俺だって異世界迷宮でハーレムしたい!   作:おるどばれい

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転移四日目


12 ミッちゃん

 やってきました二階層。初めて入口から階層を選んでの移動です。普通でしたけどね。

 

 ここからは最大二匹、しかも敵のレベルも二に上がって少し強くなる。だがしかし、俺のストーム魔法の前には……ストーム魔法の前には……いや、兎さんめっちゃ走るやん。

 

 ウッドさんはいい。足が遅いから枝の間合いに入る前に『ファイヤーストーム』三発で倒せることが分かった。だけど兎さんは二発目がぎりぎり間に合うかどうかのタイミングで襲ってくる。そうすると鋼鉄の剣を取り出して応対しつつ三発目を放つまで耐える必要がある。それでもウッドさんと兎さん一匹ずつなら対処は比較的簡単なんだが、これが兎さん二匹になると、二対一で襲われるので三発目を撃つ前に一回突撃を食らってしまうことが結構あった。

 ダメージ自体は防具で対処出来ているけど、やっぱり攻撃を受けるのは嫌だよねって話。これだって途中で足装備を二にして敏捷と回避を上げているからこの程度の被弾数で済んでいるけど、そうじゃなかったらもっと被弾していると思う。

 

 レベル二の魔物相手に避けきれないのは俺自身のセンスの問題。格闘技の経験もないし、運動神経が良かった訳でもないからきっと無駄な動きが多いんだろう。そのうちその辺の動きを教えてくれる人がいれば是非教えを請いたい。魔法主体で後衛にいるというのも有りなんだけど……階層が上がって魔物の数が増えていけばそう言ってもいられない場面も出てくると思うし。

 

 一応、なるべく攻撃を受けないように慎重に戦うことを意識して二階層での戦いを続けて、なんとなく動けるような気分になってきたところでお昼になったのと、ちょうど魔結晶が青になったので一度外に出て休憩にする。体力的にも精神的にも二時間おきくらいにまとまった休みを取るのがよさそうかな。

 

 戦っているうちに残っていた強壮丸も全部使ったし、兎の毛皮を取るようになってからリュックがやばくなってきたから、探索者レベルが上がって余裕が出てきたアイテムボックスにドロップを移したが、毛皮で二列、ブランチで三列、リーフで一列くらいが埋まっているのでいったん青魔結晶と一緒に売ってしまおう。

 

 迷宮前の木陰に座って、ペットボトルの水を飲みながら海猫亭で買ったパンをかじりつつ午前の成果を確認。二階層での戦いで経験値効率が上がったらしくジョブはがっつりあがった。いい感じじゃないかな。確かレベル三十までは比較的簡単に上がるらしいから自分の鍛錬も含めてこのまま上げていきたい。

 

探索者Lv11 英雄Lv10 魔法使いLv10 戦士Lv11  僧侶Lv10

 

 ちなみに双子の方も実質二十倍の経験値を探索者で得たらしく一気に探索者レベル八になっていた。これなら今日の目標レベル十は余裕で達成できる。

 

 昼過ぎの暖かい日に木陰でパンを食べて腹が満たされると眠くなってくるが、こんなところで寝たら身ぐるみ剝がされても文句も言えない。さっさと売りに行こう。

 

 『ワープ』で冒険者ギルドに出ると、この時間は相変わらず受付窓口に客はいない。

 

「買取を頼む」

「はい、ではこちらにお願いします」

 

 いつも通り出されたトレイにアイテムボックスからブランチを三十六個、兎の毛皮を二十五枚、青魔結晶を一つ、そしてリーフから薬草採取士のスキルで生成した毒消し丸、十個はボックスにキープして残百個をざらざらとトレイに乗せる。もちろん三割アップは設定済みだ。

 

「これで頼む」

「少々お待ちくださいませ」

 

 店員は特に何も言うことなくトレイを持って奥へと消える。今回は毒消し丸が多くあるからそこそこの額になると思うがそれでも購入額には届かないだろう。あと三日半あれば購入額に届かないということはないが、二人の受け入れ費用まで考えるともう少しまとまった額が欲しい。だけど、そのためにわざわざ盗賊の賞金首を探しだしてまでキルするのはハードルが高い。もちろん直接的な害があるならキルすることを今更躊躇するつもりはないが。

 

 とすると、あんまりやりたくなかったが持ち込み品の売却をちょっと検討してみるか。

 

「お待たせしました。買取額は五千五百七十七ナールになります」

 

 トレイに乗せられた銀貨五十五枚と銅貨七十七枚を数える気にはなれない。ここはギルド神殿を信じるとする。

 

「確かに。すまんが、ここから送って貰える都市はどこがある」

「ベリルからは皇都とクラタールなら片道のみ銀貨二枚で随時受け付けています。その他の場所については個別に交渉をお願いします」

 

 銀貨二枚、二か所で四枚。四百ナールか、行先はどうせ増やす必要があるし考えている金策は持ち込み品の売却だから大きな街の方がいい。

 

「では皇都とクラタールに案内をお願いしたい」

「わかりました、今担当の者を呼んでまいります」

 

 受付嬢がバックヤードの扉を開けて声をかけるとすぐに初老の男性が出てくる。

 

 ダンテ 男 59歳

 冒険者Lv8

 装備 革の靴

 

 なるほど、すでに迷宮探索は引退した《冒険者》が『フィールドウォーク』を使って働ける再就職先ってことか。

 

「料金は先払い、二か所目に送ったらそこで解散。構わないか?」

「ああ、問題ない。順番は指定できるのか」

「この三つ街はそれぞれほぼ等距離にある。だからどっちからでもいい」

 

 なるほど、ベリルと皇都とクラタールは正三角形のような位置関係なんだろう。

 

「じゃあ、皇都からクラタールの順で頼む。こちらからパーティ申請を送ろう」

 

 俺からあっちのパーティに入ると双子とパーティー解散しなくちゃいけないからな。先にこっちから申請を送ってしまおう。

 

 パーティ編成呪文をごまかしつつダンテに申請を送るとすぐに承諾される。その間に用意した銀貨四枚を彼に渡す。

 ついでにせっかくだから彼のジョブもチェックしちゃおう。

 

ダンテ 冒険者Lv8

取得ジョブ 村人Lv8 探索者Lv50 農夫Lv1 薬草採取士Lv1 戦士Lv1 剣士Lv1 商人Lv1 

 

 目新しいジョブはないか。でも確かに、冒険者だけを普通に目指したら大体このジョブ構成になるんだろうな。

 

「じゃあいくぞ、しっかりついて来いよ」

 

 ダンテが呪文を唱えると壁の布にゲートが開いたので、ダンテに続いてゲートをくぐる。出た先は昼間なのに結構人が多いのはさすがに皇都の冒険者ギルドということか。

 

「ここが皇都の冒険者ギルドだ。いいな、次にいくぞ」

「ああ、大丈夫だ」

 

 ダンテは早く終わらせたいのだろう。まあこちらも場所さえ覚えてしまえばいつでも来られるから問題はない。結局皇都の街を一度も見ることなく再び『フィールドウォーク』を唱えて出てきた彼のゲートを大人しくくぐる。

 

「こっちがクラタールだ。ここは探索者の街って言われているからな。冒険者はちょっと居心地が悪い。じゃあ俺はパーティ抜けて帰るからな、もし他の街に行きたけりゃ声をかけてくれ、まだいくつか行ける場所もあるからな」

「ああ、わかった。その時は頼らせてもらう」

 

 ダンテは軽く手を振ってさっさと帰っていった。俺も戻ってレベル上げに戻りたいところだが……多分クラタールは原作で言えば主人公たちが住んでいた都市名のもじり。原作とこの世界を類似させた超常のナニカがいるなら原作主人公っぽい人たちがいるかも知れない。ちょっと散策してみるか。

 

 クラタール冒険者ギルドを出るとちょっと寂しい感じの路地に出る。通りがかった男の人に話しかけると、ヒマニ語で返ってきた。最近はブラヒム語を話せる人としか会話していなかったからちょっと新鮮だ。この街に初めて来たことと、今後ここをホームにするかも知れないと話して簡単に街のことを教えてもらう。

 

「そうだなあ、この街は多分他所にはないくらい特殊だと思うぞ」

「そうなのか?」

「ああ、迷宮を中心に街が出来ているのも特殊だが、この街には他に四つも迷宮が内包されているからな」

「は? クラタールには五つも迷宮があるのか! そんなに迷宮があって住民は大丈夫なのか」

 

 驚いて思わず心配してしまった俺に男はカラカラと笑う。

 

「この街に迷宮から出てくる魔物をどうにか出来ない奴なんかいないさ。歩けるようになった子供が親から最初に教えられるのは何だと思う?」

「まさか武器の扱い?」

「惜しい! だが、さすがにいきなりは無理だろ。最初に教えるのは大声で助けを求めること、その次が走って逃げることだな。大声さえ出せば近くの大人がすぐに倒してくれるからな」

 

 修羅だ、修羅の街だったんだここは。確かに普段着で歩いていただけのこの男は《戦士》でレベルが四十超えだ。迷宮から出てくるレベル一の魔物くらいどうとでもなるだろう。さっと周りを見回しても、大人は軒並み高レベルか、派生職や中級職に就いている人ばかりだった。

 

「中央に一つ。こいつが一番古いとされていて最高到達層は大分昔らしいが九十層だったか。後は綺麗に東西南北に発生していてな。中央の迷宮が子を産んだんじゃないかと噂されていたりするな」

「後から? 迷宮は五十階層まで育つと現れるのではなかったか? 街の中にいきなり産まれるなんてあり得るのか」

「詳しいことは知らんよ。ただ、東西南北の迷宮は最初、街の外周に産まれたらしい。それを受けて街も迷宮を取り込む形で少しずつ広がって今の形になったみたいだな。だから中央迷宮広場から東西南北の大路の先には必ず迷宮があるから覚えておきな」

「わかった、いろいろ教えてくれて助かった。もしどっかの酒場で見かけたら声をかけてくれ一杯奢らせてもらう」

「ははっ、そんなの気にすんな。だが、期待せずに再会を待つとするぜ」

 

 男は笑いながら去っていった。どうせ俺が酒場に行くことはないので再会することはない。さっきの男も期待しないって言っていたしな、多分本当に言葉通り期待してないんだろう。迷宮に入っている奴なんていつ迷宮に屍を晒して食われてしまうか分からないものだから。    

 

 一応、中央迷宮広場とやらに行ってみるか。今いる場所はどうやら南大路から一本東に入った道らしいので、まず南大路に出てから中央を目指す。大路にさえ出れば人は多く、流れに乗れば中央広場までは簡単に辿り着けた。

 

 広場というだけあって迷宮を中心に大き目の円形状に確保されたスペースにはベリルの市の時よりさらに多くの人がいそうだ。もっともその半数近くは中央迷宮に入るための順番待ちをしている人のようだ。

 

 毎回これだとやってられないな。もしここを探索するなら原作同様一度だけ中に入って、その後は『ワープ』で移動ってことになるな。

 

 広場から東西南北に延びる大路によってクラタールはざっくりと四分割されているらしく北西の角に探索者ギルド、デカい! 南東の角には騎士団の詰所がある。そして南西が商業ギルド会館、北東が商館らしい。

 

 えっと、確か六本の道で分割された街で探索者ギルドのある区画を一として左回りに数えて六番目の六区がクーラタルで主人公が住んでいた場所だった。六分割で六区ということは結果として探索者ギルドの右隣だったってことだから、無理やり当て嵌めると商館のある区画かな。

 

「すまないが、あそこの区画の世話役がどこにいるかおしえてもらえないだろうか」

「ん? ああ、世話役ね。たしかその区画は北大路沿いにある金物屋がそうだったはずだな」

 

 商業ギルド会館から出てきた商人の男に聞いてみると、世話役人制度は浸透しているらしくあっさりと教えてくれた。そして、ビンゴ。金物屋の世話役がいた。今後のこともあるし、軽く話だけ聞いてみるか。それから迷宮に戻っても遅くはないだろう。

 

 それにしても、なんだろうな……これだけ細部が違うのだからいるわけないのに、ついわくわくしてしまうのは。やっぱあの原作が俺は好きだったんだな。だからあのサイトを見つけた時、地球に残るという選択肢が一度も出てこなかった。そういうことだ。

 

 ドキドキしながら北大路に入ると店先に金物を並べた店頭で道に水を撒いている美魔女っぽい女性がいた。

 

オリータ 女 42歳 商人Lv38

 

「ちょっと、いいだろうか。このあたりにこの区画の世話役がいると聞いてきたのだが」

「ああ、はいはい。それならあたしで間違いないよ。ちょっと水撒きを終わらせちゃうから待ってておくれ」

 

 オリータは人好きのする笑顔を見せると、水を撒くスピードを上げてあっという間に手桶の水を空にした。

 

「はいよ、待たせたね。店内で話すかい」

「いや、初めてこの街に来たので散策していたんだ。そうしたら、この街は迷宮が多いが代わりに店も人も多くてなかなかいいところだと思ってな。探索の拠点を移そうかといろいろ検討中なんだ。だからこのあたりの借家の相場感なんかを聞いておきたくてな」 

「そうかいそうかい、この街は魔物さえ倒せりゃいい街だよ。戸建てを希望かい」

「そうだな、パーティメンバーと一緒に住むことを想定している。それなりの広さの間取りの戸建てがいい」

「そうだねぇ……」

 

 貸出せる物件のリストを脳内で検索しているのかオリータはしばし考えこむ。

 

「迷宮から多少離れても構わないが四万ナール前後で、周りの家と近すぎない立地で周辺のスペースで畑などもできるとなおいいな」

「へぇ……残念だねぇ。ちょうどそんな家があったんだけどね。でも一年前くらいに契約が決まってしまってね」

 

 ドクン、思わず心臓の音が聞こえた気がした。俺の出した条件はほぼほぼ原作主人公が住んでいた家を想像したもの。そこに入居した人がいる……一年前?

 

「そうか、それは残念だ。俺の先を越したのはどんな人でした?」

「ミッちゃんかい? えらいべっぴんな奴隷を連れて引っ越してきたと思ったらあれよあれよという間にべっぴんさんたちが増えていったねぇ。頼りなさそうに見えたんだが、随分と優秀な迷宮探索者みたいだよ。羽振りもよさそうだしね」

「そりゃあ……なんとも羨ましいね。俺のところもようやく今度仲間を増やすことになりそうなんだがな。ちなみにその家はどの辺りにあるんだ?」

 

 大げさに羨ましがりつつも内心は穏やかじゃない。もしかしたら、いるのか?

 

「ちょっと迷宮から遠い北西部の郊外の家だね。そうだ、そこよりもさらに遠いけどミッちゃんの家よりも大きい家があるよ。しかも街から遠ざかる分、お値段据え置きでお得だしね」

「そ、それはいいね。でも今日のところは情報収集のみなんだ。もっとお金を貯めて今度は仲間と一緒に来るよ。それまでそこが空いていればいいんだが」

「そうかい? じゃあその時を楽しみにしているよ。またおいで」

 

 なんだか自分でもわからない複雑な感情に戸惑いつつ無事に世話役のオリータと別れ、路地裏からベリル東迷宮前へ。時間は十四時を既に回っている。二時間ワンセットと考えればまだ時間はあるが、もう少し落ち着いてからの方がよさそうだ。

 

 




所持金   659,911


青魔結晶    1,300
ブランチ      702
兎の毛皮      325
毒消し丸    3,250
道案内      △400
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