「うーん、おいしいけどどこかお腹にたまらない味だなぁ。」
ロアルドロスに加えて数頭のルドロスを解体した私は早速小型の肉焼き機で軽く炙ってからかぶりつく。水をたっぷり含んだ筋肉はちょっと臭みの強いカツオのタタキと似ているような味で万人受けはしないけれど、これ系が好きな人がいても違和感がないという程度だ。居酒屋においてあったら通ぶって頼む奴がちょこちょこいるだろう。
「ニンニクとかが欲しくなってくる味って感じ。」
しかし、肝心の腹へのたまり具合は期待したほどではないといったところだ。私はどうしてか強走薬の効果も5秒と持たない体質なので狂走エキスに期待するのは流石に荷が重かったのかもしれない。
とはいえ、貴重な大型モンスターの肉である。しっかり確保しておこう。お肉のストックは命のストック。あるのとないのでは安心感が大違いだ。
残りは適当に切り刻んで濁流の中に放り込んでおく。狩猟の痕跡を残して遺跡平原の時のような騒ぎになると面倒だしね。
ロアルドロスに寄り道してしまったが、なんとなくこのあたりの地形が把握できてきた。全体的に見通しが悪い上に低地には濁流が渦巻いているが、所々にある丘は比較的落ち着いている。そのあたりで分かりやすい場所から拠点にできそうなところを探すべきだろう。
とりあえず、特徴的な尖り方をした岩山があったはずなのでその周辺から始めるか。
ルドロスの生焼け肉を齧りながらしばらく周囲を探索していると、岩山の下にちょっとした広さの洞窟を見つけた。常に雨が降ったりやんだりと忙しいこの水没林において、洞窟のような雨の心配がない場所は貴重である。最近手に入れた大型の肉焼き器、揚げ物にチャレンジするために準備した巨大な鍋、いずれもそれなりの広さの洞窟でないとできない贅沢だ。
恐る恐る入ってみるとそこは天国のような場所だった。その洞窟はかなりの広さがあり、内部は段差というかちょっとした崖で区切られている。段差の上側は拠点を作るのに向いている広場になっており、段差の下はひざ元まで水に浸かっている。
何より嬉しいのは、そこに4頭ものロアルドロスがたくさんのルドロスに囲まれて佇んでいたことだ。まさにここがロアルドロスの巣であるらしい。どうやら洞窟の奥は地下から外に繋がっているらしく、そこから活発にルドロスたちが出入りしている。
嬉しくなった私は拠点を作るのも忘れて目の前のロアルドロスたちに切りかかった。
ザシュッツ
ザクッ
ギャッィィィ
まずは手始めにと大剣で薙ぎ払って周囲のルドロスを始末した私に対してロアルドロスたちは怒り心頭といった様子でこちらに向かってくる。そうそう、逃げられるのが最悪なので向かってきてくれるのは思い通りだ。
4頭のうち、2頭は遠距離からブレスを打つ構えを見せ、残りの2頭は私の左右から押し潰そうと狙ってくる。生意気にも連携してくるとはなかなか出来る奴らのようだ。
ガキィィィン
それに対して私が取ったのはバックステップで引いてからの大剣によるガードである。ブレスは突進してきたロアルドロスにあたり、二頭の突進は大剣でがっしりと受け止める。
私は反撃とばかりに受け止められて脚が止まった2頭の頭を大剣で切り飛ばす。
ザシュッッッ
しかし、欲張り過ぎたのか片方は頭を飛ばすことに成功するも、もう片方のロアルドロスのほうは空を切ってしまう。衝撃を期待していたのに空振りではかえってバランスを崩してしまう。
あまりにも大きな隙を晒した私に向かってロアルドロスはその巨体を以って弾き飛ばす。
ドカァァアアン
吹き飛ばされた私は受け身を取る間もなく壁に叩きつけられる。そこにさらに水ブレスが連続して命中し、立ちあがろうとした私をのけぞらせる。ただでさえ、膝くらいまでの水によって絶妙に動きにくいところに集中攻撃である。
「ああもう!?面倒くさい!!」
こうなったら強硬手段だ。落とした大剣を拾い上げて溜めながらロアルドロスに近づく。ブレスも前脚による薙ぎ払いも無視して一歩一歩距離を縮め
「てりゃぁぁーーー」
ガシュッッッッツ
渾身の溜め斬りでロアルドロスを脳天から唐竹割りにする。
一頭が片付いたら次のロアルドロスに目標を定める。多数だからといって結局これが1番早いのもなんだかなぁ。
水没林に拠点を作り始めて3日、私は思わぬ作業に追われていた。
ザシュッッッ
「あーもう、鬱陶しい。」
私はドスフロギィとフロギィの群れを討伐していた。さっきからもう三つ目というハイペースでの討伐は流石に嫌になってくる。リオレイアやナルガクルガに1頭会うごとに10頭は目にするこいつらは何とも不毛な気分にさせてくれる。
私にとってドスフロギィは最悪の相手だ。毒袋をはじめとして体のあちこちに毒を含む器官があり、討伐するとどうしてもそれらが漏れ出してしまう。それゆえに、その肉が毒に汚染されていないかを判断するのが難しいので食べるのはNGだ。ただでさえ、モンスターの解剖などを専門的に学んだわけでもないのでどう倒せば良いかも難しい。
なにより、基本的には耐性があるとはいえ、万が一でもお腹を壊して消化が滞ることがあればそれは文字通りに致命的だ。身体中のエネルギーを使い尽くして餓死することになりかねない。
かといって、毒のないモンスターだけを狩っていると、そのうち毒を持ったモンスターで埋め尽くされるだろう。そういうことで、ドスフロギィやロアルドロス亜種なんかは見つけ次第切り刻んで濁流に流すことにしている。のだが、水没林は思った以上にドスフロギィの生息数が多い。とりあえず拠点付近からは排除しようと思っていたけれどそれでさえ嫌になってくる。
私は一通りの掃討を終えたのち蓄えたロアルドロスの肉を満載して一旦拠点のジャンボ村に帰るのだった。
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チコ村、それはアイルーたちが楽しく暮らす楽園の村。原生林や水没林から流れ出る大河の河口からすぐのところにある島に佇むこの村は、その特殊な流れが故に、意図的に辿り着くのは難しい。海と海流でモンスターの脅威をあまり受けないというのに加えて、ここには河口から流れ出た様々なものが流れ着く。
そんな平和な村に、最近とある異変が起きていた。
それは大量の大型モンスターの死体が流れ着くというもので、美しいチコ村の海岸にはロアルドロスやドスフロギィといった大型モンスターからズワロポスやフロギィといった小型モンスターまで多様なモンスターの死体が連日打ち上げられた。
確かに、難破船が流れ着くチコ村はその立地からこういったものが流れ着くこともある。しかし、多くの場合はせいぜいが骨や殻の一部というのがせいぜいだ。
というのも、モンスターの死体は川を流れるうちに他のモンスターに食べられて骨になり、やがてバラバラになっていくからだ。たとえ、誤って水没林で流されたとしてもチャナガブルやラギアクルスがそのままにしておくとは思えない。
では死体が打ち上げられるのはどういうときだろうか。そう、死体を処理するものが居なくなったか、処理が間に合わないほどに大量の死体が流されたのかだ。
チコ村に暮らすアイルーたちは河の上流で起きている異変を想像したものの、ただただ守りを固めることしかできなかった。
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