さあ、ちょっと面白くなって来たんじゃないか。
ミッちゃん……頼りなく見えるけどみるみる頭角を現す。美人の奴隷を次々に増やす。羽振りがいい、か。
条件は当てはまる。マジでいるのか? あの人たちが? この世界にも? いるなら会いたい気もするし、会いたくない気もする。ただあそこのパーティも『ワープ』主体で移動しているから外で偶然会うことはほとんどないだろうな。一年前ということは下手したら迷宮も二つ三つ殺している可能性すらある。であるならば貴族になるなんてのも目の前というか、もうなっている可能性もある。
会ったからって別にメリットがあるわけではないけど、好きな作品のキャラクターに会って話せるなんて……普通ならあり得ないのだからできれば実現したい。本物そのものではないということにはなるのだろうけど、うまく知り合えれば知人、もしくは友人になれる可能性はある。
いやいやいやいや落ち着け、落ち着け俺。
あくまでミッちゃんのことはおまけだ。俺の異世界生活に対するいわばオプションのようなものだと考えよう。
それよりも今は俺自身のためにやることをしっかりやって、双子ドワーフ姉妹を完璧な形で受け入れられるようにするのが先だ。自分の生活すら安定していないのにミッちゃんたちに会ったって下手したらタカりだと思われかねない。偶然出会ってしまうとかなら仕方ないけど、そうじゃないなら最低でもメンバーを揃えて迷宮で食っていけるようになってからじゃないと対等な付き合いなんて出来ないと思おう。
いいじゃないかそれで、もしかしたら原作主人公に近い存在がいるかも知れない。うん、それだけでテンション上がる。それだけでいい。ミッちゃんのことは後回しでいい。
そう決めたらなんだかすっげぇすっきりした。レベル上げはもちろんだけど、明日皇都で計画している持ち込み品の売り込み商談もリスクはあるが頑張って挑戦してみよう。そうと決まればまた二階層でボス部屋を探しつつ走り回ってレベル上げだ。
ポイントは《探索者》がレベル十一になっているから余ったポイント調整して頭装備三に変える。ボーナス装備はランクが上がるたびにスキルが一つ増える。頭装備三の性能もボーナス装備の名に恥じないな。
三叉束髪紫金冠
知力上昇 使用MP減少(微) 魔法効果増(微)
ちなみにボーナス装備にも法則があるらしく、武器=攻撃力(腕力)、盾=精神、頭=知力、胴=体力、腕=器用、足=敏捷、それぞれの部位がステータス項目の強化に対応して、ランクが上がるごとに関連する効果が追加されていくらしい。
アクセサリーは、武器の強化率には及ばない攻撃力上昇、それに加えて対人強化とか対水生強化とかの効果が増えていくから、アクセサリー=攻撃力小上昇+対〇〇強化って感じになる。他にポイントを振りたい場所は多いから自分たちでいい装備が準備できるならいずれ使わなくなるだろうけど、今はうまく活用していきたい。
「よし、いくぞ」
ポイントを割り振り、装備を整えてから『ワープ』で二階層へ移動してヨーイどん!
いやあ、爽快だった。頭装備を変えたことと《魔法使い》のレベルが上がってきたことで二階層でもストーム二発で魔物を一掃できるようになった。おかげで兎さんからの突進も受けることがなくなったから完全にヌルゲーになってしまった。
せっかくいい感じで兎さんの突進を避けられるようになってきていたんだけどな。でも倒すまでのスピードが上がったおかげで効率は良くなったので魔物もたくさん……もっとたくさん行けたはずなんだよなぁ。
ミッちゃん問題でパニくって強壮丸を買い足すのを忘れていた。おかげでちょいちょいデュランダルのお世話になっていたからちょっとだけ効率は落ちた。でも、二日目としては十分すぎるほどの成果は出た。
探索者Lv15 英雄Lv12 魔法使いLv14 戦士Lv14 僧侶Lv14
合わせて双子の《探索者》もレベル十に到達した。同ジョブ育成はかなり有効だ。あと三日の間に今度は何を育ててやろうか。つくづくまだ《鍛冶師》の条件を満たしていないのが残念でならない。
とにかく今日もいろいろあった。ささっとドロップ品を売って帰ろう。あ、強壮丸を買うのも忘れてはいけない。
ドロップ売却で七百四十七ナール、強壮丸十個で六百ナール。うすうす気が付いてはいたけど、迷宮での金策は低層だと難しいということか。これでも俺は結晶化促進があるからいくらかマシだけど、やっぱり明日の商談は大事だな。早めに寝て万全の状態で臨もう。
いつも通りに帰って、夕食を食べ、お湯をもらって体を拭き、早めに寝る。寝る時間が早いせいか起きるのも早い。日の出と同時くらいに目が覚めて軽く体をほぐしてから朝食を食べにいく。何も用事がなければこの後装備を着けて迷宮に行くところだが、今日はちょっと皇都まで行って持ち込み品を売ろうと思う。
ただ、皇都の店が何時から開くのかがわからないので一度部屋に戻って準備をする。まず今回の計画をおさらいしておこう。
今回売ろうと思っているのは、いろいろ持ち込んだ小物、百円均一で買った手鏡やら爪切りやら耳かきやらなんやらではなく、初日からお世話になっているタオルを売ろうと思う。
まずは皇都の服飾店や生地屋みたいなところを回ってタオル生地のものがないことを確認してからになるが、ソラータ村で出されたのはのっぺりした手ぬぐいだったし、市でもタオル生地のものは見当たらなかった。それなら見る人が見れば、タオル生地の肌触りや吸水性は驚いてもらえるはず。
こっちに来てから使っているこの中古となったタオルをできれば金貨一枚以上で売りたい。向こうがどのくらい食いついてくるかわからないが、おそらく買い取ってしまえば生地を作る専門家に見せて同じような生地の編み方はすぐに再現できるはず。その技術提供までも含めた値段として交渉が出来れば……というところ。
バイトの経験こそ豊富だが、社会人になったばかりだった俺に商売が本業の人と対等な商談ができるのか。こんなとき原作のドワーフの彼女がいてくれれば、うまく交渉してくれたんだろうな。まあ、仮に足元を見られたとしてもそれは仕方ない。こちらとしては最低限の現金を手に入れられれば今回は成功としていいだろう。
「あ、そういや商談するのにこっちの世界の服をまだ持ってないぞ」
うっかりしていたなぁ。ぶっちゃけ鎧とか身に着けちゃえば下に何を着ていても目立たないから後回しにしていた。かといってベリルの市はまだ先だし、皇都の店は商談に行く先だから気まずい。とするとあと行ける街はクラタールしかないから、そこの洋品店でも行くか?
でもあんまりお金は使いたくないんだよな。そういえば胴装備三が確か……おぉ、かっこいいけど派手か?
紅錦百花袍
体力上昇 物理軽減 魔法軽減
性能はもちろん凄い。そしてこの装備見た目が中華風の合わせの着物みたいになっていて結構格好いい。ただ、生地が赤いので悪目立ちしそうな気がする……というか昨日使っていた頭装備三も中華風の帽子型だった。しかも触覚みたいな長い羽根飾りが付いていてどっかで見たことあると思ったら三国志の呂布か! なるほど、ボーナス装備は意外と伝説の武器や防具の名が冠されている物が多いから呂布由来のものもあってもおかしくない、のか?
なんかそう考えたら有りな気がしてきた。大物感を出すにもこれくらい威圧感のある服装でもいいかもしれない。間違いなく造りはいいし、デザインも格好いい、色だってこれだけのはっきりした赤い服を着ている人は少ない。ちょっと傾奇者っぽいけどこれを着ていくだけで興味を持ってもらえる可能性はある。何より防具としてかなり優秀だ。これで足装備二の回避のブーツを装備していけば荒事に巻き込まれても何とかなりそう。
ちょっと勇気はいるが思い切ってこれで行こう。
ただいつものリュックだとせっかくの袍に似合わないから売るためのタオルと、追加の交渉材料になるかもと思って準備してあったメモ用紙を持ち込み品の入れてあるキャンプ用のリュックから布製の手提げ鞄を取り出して入れる。財布代わりのウエストポーチは袍の下に装着する。袍は垂れの部分みたいのが足元まで伸びているのでポーチが隠せるのもポイントが高い。
武器は鋼鉄の剣がアイテムボックスにあるから大丈夫。ポイントは買取価格三割アップに割り振っておけばいいか。よし、そんなことしている間に九時を回った。こっちの人たちは朝が早いからもう開店していていい時間帯だろう。
所持金 660,058
ブランチ 487
兎の毛皮 260
強壮丸10 △600