俺だって異世界迷宮でハーレムしたい!   作:おるどばれい

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転移八日目


25 共鳴

 ミサンガ

 

 さすがにこれもスロットはなし。別に芋虫の結晶があるわけではないし、急ぐ必要もない。

 

「二人が作ってくれたミサンガは残念ながら空きスロットは無かったが、せっかく初の『防具製造』記念だから他にアクセサリーを付ける必要ができるまで俺が装備してもいいか?」

「ユータ様、ミサンガには防御力もなにもありません。装備枠には限りがあるのですから何か効果のある装備品を身に着けるべきだと思います」

 

 真面目だなぁ、セリナは。効果がないのは分かっている、だから他にアクセサリーを付ける必要ができるまでって言ったのに。

 

「そこは別にいいんだ。俺の国にはお守りっていう文化があってさ、本当は神様みたいな超常的な存在から力を分けてもらったものという触れ込みで販売されたものを所持するんだけど、それ以外にも誰かの為を想って作ったものに祈りや願いを込めてその相手に贈ったりすることもあるんだ。それだと贈られた側もその想いに支えられていると思えるだろう?」

「なるほど、お守りですか……でも、駄目です。それならなおさら駄目です! そうであるなら今作ったミサンガには何も込めていないですから余計そんなものを渡す訳にはいかないです」

「でも、ほら、二人が初めて作ってくれた装備という希少価値はあるだろう? それを主人である俺が身に着けても」

「駄目です。これは私たちが記念としてそれぞれ装備します」

 

 頑ななセリナの言葉にファンナまでもがうんうんと頷いている。むぅ、お守りの例えは逆効果だった、失敗したか。

 

「まだ糸がここにありますから、今度はちゃんと想いを込めて作ります!」

「セ、セリちゃんずるい! 私もご主人様に作る!」

 

 そういうと二人は渡してあったもう一つの糸を手に、恐ろしいくらいに真剣な顔で集中して目を閉じると、同時に詠唱に入った。

 

「え、あ、ちょっ、ちょっと待てって……あ、駄目だ、聞こえてない」

 

 さっきまでの様子からもう一回『防具製造』をしてもMPは持ちそうな感じだけど、確か二人以上が近くで詠唱をしたら詠唱共鳴が発生して詠唱がうまくいかない、という原作設定のはず……原作では失敗した場面は描かれなかったし、実際のところ詠唱が被るとどうなるのか分からない。

 

 まあ、スキルが失敗することと、もしかしたら素材もなくなるかも知れないが、それ以外に問題はなさそうだから、ここで失敗しておくのもいい経験か。

 

 一応失敗時に二人が弾かれたりして怪我とかしないようにフォローできる位置をキープしながら詠唱を見守って……いるんだが、あれ、普通に最後まで終わりそう?

 

 あ、終わった。となれば当然、同時に光が。ぐあ! まぶしぃぃ! 失敗すると思っていたから二人の様子を見守るために注視しすぎたぁぁあ! 

 

 うぅ、目がちかちかする……ちょっとまだ視界が覚束ないが、うっすらと見える範囲では二人は無事にスキルの使用を終わらせているっぽい。

 

「あ、あのご主人様。大丈夫ですか?」

「ああ、ついうっかり光を直視してしまっただけだから、すぐに回復する」

 

 一応、『手当て』もかけておこう。

 

「ユータ様、今度はちゃんと想いを込めましたのでこちらを使ってください」

「あ、ず、ずるいセリちゃん。私もご主人様のことを想って作りました」

「あ、あぁ。ありがとう二人とも。ちゃんと両方とも付けさせてもらうな」

 

 ようやく目が回復してきたところで二人から差し出されたミサンガを受け取ろうとして思わず手が止まる。え、まさか……これは偶然? それにしてはあまりにも都合が良すぎる。

 

「どうかしましたか?」

「い、いや、なんでもない。二人とも俺の手首に一つずつ結んでもらっていいか」

「「はい」」

 

 嬉々として俺の手を取る二人をほんわかと眺めつつも俺の意識の半分は手首のミサンガから出ている鑑定ウィンドウに持っていかれている。

 

 ミサンガ(空き)

 ミサンガ(空き)

 

 まさかの両方ともスキルスロット付きだった。

 

 いや、確率論から言えばたまたま二人が作った二つ目のミサンガに当たりが出るということもゼロではないから無いわけじゃない。それでもそんなことがあるだろうか? 

 

 そもそも、なぜ詠唱共鳴はおこらなかったのか……一人で考えていてもわからないものはわからないんだから考えるだけ無駄か。なら、試してみるしかない。

 

「ご、ご主人様できました」

「こちらもできました」

「ありがとう二人とも、大事にするからな」

 

 両の手首に結ばれたミサンガをどこか誇らしげに見ている二人の頭を革の帽子の上からにはなるが撫でてやると嬉しそうに目を細めてくれるのが嬉しい。

 

「じゃあ最初に作った方のミサンガは宿に戻ったら俺が二人に付けるな。いずれ身代わりのミサンガが人数分準備出来たら交換になるけどね」

「「はい、お願いします」」

 

 手首にするなら今でもいいが、本物の身代わりのミサンガと勘違いされると奴隷の二人は狙われる可能性もあるので足首に巻いた方が安全だ。となるとわざわざここで靴を脱いでまで装備するのは合理的じゃない。

 

「それで、迷宮に戻る前に二人に確認したいんだけど詠唱共鳴って知ってる?」

「はい」

 

 そう答えたのは《探索者》として迷宮に入ったことがあるセリナで、ファンナはきょとんとしているので知らないのだろう。

 

「じゃあ、今二人が同時に詠唱してスキルを使っていたことには気が付いた?」

「え? あ、そういえば姉さんと私、同時に新しいミサンガを作っていたかも知れません」

 

 二人は自分の作業に集中するあまり同時にスキルを使用していたことには気が付いていなかったらしい。

 

「俺が見ていた限り二人がスキルを使用したタイミングは、ほぼ同時だった。当然詠唱共鳴が起きてスキルは失敗すると思っていたんだけど……」

「なぜか成功してしまったと」

「そう。しかも二つともスキルスロット付きだった」

「…………」

 

 しれっと告げたやばい新事実にセリナは固まる。今のやり取りだけで俺が考えていた可能性に気が付いたのだろう。逆にファンナは流れがよくわからないまま視線が俺とセリナの顔を往復している。

 

「まさか、ですよね」

「まさかだなぁ」

 

 そんなことがあるものなのか、あっていいのか、あったら嬉しいな。みたいな感じでセリナと顔を見合わせていると、間にいたファンナがぽむっと自分の手を叩いた。

 

「あ! わ、わかりました! 私とセリちゃんが力を合わせれば良い物が作れるってことですね!」

 

 あちゃあ、ファンナくん。言っちゃいましたか、あえて俺たちが避けていた可能性をズバッと容赦なく。まあ現実から目を逸らしていてもしかたないんだけどさ。となるとやっぱり試すしかないか。と言ってもこんな外でやるようなことではないから今確認しておきたいのは一つだけ。

 

「ファンナ、そのことはこれから確認していくから誰にも言わないようにな」

「は、はい」

 

 ファンナは素直にこくこくと頷く。うんうん、この娘にはこの純真さを失わないでほしい。

 

「で、セリナ。検証は宿に戻ってからになるが、先に一つだけ確認しておきたい」

「はい、詠唱共鳴が起きるかどうかですね」

「さすがセリナは話が早い。じゃあ俺と重なるようにアイテムボックスを開く呪文を唱えてくれるか」

「わかりました。ユータ様の後に続きます」

「よし、じゃあ始めるぞ。『八百千五百のお宝を『八百千五百の〈キィィィイーン!〉うおっ!』」

「「きゃあ!」」

「くっ、大丈夫か二人とも」

「は、はい、ちょっとキーンってしただけです。ご主人様は大丈夫でしたか」

「ああ、ちょっとびっくりしただけだ」

「セリナも問題ないな」

「はい、大丈夫です」

「よかった……さて問題は、問題なく詠唱共鳴が起きたこと、か」

 

 唱え始めた呪文にかぶせるようにセリナが詠唱を始めると同時にマイクのハウリングのような音が響いて詠唱が打ち消された……これが詠唱共鳴か。確かにこれじゃあ同時にスキルを使うのは無理だ。ということは詠唱共鳴という現象のイレギュラーではなくファンナとセリナの時だけの特殊な事例ということになるか。

 

 だとすると、しなくてはならない検証は、ファンナとセリナで再び詠唱共鳴が起きないでスキルが使用できるかで一つ。もう一つは詠唱共鳴が起きないで同時スキルが発動したとき、その結果に違いがあるかどうか。この二点だな……いや、俺への想いを込めてくれたからスキルスロットが付いた可能性もゼロじゃない。じゃあ、それも含めて三点だな。

 

「よし、宿に戻った後の方針はなんとなく決まったから、改めて探索に戻ろう」

「「はい」」

「さっきも言ったけど、今二人はレベルが一になっているからまずはこれを早めに上げておきたい」

 

 迷宮の入口に戻りながら二人に今日のこの後の予定を伝える。

 

「が、頑張ります!」

「もちろん頑張ってはもらうが、しばらくは俺の魔法で魔物を倒していくからその間、二人には俺を守ってもらいたい」

「早くレベルを上げるために何階層に行く予定ですか」

 

 相変わらずセリナは鋭いところを突いてくる。

 

「四階層だな。今、俺がこの迷宮で行けるのは四階層までというのもあるし、ここから魔物が三匹まで出てくるから魔法で一掃するのに効率がいい」

「なるほど、そうするとレベルが一になっている私たちではちょっと危ないとお考えなのですね」

「そうだな、ゆっくり下から戦って上げてもいいんだが、それはある程度レベルが上がってから戦闘経験を積むときでいい。序盤から無理にギリギリの戦いを経験する必要はないからね」

「でもそれですと、かなりの期間ユータ様に負担をかけてしまいます」

「そ、それはダメですご主人様」

 

 いや、レベル十くらいまでなら四階層で戦えば数日じゃないかな。ん? あ、そうか経験値ブーストについて話してなかったか。

 

「いや、ある程度といってもレベル十くらいまでのつもりだし、俺の不思議能力の一つである獲得経験値アップを使えば数日で達成できる」

「…………ユータ様、初めて聞きましたが? そのせいで私たちの探索者レベルがあんなに早く上がったのですね」

「ごめん、伝え忘れてた。探索者レベルについては正解。そこまで上がるのに三日しか掛かっていないのは知っているだろう。さらに今回は四階層だからその期間はさらに短くなると思う」

 

 セリナのジト目に耐えつつ、迷宮の入口から四階層を指定して移動する。

 

「こ、ここは四階層ですか?」

 

 ファンナの問いに頷くと、諦めたようにセリナも息を吐く。

 

「わかりました、ユータ様に魔物が近づかないように私たちが守ります」

「う、うん。頑張ります」

「ありがとう二人とも。そうしたらちょっと装備を入れ替えよう。まずファンナも俺の小楯を装備してくれ。俺のところまで魔物は来ないと信じているからな」

「は、はい!」

 

 ファンナに小楯を渡すと次は、アイテムボックスを開いて鋼鉄の剣を取り出してセリナに渡す。

 

「棍棒は《鍛冶師》取得のための装備だったからもういい。今回は取り回しのしやすいこっちを使ってくれ。棍棒は自分のボックスに入れておいていい」

「確かに剣の方が守りやすそうですね、では武器はそちらを使わせていただいて、棍棒はこちらでお預かりします」

「よろしく頼む。よし、じゃあ二人とも魔物を探していくぞ、ファンナはそれっぽい音が聞こえたら教えてくれ」

「は、はい」

 




ストックが切れました(-_-;)

この後は不定期更新になります。
なんとか週に1,2回更新できたらとは思いますがあくまで意気込みです。

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