俺だって異世界迷宮でハーレムしたい!   作:おるどばれい

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転移十一日目


38 クラタール西迷宮1

「ご、ご主人様。ちょっと早かったですか?」

「いや、用事は済んでいたし、話し込むといろいろこちらの情報がダダ漏れしそうだったからいいタイミングだった」

 

 よくやった、と頭をぽんぽんしてやろう。うむ、えへへと笑うファンナはマジ天使。

 

「まだ挨拶するところはありますか?」

「いや、もうないから迷宮に向かうが騎士団の詰所で地図を買っていこう。ひとまずはクラタール西迷宮だな」

「わかりました、騎士団詰所はすぐそこですね」

 

 中央広場を東西南北に割る大通り、南西の角が商業ギルドで南東の角が騎士団詰所なので道を挟んだ場所、セリナが指さす先に詰所の看板が見える。

 

「ありがとうセリナ。じゃあ行ってみよう」

 

 てくてく歩いて詰所まで行くと、ベリルの詰所とは違って入口の扉は開いている。中を覗いてみるとどうやら小さなロビーのようになっていて、受付兼地図販売の窓口が設置されているらしい。

 

「ユータ様、私が聞いてきます」

 

 セリナがしゅびっと率先して中に入ると窓口に向かっていく。

 

「すみません。西迷宮の地図が欲しいのですが、いくらですか」

「ああ、はい、地図ですね。地図は一階層二十ナールで、全階層分をまとめて買うと半額になります。西迷宮は現在五十五階層まで地図がありますので、まとめて買うなら五百五十ナールですね」

 

 なるほど、二十階層くらいまでしかいくつもりがない人はバラで買う方が得で、上を目指す人たちはまとめて買う方が得ってことか。ていうか、普通の迷宮探索者たちは一階層を上げるために相性が悪かったり、戦力が足りないと年単位を費やすこともあるんだったか。だったらその都度二十ナール払って一階層分を買った方が合理的だ。

 

 原作だとパピルス版と羊皮紙版があったけど、さすがに迷宮が五つもあると探索先が割れるから高額になる羊皮紙版は売れないから作ってないのかもな。

 

「ファンナ、セリナにこれを渡してまとめ買いを頼む」

「はい」

 

 そんなことを考えつつ、銀貨五枚と銅貨五十枚をファンナに渡して持っていってもらう。

 

「セリちゃん、これ。まとめ買いでよろしくって」

「はい、わかりました。では、これで西迷宮の地図を一括でお願いします」

「はい、銀貨が五枚で、銅貨が……十で、あとは高さを揃えて、二、三、四、五列。はい確かに。ではこちらが地図になりますが、パピルス製ですので破損等するかも知れませんが騎士団では補償はしませんので気を付けるように」

 

 あまり出来はよくないのだろう。ちゃっかりと「売却後は知らん」と宣言してきた。そんなこと言わなくても、わざわざ一枚二十ナールの地図のために騎士団にいちゃもん付ける奴はいないと思うが……いや、テンプレで迷惑な貴族とかがいそうだな。

 

「ユータ様、購入できました」

 

 にこにこしながらパピルスの束を持って帰ってきたセリナにもぽんぽんしてあげると、嬉しそうにはにかむセリナ、マジ尊い。

 

「二人ともありがとう。ただ、さすがに全階層分を持って歩くのも意味がないから西迷宮に入ったら一度家に戻って低階層分だけを持っていこうか」

「そうですね、その方がいいと思います」

「は、はい。いいと思います」

 

 双子の了承も取れたところでさくっと西大通りを歩いて迷宮まで行くが、どうやら中央迷宮以外も入場料を取っているらしく何パーティか並んでいる。

 

「五か所とも金を取るのか。騎士団も大変だな」

「た、確か中央だけ取ると迷宮探索者がそれ以外の迷宮に行ってしまうからだって聞きました」

「あぁ、なるほど。俺たちと違って毎回お金を取られるんじゃ、払わなくていい迷宮に流れるのは仕方ないか」

「そ、それと入場料で各迷宮に入った人数が分かるので、入場者が少なかった迷宮は入場無料期間とかを作って人を集めて、迷宮から魔物が排出されにくくするみたいです」

 

 人が入らない迷宮は魔物を多く排出するようになるんだっけ。しかもそのうち上層階の魔物すら排出するんだよな、原作ミッちゃんが転移二日目に街道でグミスライムを倒していた。いくら修羅の街でもプライベートで魔物と戦いたい訳じゃないだろう、騎士団は実利も兼ねて無駄に魔物が排出されないように管理しているってことか。

 

「でも、入場料を取られるとはいえ、地図付きの迷宮を五択で選べるのは探索する側にとっても悪くない話です。その時の自分たちに合った、もっとも稼げる階層を選べますから」

 

 自分たちのレベルとパーティ構成に合わせて、一から三階層は西、四から六階層は北、七階層は南で、八階層からは中央みたいに戦いやすい相手を選んで魔物のレベルだけを上げていけるのは確かに有効だ。

 

 ただ、そんなことを続けていたら明確に得意な魔物と苦手な魔物が出来てしまう。そんな状態で階層を上げていけばどんなに苦手を避けたとしてもいずれパーティとして頭打ちになってしまうだろう。そうなってしまえばもう上を目指すなんて不可能。自分たちが戦える範囲の中でもっとも利益効率のいい階層だけを延々と戦い続けることになるパーティが増えるのではないだろうか。

 

「あ、だからか」

「な、なにがでしょうかご主人様」

 

 思わず漏れた言葉にファンナが反応する。

 

「いや、この前オルトスが最近の迷宮探索者たちがぬるいって憤慨していた理由がなんとなくわかったって話」

「どういうことですかユータ様」

 

 セリナも話に加わってきたので、入場を待つ間にさっき考え付いた話をする。

 

「なるほど、そういう人達は多そうですね。ユータ様は貴族になりたいですか?」

 

 貴族か……ぶっちゃけなりたくない。領地や領民に対する責任を負うのは正直負担だ。きっと代官制度みたいなものもあるだろうし、名前だけの貴族になって年金みたいに利益を一部貰うだけ的なこともできる気はする。

 

 身の安全を確保するためにも強くはなりたいし、お金も必要だから迷宮には入る。ギルド神殿も入手してみたいから実力と条件が整えば迷宮討伐もしてみたい。でも、そこまでだな。貴族に全く魅力は感じない。自分には「自由民」が性に合っている気がする。

 

「いや、特に考えてないな。面倒くさそうだし」

「そうだと思いました。私たちはユータ様のペースで頑張りますので、やりたいようにやってください」

「わ、私も頑張ります」

 

 腑抜けた俺の回答にくすりと笑ったセリナとファンナは好きにやってくれれば、一緒についていきますと言ってくれている。なんともありがたいことだ。

 

 ……もし、もしもだけど、いつか、貴族になることが双子やこれから迎える仲間たちのためになるようなことがあるならば、そのためになら……貴族になってもいいかも知れない。なれる前提で話すのはおこがましいし、いずれにしろもっとずっと先の話だけどな。

 

 そのあとは回ってきた順番で俺だけが迷宮に入り、すぐに出た後は二人を連れて一度借りた家の玄関へとワープする。

 

 せっかくなので、リビングのソファーで水を飲みながら休憩しつつ、まずはオルトスに貰った芋虫のスキル結晶を二人に融合してもらう。スロット付きのミサンガが四つもあるので、三つとも融合すれば全員で装備できる。

 

「で、では私からやります」

「失敗はないから落ち着いてな」

「は、はい」

 

 約束通り、今回はファンナから融合を行うので聖帽ぺタソスを被せてあげるが、当然結果は成功。

 

「うん、さすがだ。じゃあ俺の手に結んでくれるか」

「は、はい!」

 

 自分で融合した身代わりのミサンガを俺が装備するのが嬉しいのか、満面の笑みでミサンガを結んでくれた。その様子をセリナがちょっと羨ましそうに見ているが、そのもやっと分はしっかりと夜に補填してあげるとしよう。

 

 そのあともセリナ、ファンナの順に融合をして、さらに二つの身代わりのミサンガが完成。二回目の融合の後にファンナが少し落ち込んだが、激しく自己否定するほどではなく、強壮丸を飲まなくても聖帽を被ったままちょっと休めば大丈夫だった。さすがの聖帽ぺタソスだが、今のレベルだと続けて二回の融合はやめておいたほうがよさそうだな。

 

 MP回復を待ちつつ、お昼時になったので海猫亭のパンを食べながら西迷宮の地図を確認。半日弱でどの程度進めるか分からないが、とりあえず五階層までの地図を動きが少ない後衛ポジションの俺が持つことにして西迷宮の一階層へ『ワープ』で移動する。

 

「では一階層から最短で上がっていくからよろしく頼む。一階層の魔物はグリーンキャタピラーだから糸だけ注意な」

「「はい」」

 

 今回の目標は双子の鍛冶修業用の皮を集めることと、地図有で低階層をどのくらいで抜けられるかの確認。余裕があれば最高階層更新を目指す。

 

 地図を見ながら早足で進み、魔物は魔法で倒すが、目立たないようにブリーズボール。明らかに人目があるときは武器で戦うつもりだったが、一階層の最短ルートには他の冒険者はいなかった。これは、一階層で狩りをする人はルートから離れた場所で魔物を探すだろうし、最短ルートを進む人は寄り道せずにボス部屋に入る。だから最短ルート上にはあまり人がいないということだろう。これは好都合と、さくさくと進み戦闘回数も二桁いったかどうか、そして。

 

「次を右に曲がって、突き当りを左で待機部屋だ」

「「はい」」

 

 時間にして三十分ほどでボス部屋まで着いてしまった。扉は開いているから待っている人もいないのでこのまま突入も可能だが、ここまでノンストップで来たので一息入れておこう。

 

「まずはお疲れ、ボス部屋に入る前に息を整えておこう」

 

 俺より歩幅が狭く、レベルもまだ低いせいかちょっとだけ息が弾んでいる双子の背中のリュックからそれぞれペットボトルを取り出してあげる。

 

「ありがとうございます。さすがに地図があると早いですね、ユータ様の魔法が凄いのもあって戦闘も苦労しませんでしたし」

「ファンナは疲れていないか?」

「は、はい。大丈夫です」

 

 ファンナにはわかる範囲で人の気配を探ってもらっていたので、耳を澄ませながら移動するというマルチタスクを要求した形になってしまっていた。肉体的な疲れとは別に精神的に疲労していてもおかしくない。

 

「ご主人様から頼られて、ご主人様の役に立てる自分が嬉しいので全然疲れないんです」

「……ありがとう、ファンナ。あまりファンナだけに負担をかけすぎないようにパーティーメンバーは探すつもりだからもう少し頼らせてくれ」

「はい、任せてください」

 

 ファンナが大きな双子山をぶるんとさせて胸を叩く。本当に大丈夫そうだな、だけどファンナの負担を減らすために、なんとかもっと索敵に強い仲間を早めに手に入れたい。

 

「よし、じゃあボス戦をして二階層へ行く。二階層もこのくらいのペースで駆け抜ける予定だから頑張ろう」

「「はい」」

 

 一階層ボスのホワイトキャタピラー戦は双子が注意をひいて、後列から俺が魔法を連発するだけの簡単なお仕事だった。

 

 絹糸を拾って二階層に上がってからは再び地図を見ながら早足。この層からニードルウッドとグリーンキャタピラーが出るが、照準しなくていいストームを連発していけば、むしろ一階層よりも早く戦闘が終わる。

 

 二度ほど他パーティーとニアミスしそうになったが、直前でファンナが気付き迂回したりしたため最短ルートではなかったが、それでも四十分かからずに待機部屋に到着できた。マジで地図すげぇ。

 

 待機部屋には待っているパーティーはいなかったが、ボス部屋の扉は閉まっているので中で戦闘が行われているらしい。さすがに二階層のボスくらいで長時間待たされることはないだろうから、軽く休憩をしていればすぐに開くと思われる。

 

「あ、開きましたご主人様」

「思ったよりかかったな。じゃあ行こうか。今確認したとおり、ボスはウドウッド。枝鞭が結構伸びてくるから遠目から注意を引いてもらってその間に魔法で攻撃な」

「「はい」」

 

 思っていたよりは待たされたが、特に後続が来ることもなく扉が開いたいので立ち回りの確認だけして突入。二人はいつも通り左右に散ってウドウッド注意を引く準備に入る。

 

 あとは遠くから『ファイアーボール』の連打を繰り返すだけで完勝。剣の間合いで注意を引くセリナが一回攻撃を受けていたが、二階層ボスくらいではさほどダメージはなかったらしく戦闘後に念のため『手当て』を一回入れるだけでよかった。

 

 ドロップのリーフは後で毒消し丸にすることにして、三階層へ上がろう。

 

「三階層へ行くぞ。次は皮を落とすミノだから最短ルート付近を狩りながら行く。後は俺とファンナは初めて戦う魔物だし、ウサギとはまた違った突進してくるタイプの魔物だから最初は魔法を控えめにするから戦い方の練習をしよう」

 

 ここまでは魔法で簡単に片付いてしまって活躍の場面が少なかったからか、今の話を聞いてやる気に満ちた目を見せる二人を頼もしく思いながら三階層へと移動する。

 

 




たくさんのアンケートありがとうございます。
一応次のメンバーが出てくるシーンまでは投票可ににしておきます。

次のメンバーはどんな人?

  • メイラ 索敵 長身細見長髪クール美女
  • シェリア 索敵 細見陽気軽妙元気少女
  • ロシー タンク 大柄繊細暢気愛され系
  • トモエ 後衛 色白獣耳獣尾クール美女
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