俺だって異世界迷宮でハーレムしたい!   作:おるどばれい

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転移十日目


33 専属

 迷宮から直接『ワープ』でクラタールの冒険者ギルドに出ると、しばらく売却していなかったドロップの中からブランチ百個と兎の皮五十と蟻酸を三割アップで売却。三千ナールに届かないくらいだけど、ここ最近収入ゼロだったからちょっと嬉しい。

 

 ロッドや頭装備、小楯なんかは使わないだろうから回収。ファンナの槍も邪魔だから回収してアイテムボックスにしまって代わりに鉄の剣をファンナに渡す。セリナの鋼鉄の剣はそのまま。問題はないと思うが念のためセリナと二人で護衛をしてもらうことにしてギルドを出るとまず武器屋を探す。

 

 ギルドで確認したところ、この街に武器屋や防具屋は複数あって今いる街の南側にあたる二区と三区にも一つずつあるらしい。そのうちの二区の店の方が少し近くて武器と防具を一緒に販売している店とのことなのでまずはそちらに向かう。

 狙うのは立木のスキル結晶を付与する武器。高く売ることと立木の性能を考えると店売りの中でベストなのはダマスカス鋼の槍。こいつをスキル付与してなるべく高値で売りたい。

 

 それにしても、さすがに迷宮が五つもあると武器屋も一店舗という訳にはいかないんだな。原作ではだいたい一つの街に一つの感じだった気がする。

 そもそもこの世界の装備は《鍛冶師》の実力によって性能が変わらないので出来あがった装備の値付けは種類ごとに固定されている。だから複数店舗があっても競争で値段が下がるようなことがなく、差異としてはせいぜい品数や種類数など品揃えに関する部分のみになる。

 

 それなのに複数の店舗があるのは、迷宮が多いことで街が広がっているため、各迷宮を拠点にしている迷宮探索者たちが武器屋を訪れる際の移動距離を減らすためらしい。この街は迷宮探索者の街だから迷宮を探索しやすいようにいろいろ工夫がされているのかもな。

 

 そんなことを考えながらたどり着いた武器防具屋で品揃えを確認していくが、やっぱり武器も防具もダマスカス鋼までで、その数も少ない。金属によらない防具は竜革製がたまに入荷するらしいが、今回は置いていなかった。だが、幸い狙っていたダマスカス鋼の槍のスロット付きは一本見つけることができた。スロットは一つしかないが、自分たちで使う訳じゃないから問題ない。

 

 他にもダマスカス鋼の剣も二本ほどあったが、こっちにはスロットが付いていなかったから問題外、結局槍を選ぶ。ラッキーだったのは防具屋が一緒だったので硬革の帽子のスロット付きを三割引き対策で一緒に購入できたことだ。

 

 現状俺の頭装備はボーナス頭装備を使っている。それによって余った硬革の帽子をより前衛で戦うセリナに被せていたが、やっぱり双子に差が出るのは良くない。近いうちにファンナにも同じ装備を買ってやろうと思っていたのでちょうどよかった。

 だけど、二つで三割引きが入っても二万三千ナール以上が溶け、俺の全財産は金貨三枚を割ってしまった。

 

 くぅ、懐が寒い。ていうか所持金が減ると不安感が半端ない。早くのんびりほどほどに稼いでハーレムさんたちとイチャコラしながら暮らせるようにいろいろ頑張らないと。

 

「お昼だけどお腹はすいてないか」

「ユータ様、私たちは今まで一日二食でしたから」

「ご、ご主人様に買ってもらってからお昼もパンを食べさせて貰っていますけど奴隷としては恵まれすぎだと思います」

「そんなことないよ。どっかの誰かが言っていたけど迷宮に入ってもらう以上、体が資本だから必要経費だって。だからちゃんと食べておかないとね」

 

 原作ミッちゃんの言葉だね。

 おっとセリナさん。溜息ですか、何かご不満でもおありで?

 

「……いつも、ありがとうございます。ユータ様」

「ふふ、セリちゃんは可愛いです。ね、ご主人様」

「ちょ、姉さん!」

 

 そんなこと知っていますがなにか? 二人のこういう自分を下に見る言葉は、まだまだ奴隷としての意識が強いから出る遠慮だってことは分かっている。だからあえて言葉では答えずに頭を優しく撫でてもっと甘えていいという想いを伝えると、ちゃんと察してくれて嬉しそうにはにかむ双子はマジ天使。

 

「最初に商業ギルドに顔を出して、その後にいろいろ引っ越しに必要な物を買って、最後にまた串肉でも買って海猫亭のパンと一緒に家で食べよう。まあ、まだ椅子も机もないけどね」

「そ、そうですね、ご主人様と私たちがこれから暮らすおうちで食べるのはわくわくします」

「これからはずっと一緒なんだからすぐに飽きるかも知れないよ。でも、そんなに喜んでもらえるなら思い切って借りてよかった」

「ご、ご主人様はたまに意地悪です。一緒に暮らすお家でいつも一緒にお食事をさせて貰えるなんてずっと幸せに決まっています」

 

 ずいっと距離を詰めてくる眼鏡っ娘の勢いに気圧されつつ、セリナを見ると彼女も恥ずかしそうに頷いている。なんだかいっつもこんなことばかりしている気がするが、ファンナとセリナ、二人と気持ちを確かめ合う機会なんて何度あってもいい。その度に元の世界でささくれ立っていた俺の心が癒えていくからな。

 

「そっか、そうだよな。ファンナの言う通りだ。よし、じゃあ商業ギルドを覗いたら家具が来る前に我が家を綺麗にしような」

「「はい」」

 

 中央広場に着いて、中央迷宮の入場列を横目に商業ギルドへと向かう。中に入ると今日も今日とて賑やかなロビー。さて今日はどんな仲買人が声をかけてくれるやら。

 

 昨日みたいな色っぽい仲買人に当たることはないと思うが、ちょっと楽しみにしている自分がいる。あまり人付き合いが得意なタイプではなかったはずなんだが、こっちに来て嫌でも人と関わらずにはいられなくなったうえに、わざとちょっと尊大な態度をとっている都合上、あんまりへこへこしなくてもいいのが意外とプラスに働いているっぽい。

 

「ほっほ、少しいいかな、青年」

「え? あ、はい。いや、……かまわん」

 

 うぉ、びびった。いつのまにか近づいてきていただけではなく、話しかけられたのが好々爺然としたお爺さんだった。にこにことしている老爺、髪も髭も白いし顔も皺が多く、背丈も小さくなっているかのように見えるけど……某ハン〇ー×2の千手な会長っぽい感じがする。そして、鑑定結果。

 

オルトス 男 68歳

豪商Lv41

装備 身代わりのミサンガ

 

「すまんの、もし仲買人を探しておるなら儂と話をしてみんか?」

「へ?」

 

 ま、まさかの《豪商》。しかもレベル四十一とか、マジか。ていうかなんでそんな人がこんなところで仲買人なんかやろうとしてんだっつぅの。

 

 ……だが、考えようによっては悪くない、のか? ここまで上り詰めた人がわざわざ俺らみたいなド素人をこんな公の場で引っかけて騙したりしないだろ。だってそんなことしたって、ぶっちゃけ割に合わないはずだ。

 

「俺は三人パーティで低階層を探索しているような迷宮探索者だが、それでも構わないか?」

「ほっほ、それを言うたら儂とて老い先短い老人じゃが構わんか? と聞かねばならんぞ」

 

 この世界での平均寿命がどれくらいなのかは知らないが、少なくともこの人はまだまだ死にそうにない気がする。

 

「……いいだろう。話を聞かせてもらう」

「ほっほ、そりゃまた重畳じゃ。では部屋へ案内しよう」

 

 老爺に案内されたのは昨日ロレインと話をした部屋と同じ間取りの一室。テーブルを挟み向かい合ったソファーに腰を下ろした俺と老爺。双子はやはり座らずに俺の後ろで護衛をしてくれている。

 

「さてさて、何から話そうかの」

「まずは自己紹介ではないかと思うが?」

「おう、そうじゃった、そうじゃった。儂はオルトスという。しがない商人をしておったが、店は後進に譲ってしまったのでな。ボケ防止も兼ねて仲買人に最近復帰したところじゃな」

 

 ……辻褄としてはおかしくないし、実際にその通りなんだろう。でもそれなら楽隠居してのんびり余生を過ごしていたっておかしくない。わざわざオークションに張り付いて忙しなくセリに参加するようなことをしなくても……あぁ、でも元の世界にもいたな。妙にパワフルなスーパーお年寄り。

 

「俺はユータ・ハセ、自由民の迷宮探索者だ。先ほども言った通りまだ低階層をうろちょろしているだけの駆け出しだ」

「……駆け出しのう。まあ、ええ。ここに来るのは初めてかの?」

 

 一瞬鋭い目でじろりと俺のことを上から下まで眺めたオルトスだが、すぐにそんな雰囲気を消し笑顔で話しかけてくる。

 

「いや、昨日も来てロレインという仲買人と少し話させてもらった」

「ほう! 初回からロレイン嬢とは持っとるの。ならば彼女が専属じゃなくてよいのか?」

 

 オルトスの表情があからさまにだらしなく緩む。一緒にでへでへと男同士の会話をするのも楽しそうだが、後ろにいるファンナとセリナの手前そういう訳にもいかない。

 

「ここにはナンパをしに来ている訳ではないし、うちのパーティーメンバーに余計なヤキモチを焼かせる訳にもいかないからな」

「ふむ……面白いのぅ。駆け出しといいつつ雰囲気は中堅どころ、奴隷の女を複数抱え色に溺れているのかと思えばそうでもない。多少脱線することはあるが彼女は優秀な仲買人じゃが、それでは物足りないということかの」

 

 ん? なんかいろいろ怖いのですが? さっきの助平な顔は演技? なんで中堅どころとかバレた? そんなに相手に情報与えたつもりはないんだが? 出会ってからここまでのやり取りだけでそんなにわかるもの? 

 

 いや、これもう完全に商談がどうとかいうレベルじゃない。俺とじゃ貫目が違いすぎる。この人がその気になったら尻の毛までむしられるまで搾取されても気が付かないかも知れない。

 

 これは下手な小細工をするよりもさっさと手を引いてまた別の日に別の仲買人を探した方がいい。

 

「気に入った!」

「へ?」

 

 話を打ち切って帰るために口を開こうとしたらオルトスが膝を叩いて叫んだ。

 

「近頃の探索者はぬるいと思っておったところじゃった。ほどほどのところで適当に戦って、ほどほどの収入でほどほどの暮らしをして満足するような奴らじゃ」

 

 まさに俺の目指す理想形ですが?

 

「それが悪いとは言わん。何事も命があってこそじゃからな盗賊などに身を落とさず迷宮の稼ぎだけで生きていけるのならそれもまたその者の人生じゃろう。だが、それじゃあつまらん! そんな奴らではなく、ユータとやら、お前のように向上心を持って上を目指すような奴を見ている方が退屈せん」

「いや、あの」

 

 いやいや、別に上を目指してないです。普通に二、三十階層くらいでドロップ収入が一定額を超えるようになったら十分ですから。

 

「よし、決めたわい。今更専属を決めるつもりはなかったが、この儂がお前さんの専属仲買人になってやろう」

 

 えぇ……なんかいきなり専属が決まっているんだが、どうなのこれ。受けた方がいいのか? 普通に考えれば経験豊富で人脈も広そうで、同業者の中でも力を持ってそうな感じがありそうだが。対等な取引が出来るのか?

 

「ふん、慎重じゃな。だがいいぞ、そのぐらいの警戒心は当然必要じゃ。いいだろう、儂を専属にするかどうかは何回か取引を重ねてからでも構わん。何が希望じゃ」

「えっと、その前に一つだけ確認させてください」

「ほう、よいぞ」

 

 正直商売人としての能力は十分だろうけど、仲買人としてはどうだか分からない。でも本人は専属をするつもりがなかったことや、オルトスの経歴を考えても、この人が俺たちの専属になるってことはイレギュラーなことだ。あとはこれをプラスとみるか、マイナスとみるかだけ。

 

「俺たちはオークションについても取引についても素人同然だ。あなたのような百戦錬磨の方と組めば仮に騙されたとしても気が付くこともできないだろう」

「…………」

「そのうえで聞きたいことは一つ……あなたを、信じていいか」

「……ほっほ、青いのぅ。正面から正直にそんなことを言えばそれこそ鴨にされかねんというのに。じゃが、その真っすぐさは悪くない。だから約束しよう、商うものとして取引に決して不義を持ち込まぬことをな」

 

 その言葉が嘘である可能性はもちろんある。だけど、俺はこの縁が俺たちにとってプラスになると判断した。だから俺はオルトスに向かって右手を差し出す。

 

「よろしくお願いします」

「うむ、任せてもらおう。この商業ギルドにおいてお前さんたちに一ナールたりとも不利益を与えることはない」

 

 

 老いて枯れつつあるはずのオルトスの手は力強く、そして熱い手だった。

 

次のメンバーはどんな人?

  • メイラ 索敵 長身細見長髪クール美女
  • シェリア 索敵 細見陽気軽妙元気少女
  • ロシー タンク 大柄繊細暢気愛され系
  • トモエ 後衛 色白獣耳獣尾クール美女
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