虎杖悠仁に成り代わった男の青春物語   作:ブルアカ大好き

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お久しぶりです……先に謝ります。四ヶ月ぶりの更新でストーリーはまったく進みません。ごめんなさい。まぁその、今のアリウスがどんな感じなのかを書きたかったんです。
 次回から遂に原作開始です!やっとここまで……何年かかっても完結させますので、どうか最後まで着いてきて下さい!
 ちなみに、2月14日でこの小説は1周年を迎えます。やばい……一年でこんだけしか進まないとは……前置きはここまでにしましょう。めっちゃ長くなっちゃった……
 それでは、どうぞ!


三十五話 アリウスの今

(…………ん……ん?なんかちょっと重い気が……って)

 

「アツコ……なんで乗って?」

 

「起こしに来たの。おはよう、ユウジ」

 

「……おはよう、アツコ」

 

 窓からは広々とした青空が見え、暖かな光が部屋を照らしている。爽やかな朝とは、今日のような日のことをいうのだろう。

 

「今日はどったの?アツコがこうやって起こしに来る時は決まって……」

 

「今日はなんにもないよ。ただ……」

 

 アツコはそう言って、俺に抱きついて来た。

 

「スキンシップをしたかっただけ。迷惑だった?」

 

「迷惑じゃないけど……いい加減、年を自覚しなさい。昔みたいにお互い小さくないんだから」

 

「あれ、ドキドキしちゃってる?」

 

「そ、そんなわけないだろ!」

 

 その言葉に少し動揺してしまい、自身の被っている布団をおもいっきり剥いでしまう。そして、そのままベッドから下りる。

 

「あっ……むぅ。もうちょっとくっついてたかったのに」

 

 その拍子でアツコは俺の上から離れ、ベッドの毛布の上でちょこんと座り、不満そうな顔を俺に向けた。

 

「はいはい。じゃ、一緒に顔洗いに行こっか。それで許して?」

 

「……まぁいっか」

 

(ふぅ。朝から少し疲れた……)

 

 

 

 

 

 

 

 アリウス大水道場。仮称としてそう名付けられているそこは、朝は特に賑わう。昔はあまり定着しなかった"朝の準備"という概念が、アリウスに浸透したためである。

 

「はぁ~、朝の水はやっぱり冷たいね」

 

「そう?私は冬の水よりましだと思ってやってるから、そこまで感じないかな」

 

「……歯磨きってやっぱり難しいね」

 

「私が教えてあげる!虫歯になったら大変だからね」

 

 顔を洗い、歯を磨く。本来女子の朝とはもう少し忙しいものだが、生憎彼はそんなことは毛ほども知らない。

 しかし、彼がいない世界と比べるのなら、彼女らはよっぽど文化的な暮らしができているだろう。

 

(やっぱ、こういう平和な光景はいいもんだな)

 

「あ、会長!」

 

 俺が水道に到着するやいなや、一人の生徒が声をあげた。

 

「え、あ、本当だ。おはようございます!」

 

「会長~!あ、アツコさんも。もしかして……昨夜は二人で寝ちゃったりしてたんですか~?」

 

「ううん。朝の寝顔を眺めに行ってただけだよ」

 

「なーんだ。でも、やっぱり仲良しですね!」

 

「おはよう。皆今日も元気だね~」

 

「会長……今日、暇?」

 

「特に何か決まってはないかな」

 

「なら、その……料理の練習に付き合ってほしい」

 

「勿論!じゃ、そっちが都合のいいタイミングで連絡して。どこにいても5分で行くから」

 

「!……分かった。多分、昼過ぎくらいに電話すると思う」

 

「オッケー!」

 

 俺がそうやって話していると、向こうで話していたアツコがいつの間にか服を掴んでいた。

 

「……私を無視して、勝手に女の子とデートの約束?」

 

「そんなんじゃないって!」

 

(ユウジがそう思ってても、向こうはそうじゃない気がする……)

 

「ほら、さっさと準備しようぜ?空いて来たし」

 

「…………」

 

「はぁ……アツコ、あまりユウジを困らせるな。朝から騒々しいぞ」

 

「サオリ!」

 

「サッちゃん……」

 

 アリウス生徒会副生徒会長。そんな仰々しい肩書きを背負っている少女錠前サオリが、人の渦から真ん中を切って歩いて来た。

 

「アツコ、お前は準備をしてこい。ユウジは……私について来い」

 

「え……わ、分かった」

 

「サッちゃん……どういうつもり?」

 

「別にどんなつもりもなにもないさ。ただ……久しぶりに手合わせでもと、な」

 

「……負けないぞ?」

 

「私のセリフだ」

 

「……はぁ。今回は私の負けでいいよ。その代わり……」

 

 そこまで言って、アツコは俺に近づき

 

「!?」

 

 俺の頬に、キスをした。

 

「これだけは、貰っておこうかな♪」

 

「な、な……」

 

「変わらんな……お前は」

 

「あら~……熱々ですね♪」

 

「ヒューヒュー!」

 

「じゃ、私は準備を済ませてから自習してくるね」

 

「あ、アツコー!」

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

「はぁ……アツコのイタズラ好きは困ったもんだなぁ……せめて俺か家族だけにしといてほしいけど、もし他の人にもさっきみたいなことし始めたらどうしよう……」

 

「心配しなくても大丈夫だと思うがな?あいつはお前が大好きだろう」

 

「それでも心配なもんは心配なの!親心というか兄心というか……」

 

 今、俺たちはアリウスの離れにある試合場に来ている。ここはベアトリーチェが去ってから新設した場所で、"俺たちのアリウス"の象徴の一つでもある。

 

「それじゃ、やろうか。約束と昼飯もあるし、速めに済ませようぜ」

 

「……勝つ」

 

 俺との勝負は、過去現在全て格闘戦で行われている。今回も例外なく、素手同士の戦いだ。

 

 初手。互いの動きを伺いつつ、軽く稽古のような型ばった手合いを交わす。

 

「流石。銃戦でもあんなに強いのに、素手でもこんなに強いなんて。俺の出る幕ないかも」

 

「なにをほざく。まだ術式も使っていないだろう」

 

「あんまり、使う気ないんだけどねぇ……でも負けるのは嫌だ。男の意地ってやつ?」

 

「ならばさっさと使え。このままなら……」

 

「押し切らせてもらうぞ?」

 

 二合目。ウォーミングアップを済ませたことで、互いの動きは更に向上する。擦れ合う拳はキレを増し、衝突し合う足はその衝撃に震えている。

 

「っ!……はぁ」

 

 三合目。徐々にユウジが押され始めた。それは当たり前だろう。神秘の加護とはそれだけ強大なのだから。

 しかも、しかもだ。錠前サオリ。彼女は既に、神秘の操作を掴みかけている。虎杖ユウジほどの精度ではないが、ゆっくりなら全身から立ち上る有り余ったエネルギーを有効的に使えるのだ。

 

 流石の彼といえど、呪力のみで対抗するのは難しいだろう。

 

「……二重の衝撃!」

 

「ふっ!」

 

 逕庭拳を解放。それにより生まれた隙に、ダメージとして加算される蹴りを入れる。

 

「……確か勝利条件は、三発有効打を入れるか降参だったか?」

 

「あぁ。これで俺が一歩リードだな?……それに加えて」

 

「赤鱗躍動!」

 

「大人げないとは、こういうことか?」

 

「手加減をしないっていう最大の礼儀だよ」

 

「そうか」

 

(……ここからは少し、厳しい戦いになるかもしれないな)

 

 それからは、模擬試合とは思えない激戦だった。

 

 

 

 

 

 

「「はぁ……はぁ……」」

 

(くっ……!)

 

 あれから、被弾数2ー2と互角になった。虎杖ユウジは最大出力の赤鱗躍動によりスペック上で勝ったといえど、生来神秘を持つ者に備わっている動体視力、『何か外敵要因で死ぬかもしれない』という不安がない故にある度胸。これらと持ち前の根性により、錠前サオリは状況を五分へと持っていった。

 

(やはり、辛いな……この状態のユウジを相手にするのは)

 

「……なあサオリ。もうそろお昼だし、次の一合で決着がつかなかったら引き分けにしないか?」

 

「……はぁ。まぁ、よしとしよう」

 

 最後の攻防(ラストバトル)。これまでで最大の集中力を発揮し、刹那をも見逃さぬ肉弾戦の果てに______

 

「……引き分け、か」

 

「有効打はお互いに、同タイミングで一発ずつ。真の意味で、引き分けだね」

 

 勝負は少し、予想外の方向で幕を閉じた。

 

 

 

 

 

 

 

 

「ど、どう?」

 

「そうだね~……塩を小さじ1杯分減らして、砂糖を大さじ1杯分増やしてみようか。今のままでも確かに美味しいんだけど、ちょっと塩味が強いかな。皆が好きってよりかは、俺が好きな味だね」

 

 昼飯を食べようとした直前、朝の子から連絡が来た。俺は約束通り5分以内に到着し、今は卵焼きの試作に付き合っている。

 

「いやでも、練習必要ないレベルだと思うよ?正直ヒヨリより上手いし……」

 

 心の中のヒヨリが"うわぁん!ユウジさん酷いですぅ!"と言った気がするが、事実は事実だ。

 ヒヨリが特別下手なわけじゃない。この子が完成されているだけである。

 

「……その、この卵焼きは、会長の好み?」

 

「うん。なんなら、俺は自分で作る時にめんつゆをもっといれるからね」

 

「それなら、いい。それ全部あげるよ」

 

「え、いいの?やった」

 

「付き合ってくれたお礼」

 

 

 

 

 

 

 

 

 厨房から出ると、辺りは既に夕陽に包まれていた。

 

「綺麗だな……」

 

 ようやく、太陽をこんなに穏やかな気持ちで見れた。命を脅かされることのない安定した暮らし。昔夢見たその理想が、遂に実現できた気がする。

 

(課題はいくつか残ってるけど、それでも……なんとか、ここまでたどり着けた。)

 

 唯一の不安は、黒先との関係だろう。いつかは手を切らないと分かっていても、今のアリウスがあるのはあいつのおかげだ。知恵は着いてきたけれど、変わりをこなせるほどではない。

それにここで契約を切ったら、黒先から何をされるか分かったもんじゃない。……一旦、保留か。

 

「……あ、ミサキ」

 

「どこにいたの?探したのに全然いないし……」

 

「料理の練習の手伝いをしてたんだよ。探させたならごめん」

 

「……ねぇ、ユウジ。」

 

(!……こ、怖い?この俺が、ミサキに対して恐怖を感じてるのか?)

 

 彼女の目に、ハイライトはない。その虚無の瞳には、俺以外映っていないかのような錯覚を覚えてしまった。

 

「なんで最近私に構ってくれないの?サオリにもアツコにもヒヨリにも構うのに、私には素っ気ないよね?どうして?ねぇ、どうして?」

 

「えぇ……十分構ってるでしょ?これ以上は俺のプライバシーが侵害される気がするんだけど」

 

 誘われたら一緒にご飯を食べて、呼ばれたら部屋に行って、一緒に寝てたいと言われたら寝て……なんなら、他の三人よりも構ってるんじゃ?

 

「足りない。ずっと私から言ってばかりじゃん。たまにはそっちから……とかの甲斐性はないの?」

 

「分かった分かった。今日はこれから一緒にいるよ」

 

 そう言うと、ミサキは俺に抱きついてきた。

 

「おっと……そんなに、寂しがらせちゃったか?」

 

「……不安なだけなの。昔からそうだけど、貴方はサオリよりも危うい気がして……」

 

「大丈夫だって。それこそ昔約束したろ?ミサキを一人にはしないって」

 

 ミサキは前に比べて、少し子供っぽくなった気がする。幼少期、あの家で過ごしてた時のこの子が一番大人びていた。

 健全なことでは、あるんだろう。こうやって素直に気持ちを吐き出せるようになっているのだから。

 本当は凄く甘えん坊で寂しがり屋なのに、誰にもそれをぶつけられなかった。俺がそれを満たせるのなら、本望だ。

 

 ただ……

 

「ミサキさん、その……噛むのだけは止めてね?色々誤解されるから」

 

「……ユウジが悪い」




ヒヨリは飯食って寝てます。多分一番幸せなのは彼女でしょうね。一応言っておくと、ユウジはまだ誰とも肉体関係はありません。それぞれから凄まじい独占欲(主にアツコとミサキ)をぶつけられていますが、華麗にスルー……できてないですね。ただ全部受け止めてるだけです。
最後まで読んでいただきありがとうございます。お気に入り登録や、感想を書いていただけると作者が狂ったように喜びます。
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