内見を終えた俺たちはそのまま金物屋に戻り契約をしたが、原作の手法を見習って店売りのフライパンを一つ買って三割引きを発動。宿の契約が切れる三日後から一年間を三万五千二十八ナールで契約した。調理器具は引っ越すときにはもっと揃えなきゃいけないが、今は荷物になるのでフライパンだけでいい。
「じゃあ、鍵はこれです。なくさないでくださいね。契約開始日は三日後の春の十二日ですが、家具の購入とかもあると思いますし今日から家は使って構いませんので」
「それは助かる。ではさっそくこの辺のいい家具屋を教えてもらえるか」
「西大通りにあるお店が種類も多いし、オーダーでの作成も受けてくれます。合わせて寝具の方も扱っていますから大体の物は揃うはずです」
「なるほど、これから行ってみよう。後日また鍋などを買いに来る予定もあるし、世話役としていろいろ頼ることもあると思うがよろしく頼む」
「はい。お任せください。あと、うちの旦那の鍋釜は評判いいですのでお勧めです」
ちゃっかりと売り込みをするオリータに苦笑しつつ金物屋を後にする。いやあ、とうとう家を借りてしまったな。でもわずか十日足らずでここまでこぎつけられたのは十分な成果だろう。頼れるメンバーもすでに二人もいるしな。
「た、楽しみですね。ご主人様」
「そうだな。だが結構広い家だし掃除などの管理が大変じゃないか」
「靴を脱いで使うみたいなのでそこまで大変ではないと思います」
「そうか、まぁ手が足りなければ俺も手伝うし、パーティーメンバーはいずれ増やしていくつもりだから、それまではほどほどに手を抜きつつやっていこう」
「あの、そこは手を抜かないように引き締めるところでは?」
「そうかも知れないけど、探索して家事まで完璧にこなして、夜はあれやこれやしてたらさすがに二人も疲れちゃうし、どこが一番手を抜けるかといったら掃除かな、と。幸い新築だし、汚さないように気を付ければ掃除もそれほど手間はかからないと思うが」
奴隷としての模範解答をしたセリナに正論と私欲を混ぜ込んで反論すると、その内容に顔を赤くしてしまうセリナ。
「あの……夜のお情けを頂くのを手加減してもらうという案は」
「却下。二人を愛でるのは俺の最大の楽しみで癒しだ」
「あう、あ、はい……ありがとうございます」
そこでありがとうが出ちゃうところが可愛いなぁ、セリナは。
「ご、ご主人様。これから何を買うんですか」
「そうだな、まずは寝室用に六人くらいでも寝られるような大きなベッドと寝具、キッチンに置く食器棚、ダイニングに置く食卓代わりの大きなテーブルと椅子……後は、棚とか箪笥とかいる?」
「い、今のところはそんなにしまう物もないので、大き目の箪笥がひとつあればいいと思います。後はベッド脇にランプや水差しを置けるような台があるといいかもです」
「お、確かに枕元に何か置ける台があるといいね、採用。とりあえずは大きいものだけ先に注文しておけば、残りは必要に応じてその都度買い足せばいいか」
「は、はい。いいと思います」
二人と新居についての話で盛り上がっているとすぐに勧められた家具屋に到着したので、店主に住所(たしかクラタール四区の外二十三番地?)を伝え、必要な物をいっぺんに告げて見繕ってもらう。
その結果、ベッド脇のチェスト、タンス、食器棚はいくつか置いてあったものから二人が選び、ダイニングテーブルと椅子のセットは六人掛けがやや小振りで、あの広いダイニングルームに合わなそうだったので、思い切って八人掛けの大きなテーブルを選択。当然椅子も八個。後は、商業ギルドで見たような応接ソファみたいな物が中古で安かったので三人掛けを二つ、その間に置けるようにローテーブルを一つ。
そして、いよいよキングサイズのベッドとそれに合わせたマットと寝具をと思ったら、さすがにそのサイズは制作依頼になってしまうとのことで、ひとまずダブルベッドのセットを買うことにして、依頼だけ出しておいた。そのサイズのベッドが必要になるのはもっとメンバーが増えてからだからしばらくはダブルベッドで十分。
で、さすがにそれだけ家具を買い込むと費用もかさむ。ほぼ金貨三枚が溶け、俺の残金も五万ナールを割った。幸いまだ春だから税金までには余裕があるが、早めに金銭的な余裕を持てるようになりたい。
製作依頼を出したベッドは三十日程度かかるとのことだったので、完成が近くなったら連絡をもらうようにした。残りの家具は明日の夕方にまとめて配達してくれるらしいので、明日は探索した後、昼過ぎには新居に行って掃除でもして待つか。
家具を選んだりしているうちにいい時間になったため、その日は宿に帰ってご飯を食べて体を拭いた後、今日は二人を後ろからこれでもかと攻め立ててノックアウトしてあげた。ドワーフは小柄なこともあって背徳感からちょっといけない性癖が開花しそうになってしまった。
だが、見た目が小柄なだけで二人はこの世界では立派な成人。なにも問題はない。ないったらない!
二人を両脇に抱え目を閉じて、性癖を浄化していたら例のやつが始まってしまった。
「せ、セリちゃん、後ろからも凄かったね」
「姉さん、ユータ様が寝ているからいいけど、そんなこと聞かれたら面白がってもっとがんがん突かれちゃうよ」
「えへへぇ、ご主人様にだったら全然平気」
「むぅ……それは……私も嬉しくないわけじゃないけど」
ほうほう、バックからの攻撃も二人は好きということだな。
「お引越し楽しみだねぇ」
「そうだね、まさかユータ様がこんなに早く家を借りられるくらいお金持ちだったなんて」
いや、一文無しでしたけどね。序盤のスタートダッシュと一か八かの商談がうまくいっただけです。
「ち、違うよセリちゃん。ご主人様は私たちを買うのにもお金が足りなかったんだもん。きっとものすごい頑張ってくれたんだよ」
「……うん、そうだったね。私と姉さんをわざわざ一緒に買って、姉さんを助けてくれたんだよね。ユータ様は凄い方だけど、決して恵まれてたって訳じゃなかったね」
やばい……そんなふうに言われたら、二人を買うまでの間のことが報われ過ぎて泣いちゃうからやめて。ていうかこれ以上聞いていたら本当に泣かされてしまう。早く本当に寝てしまおう。
「あ、明日からまた探索と鍛冶とおうちのお掃除もいっぱい頑張ってご主人様に喜んでもらおうね」
「姉さん、張り切りすぎて怪我でもしたらユータ様は怒ると思うからはっちゃけすぎないでね」
「はーい」
二人がくすくすと笑うリズムがゆっくりと体に沁みこんできて、いつの間にか眠りに落ちていた。
「今日はベリル西迷宮を探索しようと思う」
「「はい」」
気持ちいい朝を迎え、いつものように着替えを終えると朝食を食べてから部屋で装備を身に付ける。
「セリナ、確認のため西迷宮のモンスターの順番を頼む」
「はい、一階層がコボルトで、ニートアント、コラーゲンコーラル、ミノ、ニードルウッド、スローラビット、スパイスパイダー、チープシープ、ナイーブオリーブ、グリーンキャタピラー、エスケープゴートです」
「ありがとう。という訳で今日の目標は一階層のコボルトを相手に《僧侶》を取得してもらって、次に二階層で毒針を集めてからそれを使ってコボルトを毒にして倒すことで《暗殺者》の取得条件を満たす。ついでに新居で使う塩と砂糖も集めよう。それが終わったらできれば四階層まで行って鍛冶用に皮を集める」
「「はい!」」
おぉ、自分たちの家を借りることになったのだから頑張らなきゃいけないと思ってくれたのか、二人とも気合が入っている。今日は低い階層だし多少気合が入り過ぎたって最初はコボルトからだから問題ないな。この勢いのまま行こう。
一度冒険者ギルドに出て、徒歩で三十分歩くというベリル西迷宮までのフィールドウォークを銀貨一枚で頼んで入口まで送ってもらうと三人で装備等を確認して普通に一階層へ入る。
キャラクター再設定1 詠唱省略3 鑑定1 MP回復速度五倍15
フィフスジョブ15 結晶化促進八倍7 獲得経験値二十倍63
必要経験値五分の一15 頭装備三7 合計127
ポイントの割り振りは変わらずバランス型。現状は何かに特化して育成しなくてもいい。これでも他の人たちに比べれば十分チート。経験値だけでも双子は四十倍で、俺に関しては実質百倍だし。
「まずは普通にコボルトを倒してみようか。ファンナ、なんか聞こえる?」
「え、えっと……多分こっちから少し?」
「どうせボス部屋を探しつつ動き回るから、何か聞こえたら教えてくれればいいから」
「は、はい!」
「ユータ様、私が先行します」
セリナが装備している鋼鉄の剣を確認しつつ先頭に立って歩きだし、その後ろを銅の槍を持ったファンナが追う。ロッドを持った後衛スタイルの俺は最後尾。
一応警戒は必要だが、一階層でコボルトだからそこまで気を張り詰める必要はない。やや早足くらいのペースで通路を進んでいくと、通路の先に小柄な人影。
「いました」
「最初は武器で戦おう、二人でやってみてくれ」
「「はい」」
こちらに気が付いたらしく、走って向かってくるコボルトだが……確かに遅い。小学校低学年児くらいの大きさで動きもそんな感じ?
セリナとファンナはそんなコボルトを左右から挟み込むように展開し、距離を詰めると剣で斬りつけ、槍で突く。そしてそれを二度も繰り返せばコボルトはすぐに煙になっていった。よっわ!
二人もあまりの手ごたえの無さに拍子抜けしている。セリナもコボルトとは戦ったことがなかったらしい。まあ弱いと評判で魔法一発で即死する相手だからな。
「あ、あのご主人様……これを」
コボルトの弱さについて考えていたらファンナがにこにことドロップを届けてくれた。コボルトはコボルトソルトかコボルトナイフを落とすんだったか。塩は料理で、ナイフは鍛冶で使えるんだったか。しかもボスのコボルトケンプファーはコボルトスクロースで砂糖だろ。弱いくせに捨てるところのない奴だ。
「ありがとうファンナ。塩はある程度集めておかないとな。ん? 随分と透き通っているな、結晶化しているのか……ぶっ!」
『コボルトのスキル結晶』
マジかぁ……そんなことあるのか。まさかのファーストコンタクトでレアドロップ引くとか?
誰か【幸運】の隠しスキルとか持ってたりする?
だけど、これで立木と合わせてスキル付与できるじゃん。帰りにダマスカス鋼の剣か槍を探して、商業ギルドに持ち込んでみるかな。
「ユータ様、運が良かったですね。私も《探索者》レベル三になるまで迷宮に入りましたが、一度も落ちたところを見たことがないスキル結晶がもう二個目ですから」
「そうだな、俺も驚いてる。本来は狙って取れるものでもないんだろうしな。俺たちも基本的には商業ギルドで集めることになるだろうし、ドロップするのは例外と思っておこう」
じゃないと物欲センサーが働くだろうしな。
「そうですね、わかりました」
「よし、じゃあ探索を続けるぞ。次はセリナが二回攻撃してファンナが一度突いたら武器を俺に預けて素手でコボルトを倒すんだ」
「「はい」」
経験を共有する二人なら、どっちがとどめを入れても二人とも《僧侶》の条件を満たせるはずだから一回で達成できるはずだ。
二人に素手での戦い方をなんちゃって知識でレクチャーしながら歩くこと数分。次のコボルトを発見、すぐにセリナが駆け寄りさっさと二連撃を加えるとファンナとスイッチして俺に剣を渡してすぐにコボルトに向かう。その間に槍で一刺ししたファンナも入れ違いで俺に武器を預けにくる。この何気ない二人の連携というか呼吸が、見ていて気持ちがいい。
顔だけはちょっと怖いが動きは全く怖くないコボルトをファンナとセリナが挟み込むようにして殴打していく。といってもメインでの殴りはセリナのようで、ファンナは至近で格闘はゴーグル型眼鏡が間違っても破損しないように一歩引いて囮のように立ち回っている。うん、やはり問題なく片付きそうだ。
二人で十発ほどの拳打を加えたところであっさりと煙へと変わっていくコボルト。念のためパーティジョブ設定を一度セットしなおして確認してみたが、間違いなく二人に《僧侶》のジョブが追加されている。
「お疲れ様。やはり一階層のコボルトなら余裕だったな」
「は、はい。私の視力でも簡単に避けられました」
「これで私たちもいつでも《僧侶》になれるんですか?」
今度はちゃんと落としたらしいコボルトソルトを俺に差し出すセリナ。
「ああ、ちゃんと取得できたよ。次は状態異常で魔物を倒さないといけないからまずは二階層を目指すから小走りで行こう。コボルトは俺が魔法で倒すけど、近くに人がいるようなら二人に任せる。あんまりボス部屋が見つからないようなら一度迷宮を出て、入口で二階層に案内してもらおう」
「そうですね、コボルトの一階層で長い時間さ迷うのはもったいないです」
コボルトソルトをアイテムボックスにしまいながら方針を定めると、武器を返す。
「じゃあ、いくぞ」
「「はい」」
次のメンバーはどんな人?
-
メイラ 索敵 長身細見長髪クール美女
-
シェリア 索敵 細見陽気軽妙元気少女
-
ロシー タンク 大柄繊細暢気愛され系
-
トモエ 後衛 色白獣耳獣尾クール美女