「ガララアジャラ最高!!!」
私は歓喜していた。
引き締まった筋肉にわずかに混じる脂肪。意外に臭みは少なく、肉自体はわりとタンパクであるものの、それが程よく旨味を引き立てる。いくらでも食べれるというのはまさにこのことをいうのだろう。
戦闘で空腹感が増幅していたことで余計においしく感じているというのもあるだろうが、それにしても予想以上の美味さである。味を置いておくにしても40mの全身のかなりの部分が可食部であり、サイズの割に食べるところが少ない飛竜とは対照的だ。その上、思ったよりもお腹を満たしてくれるのも好印象だ。流石に飛竜種には及ばないものの、ロアルドロスと比べても数段エネルギーが籠っているように思える。蛇肉がこれだけおいしいということは蛇っぽいダラ・アマデュラのお肉ももしかしたらおいしいのだろうか。
暫く肉の宴を繰り広げた私は残りの解体を進めて肉をバッグにしまい込む。私のお腹にも言えることだが、いったいどこにこれだけのものが収まるのだろうか。
さて、ここで困ったのが残った甲殻や鱗の処理である。一部は持ち帰ってもいいのだが、クエストを受けてもいないのに大量の素材をもっているのは流石に怪しい。バルバレの時は加工屋経由で売り払っていたこともあったものの、今は処分先も見つけられていないのだ。
水没林ならば水に流せばチャラという手が使えたのだが、ここはそこまでの水流はない。もう少し小型のモンスターなら燃やしてしまうのも有効だが、ここまで大きくて燃えにくいと...
考えに考えた結果、私の脳味噌は粉々にして放り投げるという答えを導き出した。甲殻や鱗は適当にばらまき、骨は大剣で砕いてから投げ捨てるのだ。要するに一か所に一頭分があるから問題になるのであって、広く点在していれば気づく人もいないに違いない。
一通り原生林での狩猟サイクルを確立してからはボーナスタイムが始まった。千里眼の薬による強襲はあまりに有効で、大型モンスターを効率的に狩ることが出来る。加えてほぼ必ずこちらが先に発見できるのもあって、先制攻撃が可能になるのも大きい。特に睡眠や休憩中のモンスターというのは無防備で、これまでは動きがないので発見が困難だったが今や良い獲物になっている。
3日間で20頭以上のドスランポス、5頭のケチャワチャに6頭のダイミョウザザミ、3頭のリオレイア、3頭のガララアジャラ、4頭のタマミツネ、加えてグラビモスとジンオウガ。まさに寝ている時間と食事の時間以外のほとんどが戦闘と解体にあてられるという恐るべき成果を挙げたのだ。これらの合間にゲリョスやドスイーオス、ネルスキュラなんかの食べたくない連中を始末していたのだから恐ろしい。
持ってきた千里眼の薬が全てなくなる頃にはほとんどモンスターの気配を感じることはなくなっていた。これ以上やると次の分が無くなってしまいかねないので、私は奥に進むのはやめてジャンボ村に引き返すことに決めたのだった。
武器と防具の手入れを終えてから酒場に行くと何やら騒がしい様子だった。どことなく皆険しい顔で、どうやら何かを議論しているようだ。
「嬢ちゃん、ちょうどいいところに来たな。」
顔なじみのハンターに話を聞いてみると原因はギルド側からの情報であるようだった。曰く水没林に未確認のモンスターが出現した可能性が高いとのことで、一説ではなんとイビルジョーが襲来したのではないかとの予測もされているようだ。
イビルジョー、原作ではゴーヤと親しみを込めて呼ばれる彼であるが、それは全身に筋肉がはちきれんばかりに詰まっているからである。共食いをも辞さないその強烈な食欲で育まれたイビルジョーの筋肉は戦闘に特化しており、モンハンシリーズでも極めて危険なモンスターであるとして変わらぬ恐怖の対象となっている。
仮に本当に水没林にイビルジョーがあらわれたのであれば、急いで討伐する必要がある。なぜならばイビルジョーは周囲のモンスターを絶滅させる勢いで喰らいつくすためである。モンスターであるから当然であるのだが、環境や生態系への配慮など全くしないその捕食は度々問題を引き起こしている。
もしそんなモンスターが水没林に到来してしまったら、水没林にいるモンスターは食べつくされて私の分など残らないだろう。それに、イビルジョーのお肉の味なんてこの機会を逃したらいつ食べることができるだろうか。
「イビルジョー..... いったいどんな.....」
考えただけでワクワクしてくる。そうと決まれば早速帰って水没林遠征の準備をしなくては。
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酒場は騒然としていた。
水没林はジャンボ村から比較的近い狩猟場であり、モンスターの数も多い一方で希少な魚や虫、鉱石といった資源も豊富なためにここでの依頼を受けるものも多い。まさにこの村の利益線であり、生命線でもある重要なフィールドだった。
そんな水没林に近頃、不穏な傾向が見られることは前々から少しずつ噂として広まり始めていた。
はじめは何気ないドスフロギィの増加といったものだった。水没林は一年中比較的変化の少ない場所ではあるものの、そこでのモンスターの個体数の変動はかなり激しい。獲物が増えたのか、はたまた周囲から流入したのかは分からないが個体数が一時的に増えることは珍しくもない。俗に大繫殖として知られるこの現象はハンターたちにとっては腕の見せ所となるようなものであり、調査隊を何度か送って規定の水準を越えていたら討伐隊が組まれることになっていた。
しかし、ある時を境としてドスフロギィは忽然と消滅した。
いくつもの調査隊が水没林に入ったが、それら全てがドスフロギィの個体数が著しく減少していることを報告していた。これは明らかな異常であった。
確かに、水没林は視覚聴覚ともに遮るものが多く、調査に不向きな土地であることは間違いない。過去にもある調査隊が報告してきた異常が単に遭遇しなかっただけであったなんてことは珍しくもないし、水没林に慣れていないハンターであれば見逃すというのは仕方のないことでもある。
が、今回の調査は複数の調査隊、それも継続的に水没林を担当しているハンターによるものだ。さらに、フロギィやルドロスといった小型のモンスターの個体も減少傾向にあるといい、水没林で何かが起きているのはもはや決定的になった。
情報がもたらされた酒場では噂好き以外もこの話で持ちきりとなり、様々な仮説が飛び出す。その中で一際有力視されたのが恐暴竜ことイビルジョーの襲来による捕食であった。
水没林は多くのモンスターの通り道になっているが故に、イビルジョーの襲来もないわけではない。実際、数年前にはイビルジョーが襲来し、一部のハンター以外は水没林での狩猟ができなくなるといったことがあった。確かに、イビルジョーは生態系を破壊しかねないがここまで異常な減少は引き起こさない。それは、捕食できる獲物の減少によってイビルジョーが自然と次の場所へと移動していくためである。
では、それ以上にモンスターが減少したのはなぜか。酒場のハンターたちはもはやイビルジョーの襲来を前提としてなぜこのような集中的な捕食をしたのかに話題を移していった。
あるハンターはつがいのイビルジョーが繁殖のために大量の獲物を必要としたと主張し、またあるハンターはかの怒り喰らうイビルジョーが襲来したと結論付けた。
議論に白熱するハンターたちの目は、一人の少女が目を輝かせながら酒場を後にしたことを見逃していた。
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