俺だって異世界迷宮でハーレムしたい!   作:おるどばれい

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転移二日目


5 海猫亭

 奴隷商人アレクに見送られ商館を出ると、馬車は先ほどまでよりも綺麗になっていく街並みを走り、他よりもやや大きな建物の前で停まった。

 

「ユータ様、こちらが騎士団詰所になります。ここで盗賊のインテリジェンスカードを渡せば、賞金が懸かっていた場合にはその賞金を受け取れます」

「そうか、ではちょっと行ってくる」

 

 リッドルに声をかけて御者台を降りる。原作では村民が倒した盗賊も何人かいたため、そのカードを確認しに商人も同行していたが、今回は全員を俺が倒してしまったので騎士団詰所に用があるのは俺だけだ。気後れするからと同行してもらう訳にはいかないだろう。

 

 扉の前まで行くと詰所の扉に金属の輪が付いている。なるほど、これでノックをするのか。

 

 ゴン! ゴン!

 

 と重苦しい音でノックをするとすぐに扉の奥からガシャガシャと鎧の擦れる音と共に誰かが近づいてきて扉が開けられる。出てきたのは騎士レベル三のまだ下っ端ぽい男だ。と言っても《騎士》である以上は戦士として経験を積んでいて強いんだろう。

 

「わが騎士団に何用か」

「近くのソラータ村が盗賊団に襲われてな、たまたま居合わせた俺がそれを撃退したのでそいつらのカードを持ってきた。確認してほしい」

「なるほど、ではインテリジェンスカードの確認をさせてもらう」

「ああ、頼む」

 

『滔々流るる霊の意思、脈々息づく知の調べ、インテリジェンスカード、オープン』

 

 俺が差し出した左手に騎士の男がブラヒム語で呪文を唱えると、俺の手の甲からカードが浮き上がってくる。盗賊を倒した男にしてはジョブが《村人》なことに違和感を抱かれるかもしれないが、装備はほぼ硬革シリーズだし、武器も鋼鉄の剣。強そうに見えてもおかしくはないはず。

 

「……うむ、問題はないな。では確認してくるからカードを渡せ」

「ああ、これだ」

 

 カードを入れていた小袋から三十一枚全てを取り出すと騎士の男に渡す。

 

「ほう、多いな。たいしたものだ。しばし待たれよ」

 

 騎士の男もカードの量を見て俺のことをそこそこやれる奴だと認識したのか、ほんの少しだけ態度を軟化させるとカードを持って詰所に戻っていった。

 

 ふう、ドキドキした。いい加減ファーストジョブをもうちょっと見栄えのいいものに変えたいところだけど、《農夫》、《盗賊》、《英雄》じゃ《農夫》しか選択肢がない。《農夫》にするくらいなら《村人》でもさして変わらん。迷宮に行って探索者を取って、《村人》がレベル五まであがればその後はなんとでもなるからそれまでは我慢かな。

 

「待たせたな、預かったカードはこの近辺では最大の盗賊団のものだ。頭目と副頭目、そして幹部。そして構成員の数も合わせ、バルグの盗賊団は壊滅と認定された。よって個人にかけられた賞金に加え盗賊団自体の討伐報酬も支払われることになる。これだ、受け取るがいい」

 

 騎士の男に渡された袋はずっしりと重く大きい。思いがけず追加報酬をもらえるのはとてもありがたい。頑張った甲斐があった。

 

「ああ、確かに受け取った。ちなみにこの辺にまだほかの盗賊団はいるのか」

「ふん、盗賊などどこにでもいる。この街のスラムでも勢力争いはしているようだ。ただ、街の近郊はこのバルグという男の団が取りまとめていたようだから、しばらくは街の外は静かになるだろうな」

「そうか、騎士も大変だな。それでは失礼する」

「ああ」

 

 騎士の男と別れると馬車で待っていたリッドルのところへ戻る。

 

「俺が倒した盗賊はバルグという男の団で、ベリルの街の近辺を仕切っていた団らしい。しばらくは街の外はおとなしくなるそうだ」

「おぉ、それは朗報でございます。つくづくユータ様のおかげです」

「いろいろ運がよかっただけかも知れないがな、さて次は宿だったか」

「はい、私も帰りが遅くなった場合は利用することもある宿ですので、ご条件は満たせると思います」

「それはいいな、リッドル殿が愛用しているのなら間違いはないだろう」

 

 リッドルとの付き合いは実質今日の朝からみたいなものだが、この半日余りで随分と雑談を交わして仲良くなれたと自分的には思っている。原作でも主人公は同行してくれていた商人と別れた後、寂寥感に苛まれていたが……すでにリッドルと別れた後を考えるだけでちょっと寂しい。間違いなくこの世界に来てから一番長い時間を共に過ごした相手だしな。

 

 てか、こんなおっさんに親近感を抱いている場合じゃない! やばいやばい思った以上に異世界にプレッシャーを感じているらしい。早いところ信頼できる仲間を得て身も心も癒してもらいたい。

 

「ユータ様、こちらの宿になります」

「えっと……なんていう名前の宿だ」

「え? あ、えっと『海猫亭』ですね」

「いい名前だな、じゃあすまないがちょっと部屋を確保して荷物を置いてくる」

「はい、馬車止めの方でお待ちしています」

 

 俺は自分のリュックを背負い、キープ用の装備を入れてくれた袋を二つ手に取ると海猫亭へと入る。入ると正面に受付があり、左側には食堂らしきスペース、右側は少し狭く上に上がる階段だけがある。おっと、話しかける前に三割引きに設定を変えてっと。

 

「いらっしゃい。食事かい、泊まりかい?」

 

 受付にいたのはきっぷのよさそうな少しぽっちゃりとした中年女性だ。

 

パーラ ♀ 38歳 旅亭Lv10

 

「泊まりだ。一人部屋で連泊を頼みたい」

「一人部屋で泊まりなら一泊二食付きで二百五十ナールだね。連泊は?」

「ひとまず五泊で頼む」

「それなら千二百五十ナールだけど、お兄さんイケメンだし五連泊もしてくれるなら八百七十五ナールでいいよ」

 

 しっかり三割引きが効いたらしい。俺は財布用の袋から銀貨を九枚取り出して渡す。

 

「あっと、一応最初だからインテリジェンスカードも確認させておくれ」

「ああ、構わない」

 

 女性は銀貨を数えつつ、呪文を詠唱し、お釣りを準備しつつ俺のカードを確認していた。凄いな、並列思考とかのスキルは原作には出てこなかったけど、そんなスキルがあるんじゃないかと疑うレベルだ。

 

「大丈夫だね。じゃあお釣りの二十五ナールとこれが鍵ね。そこ上がって二階の一番手前の部屋だよ。朝食は日の出から昼までの間までだが、パンとスープのみ。夕食は日没から食堂の入口にあるそのカンテラの油が切れるまでだよ」

「わかった、ひとまず五日よろしく頼む」

「あいよ」

 

 まあ気になることがあったら後で聞けばいい。とりあえず今はリッドルを待たせているから荷物を置いてこないと。荷物を持って二階に上がり、すぐの部屋に鍵を使って入る。部屋の位置がわかりやすい場所でよかった。

 

「意外と綺麗だな。ベッドも一応マットらしきものがあるし、これなら村長の家よりもゆっくりと休めそうだ」

 

 内心不安だったからちょっと安心。さっそく盗賊の装備品をクローゼットの中に袋ごと押し込んで自分のリュックも悩んだ末にクローゼットへ。ただし、リュックの中に畳んで入れておいた小さいサイズのリュックとウエストポーチを取り出してそちらを持っていく。

 

「あとは……リッドルには申し訳ないがもうちょっと待ってもらって所持金の確認をしておかないとな」

 

 まずは、村長からの謝礼金が金貨で……二十枚。二十万ナールか! 高額なのかどうか今一つ分からないが、原作の狼人族のあの子が定価で六十万ナール、鍛冶師になるドワーフのあの子が二十五万ナールだったことを考えればあの規模の村では大分頑張った額の謝礼金だろう。それだけ村が危なかったと村長は判断したのだろう。

 

 それから村の奴隷を売却した半額が六万五千ナール。

 

 そして、盗賊の賞金…………意外と多いな。金貨が十、二十、三十と六枚。銀貨と銅貨が……たくさん。

 

 つまり、金貨だけで六十二万ナール! おぉ! これだけあればなんとか一人なら仲間を増やせるかも知れない。よし、金貨で一袋、銀貨と銅貨で一袋に整理して、金貨袋は重いし嵩張るが間違っても失くしたり盗られたりするはやばいのでTシャツの内側に無理やり押し込んで、銀貨、銅貨の袋はウエストポーチに入れることにしよう。

 準備が済んだので、しっかりと鍵を閉め、受付で出かける旨を告げて鍵を預けてから海猫亭を出た。

 

「すまん、待たせたな」

「いえ、構いませんよ。では行きましょう」

 

 宿の馬車止めの方に向かうと、馬に水を飲ませていたリッドルは嫌な顔をせずにこやかに応対してくれる。この人当たりの良さはきっと彼の武器になる、きっといい商人になるだろう……まぁ、商売のことは全く分からないから適当に言っただけだけど。

 

「こちらの並びの二店舗が武器屋と防具屋になります。先に武器の方を下ろしてしまいましょう」

 

 武器の方はほとんどが銅の剣で銅の槍が数本だから査定も早く終わるということか。

 

「それなら、武器屋は俺の方で下ろしてしまおう。リッドル殿には最後まで使ってしまって申し訳ないが防具を防具屋に下ろしておいてもらっていいだろうか。その間に武器の方は査定が終わるだろう」

「なるほど、そうしましょう。ユータ様には返しきれない恩がございます。この程度のことなど使われたうちに入りませんよ」

 

 くっ、リッドルのなんとイケオジなことよ。ありがたく使わせてもらおう。という訳で防具をリッドルに任せ、銅の剣二十四本と銅の槍三本の入った袋を持って武器屋へと入る。

 

 入口から入店するとやや狭めに感じる店内の中ほど正面にカウンターがあり、両サイドの壁を使って販売価格が安めの量販品が並べられている。カウンターの奥にもいくつか武器が飾られているので高額な武器はそちらに置いてあるのだろう。

 

 いろんな武器を見るのは楽しそうだが、とりあえず今は用事を早く済ませて商館に行きたい気持ちが強い。だって、そりゃあそうでしょう? もしかしたらあの人に会える可能性もあるし、そうでなくたって男ならどんな子がいるのか考えてワクドキしちまうもんでしょう!

 

「武器の買取を頼む」

 

 それなりに重くなっている袋をカウンターの上に載せると買取を依頼する。同時に買取額三割アップに変更。

 

「おう、多いな。この剣と槍で全部か。じゃあ鑑定するぞ『武器に宿りし魂よ、その力を解き放て、武器鑑定』」

 

 《武器商人》のジョブである親方な感じの武器屋店主は武器に限り鑑定できる武器鑑定スキルを詠唱すると俺が置いた武器を確認していく。 

 

「……どれも問題ないな。この銅の剣は一本二百五十ナールで二十四本。こっちの銅の槍は一本二百八十ナールで三本。合計は六千八百四十ナールだが、初めての取引で大量に持ってきてもらったからな。今後の取引にも期待して八千八百九十二ナールで引き取ろうじゃねぇか。文句ねぇよな」

 

 よしよし、しっかりと三割アップが効いている。買取額三割アップと購入額三割ダウンは凄い気分がいい。もしかしたら中毒性があるのではないかと疑うレベルだ。

 

「それで頼む。あ、それと銀貨十一枚と銅貨八枚を出すから金貨で払ってもらってもいいか」

「ああ、構わないぜ。うちもよく使うのは銀貨と銅貨だからな」

 

 店主の了解を得て、取引と逆両替を成立させると金貨一枚を銀貨銅貨袋に入れて隣の防具屋へと移動する。ちらりと店内を見回すと武器屋と造りや配置は一緒だった。カウンターではこちらもリッドルが下ろしてくれた防具にちょうど鑑定をかけるところだった。

 

「『我は尋ね力を見る、守りの魂立ち出でよ、防具鑑定』」

 

 その間に俺はリッドルへと握手を求める。短い付き合いだったが、彼のおかげでここまでスムーズにやるべきことを終えることが出来た。彼に対する感謝の大きさはここまで一人で異世界を過ごしてきた俺の心細さと比例している。

 

「リッドル殿、本当に助かった。また会うことがあれば今度は商談などもできるといいな」

「こちらこそ楽しいひと時でした。いつかユータ様と再会した時にはぜひ私を儲けさせてくださいませ」

「おっと、これは一本取られたな。では道中は気を付けてな」

「はい、ありがとうございます。本当にお世話になりました」

 

 リッドルはさわやかな笑顔を残しつつ店を出ていく。結局リッドルは最後まで俺のことを恩人としてしか扱ってくれなかったのが、ちょっと寂しいがそれは仕方がない。俺もわざと偉そうな口調にしていたしなぁ。もし本当にまた会った時のためになんかいい儲け話を考えておこう。

 




所持金   652,794

謝礼金   200,000
奴隷売    65,000
懸賞金   368,766
宿代×5     △875
武器売     8,892
防具売    11,011
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