皇都を一回りしてからベリルに飛び、市を冷やかしつつも生活雑貨や着替えなんかを買い足しながら、武器防具も確認するが残念ながらここでの掘り出し物はなかった。残念。
それでも三人で楽しく市を一回り満喫したところでいい時間になったので、買った物を路地裏から【ワープ】のゲートを開いて自宅リビングに荷物だけを移動して身軽になると、軽く背筋を伸ばして体をほぐして気合を入れる。商談は結構疲れるからな。
「さて、そろそろ行こうか」
「は、はい。仲良くできる人だといいですね、ご主人様」
「そうだな、でもどんなに条件が良くてもファンナとセリナ、二人がうまくやっていけなそうな人は断るからしっかりと見定めてほしい」
二人が優先だときっぱり言ってあげたら二人ともデレて、もじもじと俺の服の裾を両脇から摘んでくるのが可愛すぎます。
でも、そんなの当たり前なことだ。だって二人は俺が初めて買った奴隷で俺のことをちゃんと慕ってくれていて、多分だけど奴隷じゃなくなったとしても俺とずっと一緒にいてくれると思える、そんな二人だ。俺の思い込みかも知れないけどさ。
それにおまけで付け加えて言えば、二人は貴重なドワーフの《鍛冶師》だ。そんな二人をないがしろにするなんてあり得なさすぎる。
二人を押しのけて一番奴隷を奪おうとしたり、二人を見下したりするような人は仮にミッちゃんの一番奴隷並みの嗅覚や回避能力を持っていたとしてもお断りするしかない。
「さ、アレクんの直感とやらがどんなものだか楽しみだな」
たどり着いたベリル商館の前でドキドキしている自分を誤魔化すようにイキった独り言を呟いてから商館の扉を開けると、いつからそこにいたのか秘書兼護衛っぽい初老のイケオジであるサーベスが待ち構えていた。
「これはこれはようこそいらっしゃいましたユータ様。本日はご連絡を差し上げた件ということでよろしいですか」
「ああ、昨日もらった手紙の件だ。よろしく頼む」
「かしこまりました。ただいま主人を呼んでまいりますので、こちらの部屋でお待ちください。今お茶も持ってこさせますので」
「ああ、すまんな」
予測していたとはいえいきなりのサーベスのお出迎えに内心ビクッとしながらも、今更背伸びした対応を崩すわけにもいかない。部屋を出ていくサーベスを見送ってから、三人掛けのソファーの真ん中に腰を下ろす。
「二人も座んなよ。ここで護衛が必要になることもないだろうし」
自分の両隣をとすとす叩くと、一瞬顔を見合わせた二人は諦めたように同時に吐息を漏らすと右側にファンナ、左側にセリナが座る。
「言っても聞いてくれないと思ったので座りましたが、こういった場で奴隷を座らせる人はいないと思います」
「かもね、でもいいよ。よそはよそ、うちはうちってことで」
「あ、ありがとうございます。ご主人様」
お礼を言われるようなことでもないんだけど、とりあえず二人の頭をぽんぽんしておこう。
「すみません、お待たせしました」
待っている間に侍女っぽい人が持ってきてくれたお茶を啜りながら、三人で雑談して待っていると、アレクが汗を拭いながら入ってくる。儲かってそうでなによりです。
「構わない、うちのメンバーにも気を使ってもらっているからな」
俺が視線を向けたテーブルの上には三つのティーカップが置かれている。なんというかさすがはサーベス。何も言わなくとも歓待用のお茶が三人分用意されていた。セリナたちの言葉から考えれば奴隷にお茶を出すなんてありえないだろうに、俺の性格と俺たちの関係性を見抜いての対応だろう。
「いえ、こちらこそ特殊な条件でお売りした彼女たちを大事にしていただけて感謝しております。こういう取引ができた時こそがまさに《奴隷商人》冥利に尽きるというものですから」
「お互いに良い商談ができたということだな。さて、今回もそうなると嬉しいのだが?」
前置きの会話を終わらせて話題を今日の本題へと移した俺に、アレクの表情が引き締まる。
「そうですね、では先日お話しさせていただいた奴隷について分かったことを」
アレクはここ数日で得られた情報を詳しく教えてくれた。情報を俺なりに整理すると、まずその人は去年の冬の終わりころに北の海岸沿いに打ち上げられていたらしい。最初は言葉も通じず要領を得なかったが、どうも別大陸の人で航海中の悪天候で海に投げ出されたらしい。
右も左も分からない海の中、必死に泳ぎ続け奇跡的に辿り着いたのがエルフ領北端のフェンハという漁村の浜。しかし彼女の幸運もここまで。
遭難者として保護されたはいいが、言葉も通じずにまごついている間に季節が変わってしまった。彼女は保護された時点でエルフ領の住民扱いとなっていたが、こんな状況で税金など払える訳もなく奴隷となってしまった。なんとも酷い制度だと思うが、今それをここで俺が言っても現実は変わらない。
その後、奴隷商へと運ばれたのだが、その途中で田舎では問題にならなかった彼女の容姿が問題になった。
彼女は長身で細身、見目も麗しく、先の尖った耳などもあり、その見た目はエルフにとても良く似ていた。ただ一つ肌が若干浅黒いことを除いて。
その容姿からエルフの間では空想上の種族で悪魔の一族とされていたダークエルフ説が浮上。この世界は俺の【鑑定】をもってしても種族情報はわからない。見た目だけで言葉も通じないとなれば結局周りの人がどう思うかという問題になってしまう。
こうなってくるともうエルフ領では売れない。神域と呼ばれる地域で魚を捕っただけで神罰があると信じられているような世界だ。悪魔の一族だと一度思われてしまえば忌避されるのも仕方がないだろう。
「そこで、エルフ領ではないベリルの商館にまで話が来たということか」
「はい、エルフの有名な伝承ですから、エルフ領に近いクラタールや皇都を飛び越して私のところに話が持ち込まれたのでしょう」
「なるほどな……そしてアレク殿はそのダークエルフと言われている女性が俺と?」
「はい。先日も言ったとおりあくまで私の勘に過ぎませんが」
なるほどな、おそらくその彼女はダークエルフではないだろう。そんな伝承上の種族が別大陸にホイホイいたら伝承にはならなかったはずだ。だから悪魔の一族がどうとかはぶっちゃけ無視していい。そんなの信じる根拠はなんもないしな。
しかし、嵐の海で投げ出されてこの大陸まで辿り着いたというのは見逃せない。運がよかっただけでは生き残れない状況だろう。きっとその彼女にはなにかある。……かも知れない。
「アレク殿、そういった事情であれば値段はどうなる」
「エルフ領では買い手がつかず、悪魔の一族と言われ縁起も悪い、一年分の税金の滞納が奴隷落ちの理由ですから仕入れの元金も税金分だけ、教育費や生活費は普通にかかっているでしょうが、微々たるもの。うちへの転売として二十万ナールを提示してきましたが、これでもお手盛りでしょう。うちで販売することを考えれば十万ナールで引き取って四十万ナールを提示して、最終的にいくらで売れるかというところでしょうか」
「ここの紹介状を持っていったとしたらどうなる?」
「向こうにしてみればエルフ領に置いておく限り費用だけがかかります。初期費用があまりかかっていないうちに手放したい奴隷でしょう。うちからの紹介ということであれば三十万ナール程度を提示してくるでしょうが……あとはユータ殿次第かと」
仮に三十万だとしても三割引きが入れば二十一万。お買い得だな。
「よし、アレク殿の直感を信じて一度会ってみよう。紹介状とボンデまでの案内を頼む」
「かしこまりました。お会いになって気に入らなければもちろんお断り頂いて構いません。ただいま当館の冒険者を呼んでまいりますのでここでお待ちください」
「ああ、よろしく頼む」
さて、容姿がエルフに似ているということはすでに美形であることは確定していると思うが、どんな子なのかちょっと楽しみになってきたな。
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