新章開幕への布石、といったところでしょうか。ここから本格的に原作と絡んでいきますので、どう変化していくかその目で確かめて下さい。
年齢
サオリ 15歳
ミサキ、アズサ、ヒヨリ 14歳
ユウジ、アツコ 13歳
ここ、どこ?はは……遭難、ってやつかな。
時間感覚もあんまりないから、もう何日砂漠にいるのか分からない……まだ生きてるから、三日は経ってないのかな?
あっ……倒れちゃった。速く起きて歩かないと……あれ?
ちから、はいらないや。
こんぱす、あれだけいわれたのにわすれちゃってたなぁ。あったら、こんなことにならなかったのになぁ。
ごめんね、ほしのちゃん。
「GRYUUUUUUUUUU!」
巨大な大蛇のような機械が、砂の世界に顕現する。
何の因果なのか。"違いを痛感する静観の理解者"もとい"第3セフィラ"の名を冠するもの"ビナー"が、彼女の前に姿を見せた。
それは近くにいる生命体を狙うよう設計されている。命の気配など微塵もしないこの砂漠において、狙われるのはただ一人。
「GRYU……」
言語に表せぬ起動音のようなものを鳴らし、ビナーは攻撃準備を始めた。
使っていなかったコンピューターを起動し、照準を合わせる。
「UUUUUUUUU!」
先ほどのような叫び声を上げ、無数のミサイルが発射された。
それは生き物のように動き、彼女へと向かう。ヘイローを持つものであればそこまで傷つかないが、彼女は今脱水症状により死にかけている。
食らえば、そのヘイローは輝きを失うだろう。
だが、数奇な運命とは起こるもの。
これもまた、何の因果なのだろうか。幸か不幸か、彼ら……まぁ男など一人しかいないが、ある者達がこの地を訪れていた。
……あなた、だぁれ?
彼女が最後に見たのは
ピンク色の髪の毛を持ち、赤いパーカーと黒一色の服を身に纏った少年の姿だった。
「なんて威力だよ……」
倒れている少女を庇い、攻撃を全てを受けた……中々のダメージだ。右腕を前にしていたから左腕に支障はないが、それでも久しく感じていなかった痛みに少しの戸惑いを覚えた。
(呪力の防護が貫かれた。自分の血を見るのは久しぶりだな。)
「ユウジ!無事か!」
「なんとか!」
「無理はするな!……強いな、間違いなく」
「ひえぇ……大きいですねぇ。こ、怖いです」
「……こんなのがあちこちにいるんだったら、アリウスの外は魔境だね」
「確かに怖い。だが……良い機会だ。これまでの修行の成果、存分に発揮させてもらおう」
標的を分析する者、恐怖を覚える者、悲観する者、立ち向かう者。それぞれがそれぞれの視点で、その大蛇を見つめていた。
「アツコ、その人の具合は?」
「……脈はある、弱いけど。熱中症は確実、脱水もかなり時間が経ってる」
「今から処置して間に合うか?」
「分からない。けど……可能性は0じゃない」
「オッケー。アツコ、地図は頭の中に入ってるか?」
「病院の場所なら」
「よくやった。俺たちがこいつを引き付けるから、アツコはその人を病院まで連れてってくれ。後から必ず向かう」
コンパスを投げ渡し、再び目の前の敵を捉える。
「……信じてるから」
「
こうして彼らが何かに立ち向かうのは、これが二回目だ。だがあの戦いとは一つ、異なる点がある。
一人を除き、全員が肩を並べていることだ。
銃を構え、敵を見据える。そんな動きをしている仲間達を見て、彼は不思議な感覚を抱いた。
目の届かないところでの共闘というものはお互いに確かな信頼を感じはするが、その反面『孤独』という側面があった。
だが今は違う。目を動かせばすぐ側に頼れる味方がいる。
(良いもんだな、こういうの。)
「GRYU……」
ビナーはクールダウンを終え、新たに捕捉した"六人+一人"を攻撃しようとする。
だがそれよりも速く、何かに感づいたサオリとアズサの銃撃がビナーに炸裂した。
それにより生じた隙。彼らはそれを見逃すほど間抜けではない。
(ここでヘイトを買い切らないといけない。絶対後方の二人に注意が向かないように、こっちの危険性を分からせないと。)
手を拳銃のようにし、人差し指と中指の間に手の中の血管から『百斂』を作成。それを二本の間に引き伸ばし、圧縮。
「穿血!」
ミサキのロケットランチャー、ヒヨリのスナイパーライフルの弾丸もそれに追従し、ビナーに命中。その一連の攻撃は、ビナーに確かなダメージを与えた。
「GRYUUUUUUUUUU!」
ビナーは唸り、攻撃対象を"五人"に限定する。
それと対をなすように、彼らも叫んだ。
「アリウススクワッド、いくぞ!」
「「「「
そこから始まったのは、『正しい道筋』を変える戦い。
ここから本格的に動き出すのだ。
『彼ら』の物語が。
「俺がアツコに変わってタンクをする。引き付けるから、その隙に攻撃してくれ!」
「こっちだ!」
先刻穿血を命中させたことによりビナーの内部に残っていた血液。彼はそれを爆発させると同時に蹴りを入れ、注意をこちらへと向けた。
その狙いは上手くいったようだ。ビナーは体の向きを変えて、彼に対しミサイルを放った。
(赤化、臨界、魂の循環……)
「赤鱗躍動!」
一発ずつ発射しているため、その速度自体は先ほどより増している。だが単発であるため、振り切ろうとすれば振り切れてしまう。
術式の発動。それにより彼の動きは何段階も増し、砂漠を縦横無尽に駆け回った。
ビナーはそれを見て、手段を変える。
(……何かを溜めている? 口を開っ!?)
少しのタメ動作の後、ビナーは一直線にビームを放った。彼は咄嗟に避けたがかすってしまい、ダメージを負う。だが間違っても皆を狙わせてはいけないと姿勢を直し、逕庭拳も絡めながら注意を引き付ける。
この間も勿論、彼女らは攻撃している。だが……
(くそっ! この程度の銃ではあの装甲を貫けない!)
ビナーの装甲は彼女らが対峙してきたどんな物よりも分厚く、硬かった。ダメージ自体はビナーの内部に蓄積されてはいるが、動きを止めるレベルには到底たどり着いていない。
(今思い付くのは二つ。一つはこの状態を維持し、奴の装甲が崩れる程のダメージを積み重ねること。二つ目は……)
「ミサキ、どうだ?」
「……リーダーの言いたいことは分かる。けど多分、相当良いところに当たんないと無理。それでも大したダメージになるかどうか……」
「"あれ"を使っても、か?」
「!……確かに、あれを使えばいけるかもしれない。でもいいの?ユウジから『まだ実験が済んでないから出来れば使わないで』って言われたけど」
「それは安心しろ。……私が先に使う」
それは虎杖ユウジが各々に用意した秘密兵器。高濃度の呪力を一発一発に込めてあり、あの世界なら"呪具"と称される物。
昔の戦闘の記録から、彼女達が呪力を持つ物を扱っても大丈夫だと彼は判断した。しかし黒先から『神秘と呪力が絡み合った時、何が起きるかは想像がつかない。』と忠告を受けたため、彼女達にも同じように忠告をしていた。
取り上げなかったのは、もしもの時のためである。
「どこを狙えばいい?」
「!アズサ……狙うはタメ動作に入ったタイミングだ。出来れば胴体の低い位置を狙え。」
白州アズサ。彼女もまた、黒のマガジンを装填していた。
(っ!今!)
自然と漏れだした神秘と高濃度の呪力が絡み合ったエネルギー。それは物質を内部から壊さんと荒ぶるが、弾丸という器が存在していたことと"完全な調和"ではなかったことにより、それは安定した。
二者の同時発砲により、初めて銃撃によるビナーへのダメージが確認された。
「GRYUUUUUUUUUU!」
ビナーはそこで、ただ自身の攻撃から逃げ回る存在でしかないもの、虎杖ユウジから標的を彼女達に変更しようとした。
本来、ビナーは五人程度なら一斉に攻撃することが出来る。だがあるものが、それを不可能としていた。
ビナーの内部に侵入し、そのまま流れて深部へと入った"虎杖ユウジの血液"が、コンピューターの動きを阻害していたのだ。
微量ではあるがそれには"毒"が含まれていたため、ただの血液というなんの問題にもならないものが異物として認識されていた。
今のビナーに可能なターゲッティングの数は、精々2人といったところだろう。
__何もかもが思うように進まない。使命を果たさなくてはならないというのに……あの存在はなんなのだ?データにはない『
奴を、
そこで"違いを痛感する静観の理解者"は、ここまでの戦いから彼を分析した。
____性別、男。ヘイローは存在しない。体の硬度、身体能力は並みではない。人間の肉体がその次元に到達することは不可能。ビームのようなものを放てる。血になんらかの特殊な物質が含まれている。別の根元が存在している?
所要時間、三秒。
その僅かな時間でビナーは、呪力へとたどり着いた。
(……俺の攻撃の効き目が、少しだけど軽減されている?さっきから穿血も微動だにしなくなった。まさか……)
(最初に比べ、弾丸の効力が薄くなった?)
「……!ミサキ!今すぐ発射しろ!」
「了解」
中々の距離にも関わらず、戒野ミサキそれをしっかりと命中させた。だが……
(やはり、思っていた程のダメージがない。ロケットランチャーの弾丸に込められている呪力は私達のものより多いというのに……まさか)
((耐性が出来ている?))
両者は、同じ結論にたどり着いた。
(ヒヨリが撃っている弾丸は先ほどと変わっていない。威力もだ。だがそれよりも強いはずのこの弾丸は少しづつ効かなくなっていっている……ユウジが持っている呪力自体の効き目が薄くなっているのか?)
「GRYUUUUUUUUUU!」
(!さっきのあの攻撃か?俺にくるならまた耐えて……おい、なんで体の向きを変える!?)
「!総員、退避!」
ビナーは、考える隙を与えない。
虎杖ユウジはその攻撃を止める、もしくは自身に向けさせるため、接近し有らん限りの猛攻を仕掛ける。
たがそれが、それこそが、ビナーの狙いであった。
"大道の劫火"それはいってしまうなら、ミサイルの一斉照射。つまりは
何回でも放てるということである。
ビナーは虎杖ユウジを完全にスルーし、攻撃対象を錠前サオリと白州アズサに変え照射。
「リーダー!」
「アズサさん!」
「「!」」
(どうするか。この位置だと私以外も巻き込んでしまう。なら)
「!アズサ!手を離……ミサキまで!」
「ヒヨリ!駄目だ!」
その後インターバルを置かず、近づいていたためロックオンまでの時間が短縮できた虎杖ユウジに向け照射。
ミサイルの雨という表現が適切だろうか?天から降り注ぐそれは不可避の大雨を想起させ、砂の大地を揺らした。
「GRYUUUUUUUUUU!…GRYUU……」
「……ぐはっ!」
膝を着き、地面に倒れる。
(守れなかった……それに、殆どノーガードで全て受けてしまった……)
痛み。一瞬ではあるがそれが思考の全てを支配し、彼に片腕を失った瞬間を思い出させた。
(俺が生きているから、皆も多分死んではない。……立て!立てよ!)
「ぐうぅ……!」
(……奴の動きが、止まってる?静かだと思ったらそういうことか。皆は……)
彼が見たのは、倒れている二人の少女と
覚悟を決めた、二人の戦士の姿だった。
「ミサキ!ミサキ!くっ……」
「ヒヨリ!しっかりしてくれ!」
「わ、私が無傷でリーダーが怪我するより、リーダーが無傷でいる方が役に立つでしょ?別にこの程度じゃなんともなんないよ……うっ」
「え、えへへ……私はお役に立てそうにないので、せめてアズサさんを庇おうと思ったんです。……役に、立てましたか?」
「ヘイローがあるからといって自分自身を過信するな!人は簡単に怪我をするし血を流す!それを私達は十分理解していただろう!休め!」
「ヒヨリもだ。目立った怪我は見えないけど、体内には衝撃が伝わって負担がかかっているはず。休んで」
「……ごめん、体が弱くて」
「役に立てなくて、ごめんなさい……」
神秘の保護とは強力だ。銃弾を何十発食らった所で命に別状はない。今も多少のダメージが残留しているだけであり、一時間もすれば全快するだろう。
だが、そういう問題ではない。
「アズサ、分かってるな?」
「あぁ……ミサキとヒヨリを傷つけた罪、必ず精算させる!」
「二人共!無事か!?」
ビナーの動きが止まっていたことにより、彼は彼女らに合流した。
「ユウジ……うん。ちょっと痛いだけ」
「ユウジさん……はい。ただちょっとだけ、苦しいだけです」
(血は流れてない。だけど、痣ができてる。……)
「……許さねぇ。」
(あれを出す。まだ不安定で不完全で不確実、だけどそんなことを言ってる場合じゃない。)
「サオリ、アズサ。こっからは三人で行くぞ。いっきに決める!」
「「応!」」
彼に残っている呪力は後五割といったところだろう。その中の二割を使用し、ある秘技を発動させる。
「赤血操術『極ノ番』!」
それは"虎杖悠仁本人"の血縁である者達が使っていた、赤血操術の奥義の一つ。
「『
やっぱり、戦闘シーンって難しいです。ですがとりあえず出したかったものは出せたので、ひとまず安心です。
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