俺だって異世界迷宮でハーレムしたい!   作:おるどばれい

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転移一日目~二日目


4 商館

「まあ、食えなくはなかったな」

 

 装備品を確認したあとはさすがになにか問題が起こることもなく、部屋に戻った俺は村長の奥さんが持ってきてくれた夕食、固めの黒パンとモロコンスープをしっかりと食べ、室内用の明かりとして備え付けられている燭台に火を灯してもらってくつろぎモードに入っている。

 

 貰った夕食のパンは固いし旨味は少なかったが、スープはモロコンが豊富なせいか日本のコーンスープにも負けない濃厚スープだった。あれだったらパンを浸して食べればパンの固さも旨味も補えるからたまになら全然ありだな。ただし、スープに入っていた想像以上に大量の肉が馬肉だったことは考えないことにしよう。ごめん、馬。

 

「一応軽く荷物を確認しておくか」

 

 室内は薄暗いからなるべく燭台の近くにより登山リュックを足の間に抱え、まずは中をのぞいて非常用の携帯ランプを取り出して点灯。おぉ明るい、一応太陽光充電と手回し充電対応型だから電球がダメになるまで使えるはず。まあ、あんまり目立つところでは強い光が漏れて怪しまれる可能性があるから使用は注意か。

 

「……あぁ、でも。せっかく荷物を開いたのにさすがに眠くなってきたな」

 

 くあ、とこぼれた欠伸を噛みしめたらもう駄目だ眠い。せっかく出したランプをしまってリュックを閉じると欠伸でこぼれた涙をぬぐ……う?

 

「ん? あれ、よく考えたら俺、眼鏡してなくない?」

 

 自分の顔をぺたぺたと触りながら眼鏡がかかってないことを今更のように自覚する。確かに、転移の決定ボタンを押す前にはなくさないように眼鏡は外してリュックに入れていた。なんだったらこっちの世界での生命線になるかもしれないから過去使用していた眼鏡も含めて全部の眼鏡に加えて、最安の値段で新しい眼鏡も二つ、さらに迷宮で激しく動いても大丈夫なようにと普通の眼鏡を固定できる道具や、アスリートがするようなゴーグル型の度入り眼鏡まで追加で購入したくらいだった。

 

 待て待て、それなら、そういうことなら……あった、眼鏡ケース。これを装着すれば。

 

「うわ、歪む。あたまがくらくらする……てことは視力が回復している?」

 

 新品の眼鏡を外して丁寧にケースにしまうとリュックを再度閉じて、燭台の蝋燭を消してからペラペラの布団代わりの布の上に寝転がって思考の海に沈んでいく。いきなり視力が回復するのは普通ならあり得ないから、これは転移の際に回復したと考えるべきだろう。

 

 確かに俺の体は全く知らない言語を理解出来たり、ステータスやジョブが適用されるようになっている。ということは転移の際にこの世界に適応するように俺の体は調整されたのかも知れない。多分隠れた持病とかがあったとしても完全な健康体として転移してきている? ……ま、別に不都合はないというか有難すぎるから構わないか。

 

 勝手にいじられた怖さはあるけど、こっちの世界に連れてきてもらったし、視力まで回復してくれたっていうなら、無断での身体改造や難易度が多少高くなっているくらいはやむを得ないと納得すらできる。

 

 それに、どうやら街に行くまでは原作の流れを大分踏襲してくれるみたいだし、こっちにとっては有難いことばかり。うん、感謝をするべきだな……俺をここに連れてきてくれたナニカ、ありがとうございます。俺は俺なりにやりたいようにこの世界で頑張って生き抜きますのでどうか見守っていてください。

 

 よし、なんとなくすっきりとした。寝よう、おやすみ。

 

 

 

 

「ユータ様、この度は本当にありがとうございました。こちらは少ないですが村からの謝礼金になります」

 

 翌早朝、村長に日の出と共に起こされて朝食を供されたあと、街に向かう商人の荷馬車へと案内されると、そこには既に街へと運ぶ荷、盗賊の装備品、奴隷として売却する二人を閉じ込めた檻などが積まれている。そこで見送りに来た村長より手渡された謝礼金の入った布の袋はそこそこな重さがあったが、一文無しだった俺は遠慮など考えることもなく有難く受け取ることにする。

 

「いや、こちらこそいろいろ世話になった」

「とんでもないことでございます。それでこちらがユータ様をベリルの街までご案内する商人のリッドルです」

「先日は素晴らしい戦いで村をお救い頂きありがとうございました。このリッドルがユータ様を街までお連れします。街でも奴隷や武具を売却できる場所、それから騎士の詰所にはご案内させていただきますのでよろしくお願いいたします」

 

 荷馬車の点検をしていた品のいい口髭を生やした中年男性が笑顔で話しかけてくる。鑑定結果はきちんと《商人》でレベルは十八。身元は問題ない、任せてもいいはずだ。

 

「俺も初めて訪れる街なので案内は助かる。そのかわり道中の護衛は任せてくれ」

 

 足装備だけはボーナス二を使用しているが、残りは盗賊のお頭から分捕った硬革装備シリーズと鋼鉄の剣を装備した俺はいい装備を纏った頼れる男に見えるはずだ。ついでに鋼鉄の剣の柄をポンと叩いて少しだけ胸を張ってやればさらに安心感を与えられるだろう。

 

「はい、頼りにさせていただきます。では、準備が良ければ出発したいのですがよろしいでしょうか」

「ああ、問題ない。では、村長。リッドル殿をお借りする」

「はい、お気をつけて。ユータ様のご活躍をお祈りいたします」

 

 荷馬車の御者台にリッドルと並んで座ると、深々と頭を下げている村長夫妻に軽く手を挙げて別れの挨拶をする。同時にリッドルの手が手綱を繰り荷馬車が動き出した。

 

 

 

 うん、暇だ。最初こそ周囲の景色を物珍しく見ていたが、見えるのは畑やら草原やら雑木林のようなものばかりで、原作ではグミスライムがでてきたりもしていたが、残念ながらこの街道沿いには魔物はほとんど出ないらしい。

 

 仕方なくリッドルと雑談をしつつこの周辺の街の名前なんかを聞いてみたが、どれ一つとして原作と同じ名前の街はなかった。ただ、迷宮を中心とした街のクラタールという街があったり、皇帝が住む皇都があるらしく、やはりどこか近しい世界だということが確認できたため原作知識が全く無駄になるということはなさそうで安心した。

 

 そんなこんなでガタゴトと馬車に揺られてお尻の痛みに耐えること数時間、太陽が一番高い場所に届くかというタイミングで四方を壁に囲まれたベリルの街へと到着した。

 

「ユータ様、まずは商館に行ってこの者たちを売却しましょう。その後、騎士団詰所と武器防具を買い取ってくれる店へご案内します」

「それは助かる。そちらも用事があるだろうに悪いな。ただ、ついでと言っては申し訳ないんだがあんまり高くても困るがそこそこ綺麗で信頼のできる宿があれば部屋を確保しておきたいので途中で寄ってもらえないだろうか」

「なるほど……そうですね。それであれば商館、騎士詰所の後に旅亭ギルドの経営する宿へご案内します。買取の店は市にありますし、私の用向きもそちらですから買取店の前で失礼させていただく形がちょうどよいでしょう」

 

 今日は原作通り五日に一度の市だったな。リッドルの用事はそこで村の農作物等を卸して村人から頼まれている諸々の日用生活品や食料などを買い付けるらしい。

 

「それで頼む」

「はい、ではまいりましょう。市の通りを避けて回りますのでちょっと治安のよくない区画の近くも通りますが、立ち入るのはもちろんのこと、視線などもあまり向けられない方がいいと思います」

「スラムや色町か」

「さようでございます」

「わかった、忠告は覚えておく」

 

 やっぱりここにもあるのか。できれば進んで人を殺しに行きたくはないが、商館での仲間候補の値段次第では原作のような立ち回りも必要になるかも知れないから場所だけは覚えておくようにしよう。

 

 今回ベリルの街には南門から入った。市は街中央を四分する交差点付近、商館は街の北西側、騎士団詰所は街の管理者の館がある北側に、宿は東側らしいのでリッドルの馬車は中心部を避けて左回りに街中をめぐっていくことになる。そしてスラムや色町は南東と南西の街の端に淀んでいるらしい。

 

 そんな位置関係を頭に叩き込みつつ左側にちらほらと見える色町やスラムの様子を横目で見ながらできる範囲で鑑定を掛けていくが、さすがにこの真昼間、しかも見えるのが色町の浅い部分までとなると盗賊ジョブの人はいない。きっと夜遅くまで女を抱いてアジトの奥で寝ているに違いない。くそ、なんて羨ましい。やっぱり狩ってやろうか。

 

「ユータ様、こちらが商館になります。それで使ってしまって申し訳ないのですが、私は馬車を商館の馬車止めの方に回しますので、店主にソラータ村長から預かったこの書状を渡して馬車止めにいることをお伝えくださいませんか」

 

 俺には馬車が扱えないのだからリッドルの差配は正しい。確かに知らない場所にいきなり入っていくのは気後れしてしまうが、仲間を増やすためにはこれから何度も来るだろう場所になる。ビビっている場合じゃない。

 

 リッドルの申し出を快く了承すると、書状を受け取り商館の扉を開ける。

 

「いらっしゃいませ、本日はどのようなご用向きでしょう」

 

 扉を開けた途端白い髪を綺麗に撫でつけた初老の男性がきっちりとしたお辞儀と綺麗なブラヒム語で俺を出迎える。

 

サーベス 男 64歳 

冒険者Lv11 

装備 ダガー 身代わりのミサンガ

 

 見るからに貫禄のある人で、その気配の薄さから思わず、うおっ! と叫びそうになってしまったが、ジョブが《奴隷商人》ではないのでこの人はこの店の秘書兼執事兼護衛的な人なんだろう。《冒険者》は探索者レベル五十が必要なジョブだからかなりの戦闘経験があるのは間違いない。

 

「まずは奴隷の売却をお願いしたい。詳細な事情などはソラータ村の村長より書状を預かっている」 

 

 リッドルから預かった書状を手渡しつつ俺もブラヒム語で答える。ソラータ村ではヒマニ語がメインだったから気にしなかったが、ここからは基本的にブラヒム語を使用していく方がいいだろう。ブラヒム語はしっかりと話せるだけである程度の知識と教養があると認められるみたいだし、スキルの詠唱がブラヒム語を使用するから話せるだけで、俺がスキルを使用できるかも知れないと思わせることができるので多少の箔になるだろう。

 

「拝見させていただきます」

 

 男性は書状を受け取るとどこから出したのかペーパーナイフみたいなものを取り出してシュッと開封。さっと目を通しただけで綺麗に折りたたむと俺に対して頭を下げた。

 

「ユータ・ハセ様ですね。こちらのお部屋へどうぞ、主人を呼んでまいります。合わせて査定の者を馬車止めに向かわせますのですぐにリッドル様もお越しになります」

 

 案内された部屋はローテーブルを二人掛けのソファーのような椅子で挟んださほど大きくもない応接室だった。案内されたこの部屋以外にもいくつか部屋があったようなので、客の質や商談内容によって案内される部屋が変わるのかも知れない。

 

 とりあえず秘書の人も部屋を出て行ってしまったので、今のうちに余らせておいたボーナスポイント六十三ポイントを買取価格三十パーセント上昇に振っておく。振り終わったころに俺が入ってきた扉からリッドルが入ってくる。

 

「ユータ様、お手数をおかけして申し訳ありませんでした」

「なに、適材適所というものだろう」

 

 しばしリッドルと話をしていると俺が入ってきた扉とは反対側の扉が開けられ、白髪交じりの髪を綺麗に整えた壮年の紳士男性が入ってきたので俺とリッドルも立ち上がって出迎える。

 

アレク 男 45歳

奴隷商人Lv47 

装備 身代わりのミサンガ

 

「お待たせいたしました。当商館の店主でアレクと申します。以後お見知りおきを」

「いや、こちらこそ突然の来訪で申し訳ない。自由民のユータ・ハセだ。こちらはソラータ村の商人リッドル殿になる。よい商談をよろしく頼む」

「これはご丁寧に、ユータ様とリッドル様ですね。どうぞおかけください」

 

 勧めに従ってソファーに座りなおすと、アレクは先ほど秘書に渡した書面を懐から取り出すとテーブルに置く。

 

「書状の方は確認させていただきました。ソラータ村が大規模な盗賊団に襲われ、それを手引きした者らを売却したいとのことでよろしいですかな」

「ああ、相違ない」

「わかりました。先ほど査定の方をさせていただきましたが、男性の方は健康体でまだ若く働き盛りで四万、女性の方も若く健康体ですが非処女ですので六万ナールということでいかがでしょう」

 

 と、言われても俺には相場はわからないのでリッドルに視線を向けると妥当な査定らしく頷いたので俺も了承して頷く。

 

「ありがとうございます。半額は村の家族へということですので五万ナールをリッドル殿に、ユータ様には盗賊団をほとんどお一人で退治された類まれなる武力と、内通者を一目で看破されという知力に敬意を表し六万五千ナールをお支払いしましょう」

 

 よし、しっかりと俺の分だけ三割アップが効いた。少しでもお金を増やしておかないと欲しい仲間が手に入らないかも知れないからここは使えるものは最大限に使わないとな。

 

「では、それで頼む」

「はい、それではこちらを」

 

 どこに控えていたのかさっきの秘書の男性がトレイに乗せた金貨等を俺とリッドルの前へと置いていく。ていうか、アレクが支払額を六万五千に決めたのは俺が三割上昇を設定した後のはずだから金額が変更になったのは直前だったはずなのにしっかりと俺の分のトレイに金貨六枚と銀貨五十枚が載っている。秘書の人の対応力が凄すぎる。

 

「確かに」

 

 支払額に問題はないので、ソラータ村でもらった謝礼金の袋に売却金を入れればここでの商談はひとまず終わりになるが。

 

「ユータ様、この度はよい取引をありがとうございました」

「ああ、取引には満足しているがソラータ村にとっては喜ばしいことではないのでな」

「……そうでございましたな。リッドル様、失礼な発言をお許しください」

「いえ、考え方によってはソラータ村の保安体制の警鐘になりましたし、《盗賊》に落ちた不穏分子を排除できたことにもなりますので」

 

 ああ、うん、世知辛い。やっぱりこの世界だとそういう感じなのか。なかなか意識を寄せていくのは難しい。染まり切る必要まではなさそうだけどね。

 

「それはようございました。ときにユータ様は迷宮には入られるのでしょうか」

 

 お、ここでも奴隷を勧めてもらえるのか? もしかしてあの人を紹介してもらえる? その可能性があるならぜひ逃したくはないが。

 

「そうだな、俺も田舎から出てきて随分と流れてきた。このあたりで一度本格的に迷宮に入るのもいいかと思っている。例えばこのあたりで一番近い迷宮はどこだ」

「最近、この町の近くに迷宮が現れましたので東門から出て徒歩で少し行ったところにあります。あとはそこよりも少し遠くなりますが西門から出ると馬車で少し行ったところにもあります。東門の方はまだ出来たばかりで三階層ほどまでしか情報はありませんが、西門の方は二十階層くらいまでは到達していたはずです」

「そうか、明日にでもちょっと覗いてみるとしよう」

 

 よかった。ちゃんとこの町の近くにも迷宮が発生していた。もし金策が必要になったら盗賊退治の前に一応迷宮での金策を検討したい。

 

「であるならば、当商館の奴隷を購入されるのはいかがでしょう」

「ほう、よほど品揃えに自信があると見える」

「いえいえ、私共は至極まっとうに奴隷を扱っているだけです。ですが他の街の商館と比べても基礎教育を始めとしたさまざまな教育には些か力を入れております」

「それは、素晴らしい方針だな。それならぜひとも詳しく話を聞きたいところだが、生憎まだこれから行かなくてはならないところがあってな」

 

 リッドルに案内を頼んである場所がまだたくさんあるので、ここでのんびりと奴隷を吟味して彼を待たせる訳にはいかない。ていうか、まだお金も全然足りないだろうし。

 

「そうでございましたか、当商館は日没までは開館しております。用向きが全て終わってから、もしくは明日以降でも構いません。是非お話を聞きにいらしてください」

「承知した。必ず寄らせてもらう。ではリッドル殿、次の場所へ向かおう。アレク殿もまた後程」

「はい、またのお越しをお待ちしております」

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