《遊び人》の効果に震えて調子に乗った俺のMPが枯渇しそうになったというアクシデントはあったが、この日の探索も無事に終えて家に帰ると家の郵便受けにパピルスが入っていた。
「ご、ご主人様。これを」
ファンナが手紙をそのまま渡してくれたので一応開いて見てみるが……さすがにまだ読めん! ただ、覚えた文字もいくつかあるわけで……
「おそらく奴隷商のアレクからだと思うけど、セリナ」
最後の署名の最初の文字が「ア」だと思うので、俺の知り合いでアから始まる名前、しかも手紙を出してくる可能性があるのはアレクしかいない。
「はい、お預かりします。……えっと、確かに商館からの手紙ですね。例の新しい奴隷の件で近日中に一度来店してほしいとのことです」
「意外と早かったな。明日はベリルも市の日だったか?」
「え、えっと……明日は春の十七日目ですから、間違いないです。ご主人様」
「よし、じゃあ明日は朝の探索と午前の勉強や家事が終わったら、午後からは商業ギルドへの顔出し、ベリルも含めた各町の装備屋なんかをのんびりチェックしてからアレクのところへ話を聞きに行こう」
「「はい」」
帰宅して装備を外したら双子は食事の支度にとりかかる。かまど用に魔法の火を借りにくることもあるが、最近は渡してあったファイアスターターが面白いらしく、どちらが早く火をつけられるかで勝負をして遊んだりしている。仲が良いのはいいことだし、なにより楽しんでくれているのが嬉しい。
俺はこの時間帯は入浴用に浴槽へお湯を溜めるのが仕事だが、本格的に入浴できるほどお湯を入れるのは数日に一回で、いつもだいたい膝下くらいまでで妥協してお湯かけっこみたいにいちゃいちゃしながら体を洗ったりして済ませている。それに意外と三人で寝そべれば体全体を沈めることもできる。
……まあ、ファンナの胸部装甲はだいたいはみ出してしまうが。
それに今日は《遊び人》で遊びすぎていつも以上にMPを消費したからさらに湯量は少なくなりそうだが、明日は午後の探索はなしにするし、新メンバーが入る可能性もあるからしっかりとお湯を溜めて入浴しようかな。初回限定高級あわあわ丸洗いもしてあげる可能性もあるし。
MP回復速度二十倍にしてMP回復を待ちながら水を溜めている間に今のジョブを確認しておくか。
今はシックスジョブで、探索者Lv37、英雄Lv34、魔法使いLv37、僧侶Lv37、遊び人Lv11、薬草採取士Lv17をセットしている。
そのほかには村人Lv5、盗賊Lv30、農夫Lv3、戦士Lv30、剣士Lv1、商人Lv31、暗殺者Lv1、騎士Lv1、賞金稼ぎLv12、料理人Lv1、錬金術師Lv16、武器商人Lv1、防具商人Lv1、奴隷商人Lv1、博徒Lv1。
あまりジョブを付け替えたりしなかったからいろんなジョブのレベル上げはできていない。だけど、寄り道せずにある程度集中して育てたから最高到達階層が八階層にもかかわらずこれだけレベルを上げられたと思おう。
ここまでの経験と原作などの知識から、複数ジョブに対する経験値分割はないが、パーティーメンバー数による分割はあるだろう。一応経験値系のスキルはデュランダルでMP吸収したくても、魔結晶促進したくても、かたくなに取得経験値増加二十倍と必要経験値減少五分の一を動かさないようにしていたのも大きいか。
双子の方は必要経験値減少のスキル効果は乗らないが、二十倍の恩恵は受けているし、多分だけど双子の経験値は美味しいとこ取りになっている気がする。
つまり経験値分割としては一人として扱われ百の経験値を俺と双子で五十ずつ。しかし、取得経験値としては別人扱いでファンナとセリナで五十ずつ経験値を得ているみたいな感じ? 多分だけど。これは二人が別々のジョブについていても同じようにレベルが上がるし、同じジョブについているときはそのペースが加速していることからほぼ間違いないと思う。二人の《鍛冶師》もレベルは二十四になっているしな。
明日メンバーが増えるようなことがあれば、経験値は良くて三分割、推測が外れていれば四分割されることになるから、効率よく強くなるためには階層を上げていく必要が出てくる。いずれにしろレベル三十を超えてきたら第一ランクだと経験値効率が悪いという噂もある。今のところは実質百倍経験値とパーティメンバーが少ないこともあって気にせず探索できているが、メンバーが増えるようなら連携の確認とジョブレベルの調整をしてさっさと階層を第二ランクである十二階層へ上げておきたい。
その日の夜はもしかすると三人だけで過ごす最後の夜かもということで、最初は一人ずつゆっくりと二人の求めるいちゃいちゃを最大限叶えてあげるようにする。双子なのにこのあたりの好みは全く違うようで、セリナは甘々なくらいに優しく抱かれることを望み、ファンナは少し痛いくらいに激しく抱かれることが好きらしい。
おそらく、姉を守るためにしっかりとするしかなかったセリナは、その枷を外して全てを任せて甘えられることが喜びで、他人から求められることがほとんどなかったファンナは強く求められることが喜びなんだと思う。こうして新しいことに気が付くことができるなら、たまにはそれぞれと一対一で眠る日を設けるのもありかもしれない。
二人が満足した後はまあ、いつもどおり三人で楽しむ。俺に対する奉仕を解禁したことで今まで順番待ち状態だったもう一人も積極的に絡んで来てくれるようになったので、あっちこっち忙しい感じはあるが、どこもかしこも柔らかいし気持ちいいしで幸せな時間だった。
ただ、レベルが上がっているシックスジョブのパーティー効果の恩恵と【手当て】のおかげで体力的には十分戦えるが、精力的には限界があるので《色魔》の獲得が待ち遠しい。あと全員一度に回復出来て便利な《神官》も早期の取得が望まれる。滝を探すか、神官ギルドを探すかだな。
翌朝、早朝よりクラ西で探索を続ける。昨日はダブルスペルが爽快すぎてあっさりと八階層ボスまで到達し、ちょっぴりボス周回までしてしまったので、今日は九階層からスタート。ただ九階層はコボルトの階なのでむしろ八階層よりも楽になる。
それにうっかりしていたが、ボーナス頭装備四には【魔法耐性無視】が付いているので第一ランク帯なら唯一弱点属性を持つニートアントの弱点に合わせた水魔法一択だった。耐性無視がない場合はニードルウッドが水耐性持ちなので混ざるときには気をつけなきゃいけないが、クラ西第一ランクでは階層が離れているから多分混ざることはない。
今後、他の迷宮などの探索では耐性を考えず、出てくる魔物の中で一番多い弱点属性を《遊び人》にセットするのがよさそうだ。まあ《魔道士》を取得したら麻痺付きのサンダー系を考える必要はあるが、それはもう少し先の悩みになるだろう。
そんなことを考えながら探索を進めるが《遊び人》パワーで火力の増した俺たちにコボルトが混ざって難易度が下がった階層が問題になるわけもなく、九階層の魔物を片っ端から狩りまくって、ボス部屋ではコボルトスクロース(砂糖)が欲しかったので、よわよわなケンプファーを相手にがっつり周回させてもらった。
家に帰って朝食を済ませたら、まずは勉強。思った通りファンナの習熟が早い。もともとどの言語の文字も知らなかったことが逆に良かったのか、ブラヒム語と日本語をセットでうまく吸収できているようだ。
そして苦戦しているのが俺とセリナ。俺に関しては会話に問題がないから今一つ集中しきれていないことと、どうしても日本語の法則に引っ張られてしまうのでうまく覚えられないことが原因。セリナも似たような感じで日本語が活用できる場面が著しく少ないことが分かっているので他の家事などに時間を使いたいと思ってしまって気が散るらしい。とは言っても俺の習熟度よりは全然進んでいるし、そう遠くない時期にひらがな、カタカナ、くらいはマスターできるだろう。そこからはよく使う漢字と言葉の意味を地道に覚えていくことになるだろうが、焦る必要はないのでゆっくりでいい。
勉強が終わったら双子は家事、その間にMPがもったいないから浴槽に水を溜めておく。ちゃんと毎回新しい水を入れる前に浴槽は掃除している。生活用水を出すことと料理を手伝う以外は俺が担当する唯一の家事仕事だが、双子に言わせれば主に掃除をさせる奴隷なんてあり得ないそうで、メンバーが増えたら風呂掃除は取り上げられてしまうらしい。
お昼はどっかで買い食いでもすることにして、まずは皇都へ向かって皇都の装備関係の店をチェックする。まず武器屋、現状欲しいのは槍ということで品揃えを確認するが、鋼鉄の槍はスロット一つ付きしかなく、ダマスカス鋼の槍も陳列はあったがスロットがなかったため断念。
防具は一人増えるかもということで眺めてみると、ありました掘り出し物!
竜革のジャケット(空き)(空き)(空き)(空き)
これから奴隷を見るのに金貨が数枚ぽぉんと飛んでいく買い物をしていいのかという思いはあるが、竜革製はずっと使える装備だし四つは最大スロットでもおかしくない。買えるなら買うべきだ。後は革の靴は予備があるし、革の帽子もある、三割引き対策としては手袋系か……じゃあスロット二つ付き硬革のグローブを買うか。
くっ、三割引きになっても金貨が三枚消えたが必要経費だろう。
「このジャケットはセリナに着てもらうか」
「いえ、竜革は硬革よりもいい装備ですからユータ様が装備するべきです」
買ったものをアイテムボックスにしまってから防具屋を出て、ジャケットを誰が着るかという話をするが、まあそうなるよな。
「気持ちは嬉しいが、基本的に俺は後ろにいることが多いし、俺が竜革のジャケットを着てしまうと硬革の鎧は男の装備だから装備できる人がいなくなってしまうのはもったいない。新しく入るメンバーの戦闘スタイルにもよるが、前衛の防御を固めるべきだろう」
「それはそうですけど、奴隷が主人よりもいい装備を身に着けるなんて」
「セリナ、そこは違う。確かに二人は奴隷だが、俺たちは一緒に迷宮を探索するパーティーでもある。主従で考えた場合はセリナの考えは正しいのかもしれないが、迷宮を探索するパーティーとして見れば前衛が崩れることはパーティー全体が危険に陥ることになる。小柄なセリナに前衛を任せている現状は申し訳ないとは思うが、その分装備は良いものを身に着けて正面を支えてもらう必要があるんだ」
二人にしてみれば俺が死んでしまうと殉死の危険があると思っているのかも知れないが、《奴隷商人》のジョブを手に入れたあとで、二人が寝てる間にこっそり死後解放に変えてある。商館に行って奴隷を買うときなんかに三割引き対策で遺言の変更を使うことがあれば、またこっそり戻すこともあるから一応秘密にしているけどね。
そういえば、ミッちゃんの一番奴隷も同じようなことを言っていたけど、彼女の場合は自分が攻撃を受けないで前衛をすることが出来ると思っていたという部分もあるだろうな。残念ながら現実にはそれだけの回避性能はなかなか見込めない訳で、もしもを考えれば装備で補うしかない。
「……確かにユータ様の言う通りですね。わかりました。これから装備に関してはまずはパーティーとして考えるようにします」
「そうしてもらえると助かる。その辺はいろいろ相談にも乗ってほしい。もちろんファンナも頼むな」
「「はい」」
次のメンバーはどんな人?
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メイラ 索敵 長身細見長髪クール美女
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シェリア 索敵 細見陽気軽妙元気少女
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ロシー タンク 大柄繊細暢気愛され系
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トモエ 後衛 色白獣耳獣尾クール美女