突如として暴れまわるモンスターの前に出現したのは全身を桜火竜装備に包んだ大剣使いのハンターだった。どこからともなく現れたその小柄な少女は大暴れするドボルベルクとダイミョウザザミの間に入り込み、その大剣を振るい始めた。
ガキィィィン
一度地面を蹴るや、その加速は目を見張るほどであり、そのままの速度で叩き込んだ溜め斬りはあのダイミョウザザミと打ちあって吹き飛ばすほどのものだった。思わず歓声を挙げそうになるが、まだ何者なのかは分からない。我々は回復薬をのんで体力をもどしつつ撤退の準備を進める。
そして、ここはモンスター同士が争うバトルフィールド。一瞬の油断が致命傷になりかねない。ダイミョウザザミを追撃しようとしたハンターを、ドボルベルクの突進がダイミョウザザミもろとも吹き飛ばす。
いくらハンターとはいっても生身の少女が20mを越える巨大なモンスターの突進を受けて無事なはずがない。という考えは目の前で綺麗な着地を決めたハンターに見事にひっくり返される。そのまま数発であっさりダイミョウザザミを倒すと、返す刀でドボルベルクに襲い掛かった。
その様子は自然の脅威であるモンスターとそれに立ち向かうハンターという構図ではなく、獲物を狙う肉食獣と抵抗する草食獣というもの。それほどまでに一方的にハンターはドボルベルクを次々と斬りつけていく。ドボルベルクも尾を振って必死の抵抗を行うもハンターの速度に付いていけない。
ついにドボルベルクの巨大な脚が斬り飛ばされ、横転すると同時にもう片方の脚まで切り刻まれる。しかし、ドボルベルクは諦めていなかった。
横転したままの尾の一撃をハンターに当て、猛烈な速度でハンターが大木に衝突する。
「嘘っ、だろ」
「ほんとに人間か」
我々が驚いたのはそのハンターがやられたことではない。むしろその逆である。大木が傾くほどの威力で衝突し、その後落下したにもかかわらずハンターは平然と立ち上がったのだ。
ドボルベルクの解体を始めた少女に対し、我々は完全に出ていく機会を逸していた。間違いなく恩人であるものの、人間業とは思えない行動の数々。
可愛らしい顔で屠ったドボルベルクの肉を次々と平らげていく様子はまるで悪魔かと見まがうようなプレッシャーを放っていた。
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やばい。見られた。
武器を降ろしつつ目の前の二人を観察する。
よく見ると二人ともいかにも騎士っぽい装備をしており、それもかなり高級そうだ。おそらくギルドでも名の知れたハンター、なんならギルド専属のハンターかもしれない。これはもしかしてドボルベルクがクエスト対象で、それを私が横取りした形とかになってないよな。
ここで相手の所属とかをバッチリ言い当てられれば牽制にでもなるかもしれないが、今言葉だけの口止めを図ったところで効果は薄そうだ。それよりも、多少仲を深めてからのほうが説得はしやすい気がする。
そう考えていると二人から意外なことに感謝の言葉がかけられる。
「ありがとうございます。間一髪のところを救っていただいて言葉もありません。」
「貴女が来なければ我々はドボルベルクに押しつぶされていたかもしれません。」
「あーっ、えっと、どういたしまして?」
話を聞いてみるとどうやら二人は水没林で発生しているドスフロギィの大繁殖の調査と対処のために来たらしく、ドボルベルクとは完全に遭遇戦だったようだ。いやー良かった良かった。私が獲物を横取りしたわけではなさそうだ。
特に討伐を証明する必要もないため、お肉や素材なんかもこっちで貰って良いそうだ。気前が良くて何よりだ。
そして一番嬉しかったのは、彼らがギルドへの報告をしないことを約束してくれたことだ。意外なことに彼らも彼らで少々グレーなことをしているようで、ギルドとの関係含めていろいろと面倒なのだという。
まあ確かに、今の私は客観的に見たら他のハンターを助けただけなのでなんら怒られることはないのだが、HRに見合わない戦闘力というのもまた好意の推薦とかの形で変な影響を与えかねない。そもそも私が水没林にいること自体が結構やばい行為なので、お礼状とかでさえ面倒ごとになるのは明らかだ。
それにしても、肉を囲んでいるうちに最初の怯えようは何だったのかというほどに打ち解けてしまった。彼らはこのあたりを治める王国の王都を拠点にしているようで、今度もし私が訪れたら案内をしてくれるという。こっちも思わずジャンボ村かシュレイド地方なら案内できるというと随分驚いた様子だったが、余計な詮索はしないでくれるのがありがたい。
放浪に出てからはバカ騒ぎはしなかったし、そのまえは立場上なかなか出来なかった。焚火を囲んで騒ぐというのは私にとっては随分久々の経験だ。
楽しい時間はあっという間に終わる。
彼らは帰り道でもう少し調査をしてから帰還するとのことで、私は解体を進めることにした。
「じゃあ嬢ちゃんも元気でなー。」
手を振って去っていく二人。その背中に描かれた紋章を私はどこかでみたことがあるような....
ドボルベルクとダイミョウザザミを解体してバッグとお腹に詰め込み終わる頃には既に日が傾きかけていた。ドボルベルクはなにより巨体で解体が面倒であるし、ダイミョウザザミは防具のために素材を含めて剝ぎ取っていたのが時間のかかった原因だろうか。
両者の残骸をいつも通り近くの濁流に放り込んで進むか戻るかを考える。このまま奥地に進むのも悪くはないが、この辺りのモンスターを狩ってもう少しお肉のストックを作って置くことにした。何より、邪魔な木を倒しながら進んでいたお陰でこの辺りは移動が楽になったので、これを活用したくなったのだ。
「えいっ」
横転したアオアシラに後ろから大剣を突き付ける。
獲物を探して飛び回っているもののドスフロギィやロアルドロス、アオアシラ、クルルヤックあたりがせいぜいでレアもののモンスターには中々出会えていない。この間何気なく狩猟したナルガクルガと出会えたのは幸運だったのだろうか。
何はともあれ、量だけはお肉を確保できたのは良かったが、飛竜や獣竜系統の食べ応えのあるモンスターにもっと出会いたいものだ。
遺跡平原が懐かしくなってきたなぁ。
今思うと見晴らしがよい平原と植物の少ない高台の組み合わせは遠くから大型モンスターを探すのに物凄く有効な地形だった。それと比べると水没林というのは何とも見通しが悪い。その上、濁流がいたるところにあるせいでモンスターの音もかき消されてしまう。
一旦ジャンボ村に戻ってクエストを進めてから今度はもう少し奥に進んだ方がよさそうだ。
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