TSイビルジョー亜種の放浪記   作:ヤキブタアゴニスト

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さらば遺跡平原

実家を飛び出した私は今よりさらに幼かったこともあり、ハンターとしてギルドに登録することは出来なかった。だからこそ、実家のあるシュレイドから離れてバルバレやドンドルマを拠点にして近くの遺跡平原でこっそりモンスターを狩るというのが私の最初のステップだった。

 

何日間か遠征してしこたまモンスターの肉を抱え込み、暫くはそれを焼いては食べる日々を繰り返す。はじめは狩りもおっかなびっくりでアプトノスやケルビを狩っていたものの、満腹感は満たされない。より上位のモンスターを狙うようになるまでに日はかからなかった。

 

いつの間にか、遺跡平原一帯のリオレウスにリオレイア、ティガレックスにセルレギオスといった飛竜たちは全て私のお腹に収まってしまった。飛竜は巣を見つけることで簡単におびき寄せられるということで狩りすぎたのが良くなかった。レアもののライゼクスも含めて食べ過ぎてしまったかもしれない。

 

気が付けば、遺跡平原からは彼ら飛竜の姿は消滅し、ゲネル・セルタスとドスジャギィ、ケチャワチャが大きな顔をして闊歩する場所になっていた。

このなかでダントツに私にとって旨味が少ないのがゲネル・セルタスだ。硬い外皮のせいで解体が面倒なわりにお肉がおいしくない。なにより見た目からしておいしそうには思えない。よって、次に姿を消したのはドスジャギィとケチャワチャになった。

 

ここにきてギルドは遺跡平原で起きている異常に対する本格的な調査に乗り出したらしい。相次ぐ大型モンスターの死。それも鋭い刃で切られているにも関わらずほとんど可食部を除いて素材が放置されていることから新種のモンスターによる捕食という説が浮上し、仮称までつけてそのモンスターの捜索が行われることになったのだ。

 

はじめ飛竜をも喰らうモンスターの話を耳にした時はどんな味がするのだろうと期待したものだが、残念ながら犯人は私であった。いつも肉焼き器を借りているコックアイルーからこの話を聞いた私は、すぐさま失敗を悟って次なる狩場に繰り出したのだった。

 

 

 

逃げるようにバルバレから逃走した私が向かったのは発展目覚ましいジャンボ村である。火山や凍土も考えたものの、モンスターの密度が低いことは私にとって死に近い。熱帯地方にあるこの村は貸家も多く、私にとっては都合が良い。ギルドの動向をさぐるためにも人里に拠点があることは重要だ。

 

とはいえ、私の食欲を満たすためにはジャンボ村周辺だけで済むはずがない。出来るだけばれないようにするためにもある程度人里離れたところに拠点を設けてグルメを楽しむのがよさそうだ。遺跡平原のときは飛竜の巣の跡を利用していたものの、ここ水没林ではどこがいいのだろうか。

 

そう考えながら水没林を駆けていると前方遠くの少し開けた場所に巨大な黄色いモンスターが見えてくる。水辺に複数のルドロスを侍らせる巨大な姿。後頭部から胴体の半分を覆うような巨大な鬣はまさしくこの一帯を支配する主たる品格を感じさせる。

 

 

ロアルドロスが佇んでいた。

 

 

 

ロアルドロス。その運動性能は水中でこそ発揮され、水中ではまさしく疲れ知らずの厄介な相手である。無限ともいえるスタミナの秘訣は狂走エキスと呼ばれる特殊な体液で、この体液は強走薬のようなスタミナを保つための薬剤にも用いられるものだ。強力な強壮効果を秘めており、彼らの無尽蔵とも言えるスタミナの秘密がまさにこれにある。

 

私が水没林に来たもう一つの理由はまさしくこれで、もしかすると空腹を和らげるのに一役買ってくれるのかもしれない。私は左手に持っていたズワロポスの肉を頬張ると、骨をポイ捨てして大剣を両手で構える。

 

 

水中に逃げられるのが何より面倒なので勝負は一瞬だ。

岩陰から猛スピードで飛び出した私は両手に力を込めながらロアルドロスの死角であろう後ろ側から一気に切りかかった。

 

ガキィィィン

 

取り巻きのルドロスの一匹を踏み台にした初撃は見事に左後ろ脚に命中。しかし、この程度ではロアルドロスは揺らがない。すかさず尻尾で薙ぎ払ってくるが私とて耐久には余裕がある。あえてガードせずに強引に放った溜め切りは尻尾を根元から切り離す事になる。

 

尻尾を失ったことでバランスを崩したらこっちのものである。首周りを狙うことは難しいががら空きの胴体ならば十分にダメージを与えられる。

 

 

ガシュッツ

 

短いためから放った強引な真・溜め切りはぬめぬめとした外皮をアッサリと突き破り、ロアルドロスに致命的な裂傷を負わせた。そのままパワーを生かして大剣を突き入れると、ロアルドロスはその巨体を地に横たえ、しばらくして力尽きたのだった。

 

ふう、さあ楽しい解体の時間だ。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

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比較的落ち着いていた遺跡平原に不穏な話が出回ったのは例年通りにダレン・モーランが大砂漠に現れたころだった。バルバレで開かれた腕自慢祭でのクエストで遺跡平原にティガレックスを討伐しに向かったハンターが奇妙なものを発見したのだ。

 

発見したハンターによるとそこにあったのはバラバラにされたリオレウスとリオレイアの番であったらしい。いずれも大剣のような鋭い武器によって切断されたように見え、翼を除いた殆どが原型を留めていなかったという。その様子は人によって解体されたにしてはあまりに杜撰であり、なにより貴重な甲殻が放置されることはありえない。その上、ギルドに一切の討伐記録が存在しなかった。

 

そして、この奇妙な報告をきっかけとして、同様の発見が遺跡平原のあらゆるところからなされることとなった。ドスジャギィが、ケチャワチャが、果てはティガレックスやセルレギオスでさえも解体されたような姿で発見された。

 

明らかに捕食を目的にしているように見えて、どこか人工的な傷跡に見える。ハンターの仕業のように見えて、獣のように食い散らかす。何より飛竜との戦闘で痕跡を残さないほどに一方的に捕食する。

 

巷では新種のモンスターによる仕業から呪いや病気の類である説。どこかの軍隊が演習している説から集団幻覚説。さらには月迅竜ナルガクルガ希少種やイビルジョーの変異種、果ては古龍に原因が求められるようになると流石にギルド側も対応に迫られることになる。

 

当初は裂傷から人為的なものではないかとの見方が強かったものの、その被害をうけたモンスターの強さに反して罠や爆弾の痕跡が見られないこと、なにより活動範囲が個人としては異常であることから次第にモンスターが原因であるとの見方が強まっていく。その捕食性の強さからイビルジョーかその亜種ではないかとの学者の意見が一度は採用されかけるも、形態が不明で実個体が確認されていないことから既存種との関連性をもつ名称は避けることが決まった。

 

怪斬竜、被害の根幹とされるモンスターは暫定的にこう呼ばれることになる。

 

それに従って遺跡平原には周辺部から立ち退きが行われて一帯は閉鎖。その外縁部でも侵入に大幅な制限がかけられた。そして、ギルドは筆頭ハンターらを収集、他のハンターらも含め大規模な調査が行われることになる。

 

調査をはじめて明らかになったのは想像以上の被害の深刻さであった。奥地に進むほどに被害の痕跡は増加し、ありとあらゆる飛竜の巣が破壊と虐殺に彩られている。加えてドスジャギィやケチャワチャの被害件数はそれ以上に上り、腐敗した大型モンスターの痕跡は尋常ではないことが起きていることを如実に示していた。

 

調査隊はいつ襲い掛かるか分からない怪斬竜の恐怖におびえながら進むも、その警戒とは裏腹に大型モンスターとの接触はほとんどなかった。いや、それはむしろ異常とも言えるかもしれない。モンスターの領域に深く踏み込んで、ここまで襲ってこないことは考えにくいのだ。

 

そして、深部で調査隊が見たものは通常と比べて巨大な電竜ライゼクスであった。一際小高い丘の最上部に作られた巣からはみ出ようとする翼はこの一帯の主であることを声高に叫んでいた。

 

「これが異変の正体か。」

 

筆頭ハンターたちがそう期待してあるいは願って丘の麓にまで近づいたとき、異変がそう単純でないことを彼らは悟った。それは他の飛竜と同様に惨殺された死体であったのだ。

 

 

 

「撤退だ。これ以上は危険すぎる。バルバレに帰還する。」

 

調査隊の決定は早かった。全滅して情報を持ち帰れないほうが危険であると判断した彼らは遺跡平原から撤退し、経過観察を行うこととなる。

 

 

しかし、不思議なことにそれ以降は遺跡平原はゆっくりと元の姿に戻り始めた。天敵がいなくなった草食モンスターの増加によって周辺地域からドスジャギィらが流入し、さらに遅れて飛竜も飛来してもとの生態系が再構築される。遺跡平原は多少の個体数の異常による問題は生じたもののもとの姿を取り戻していった。

 

けれども、人々の間ではこの事件は永く語り継がれることになる。次の世代、その次の世代への継承と警句をかねて。

 







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