俺だって異世界迷宮でハーレムしたい!   作:おるどばれい

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転移十一日目


37 挨拶回り

 なるほど、その直感は無視できない。

 

 勘とか直感なんて言われているものは、本当に第六感的なスピリチュアルな能力であることは稀だと俺は思っている。スキル制の世界で直感スキル的なものを得ていれば話は別だが、この世界はそうじゃない。

 

 じゃあ、一般的に言われている勘や直感はなに? てことになるが、俺の独自見解によればその大部分が経験と観察からくる推測の結果なのではないかと考えている。そしてアレクはその直感を無視してこなかったことで、ここまで成功してきている。ならば、ここは乗っかってもいい場面だろう。

 

「わかった、では俺もその直感を信じよう。だが、もし買うにしても一度は会っておきたいし、条件が合えば多少訳ありでも問題ない。その分はしっかりと価格で勉強してもらえるのだろう?」

 

 購入意思があることは示しつつも、少しでも安くなってくれればいいなぁという思いを込めてニヤリとしてやると、アレクは楽しそうに肩を揺らす。

 

「承知しました。ではうちで引き取る方向で先方と話を進め、奴隷になった経緯なども聞き出しておきましょう。場合によっては直接あちらの商館での購入になるかも知れませんが、構いませんか」

「俺たちは構わないが、移動はどうなる?」

「そちらはご心配なく。当館の戦闘奴隷の《冒険者》に案内させますので。場所はボンデという北の方の都市でエルフが領主の街です」

 

 おお、出た商館の戦闘奴隷。確か商館の主とかをパーティに入れて、少ない人数にもかかわらず迷宮でがっつり戦っているから結構強いという設定だったが、《冒険者》がいる時点でその設定に間違いはなかったってことだ。そしてエルフの街。名前からするとボーデに近い設定の街か?

 

「それなら助かる。では連絡を待つとしよう」

「はい、本日は丁寧に挨拶にお越しくださりありがとうございました」

 

 

 商館を出ると次の移動のための場所を求めて少し歩く。いつも使っていた商館裏手の壁付近に人がいたので仕方がない。

 

「二人とも、話は聞いていたな」

「はい、アレク様が是非にと思われた方のようですのでいい判断だったと思います」

「そうか、ファンナは?」

「え、っと、ご主人様はきっと優しいまま変わらないと思うので大丈夫です」

 

 ついさっき、しばらく追加購入はないとか言っていた口で、舌の根も渇かぬうちに次の奴隷購入に前向きな姿勢を見せるなんて、ダメなご主人様だが、ある意味ではやるときはやるという姿勢を見せられただろう。

 

「情報が手に入って、面接をしたとしても買うとは限らないし、実際に受け入れるのはさらに先になるかも知れないからそれまでは三人で頑張ろうな」

「「はい」」

 

 二人の返事がいつも通りになったところで、いい場所があったので皇都の冒険者ギルドに跳ぶ。ギルドに今日は用事がないため、すぐに出ると目的地に向かう。目指すのは当然あの場所だ。

 

「あ、あのご主人様、ここは?」

「ここは皇都だな。そして、目的地はすぐ近くにある……ここだ」

「ユ、ユータ様……ここに入るのですか?」

 

 皇都に来たことにファンナが驚き、そして例の高級服飾店の前に来てセリナがわなわなとしている。まあ普通に村娘とかをしていたら皇都に来ることも、こんな高級そうなお店に入ることもないのかも知れないな。

 

「大丈夫だ。二人を買う前にちょっとあったんだ。それほど関係は深くはないんだが、今後のこともあるし顔つなぎも兼ねて引っ越しの挨拶くらいはしておこうかと思ってな」

「えっと、それは分かりましたけど……私たちはこんな格好ですし外で待っていた方がいいでしょうか?」

 

 ん? あぁ、確かに着ている服も市で安く買ったものだし、装備品を身に着けているから決しておしゃれとは言えないだろう。だが、そんなこと言えば今回は俺だって装備のランクが双子より一つ上なだけで似たようなもの。どうせ今回は応接室に招かれるようなこともないだろうし、引っ越しの挨拶だけなら秘書っぽい店員のイナキにでも伝えておけばいい。

 

「問題ないだろう。俺だってさほど変わらない格好だし、俺たちは迷宮探索者なんだから装備を身に着けた姿が正装みたいなものだしな」

「ご、ご主人様。綺麗で大きな建物ですね。凄いです!」

 

 恐縮していたセリナとは違い、どうやらファンナは高級服飾店の店構えを含めた皇都の街並みに感動しきりらしい。

 

「中ではもっと凄いものが見られると思うが、あんまり触ったりしないようにな」

 

 素直に頷く二人を連れて店の扉を開けると、相変わらず見るからに高級そうな衣類の数々が綺麗に折りたたまれていたり、吊るされたりしていた。

 

「「うわぁ……」」 

 

 やはり二人も女性であるなら綺麗な服で着飾りたいという想いはあるのだろう。思わず口から漏れた感嘆の声を聞いてしまっては、いつか好きな服を買ってあげたいと思う。

 

「これはユータ様。先日はどうもありがとうございました」

 

 入口で固まっていた双子の硬直が解けるのを待っていると、奥からすすすっとイナキが現れて声を掛けてくる。

 

「いや、こちらも利があってのことだ。それよりも今日はこんな格好ですまんな、この後に迷宮へいく予定があるのでな」

「いえ、お気になさらず。当店は見た目だけでお客様を判断する訳ではありませんので」

 

 裏を返せば見た目だけ良くても、ダメな人もいるってことだな。

 

「それはよかった。だが、今日は買い物に来たという訳でもなくてな」

「あぁ、例の件でしたらうちの筆頭裁縫師が嬉々として取り組んでおりますので、すでに試作の繰り返しと量産体制の計画段階に入っています」

 

 イナキが周囲を確認してから、ややボリュームを落としてタオル製品の開発状況を教えてくれる。

 

「それは凄いな。俺が例のものを安く買えるようになる日も近そうだ」

「きっとご満足いただけるものを提供できると思います」

「これはいい話が聞けた、楽しみにしていると筆頭裁縫師殿にも伝えてくれ。だがついでに用事がもう一つあってな。今まで拠点にしていた所を引き払って引っ越すことになった。今後はしばらくそこを拠点に活動する予定なので連絡先くらいは伝えておいた方がいいかと考えたのだが……不要だったか」

「いえ! そんなことはございません。オーナーからもユータ様には契約相手として失礼のないようにと申し付かっています。例の物が完成した際には是非検品をお願いしたいという話も出ていましたので、ご挨拶に来ていただけて大変助かりました」

「そうか、それならば良かった。ちょっと押しつけがましいかと考えなくもなかったのだが」

「いえいえ、当店としても引き続き良き関係を望んでおりますから」

 

 そのタイミングで新しいお客が入店してきたため、俺たちはそこで辞すことにして住所を伝えて店を出る。

 

「はぁ……ご、ご主人様は凄い人だったんですね」

「いやいや、全然凄くないって。ちょっと商談の勉強を兼ねてこの店に俺の国から持ってきた物で再現ができそうな物を売却しただけの縁なんだよ」

「あの、ユータ様の持参された物は、どれも再現は難しそうでしたが?」

「そうだね、でもその話は守秘義務もあるし、クラタールに移動してからにしよう」

 

 まだ興奮冷めやらぬ二人の背中を押すようにして冒険者ギルドに向かう。余裕があれば絨毯のお店もとは思ったが、見ると欲しくなっても困るので今日はお預けだ。

 

 そのままギルドからクラタールの冒険者ギルドに『ワープ』して商業ギルドに向かう。ぶっちゃけクラタール中央迷宮の一階層入口に跳べば、出てすぐ中央広場なんだけど、双子と一緒に歩く時間も貴重だからな。

 

「ご、御主人様。わかりました」

「ん? あぁ、俺が売った物?」

「はい! きっとあれですよね、いつも体を拭いたりしている布」

「お、よく気が付いたな。ファンナ正解だ。でも小さい声でな」

「あ、すみません。つい」

「なるほど、確かにあれなら糸の品質と織り方で似たものが……あの布が再現できるとなれば作れば作るだけ売れるはず……もしかして物凄い商談になったのでは?」

 

 セリナ……そこに突っ込んでしまうのか。悲しいことにこの世界に来たばかりの俺に歴戦の商人とやりあって利益を拡大させるなんて無理なんだ。

 

「セリナはいくらくらいが合意ラインだと思う?」

「そうですね……実物を一つ売ったのですよね」

「いつも顔を拭くのに使っている物を一枚、あとは再現するときにちょっとだけヒントになるような織り方のメモを付けた」

 

 セリナは歩きながら器用にむむむと唸って考える素振りを見せると俺を見上げて自分なりの考えを口にする。

 

「布自体はサンプルとして貴重品ですし、作成方法のヒントまでとなるとまずは金貨十枚」

 

 お、何気に俺の商談は悪くなかったか?

 

「が、手付け。再現が叶った場合は今後数年に渡って販売益の一部を受領できるように交渉します。もう少し欲を出すなら、一定額以上利益が上がった場合はボーナスとして一時金を貰います。さらに言えば、もし、この生地を使った他の製品を売りに出す場合にはそれについても利権を主張できたと思います」

「う、そうか……」

 

 やっぱりそうかぁ。でも俺にそれだけの交渉をする能力はないし、この世界に味方のいない俺が欲をかけば命の軽いこの世界。どこから刺されるか分からない。それならば、欲張らない付き合いやすい素人として関係だけを築いておいた選択は悪くはないはずだ。

 というようなことを言い訳がましくセリナに説明してみたところ。

 

「なるほど、そうかも知れませんね。私たちはやはり素人ですし、がめつく利益を求める相手とは付き合い難いでしょうから」

 

 一応納得してくれた。

 

「ご、ご主人様は私たちのために危険だったかも知れないのに、あのお店で頑張ってくれたんですね。ありがとうございます」

「相手は真っ当な高級店だったし、もっと得したいと思わないように交渉をしておけば危険視はされないだろうと思っていたからな。終わってみればこの程度のことで安心して二人を迎えられたのだからなんの問題もない。さ、ギルドに着いたぞ」

 

 なんだかキラキラした目で両側から見上げられて、照れくさかったからちょうどギルドに着いたのは有難い。さっそく中に入って受付でオルトスを呼んでほしいと伝えると、受付嬢がちょっと驚いた表情をした。やっぱり《豪商》ともなれば一目置かれる存在なんだな。そんな仲買人を俺みたいな若造が呼び出すともなれば驚きもするか。

 

「ほっほ、来たな。ユータ坊、場所を移そうかの」

 

 機嫌が良さそうにロビーへ現れたオルトスに連れられていつもの商談用の小部屋に連れていかれる。

 

「まずは座るといい。お嬢ちゃんたちも座っていいぞ、こんな老いぼれ一人を警戒して立っているのも馬鹿らしかろうて」

 

 そうは言うけどあなた多分、普通に強いでしょうに。だけど、専属にすると決めたのは俺だ。油断はできないが信頼して任せた以上はあからさまな警戒を見せるのは信頼関係的にはよくないか。

 

「ファンナ、セリナ。俺の両隣りに座れ」

「「はい」」

 

 その辺りの機微を察したのか、二人は素直に俺を挟んで座った。

 

「ファンナ嬢ちゃんにセリナ嬢ちゃんじゃな。儂のことは気軽にオル爺と呼んでくれて構わんからな」

 

 気軽に話しかけられて困惑する二人をすっかり孫を見るかのような目で見ているオルトスに内心で溜息を漏らす。別にいやらしい感じはないから本当に孫娘的な感じなんだろうからそのことは別にいい。だけど、いつの間にか場の空気を握られてしまうのはどうしたものか。

 

「今日は約束通り、例の武器を持ってきた」

「分かっておる、分かっておる。じゃがそれを預かる前にまずはこれをやろう。挨拶替わりじゃ」

 

 オルトスはそう言うとおもむろにアイテムボックスを開いて手を突っ込むとカラカラカラと机の上に何かを転がした。《豪商》はアイテムボックスが使えるんだな、ということは《商人》のレベルだけじゃなくて《武器商人》か《防具商人》も経由している可能性があるな。

 

「ご、ご主人様。オル爺様が出したのはスキル結晶みたいです」

「は?」

「全部欲しがっていた芋虫じゃぞ、感謝せい」

 

 スキル結晶だって! だってさっきくれるって言わなかった? しかも三つもころがっているのに?

 

『スキル結晶 芋虫』

『スキル結晶 芋虫』

『スキル結晶 芋虫』

 

 おぉ、確かに全部芋虫だ! これ貰えたらあっという間に三人分の身代わりのミサンガが作れる。

 

「オルトス、これはいくらで落札したものだ? 希望限度額の三千二百か?」

「そんなにはせんよ。談合抜きじゃからせいぜい二千五百ってところじゃな。それにこいつはくれてやると言ったはずだ。金はいらん」

 

 マジでくれるの! っていうか談合って言っちゃってるし! ぶっちゃけ貰えるのは嬉しいけどそれはそれで怖い。

 

「おいおい、無料ほど高い物はないというぞ」

「おお、なるほどのう、確かにそのとおり。じゃが、まあ今回は受け取っておけ。例の武器を売って儲けさせてもらうからな。それに、せっかく面白い奴を見つけたのにぽっくり死んでしもうたらつまらん。じゃからこそ芋虫のスキル結晶じゃ。三つも有れば一個くらいは身代わりが付くかも知れん」

「そういうことか、わかった。そういうことなら有難く貰おう」

「そうしてくれ、老い先短い儂より先に死なれては老後の楽しみに困るからの」

「……とても死にそうには見えんが?」

「かか! お前さんらが楽しませてくれているうちは死なんよ、ほれ、例のを見せてみろ」

 

 肩を揺らして笑うオルトスがトントンとテーブルをつつく。ここに鈍重のダマスカス鋼槍を出せということか。

 

「セリナ」

「はい」

 

 槍はセリナのアイテムボックスに預けてあるので、セリナがすぐに呪文を唱えるとアイテムボックスから鈍重のダマスカス鋼槍を取り出してそっとテーブルの上に乗せる。

 

「武器に宿りし魂よ、その力を解き放て、武器鑑定……間違いない。鈍重のダマスカス鋼槍じゃ。確かに預かった、昨日いくつか連絡してみたところどこも反応は良かったからの。結果を楽しみにしているといい」

「それは楽しみだ。【武器鑑定】を使えるのならオルトスは《武器商人》だったのだな」

 

 目の前で【武器鑑定】を使ってくれたので、ジョブについて話を振るきっかけができた。なれるかどうかは別として《豪商》の条件は調べておきたいからな。オークションに関しても本当は参加してみたかったが、槍が売れるまでは手持ちもないし、欲しい物を見つけてしまったら買えなくて悔しいから今回は結果を楽しみに待つことにする。

 

「若いころはな、あの頃は儂も迷宮でぶいぶい言わせていた頃じゃな」

 

 ということはやはり《商人》のレベルに加えて、派生職の《武器商人》のレベルも必要ってことか。確か《探索者》のレベルも必要だったはずだから、かなり条件が厳しいジョブだな。でも分かっているだけでスキルが【アイテムボックス操作】に【武器鑑定】、【カルク】もあるだろう。そして、多分だけど【防具鑑定】もあるだろうな。なかなか優秀なジョブだけど、必要なら下位職のスキルで対応できる。あとは《豪商》ならではのスキルがあるかも知れないがパーティーに入ってくれないとそこまでは分からないだろう。

 

「《武器商人》で迷宮に入る者は珍しいのではないか?」

「まあ、そうじゃな。だが儂は迷宮での探索が嫌いではなくてな。周囲の者には止められることも多かったがな」

 

 だからか……《豪商》としてのレベルだけじゃないような強さを感じるのは。レベルだけじゃなくちゃんと戦闘経験のある人が発する雰囲気みたいなものが強者感として出ているのかもな。なんてそれっぽいこと言っても、戦いの素人の俺にはそれが正解かどうかなんてわからんけどな。

 

「物好きなことだとは思うが……悪くない生き方だな」

「ほっほ、良い良い。迷宮に入らずとも商人としてやっていけるほどには恵まれていたのじゃから、道楽以外のなにもんでもない。あくまでも生活に困らないという担保があったからできたことじゃ」

「そうか」

 

 と言ってはいるが、そんなぬるい探索では豪商に至るのは難しいはずだ。ふ、ちょっとこの爺さんが好きになってきてしまったな。

 

「ご、ご主人様そろそろ」

「そうだな、じゃあ俺たちはこれから探索に行くので失礼する」

「おお、そうか。頑張ってくるとええ。嬢ちゃんたちもしっかりな」

「「はい」」

 

 長引きそうなら適当なところで声を掛けてもらうように指示していたファンナの声をきっかけにギルドを出た。

 

 

 

 

 

次のメンバーはどんな人?

  • メイラ 索敵 長身細見長髪クール美女
  • シェリア 索敵 細見陽気軽妙元気少女
  • ロシー タンク 大柄繊細暢気愛され系
  • トモエ 後衛 色白獣耳獣尾クール美女
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