言い訳にしかなりませんが、時間が足らないです……なんとか月一更新を保つのが精一杯になってしまいました。何年かかっても完結させるという決意表明だけしておきます。
それでは、どうぞ!
「何かあったかって……別に、何にも?」
なぜ、彼女は誤魔化すのだろう。その笑みには確かに影が落ちているというのに。
「本当ですか?本当に、何もありませんでしたか?」
「うーん……まぁ、そうだね。少なくても、君に話すことじゃないよ」
「……」
(言わないってことか……)
彼女はいつもこうだ。肝心なことに限って皆に話してくれない。どこか……触れられない空気のような感じさえしてしまう。
「……それにしても、ユウジと会ってからもう二年ぐらい?随分、長い時間を一緒に過ごしたねぇ」
「……そうですね。振り返れば、色んなことがありました」
今は、彼女の話に乗っておこう。
「一番最初に喧嘩したのは、負担のかけ過ぎだったねぇ」
「あれはその……俺の性分といいますか……」
「サオリちゃんもミサキちゃんも言ってたよ。ユウジはもうそういう人間だから、黙ってその荷物を奪うしかないって」
「うぅ……」
耳が痛い話だ。一時期俺が全てをやろうとしていた時。農業も教育も金銭もまだ安定しなく、えもいわれぬ不安が常に自身にのしかかっていた。
そんな中、治療費を納めるためにアビドスへ行った時。よほど酷い顔をしていたのか、ホシノさんにこう言われたのだ。
『ユウジさん……いえ、ユウジ。これ以上はもう、大丈夫です。あなた方は十分アビドスを助けてくれました。ここからは私一人で頑張りますから』
何を言っているんだと思った。この状況で、俺にアビドスを見捨てろと言っているのかって。
そんなこと、虎杖悠仁ならしない。
『大丈夫?……一人で、できると思うんですか?』
『それを言うならユウジだって!一人で何でもできると思うんですか!?今の貴方は過労なんです!もし今を続けるようなら、本当に死んでしまいますよ!』
『……それでも、俺がやらなきゃ』
『貴方は一人じゃない!なんでそう、視野が狭いのですか!貴方には味方がいるでしょう!すぐ側に!』
バカは死なないと治らないとは、このことかもしれない。俺は何度も、何度も同じ過ちを繰り返して生きている。そのたびに、誰かに手を掴んでもらっているのだ。
「あんな可愛い子たちに心配させ続けるの、男してどうなの~?」
「……そう言いますけどね!ホシノさんだってどうなんですか!聞きましたよ?最近様子がおかしいのに、何にも話してくれないって!」
ブラフだ。実際に誰かがこう言ってたわけじゃない。これで何か出てくるなら……
「……多分、ノノミちゃんかな?相変わらず、よく見てるねぇ~……ユウジ」
「……はい」
(纏う空気が、変わった)
「もし、私に何かあったら……あの子たちを、頼むね」
「!?それってどういう……」
「ユウジも分かるでしょ?アビドスがまだどこにも侵略とかされてないのが、私がいるからだって」
「……ホシノさんに喧嘩を売るメリットとデメリットが釣り合っていなさ過ぎること。そして、得られるものが少ないこと。ゲヘナ、トリニティ当たりはそれが理由をかもしれませんが……」
些か、警戒のし過ぎではないのだろうか。それを口に出そうとしたタイミングで、ホシノさんは言った。
「平和主義は良いことだけど、世界はそう綺麗じゃないことなんて解るでしょ?」
「ゲヘナだって、トリニティだって、連邦生徒会だって……敵なんだから」
「ホシノさん……」
「アリウスだって、気をつけた方がいいよ?小規模の学園はいつ何が起きるか分からないんだから」
もっともでは、あるんだろう。信じるものは一握りにして、他全てを警戒しろというのは。
「まぁようは、抑止力が必要なんだよ。シロコちゃんは間に合いそうにないから、その間をユウジにお願いしたいんだよね」
「……!待って下さい。それは」
「ユウジの考えてる通り。私に何かあった時、アビドスを頼むっていうのは……アリウスにアビドス高等学校を任せるってこと」
なんて、なんてことを考えてるんだ。この人は。
「ホシノさん、それは信頼じゃない。それは、責任の放棄と同義ですよ」
「……そうかも、しれないね。でも、悪いようにはならないでしょ?」
「……」
「ははは、ごめんね。けどさユウジ、私これでも、君のことをすっごく信頼してるんだ」
「それは、ありがたいです」
「……ごめんね、こんな話をして。アツコちゃんが待ってると思う、帰ろっか」
「……はい」
恐らく、ではあるが。近い将来、ホシノさんは何か行動を起こすだろう。それが行方を眩ますだとか、身を売るなどという行為でないことを、今は祈るしかない。
「ホシノさん。最後に一つ、いいですか?」
けれど、この少女になにもせず帰ることはできない。なら……
「なぁに?」
「あなたは一人じゃない。いつ、いかなる時であったとしても、助けを求めてさえくれれば、誰かが必ず手を差し伸べる。だから……俺でも、アビドスの皆でもいいんです。その両手を、伸ばして下さい」
「…………考えとくよ」
彼女は強情だ。何をするのかも分からない以上、どうすることもできない。
(次、ここに来るのを速くしよう。)
「今度は醤油味を食べてみようかな?いっつも味噌ばっかりだし」
「いいんじゃないか?あそこはなんでも旨いぞ」
「柴関ラーメン、潰れないといいね」
「……そうだな。資金援助とかをしようにも、大将に断られたし」
帰り道。砂漠を抜け、アリウス周辺に差し掛かったぐらい。それまで軽口を叩いていたアツコは雰囲気を変え、少しほの暗い空気を漂わせた。
「……ユウジ、ホシノさんとどんな話をしてたの?」
瞬間、全身に電流が流れた。
(これは……たまにある、疑いの探りだな。俺が誰かと二人で話してると、決まって内容を事細かに説明しろって言われるんだよなぁ……なんでだろ)
「世間話と、最近苦労したことくらいだよ」
「……本当?」
「ほんと。そっちこそ、皆とどんな話をしたの?」
「近況の報告と、シロコさんと戦った時に出したあれの使い方とか。あとは…………やっぱりいい」
「おいおい、気になるところで切るなぁ」
「乙女は秘密が多いものだよ?」
「まぁそうでしょうね」
今日は深く聞いてはこなかった。掘られたらどうしようかと思っていたが、一安心だ。
「……アツコ、聞いてもいいか?」
「いいよ?どんなことでも」
「女の子が軽々しくそういうことを言うんじゃありません……今、幸せか?」
「……何かと思ったらそんなこと?勿論」
「そりゃ、良かった」
黄金色の夕陽に照らされた彼女の笑顔は、どんな花よりも綺麗だった。
最後まで読んでいただきありがとうございます。お気に入り登録や、感想を書いていただけると作者が狂ったように喜びます。