誰の誕生日にしようか一生迷ったんですけど、やっぱ主人公だよなと思ったので今回はユウジの誕生日回です。各々の誕生日回もいつか出しますので、末長くお待ち下さい。
今回は少し書き方を変えてみました。こうした方が見やすいなどありましたら、ぜひ。
それでは、どうぞ!
「なーんか今日、皆に避けられてる気がする。アツコだけだよ? いつも通りなの」
「避けてるってことはないと思うよ。皆、ユウジのことは大好きだし」
黒先と出会ってからも時間が経過し、一年ほどはたっただろう。サオリ達の誕生日会をやったり、誕生日が分からない子達の誕生日を勝手に作ったりもした。まぁそうしたらほぼ毎日誕生日会になっちゃってかなり苦労したのは記憶に新しい。来年からどうしよう……
黒先がくれたカレンダーで今は三月だということが分かった。というか、それを使って日を把握出来たからこそ、誕生日会が出来たところがある。サオリ達が自分の誕生日をしっかり覚えていたのは驚いた。
「サオリ達からは愛されてる自覚あるんだけどねぇ。他の皆が俺をどう思ってるか分からないんだよなぁ……」
最近の悩みはもっぱらこれだ。仮ながら生徒会長という立場にいる以上、自分の校の生徒にどう思われているかは気になるだろう。
「最近はユウジが勉強を教えてくれるおかげで皆が話すことも多くなったから、私はなんとなく知ってるよ?」
「えっそうなの? ならちょっと教えてくれない? やっぱ自分がどう思われてるかっていうのは気になる」
「んー……まぁ、すぐに分かると思うよ」
「えぇ……?」
煮え切らない返事に微かな困惑を覚えながら、かつていた湖の周りを歩く。
そう、俺達は今、前世で言うなら帰省というものをしていた。
「懐かしいな……この家、まだ残ってたんだな」
「中も変わってない。随分来るのが遅くなっちゃったけど……ただいま」
「おかえり」
まるで昔に戻ったように、言葉を交わす。アツコがここにいた期間はかなり短くはあったが、それでもこの子にとっては初めて自分が帰る場所と認識できたところだろう。
「ふふっ……あ、あれ?」
「! アツコ、ほら」
その予想は当たっていたが、些か甘かったようだ。彼女は笑いながら、自然と溢れてしまったといわんばかりに涙を流し始めた。
俺はそれに対し、両手を広げて懐に向かい入れる準備をする。そうしているとすぐにアツコは俺の近くに来て、抱擁を受け入れた。
優しく、優しく背中を擦り、落ち着かせる。冷静でないわけではないだろうが、それでも平常時よりは頭が騒がしいだろう。
「……この家、まだ使えない?」
「んー……俺達だけならいけたかもしれないけど、今は人数がかなり増えちゃったからなぁ……また来ようよ。今度はサオリとミサキとヒヨリも連れて」
「……そうだね。懐かしむなら、そうしよう」
「じゃ、帰ろっか。帰り道に寄りたいとこあるから、そこ寄ってから」
「……や」
「まだ居たいの?」
「うん」
「しょうがないなぁ……分かった、二人でちょっとダラダラしてから行こっか」
(……よし、作戦成功。)
「どう? もうそろそろ大丈夫?」
「……うん。名残惜しいけど、また来れるもんね」
「いつでも来れるさ」
一時間ほど家を堪能した後アツコも満足したようなので、次の用事を済ませに行く。というか今回ここまで足を運んだのは、これが理由だ。
「あったあった……随分量が増えたな?」
「これも懐かしいね」
目の前には、まるでただの雑草のように生い茂っている植物があった。
これは以前、アツコが見つけた物だ。その時食べてみたらおそらく毒があると判断したため、俺以外その味は知らない。
「じゃ、一本もらいまして……アツコは触るなよ」
「気になるけど、勉強して危ない植物があるって知ったから。大丈夫」
「ちゃんと覚えてくれてるみたいで嬉しいよ」
前にふと黒先にこの話をしてみたところ研究してみたいと言ったため、今日は採集に来たのだ。
これで詳しいことが分かって、もし品種改良などが成功すれば、皆にもこれを食わせてやれる。このアリウスで一番旨いの、絶対これだからなぁ……なんか複雑。
そうそう、近い内に農耕も始めようと思っているのだ。ここの土地の詳しい解析を黒先に頼んでいて、それが完了した。その結果、この湖の周りだけはまだ土地が死んでいない、それどころか最良状態であることが判明した。……まぁこれがあった時点で、ここならいけると思ってはいたが。
後、黒先が妙に興奮してたのが印象に残ったな。なんでも『大地に神秘が染み込んでる』らしい。しかもそれはこの湖の水由来だとか。
「難しいことはあんまり分かんねぇんだよな……」
「ユウジ、そろそろ着くよ?」
「お、おう。悪い、考え事してた」
「それじゃ……またね」
「あ、アツコ?急にどうした?」
一声かけた後、アツコは走り出して行ってしまった。なにかあったのだろうか?
疑問を感じつつも門をくぐり抜け、寮へと歩 く。その中で、さらに疑問に思うことがあった。
驚くほど人がいないのだ。
普段なら俺が教えた遊びを校庭でやってたり、銃の訓練をしたりしてるのだが、今日はそんな様子は一個も見当たらない。こんなに静かな日はいつぶりだろうか。
というか、もう寮に着くのにアツコはどこに……
「「「お誕生日おめでとう~!」」」
「…‥え?」
寮に入る扉を開けると、サオリ、アツコ、アズサの三人がそう言って俺の方に向かって来た。いきなりのことで思考が追い付かず、妙に冷静な頭で奥を見ると、沢山のアリウス生の姿も見えた。その中にはカナデも……ん?向かって来てる……
「あれ?今日って……俺の誕生日?」
「そうだ。いつか言っていただろう? 『俺は三月の……確か、二十日だったか? の生まれだよ。』と」
「覚えてたんだ……皆も、俺のためにこんなことしてくれたの?」
「あぁ。ちなみにミサキとヒヨリは今食事を用意してる。……それと、飾り付けは私達でやった。えっへん」
ちらっと視界の端で見えていた、ここで用意されたとは思えないぐらい豪華な飾り付け。…‥よく見ると、ところどころに綻びがある。多分これらは自作なのだろう。
細い木を吊るし、先端に花束が付けてある物。精一杯頑張ったのだろう、花がそこら中にバラまかられていて、まるで花畑にいるような感覚を覚えた。
「綺麗でしょ? これの配置、全部私が考えたんだ」
「あぁ。本当に、綺麗だ……」
「お、お待たせしました~! 出来ました!」
「はぁ……疲れた」
「二人とも……それ、作ってくれたのか?」
「ゆ、ユウジさん!? ま、間に合いませんでしたか……はい。あの時作ったあれよりいいできになってると思います。ミサキさんも手伝ってくれましたし」
「奥にまだまだあるから、ユウジは何も気にせず食べな。……いつもみたいに、私達に遠慮しなくていいから」
「バレてたのね……」
「ゆ、ユウジさん!」
カナデから声をかけられたためそちらを振り向くと、カナデを始めとしたアリウスの皆が俺を見ていた。
「これ、受け取ってください!」
「……メッセージカード?」
「はい! 皆で書いたんです。本の中みたいに何かをあげることはできないですけど、これなら私達でも準備できると思って」
「いつもありがとう! 貴方のおかげで私、字が読めるようにもなったし書けるようになったよ!」
「後、いろんな遊びを教えてくれてありがとう! 今まで銃を使ったことしかできなかったけど、初めて誰かと遊ぶってことが分かった!」
耳に聞こえてくる声に手が少し震えながらも、何枚も束になったメッセージカードをめくってみる。
そこには様々な、俺に向けた感謝の言葉が綴られていた。
『いつも色んな新しいことを教えてくれてありがとう!』
『建物を綺麗にしてくれてありがとう!』
『少しだけ、少しだけなら、貴方のことを信じてもいいかもしれません。……あの時くれたシチューの味は忘れません。』
『まだ、マダムの言ってたことが間違いだって認識はできない。虚しいって思ったのは本当だったから。けど……貴方の考えの方が、私はいいと思えた。』
「えっ……ユウジさん?」
次第に、字はよく読めなくなってしまった。
溢れてくるのだ、涙が。
整っているわけじゃない、なんなら読むのに少し苦労する一文字一文字が、俺の魂に直に伝わってくる。
気持ちを伝えるのに丁寧さなんて、必要ないのかもしれない。
だって俺は今、こんなにも
「うぅっ……あぁぁ~!」
満たされているのだから。
「さ、サオリ!どうすればいい!こんなこと初めてだ!」
「私だって初めてだ!ユウジが泣くところなんて……出会ってから見たことがない」
「ユウジさん……うわぁぁん!なんだか私も泣けてきちゃいました!」
「ヒヨリまで泣かないでよ……」
「ユウジ、可愛い♪」
それからは俺が泣き止んでから、パーティーをした。感想は、そうだな……
生まれてきてよかったって、ここまで頑張ってよかったって思えたかな。
どうでしたか?こういうのを書くのは初めてで、上手く書けたか不安です。
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