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それでは、どうぞ!
「お願いしますぅ!もうお腹がペコペコなんです!どうか、どうか食べ物を分けてください!」
「分かった!分かったから服引っ張らないで!破けるから!」
(なんでこうなったんだろう…‥)
時は遡る程5分前。先日の反省で家からできる限り離れずに食料を探していると、青緑色の髪をした少女が倒れていた。そのまま見過ごすことは流石にできず、近づいてみると
「うわぁぁぁん…‥もうおしまいです…‥私はこのまま野垂れ死んです…‥あぁ、一度くらいお腹いっぱいになるまで食べてみたかったなぁ…‥」
悲観的な言動をブツブツと呟いていた。あんまりに不憫だと思、以前の自分の姿が少しだけ…‥ほんの少しだけ重なったことから、とりあえず話かけようと思った。
「…‥大丈夫?」
「!お願いします!なんでもしますから食べ物を、食べ物を分けてください!パンの一欠片、なんなら切れ端でもいいんです!このままじゃ、飢え死にしちゃいますぅ!」
「…‥ちょっと増えてない?…‥ごめん、今は何も持ってないんだよね。」
「そんなぁ…‥お願いします!どうか、どうか!」
「ちょ、掴まないで!」
こんな具合で、先ほどに戻る。
「分かった!分かったから!…‥ふぅ、ふぅ‥はぁ…‥」
「ほ、本当ですか?本当に食べ物を分けてくれるんですか!?」
「…‥ちょっと歩くけど、動ける?」
「はい!食べ物が貰えるなら!」
(さっきまで倒れてたとは思えないぐらい元気だね…‥)
「それで、連れて来たって訳か。」
「うん…‥」
「うわぁぁぁん!美味しいです!」
ミサキから事の顛末を聞いた。最初、帰って来たら知らない子が泣きながら一心不乱に食べているのを見て混乱したが、経緯を聞いて納得できた。
「…‥ごめん。自分達の生活だけで手一杯な時に…‥」
「…‥なにを謝る必要があるんだ?ミサキのその行動は間違いなく、あの子を救ったっていうのにさ。」
「でも…‥」
(本当に真面目で、どこまでも優しい子だ。そんなこと気にしなくてもいいってのに…‥こういう時は、俺がフォローしないと。)
「…‥ミサキ。俺は今、凄く嬉しいんだ。あの子をそのまま見過ごすっていう選択肢もあったのに、それをせずに『助ける』って選択をしたことが、俺は泣くほど嬉しいし誇らしい。……だからさ、もっと楽に考えてていいんだ。『新しい友達を見つけた』ってぐらいの感覚でさ。」
「…‥ありがとう。」
「おう。」
「良く食べるねぇ~…‥これも食べる?」
「!いいんですか!?いただきます!」
「ふふっ…‥なんだかワンちゃんみたい。」
「…‥なぁサオリ、ミサキ。」
「ん?」
「何?」
青緑色の髪をした少女が本当に幸せそうに食べているのを横目に見ながら、その少女に食べ物をあげているサオリとミサキにある提案を投げかける。
「そろそろさ…‥食事のレパートリーを増やしたくないか?」
「…‥確かに。同じのばっかり食べてると飽きてくるもんね。」
「でもどうするの?この辺りで採れる物はもう粗方食べたし…‥」
「そこでなんだけどさ…‥ちょっと、料理に挑戦してみようと思ってな。」
「!料理ですか!?」
「おおっ、すっげぇ食い付きだな…‥えっと、なんていうんだ?」
「
「ヒヨリか、よろしく。…‥ああ、最近はずっと同じ物ばかりだから、ここらで変化をつけたくてな。」
「何を作るかは決まってるんですか?」
「いやまったく。」
「それなら…‥その、できればでいいんですけど…‥作って欲しい料理があるんです。」
「どんなのだ?」
「捨てられてた雑誌で見たんですけど…『煮込み』っていう料理があるらしくて…‥それがものすごく美味しそうだったんですよねぇ…‥」
「煮込み?どういう料理なの?」
「えっと…‥その雑誌によると、たくさんの食べ物をお鍋の中に入れてて、柔らかくなるまで火にかけて…‥って感じでした。」
「…‥美味しいの?それ。」
「見た感じでは、美味しそうだったんですぅ…‥」
「…‥俺分かるわ。ていうか作れるわ、それ。」
「!本当ですか!?」
「ああ。ただ、雑誌で見た通りにはならないと思うし、時間も大分かかる。…‥それでもいいか?」
「はい!」
「よし…‥器と具材の準備はできた。あとは火を起こすのと、煮込むだけだな。」
あれから数時間。ヒヨリは疲れたのか眠ってしまい、今は家の中で寝かせている。
サオリとミサキの二人は、俺が器を作っている間に具を集めて来てくれたにも関わらず、調理も手伝おうとしてくれたところを、『後は俺に任せて』と言って休んでもらっている。
…‥まぁ、『料理をしてるところが見たい!』ってサオリが言っていたから、火を起こし終わって食材の下ごしらえが出来たら二人を呼ぶつもりだ。ヒヨリは…‥完成した後に起こそう、今までの疲れも溜まっているだろうしな。
そんな考え事をしながら、火を起こす準備を進めていく。
「…‥別に大変とかじゃないんだけど、やっぱこの方法時間かかるんだよなぁ…‥可燃性の呪力とかないもんかね。」
(ま、最初の頃に比べたら本当に上達したんだけどな。)
「…‥可燃性の呪力…‥これは研究の価値があるかも。…‥いや違う違う、今は料理だ料理。…‥これは後で試すとするか。」
「よし…‥火の用意はできた。…‥まって、下ごしらえってどうやれば…‥とりあえず魚の内臓だけ出して、他のは明らかにやばそうな部分があったら取り除く、ぐらいでいいかな?不安だ…‥」
(まぁここにあるのは全部食べたことあるやつだし、出来上がってやばそうだったら俺が全部食えばいいか。)
自分の感覚を信じ、食材の下ごしらえを進めていく。…‥正直、『今まで生で食ってた(魚は焼いてた)から大丈夫だろ』という気持ちはあるが、万が一があるといけないため、しっかりと時間をかけて慎重に手を動かしていく。
「…‥よし!これでいいだろ、二人を呼びに行こう。」
「見た感じは…‥うん、しっかり火が通っていってるな。」
「へぇ~、料理ってこんな感じなんだ…‥」
「…‥実際に見るのは始めて。」
「わぁぁぁ!そうです!こんな感じでした!」
「気になるのは分かるけど、危ないからあんまり近づくなよ~。」
料理の準備を終え二人を呼びに行くと、ヒヨリがすでに起きており、3人で何かを話していた。その内容は分からないが、3人の表情は明るかったので、ネガティブな話題ではないのだろう。
今は火の上に鍋(土器)を吊るして置き、その上に同時進行で作っていた蓋をして煮込んでいる。
(ぶっちゃけ出汁とってないし、調味料もないから、味大分酷いと思うんだよな…‥まぁ食えないってレベルじゃないと思うけど…‥もう魚に全てを委ねるしかねぇ…‥他の具材はなるべく魚に合いそうなのを選んでるから、奇跡が起こるのを祈ろう。…‥あれっ?めっちゃいい匂いしてきた)
「…‥…‥よし!出来た!」
「!本当ですか!?」
「料理なんて始めて食べるから楽しみ。どんな味なんだろ?」
「…‥まぁ、普段食べてるのよりは美味しいんじゃない?」
「一人分ずつよそっていくから、ちょっと待っててな。」
これまた器を作る時に同時進行で作っていたお玉を使い、『いつか使うかも』と念のため用意していたお椀によそっていく。
(おかわりする分は…‥俺の分減らせばいいか。)
「わぁ~!確かに雑誌で見たのとは少し違いますが、凄く美味しそうです!」
「すっごくいい匂い…‥」
「…‥ゴクッ」
「じゃあ皆、手を合わせて…‥」
「!あれですね!」
「「「「いただきます!」」」」
「…‥ヒヨリ、よく知ってたな?教えるの忘れてたと思ったのに…‥」
「えへへ…‥さっきミサキさんに教えてもらったんです。『大事な事だから』って。」
「…‥ユウジが言ってたでしょ、『たとえどんな時でも、自分達の腹をいっぱいにしてくれる食べ物に対して敬意を忘れちゃいけない。』って。…‥なら、一応教えておこうかなって。」
「ミサキ…‥」
(子の成長を見守る親ってこういう気持ちなのかな…‥やべっ、泣きそう…‥)
「私はその時寝てたから、その場面見れなかったんだよねぇ~…‥絶対可愛かったのに!」
「な、なに言ってんの?」
「だってぇ~…‥ミサキの可愛いシーンを見逃したと思うと…‥」
「まぁそう落ち込むなって、ミサキの可愛いところなんていつでも見れるだろ?だっていつも可愛いんだから!」
「ふ、二人してほんとになに言ってんの!?」
「その照れてる顔も、可愛いんだよな。」
「分かる~!」
「っ~///」
「ちょ、た、叩かないで!ごめん!ごめんってば!」
「うるさい!」
「…‥俺は許されたか…‥」
「ユウジも後で覚えておきなよ!」
「…‥お手柔らかにお願いします。」
「…‥いいなぁ。」
「ん?なにか言ったか?」
「あぁいえ、その…‥まだ少ししか一緒に居ませんけど、皆さん本当に仲が良さそうで…‥まるで、家族みたいでいいなぁって。」
「家族みたいか…‥それが、ヒヨリがそんな顔をしてる原因なのか?」
「え?」
「自分で気づいてないのかもしれないけど、さっきからすごい悲しそうな顔してたからさ。なんかあったのかなって。」
「…‥顔に出ちゃってましたか?」
「あぁ。」
「…‥そうです。私は皆さんが、羨ましくてしょうがないんです。…‥私が前に居た場所は、誰もが誰かに厳しい場所でした。」
そう言ってから、ヒヨリはなにかを思い返すように語りだした。
「私は難しいことは分からないですけど……あそこの人達はきっと、余裕がなかったんだと思んです。…‥それこそ、私みたいな子供は見向きもされなくて…‥」
あまり思い出したくないことを思い出してしまったのだろう、より一層暗い表情になってしまった。
「でも…‥皆さんは違います。」
その一言でさっきの表情から一変し、嬉しかった出来事を思い返すように言葉を紡ぎだした。
「ミサキさんは、私を助けてくれました。」
「サオリさんは、私に食べ物を分けてくれました。」
「ユウジさんは、私のお願いを聞いてくれました。」
「今まで、私にこんなに良くしてくれる人達は居なかった…‥だから、ですかね。皆さんと別れることを想像した時に、すごく悲しい気持ちになったのは。」
「だってそうでしょう?私のような他人が、いつまでも皆さんと一緒にいるわけにはいかないじゃないですか。でも…‥せめて今日ぐらいは、一緒に居させてもらえませんか?」
その願いはあまりにも悲壮感に溢れていて、まさに懇願と言って差し支えのないものであった。
(…‥今の話を聞いて、バイバイって別れることは俺には無理だ。…‥賑やかになるな。)
「…‥まず、俺達も元々他人だった。だから、ヒヨリが他人だからって一緒に居るのを諦める理由にはならない。」
「次に、俺はヒヨリみたいに悲しんでいる子を放っておくことはできない。」
「最後だ…‥ヒヨリ、俺達と一緒に暮らさないか?」
「…‥え?」
「勿論無理にとは言わない。けど、君が俺達と一緒に居たいって思うのなら、それを否定することは絶対しない。」
「い、いいんですか?わ、私なんてなんの役にも立てないと思いますし…‥」
「…‥役に立つとか、立たないとか、そういうんじゃないんだよ、ヒヨリ。…‥もう友達でしょ?私達。それ以上の理由、いる?」
「!ミサキさん…‥いいんですかね?私が、皆さんと一緒に居ても…‥」
「…‥いいに決まってるじゃん。」
「うん!これでもっと賑やかになるね!」
「そんじゃあ…‥これからよろしく!ヒヨリ。」
「…‥っはい!」
「よし!ヒヨリの元気も戻ったところで…‥そろそろ食おうぜ。」
「「「あっ…‥」」」
「…‥話すのに夢中だったね。」
「…‥忘れてた。」
「えへへ…‥私も忘れてました…‥」
「改めて…‥せーの!」
「「「「いただきます!」」」」
その時に食べた料理の味は、一生涯忘れないと言える程素晴らしく、そして、温かいものだった。
「すぅ…‥すぅ…‥」
「…‥ん…‥」
「えへへ…‥こんなにたべれませんよ~…‥」
(全員、しっかり寝てるな。…‥行くか。)
3人が身を寄せ合いながら寝ている姿に思わず笑みが溢れながらも、今日昼に思い付いたことを研究するためにいつもの場所に向かう。
(身を寄せ合って寝るのはいいんだけど、俺が真ん中になるのはちょっとな…‥まぁ、そう思っていつも全員寝た後にずれてるんだけど。)
「…‥可燃性の呪力というよりは、まず呪力に性質を与えることは可能なのかっていうのが課題だよな。」
(
「…‥思い出せん。」
(まぁでも、宿儺っていう前例がある以上呪力に性質を持たせること自体は不可能ではない。)
「…‥やる前から諦めるのはよくないからな、まずは色々試してみよう。」
彼が最初に試したのは、『赤血操術を発動させながら、術式を使用していない時のように呪力を放出させてみる』ということだった。
赤鱗躍動はまだ使えないため、少しだけ自身の体を傷つけ、それの止血を行うことで術式を発動させる。
最初は、術式を発動させてたことと呪力を放出したことにより少しばかりの全能感を感じていた。だが、肝心な呪力の性質が変わっていないことに気づいてしまった。
(…‥なんも変わらねぇ。ていうかそもそも、赤血操術の性質ってなんだよ?呪力が血みたいになるってか?)
「…‥!これならできる…‥かも?」
あることに気づき、ただただ二つを発動させているだけの状態から、赤血操術の発動感覚を忘れないよう慎重に術式発動を止め、呪力を放出させているだけの状態へと移行する。
(呪術とはイメージ!より深く鮮明に、そして、正確に!)
「!呪力が…‥少しだけドロドロしてる?」
ただひたすらにイメージを深めていると、呪力そのものが少しばかり変化していることに気づいた。
(今まで使っていた呪力は、あえて例えるなら『水』だった。でも…‥今纏っている呪力は例えるのなら『泥』だ。)
「これは…‥呪力が血の性質を持った…‥ってことでいいのか?確かに、今までも何度か呪力から血液に変換したことはあった。」
(しかしそれは、『呪力から血液に変換』というある種の錬金術のようなもの。だけど今回は違う、『呪力が血のようになった』というだけだ。)
「…‥これ、なんかに使えるか?…‥まぁでも、『呪力に性質を与えることは可能』っていう結果が得られた時点で、今回の実験は大成功だ!」
(!…‥ずっと呪力を放出させてたから途端に疲労感が…‥今日はもう止めよう。)
『呪術は思いつきが大事』ということを直に実感したことを深く胸に刻み、『これからは僅かなことでも試してみよう!』と思いながら、帰路に着くのだった。
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