれたレポートを横目に、黒先はそう呟いた。
「その身は間違いなく幼いものでありながら、精神は成熟した大人顔負けのものを持っている。更に恐ろしいのは…‥彼は、自分がどれほどのものか理解している。つまり、身の程を知っているのです。」
それを見極めることの出来ない大人が、世界になんと多いことか。
「力などおまけに過ぎません。真に警戒すべきは…‥その身に合わない覚悟。」
「一つ欠点を上げるなら、自分自身の価値を理解していないところでしょうか。…‥あぁ、能力や実験的価値の話ではないですよ?周りからどう思われているか理解していないというだけの話です。」
「…‥ここまでしっかりと記録していますか?プロト。」
『はい。』
そのドローンは映像として、この瞬間を保存している。後に繋げるというのが一番大きな理由だが、資料としての役割も担っている。
「ではこれにて第五回、調査報告を終了します。未来の私よ、この事を忘れず、割れ物を扱うように彼と接しなさい。契約を破ることはないでしょうが、こちらが下手をうてば…‥」
「正面からそれを破壊するだけの力を、彼は持っています。呪力はまだ謎が多い。傲慢には決してならぬように。」
両者の関係はなんと歪なことだろうか。契約という紙切れ一枚の上に成されている溶ける前の雪のように儚いそれは、いつ消えるか分からない。ただ一つ言えるのは
少なくても両者は、
色々細かい描写を省いた自覚はあります、ごめんなさい。次はおそらく平和な回になると思います。
更新が遅くてすみません。なんとか頑張るので、どうか楽しみにお待ち下さい。
最後まで読んでいただきありがとうございます。お気に入り登録や、感想を書いていただけると作者が狂ったように喜びます。