TSイビルジョー亜種の放浪記   作:ヤキブタアゴニスト

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はじめてのクエスト

ハンターという職業はこの世界独特の職業だ。

 

 

その位置づけはあくまでも個体数が増えすぎたモンスターを討伐したりすることで、モンスターの脅威を抑制するための狩猟を行うための専門職であり、人間の安全と繁栄と共に自然との調和を図ることが究極の目的である。これは決してお題目ではなく、実際に勝手な狩猟を繰り返したハンターはギルドから除名されたり、噂によると非合法な処分の対象になることもあるらしい。おそらく根底には今の社会がモンスターのもたらしたものに大きく依存していることがあるのだろう。

 

 

しかし、現実的には多くのハンターは報酬や名声、個人的な目的のためにハンターになるのであって、決してそれらの目的でハンターになることも否定されている訳ではない。その加入の審査や求められる資質も当然ながらギルドの位置する場所の性質、街ごとの問題意識によって大きく変化する。

 

 

そう、すぐ後ろに未開の密林を抱え、今まさに拡大路線を突き進むジャンボ村。腕自慢のハンターが多く集まるが故に危機を感じにくく、砂漠と遺跡平原のモンスターからの豊かさで発展してきたバルバレ。両者ではハンターに求める資質は大きく異なっていた。

 

最低限のハンター活動への理解とサバイバル能力、そしてなによりモンスターに負けない強さ。それがここジャンボ村で求められるものだ。バルバレでは年齢ではじかれていた私がここではハンターとして認められたのも、模擬戦で試験官のオッサンをとばしたからに他ならないだろう。

 

 

ハンターになるということはハンターズギルドへ参加するということ。ギルド側やモンスターの動向を知りたい私にとってはこれ以上の場所はない。

 

ただ、面倒ごとも増えないわけではないし、食糧確保のためには一人での遠征をなくすわけにもいかない。受注できるクエストはハンターランクに規定されたものになるし、報酬や狩猟対象も限定される。緊急クエストへの参加が求められることもあるし、その際は流石にお肉の取り分は多くないだろう。

 

もちろん、見方を変えればレアもののお肉をゲット出来る機会であるし、第一報が入った時点でこっそり先回りして狩ってしまえばよいという話でもある。何はともあれ、そのあたりのメリットがデメリットを上回るだろうというのが私の判断だ。

 

 

 

「初めてのクエスト、頑張ってくださいね。がっちりしっかり、いってらっしゃーい。」

 

そういうわけで、酒場の過労死お姉さんに送り出されて初めてのクエストに挑戦だ。

アプトノスの討伐ということでいろいろと物足りないが仕方がない。採取系のクエストと迷ったものの、流石にお肉が取れるアプトノスに軍配があがるだろう。

 

なお、初めてのクエストはひたすらアプトノスを蹴り飛ばしていたら終わった。正面から斬ると解体の時に面倒かと思って蹴りと横殴りで対応したのだけど、ギルド側から解体屋さんが来てくれたので別に気にする必要はなかったようだ。それにしても見事な解体だったのでぜひ今度教えてもらえないだろうか。

 

 

ハンターというのは基本的に体が資本だ。故に、狩りと同じくらいに休息というのは重視されるものであり、連日狩りにいくというのはあまり推奨されていない。実際問題、狩場との移動含めて疲労が溜まるそうなので、クエストから帰って翌日にすぐに出発というのは常識的ではない。

 

ハンターランクを上げるにしてもゆっくりやるべきだろう。ちなみにしたり顔で語っているが、このあたりのことは連日クエストに向かう私を心配した酒場の他のハンターからの話を再構成したものだ。

 

それに、あれだけあったロアルドロスの肉もそろそろ在庫が不安になってきた。というわけで、私はこっそりと村から離れて水没林のさらに奥を探索することにした。

 

 

 

 

 

 

 

ジャンボ村から水没林は遠い。

 

障害物がなければ高速道路をかっ飛ばす覆面知らずの暴走車以上の速度が出せる私だが、深い森を突っ切るとなるとそうはいかない。街道らしき道もあるにはあるが、暴走するハンターなんて目立ちすぎてどうにもならない。仕方がないので進路上にある木々をある時は躱し、ある時はぶつかってへし折り、またある時は蹴り飛ばしながら進むもこれでも数時間はかかってしまう。なんというか違うゲームをしている気分だ。

 

 

水没林に作った拠点に少し迷いながら近づくと、果たして拠点は全くの無事だった。残念ながらロアルドロスの姿は周囲に見えないものの、モンスターに襲撃されない拠点があることはありがたいことだ。拠点に残してきていたいくらかの肉を搔っ込むと水没林の奥へと足を進める。

 

 

 

私にとって福音となる重厚な打撃音が聞こえてきたのはそれからすぐのことだった。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

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その少女、ティティは妙にチグハグな印象の少女だった。

 

このジャンボ村に来るハンターやハンター志望は多い。村長をはじめとした村の面々は村が拡大することに乗り気であったし、ジャンボ村から近い密林や原生林、水没林といった大陸東南のフィールドは近頃探索が進んでおり、その拠点としての意義も大きい。ちょうど新大陸ブームもひと段落してドンドルマやバルバレの完成された拠点からの流入は増えつつあった。

 

得てしてそうしてやってくるハンターやハンター志望というのは目がギラついている。チャンスを求めてはるばるの移動はそのエンジンとなる熱い想いや沸る欲望が必要となるというのは俺を含め誰もが認識しているし、そうしたものが成功と成長の源であるのがハンターという稼業だろう。

 

しかし、少女の目には覚悟も期待もなかった。なんというかとてつもなく軽い、夕飯を探して酒場に入り込むような目だ。幼さが残るというよりはただ幼いというのが適切な容姿にピンクの長髪を後ろで束ねた少女は、良い生地で仕立てられた服装と相まって一見旅を楽しむお嬢様といったようにしか見えないだろう。

 

 

が、彼女が見た目通りの実力ではないと言うのはある程度のハンターならば疑いはない。少女の荷物から大きく突き出る大剣はリオレウス、それも亜種の素材を用いたものだろう。少女の年齢と不釣り合いな程に使い込まれた刀身は今なお鈍く蒼い輝きを放っており、頻繁にモンスターと戦っていることが分かる。

 

防具は少女の髪色と同じくピンクが基調でリオレイア亜種の素材である事がわかる。親が分不相応にいい装備を子供に与えるというのは珍しくないが、防具の摩耗度合いはそれを明確に否定していた。

 

地元で狩る相手が居なくなったからここに来たのだろうか、そしてその目は若さゆえの全能感から来るのだろうか。

 

 

 

 

 

そんな少女が酒場兼ギルドに来たのはそれから10日ほど経ってからだった。桜火竜の装備を身につけて蒼火竜の大剣を背負う姿はまさしく自然体であり、獲物を求める狩人としての風格を持っていた。

 

ジャンボ村にハンターが増えたとはいっても優秀なハンターは喉から手が出るほど欲しいことには変わりない。懸案事項はいくらでもあるし、溜まっている依頼をこなしてくれるだけでもありがたいことこの上ない。

早速登録情報を照会しようとした受付のパティに対して少女は口を開いた。

 

「いえ、初めてなのでハンター登録をしたいのですが。可能でしょうか?」

 

「「ええっっ!?」」

 

その少女の言葉には偶然その場にいた村長の表情を大きく変えることに成功した。

 

 

 

 

 

ハンターになるというのは無条件で出来ることではない。ギルドからの依頼をこなせるかどうか、人里離れたフィールドで生き抜けるのか、そしてなによりモンスターと戦えるかどうか。ジャンボ村では最後の点については試験官、すなわち俺との模擬戦闘のなかでその実力を評価することになっている。

 

模擬戦闘とはいっても、ハンター志望者に全力で打ち込んでもらってそれを受け止めるというもので、その動きをみて合否を決めることになっている。ただ、モンスターと戦う準備があまりにできていない場合を除いて、合格や不合格を出すというよりも初めから討伐クエストを任せることができるか、指導役を付けて採取クエストから始めさせるかといった見極めが主目的だ。いや、はずだった。

 

そして今、俺の前には怪物が立っていた。桜火竜の素材を余すところなく用いた装備は少女に女王の威厳を与え、蒼火竜の大剣はそれを制したものとしての威圧感を放っていた。しかし、それは枝葉に過ぎない。少女が放っているのはそういう次元のものではなく、モンスターから放たれる恐怖、捕食者のオーラであった。

 

それもこれも村長が冗談交じりに「こいつに勝てないとハンターとしてやっていくのは厳しいかもなっ」なんて言うからで、そこから明らかに雰囲気が変わったのだ。村長としては実力の底を見たかったのだろうが、受けるのはこっちなんだけどな....

 

 

 

「よろしくお願いします!!」

 

戦闘は一瞬で終わった。

 

喰われるっ

 

と思った瞬間、俺の体は宙に舞っていた。少女に人間の理性が伴っていたことに感謝しながら俺は意識を手放した。

 

 









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