虎杖悠仁に成り代わった男の青春物語   作:ブルアカ大好き

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多分過去最高に長くなりました。書きたいこと全部書いたらこうなっちゃった……

それでは、どうぞ!


アリウススクワッドVS違いを痛感する静観の理解者・下

 網状の蝶の羽のようなものが彼の背に顕現し、周囲には異様な空気が立ち込める。

 

『極ノ番』それはいうなれば、各々の術式に用意されている最終奥義のようなもの。制御出来るのであれば必殺の手となりえるが、手綱を握れなければイタズラに呪力を消耗し続けるのみ。

 

(安定、安定、安定……これの性能を完璧に引き出せていられるのは多く見積もって三分ってとこだ。それ以上続けようとすれば体にガタがくる。)

 

 漏れ出ている呪力からも、それは推察出来る。周囲に立ち込める異様な空気の正体は内に抑え込めていない呪力であり、彼が未熟な証でもある。

 

 『不完全な奥義』という名が、今の彼の極ノ番には相応しいだろう。

 

「……GRYUUUUUUUUUU!」

 

 極ノ番発動とほぼ同時、ビナーが硬直から復帰した。

 

 大道の劫火を連発したことにより、数十秒の間ビナーには待機時間(インターバル)が発生していた。それが解けたのである。

 

「獣の叫びも聞き飽きたな……どう攻める?」

 

「俺に考えがある。サオリはアズサと同じ位置をキープして攻撃してくれ」

 

「何をする気だ?生半可な攻撃じゃ、奴には通用しないと思う」

 

「大雑把に言うと、俺が奴の動きを止める。まだ黒のマガジンは残ってるだろ?それを全部使ってくれ」

 

「じゃ、行くぞ!」

 

「「了解!」」

 

 三人VSビナー。何のバフも支援もなしに、このマッチアップは成立しない。ビナーはそれほどまでに強大であり、他と一線を隠す強さを持っているのだから。

 

 "正攻法"なら、の話だが。

 

 虎杖ユウジは先ほどと同じように砂漠を駆け回り、ビナーに物理攻撃を仕掛ける。

 

 そのタイミングで『翅王』から血液を発射。それはビナーに付着する。

 

 続けて、残りの二名も攻撃。勿論、使用しているのは呪具と化した弾丸だ。

 

「GRYUUUUUUUUUU!」

 

 それを鬱陶しく思ったのか、ビナーは体を捻り、辺り一帯を攻撃する。

 

(この範囲では避けきれない!)

 

(食らえばただじゃすまない。しかも巨体が動いているせいで、一時的な砂嵐まで向かって来ている!?)

 

 不幸にも、ビナーのその動きは砂嵐を誘発していた。このまま振り切らせてしまえば、それに巻き込まれるのは想像に固くないだろう。

 

「そう何度も何度も、お前の思い通りにさせて堪るかよ!」

 

 血液で構成された左腕に限界まで呪力を流し、硬度を底上げ。右腕、両足にも呪力を回し、翅王を地面に突き刺し体を固定。

 

 頭の前に腕を交差させ、迫りくるビナーを受け止める。

 

「うおぉぉぉぉぉ!」

 

(踏ん張れ!砂嵐に巻き込まれたらどうなるか想像が付かない!)

 

「!?……二人共!」

 

「力になれるかは分からないが、何もせずにはいられなかった!頑張れ!」

 

「微々たるものだけど……私の全力、出しきる!」

 

 サオリは左肩を、アズサは右肩を後ろから支える。ヘイローを持つ者とて、この威力を正面から受け止めることは難しい。

 

 そこで、壁は壊れた。

 

 二者のヘイローは輝きを増し、纏う神秘は増大する。

 

 それはかつてのアリウスで観測された事象。自身の限界という壁を打ち破り、新たな力を得ることの出来るもの。

 

 名を

 

『神秘解放』

 

「「「うおぉぉぉぉぉ!」」」

 

 ビナーの全体重、それはtを優に越える。本来物理法則を用いるのなら、受け止めきるのは不可能。それを無意識化で悟っていたユウジは、別の手を打っていた。

 

__何故だ、何故押しきれない。神秘が多少増えたところで、力の差が覆るレベルでは……!?血の……(くさび)?___

 

 先刻付着させていた血液。それを細長い楔のようにし、ビナーの動きを阻害していたのだ。

 

 その数、十五。

 

 十五個の小さな楔、それに含まれる毒。この二つの要因により、ビナーの力は弱体化していた。

 

(呪力が足りない!もう踏ん張っていられるだけの力を供給できない……考えろ。考えろ。考えろ!)

 

 拮抗。死力を尽くしたことにより、両者は押し合いが成立していた。しかしそれは長くは持たない。その刹那の時間、彼はこの状況を変える打開策を導き出した。

 

(……!そうだ。左腕を構成する時に使用した血液は今使える最大の武器。一瞬片腕で耐えなきゃならないけど、それを乗り越えさえすれば……)

 

「サオリ!アズサ!今からかかる負担が大きくなる!一瞬耐えられるか!」

 

「「無問題(もーまんたい)!」」

 

「よし!」

 

 左腕に圧縮されていた血液が全て解放され、眼前には血の海が形成される。瞬間的に負担は数十倍にも増すが、彼らは耐えきった。

 

 赤血操術で血をビナーの全体に付着。一部分一部分に有る血液は少ないが、充分であった。

 

「炸裂しろ!」

 

 鼓膜が破れるかと思う程の轟音。ミサイルなどの音と比べてもそれは並み外れており、砂漠を超えて響いた。

 

「GRYUUUUUUUUUU!」

 

__異常発生。深刻なダメージを確認。理解、理解……不能!___

 

 苦し紛れという表現が正しいか。ビナーは彼らから離れ、再び大道の劫火を発動させた。

 

 三人は既に分散している。何度も食らったのだ、慣れたのだろう。

 

 それを放った後追撃として、ビナーはビームを放とうとした。

 

(これを待ってた!動きが止まるこの瞬間を!)

 

 ミサイルは全て標的に着弾。死力を尽くした弊害により、三人それを避ける力は残されていなかった。

 

 出来たのは、ダメージの軽減のみ。

 

(出来た!赤血操術で体に薄い血液の膜を張ってバリアの代わりにする。名付けて……『赤膜(せきまく)』ってとこかな!)

 

(ユウジが言っていた通りだ。ミサイルが自身に着弾する瞬間銃で迎撃。あの時より、威力が軽減されている。意味がないと思っていたが、これも呪力の力なのだろうか?)

 

(間一髪間に合った……シビアだな。)

 

『赤膜』は今この瞬間思い付いた虎杖ユウジのオリジナル。全てを受け止めることは出来ないが、軽減には持ってこいだ。最も出力によってその効果は増大するが。

 

 二人にもこれは施されており、ミサイルの威力軽減に一役買った。

 

 不完全ながらも防御の術を得たことにより、多少の無茶が彼には可能となった。

 

 ミサイルが着弾したにも関わらず、そのままビナーへと接近。ビームの照準が完全に自身を捉え放たれた瞬間に範囲外へと思いっきり踏み出し、無防備となった胴体と頭に向けて無数の血液を発射。これで全身への付着が完了し、準備は整った。

 

「うおぉぉぉぉぉ!」

 

 ビナーへと飛び乗り、上を駆ける。その間一つ一つの血液を鞭のように変化させ、まとめて右手に持つ。

 

(動く前に終わらせろ!変化させながらそれぞれの硬度向上も忘れずに!)

 

 ビナーの頭部から、後ろを向いて跳ぶ。

 

 その姿はまるで獲物を捉えた漁師のようで、網の一本釣りと表現するのが正しいだろう。

 

「赤!縛!」

 

 ビナーの全身を締め上げる赤い縄。捉えられた獲物のようだ。

 

 隙だらけである。

 

「ここだな……アズサ、準備はいいか?」

 

「大丈夫。ふぅー……」

 

 無意識の領域において、この二人は神秘の概念を掴んでいた。本来精神を統一させる、闘気を滾らせるなどの行為はこの二人にとって、力を集中させる時間だった。

 

 高濃度の神秘と高濃度の呪力。その正反対のエネルギーを含んだ聖と邪の弾丸は、淡い光を纏い着弾した。

 

「GRYUUUUUUUUUU!GRYUUUUUUUUUU!GRYUUUUUUUUUU!」

 

 三度の咆哮。深刻なダメージを負ったビナーの動きは鈍り、頭上のヘイローの輝きは少しくすんだ。

 

(いける!勝てる!)

 

(体から何かが抜け出した感覚だ……これを上手く扱えるようになったなら私は)

 

(くっ……もう、力がはいらない。だがこれを自由自在に扱えるようになるなら私は)

 

((もっと強くなれる!))

 

 白州アズサ、錠前サオリの二名は神秘の放出というキヴォトス人の裏技のようなものを使用したため、疲労度が最大に達した。

 

 虎杖ユウジは赤縛を解かず、最後の一撃をいれにいく。

 

 それはかつて、『ベアトリーチェ』に放った一撃を想起させた。

 

(いっ……けぇぇぇ!)

 

 当たれば、『黒閃』が出ていたかもしれない。

 

「GRYUUUUUUUUUU!」

 

 ビナー、魂の叫び。その音圧により、虎杖ユウジの体を吹っ飛ばす。

 

(くっ……うわぁぁぁぁ!)

 

 勝利を確信した時、人は最も油断する。それが彼にも、少しではあるが存在していたのだろう。

 

 対する者は、最後の最後まで勝利を掴むことを諦めていないというのに。

 

 ビナーの口がかつてないほど開かれ、何かのチャージを始めた。

段々と光は増していき、それはまるで星の輝きのようだ。

 

(これは……ビーム?けど、規模が段違いだ。……!?まさか、まさかあいつ!)

 

(狙いやがった!ミサキとヒヨリを!)

 

 ビナーはそれまでの戦いから、そうすればいいと学習した。この者達は危機に晒されている人間を助けずにはいられないと。

 

「二人共ー!なんとか動いて、ヒヨリとミサキを担いで遠くに避難してくれー!」

 

 彼の叫びは、願いは、その突発的過ぎる一見意味不明な言葉は、瞬時に伝わった。

 

「急げアズサ!恐らくではあるが奴があの二人を狙ったんだ!」

 

「はぁ、はぁ、はぁ……間に、合え!」

 

 それぞれが限界を越えている体に鞭を打ち、動く。

 

(俺は……)

 

「おい!俺はここだ!狙うなら正々堂々俺だけを狙えよ!」

 

(全部だ。全部使って、こいつの照準を俺に合わせるんだ!)

 

『恐怖』『痛み』『怒り』。負の感情、呪力の源は出揃った。

 

 それまで枯渇気味だった呪力は滝のように溢れ出し、『翅王』をもう二回程発動することも可能になった。

 

 逕庭拳の連発、血液を付着させてからの爆発、練り上げた穿血。御廚子さえも解放し、その勢いは今ここでビナーを仕留めんとする勢いだ。

 

(これまで御廚子を使わなかったのは、単に切れるイメージが出来なかったから。今の弱ってるこいつの装甲なら……切れる!)

 

 呪術とは思い込みの側面も強く、実際の固さなどはあまり関係なかったりもする。現にビナーの硬度自体はそこまで落ちていないが、御廚子で傷がつくようになっている。

 

__合理を取れ。最良を取れ。心など我にはない。……だが、アツィルトの光を奴にぶつけねば意味がない。この状態が維持されてしまえば弾道上に奴は……___

 

「GRYUUUUUUUUUU!」

 

 合理的だろう。範囲的に虎杖ユウジがそれから逃れることは出来ない、そうならば確実に仕留められるのだから。

 

(やっとこっちを見たな!)

 

 勝算など存在しない。今から放たれる攻撃を食らえば彼は消滅するだろう。

 バカな男だ。キヴォトス人の肉体は彼が思っている以上に強く、強靭であるというのに。

 

 だがその、他者の為に己を犠牲にせんとする覚悟は、『虎杖悠仁』本人を想起させた。

 

(一か八か!賭けてやる!)

 

 『赤膜』を球状のバリアのようにし、自身を包み込むように展開。ビームが発射されるまでの刹那の時間で最大限呪力を注ぎ込み、硬度を極限まで上げる。

 

「!……なんだ、あれ?」

 

「ここまで逃げているというのに、それでもギリギリだったか……ユウジ、無事だよね?」

 

 白州アズサが疑問を持ってしまう、錠前サオリが思わず素を出してしまう程の、超広範囲を滅する極光。それは砂漠を、大地を揺らした。

 

「はぁー……はぁ!……耐え、た。耐えたぞ!」

 

 所々に火傷の痕が見られるが、その命は揺らいでいない。ビナーにとってこの結果は、まさに大誤算といったところだろう。

 

(奴は今、さっきと同じように動きが止まってる。仕留めるなら、ここしかない!)

 

__理解不能、理解不能、理解不能、理解不能、理解不能理解不能!何故!何故だ!__

 

 ビナーの真正面に跳び、右腕を振り上げる。

 

(黒閃には頼れない!あれが出なかったとしても倒さなければならない!)

 

(どうするどうするどうする!……縛り、一部分、一瞬に限定、代償。)

 

 それはまだ、技というには荒削りであり、偶然の産物。赤鱗躍動の発動を右腕、攻撃の一瞬に限定し、その後二十四時間赤血操術の使用を不可とする縛りを結ぶことで実現されるもの。

 

 まるでロケットのような勢いで、右腕は振り抜かれた。

 

「GRYUUUUUUUUUUUUUUUUUUUU!!」

 

(も、捥げるかと思った……痛っってぇ……)

 

 彼はそのままの体制で地面に落ち、意識を朦朧とさせる。

 

(奴、は……)

 

 後ろから、凄まじい轟音が響く。それはビナーが地中に潜る音であり、撤退を意味していた。

 

 勝ったのだ、彼らは。

 

「ユウジ!ユウジ!」

 

「サオリ……奴は?」

 

「地面に潜っていった。とにかく、私たちは勝ったんだ!」

 

「そうか……急がないと。アツコと、あの人が心配…ぐっ……」

 

「無理するな!サオリ、心苦しいが二人を起こすぞ!ユウジを支えないと!」

 

「そ、そうだな。すまないミサキ、起きてくれ!」

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 同時刻、アビドスに唯一存在する病院にて。

 

「それでは一旦、外でお待ち下さい。容態については精密な検査の後、お伝えします」

 

「はい」

 

 秤アツコは無事に、梔子ユメを送り届けた。それにより運命が変わっていることを彼女が知るよしはないが、偉業を成し遂げたといっていいだろう。

 

(皆、大丈夫かな……このコンパスの中の発信機がちゃんとあの場所からでも機能するといいんだけど……)

 

 これも裏話だが、それらは黒先開発なため、機能しないということはない。

 

 それから約、15分後。ドタドタと慌ただしい足音が病院内に響き、ドアが開いた。

 

「皆!」

 

「はぁ……はぁ……もう、走れない……」

 

「アズサ、弱音を吐くな……いや、謝罪しよう……私も、限界だ……」

 

「…………」

 

「う、うわぁぁぁぁん!皆屍みたいですぅ!特にミサキさんはもう喋ってもくれません!」

 

「落ち着けヒヨリ……皆、疲れてるだけだ……アツコ、どうだった?」

 

「今、お医者さんが診てるところ。わりと時間たってるから、もうそろそろ呼ばれるかも」

 

「そうか……その時になったら、起こして、く、れ……」

 

「ユウジさんも倒れちゃいましたぁ!……アツコちゃん?」

 

「ほんとは皆にやってあげたいけど、私の膝は一つしかないから……ごめんね」

 

彼女は彼を長いソファーに乗せ、膝枕をした。

 

「お疲れ様、ユウジ。……ヒヨリ、皆をここに寝かせてあげて?」

 

「は、はい!」

 

 聖母のような微笑みで頭を撫でるその姿は、まさに女神のようだった。

 

 

 

 

 

 

「秤アツコさん……お連れの方ですか?」

 

「はい。ほらユウジ、起きて」

 

「ん、んぅ……後五分だけ……はっ!しまった外だった……」

 

「ふふ」

 

「……お連れの方も、ご一緒に聞きますか?」

 

「お願いします」

 

 中に入ると、そこはまさに病室といった具合だった。白の無機質な感じで、椅子が計三つ、机の上に様々な資料やカルテが置かれていた。

 

「梔子ユメさんの容態を単刀直入に言うと、熱中症の重傷化による意識障害。といったところでしょうか。詳しい病名や症状は後で説明しますが、もしかしたら二度と目覚めない可能性も視野に入れておいてください。しかし、本当にギリギリでした。後五分でも遅れていたら助からなかったと思います」

 

「そう、ですか……あれ?梔子ユメって……」

 

「名前をご存知でなかったのですか?……彼女はここ、アビドスに唯一残った高校『アビドス高等学校』の生徒会長です。数少ないですが、彼女の他にも生徒がいたはずです。ご連絡した方がよろしいかと。私たちは許可なくそのようなことはできませんので……」

 

「番号教えてくれませんか?」

 

「……どうぞ」

 

「ありがとうございます」

 

 スマホを取り出し、電話をかける。約一分程コールが続いたのでいないのかと思ったが、ようやく繋がった。

 

「もしもし?」

 

『……なんの、用でしょうか』

 

「そちらの学校の梔子ユメさんを保護したのですが『本当ですか!?』うおっ……はい。今病院にいます。場所は一階の、202号室です」

 

『すぐに向かいます!』

 

「切れた……ここに来るそうです。しばらく待っていただけますか?」

 

「はい」

 

 

 

 

 

 

 

 ドアが勢い良く開かれ、ビンク色の少女が姿を現した。

 

「はぁ、はぁ……ユメ先輩は!ユメ先輩はどこですか!」

 

「……こちらです」

 

 医者はこの病室を出て、別の病室に向かった。それに着いて行っていると、少女が話しかけてきた。

 

「……貴方が、先ほどの?」

 

「はい、虎杖ユウジといいます。こっちは秤アツコ。彼女が梔子ユメさんを運んでくれたんですよ」

 

「ありがとう、ございます……本当に……」

 

 そう言うと少女はアツコの手を握りしめ、声を震るわせながら絞り出すように言葉を紡いだ。

 

「……砂漠で、倒れてたんだよ?」

 

「!やっぱり……私は、見つけられませんでした」

 

「こちらです」

 

「……ユメ、先輩?」

 

 医者がドアを開けると、中にはベッドに眠っている梔子ユメさんと無機質な病室が見えた。

 

「探したんですよ?一生懸命……良かった、生きてて……良かった……」

 

「……アツコ、よくやったな」

 

 ベッドにすがりつく彼女の姿を見て、そう思ったので頭を撫でながらそう言う。

 

「ユウジこそ。あれ、どうしたの?」

 

「俺は強いんだ。皆と力を合わせれば余裕だったぜ……な、なんだよ」

 

「左腕、それさ、ハリボテだよね」

 

「!……」

 

「袖で隠してるけど、あの血のやつ、ないよね。……しかも膝枕してた時に気づいたけど、火傷いっぱいしてるよね」

 

「……上手く、誤魔化せたと思ってたんだけどなぁ……」

 

 皆から色々貸してもらって誤魔化してたが、やはりアツコにはバレるようだ。

 

 ちなみに、傷の部分はガーゼで保護している。ばい菌がもしはいったら終わりだからな。

 

「……皆さん、少しよろしいでしょうか」

 

「俺達だけじゃ駄目ですか?」

 

「出来れば、全員にご説明させていただきたいです」

 

「なんでしょうか?私は大丈夫です」

 

「……この場ではあれですので、戻ります」

 

 

 

 

 

 

 

 

「……出来れば、こういう話しはしたくないのですが……治療費の話です」

 

「!……いくら、ですか?」

 

「総合して、このぐらいはいってしまうかと。……借金で苦しんでいる貴女達アビドス高校には酷ですが……」

 

 その紙には、"1000"万と書かれていた。

 

「それに加え、維持費もかかってきてしまいます。……どう、しますか?」

 

(毎月の利息分を支払うだけで限界なのに、そこにこんな額……いや、頑張るしかない。)

 

「……本来なら、ここまでかからないのです。ただ必需品が軒並み入手困難なのが現状でして……」

 

「払います。その代わりにどうか、どうかユメ先輩を助けて下さい」

 

「……最善を尽くします」

 

「すみません。それ、俺も払います」

 

「!……ユウジさん、何を……?」

 

「このまま見捨てられないですよ。それに借金があるんでしょう?せめてこのぐらい、お手伝いさせて下さい。乗り掛かった船ですし」

 

 それは彼女……小鳥遊ホシノが先輩以外から久しく受けていなかった"優しさ"。

 彼女の心境は、察するにあまりあるだろう。

 

「……いい、のですか?」

 

「はい。その代わり、一つお願いしたいことがあるんです」

 

「……なんでしょう?」

 

「俺達"アリウス分校"に、協力してくれませんか?」

 

 ここから、始まったのだ。

 

 二学園による、"学園同盟"が。




八月中に出そうと急いで書いたので、正直完成度が心配です。
今回で閑話は終わり、次回から新章……原作開始です。ここまでで分かると思いますがここのキヴォトスは原作とは異なる道を辿るので、是非見ていってください。
最後まで読んでいただきありがとうございます。お気に入り登録や、感想を書いていただけると作者が狂ったように喜びます。
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