「それではユータ殿、こちらが紹介状になります。それからボンデの商館まではこちらの者がご案内いたしますが、パーティーはどうされますか」
アレクが連れてきたボディビルダーのように屈強なむきむき男、こいつがアレクの抱えている奴隷パーティーの《冒険者》なのだろう。
「こちらに入ってもらえば面倒がないだろう。『友に応えし信頼の、心のきよむ誠実の、パーティー編成』」
アレクから紹介状を受け取ると、アレクの《冒険者》にパーティー申請を送るとすぐに了承される。
「アレク様よりボンデの商館までの案内役を仰せつかりましたガレドと申します。短い間ですがよろしくお願いいたします」
がたいが良いから脳筋かと思いきや、さすがは奴隷商が手元に置いている奴隷。迷宮での力だけではなく、一般常識や礼儀作法まで鍛えられているらしい。
「こちらこそよろしく頼む。ではアレク殿、いろいろと協力してもらって感謝する。どんな結果になったとしても近日中に報告させてもらおうと思っているが、もしかして必要ないか?」
「いえ、私どもがお渡しした紹介状を持ったユータ殿に先方がどのような取引をしたかは是非知りたいと思いますので、お時間が出来ましたら」
ふむ、自分たちの紹介状を持った相手をどう扱うかで、奴隷商同士での今後の付き合い方が変わる可能性があるということか。
「わかった。必ず寄らせてもらう」
「ではアレク様、お客様をお預かりいたします」
「うむ、失礼のないようにな」
「はっ!」
ガレドに連れられて商館関係者が『フィールドウォーク』を使うときだけ使用する部屋に案内されると、壁に絨毯がかけられた小さな部屋の中にもう一人商館の職員らしき者が待機していた。念の為にいつか《冒険者》になるかもしれない俺に見られてもいいのかと質問してみたが、使用時しか壁には掛けず、定期的に絨毯自体も交換していて、さらに出発用と帰還用が別になっており、帰還用は関係者以外には秘匿されているから大丈夫ということらしい。
なるほど、よく考えられている。絨毯をすぐに片づけられる人員と帰還専用の部屋を準備できなければ使えない方法だけどな。
ちなみにせっかくなのでパーティーに入ったガレドを『鑑定』と『パーティージョブ設定』でちょっとチェックしてみる。
ガレド 男 36歳
冒険者Lv31
装備
《冒険者》レベル三十一は優秀だろう。まあ、それだけ迷宮に送り込まれているということになるのだが。それに、やっぱり装備品なんかは持たせてもらえないらしい。着ている服や靴は街を歩いてもおかしくないほどには仕立てが良いものだから冷遇はされていないのだろうが、奴隷に迷宮外で装備品を装備させるような人はやはりほとんどいないってことか。まあ、うちは二人に何かあったら怖いからセリナにもファンナにもしっかり装備品を渡すがな。
で、ジョブの方はどうかな。
冒険者Lv31 村人Lv10 農夫Lv1 探索者Lv50 戦士Lv1 剣士Lv1 薬草採取士Lv1
変わったジョブはなし、か。
元々は農家さんだったのに税が払えず奴隷になって、最初から《冒険者》にするつもりで育てられたんだろうというのが読み取れる。奴隷になった理由は完全な推測だけど、取得しているジョブの構成だけでなんとなく人生が見えてしまうというのは考えようによっては嫌な世界だ。と言っても転移者のスキルがなければ分からない情報だから俺たちには関係ないし、この世界自体にも不満なんてないけどな。
「それでは、まずはボンデの冒険者ギルドへ移動して、そこからは歩いて商館までご案内いたします」
「よろしく頼む」
それはありがたい、商館で管理しているような場所を使われると、自分たちでは使えない。冒険者ギルドの出入り口を経由してくれれば、今後もボンデに来る際に利用することが出来るからな。
ガルドの言葉に頷くと、ガレドが詠唱して出したゲートを通り抜ける。
ゲートを抜けるとそこは昼下りの冒険者ギルド、朝や夕方ほどではないが早めに探索を切り上げたらしい迷宮探索者たちでそこそこ賑わっていた。
「やはりエルフが多いか」
「そうですね、今までの場所でも見かけましたが、ここでは半数くらいでしょうか」
続いて出てきたセリナが俺の独り言に答えてくれる。ここはエルフ領の街だし、排他的な思想を持ちがちなエルフ種はあまり領外に出ることはないのかも知れない。そうなるとなるべくエルフ同士でパーティーを組んで、エルフ領内の迷宮を優先的に探索するのかね。
「ご、ご主人様」
おっと、いけない。そんなことを考えながらぼけっと美形のエルフたちを見ていただけなのにガレドが待機状態になってしまった。ファンナが声をかけてくれてよかった。
「すまない、初めて来る所だったのでな。では商館まで頼む」
律儀に待っていてくれたガレドに軽く謝罪すると、案内の続きを促す。
「かしこまりました。こちらになります」
ガレドに案内されて歩いたボンデの街並みの感想は、意外と大きいな、だった。セリナに確認したところ北方エルフ領の中では第二の都市らしく、ここより北にあって領主が住むバハルという第一の都市はもっと栄えているらしい。
商館に行くまでの間に武器屋、防具屋、探索者ギルド、など主要施設も確認できたため、後で品揃えは確認しておく必要があるだろう。ただ、これから奴隷を一人増やすかもということだと、あんまり資金に余裕がないのが問題だ。何度もスキル付き武器をオークションに出すのも悪目立ちするだろうし、原作ミッちゃんみたいに鏡やコハクを使った金策が出来ればいいんだが、貴族と関わり合いにはなりたくないんだよな。
「お客様、こちらの建物がボンデの奴隷商館になります。アレク様より店主に紹介させていただくまでの役目を頂いておりますので最初は同行させて頂きますが、よろしいですか」
「そうか、それは助かるな。よろしく頼む」
やっぱり初めて行く所は気後れするよね、ってことで顔つなぎまでしてくれるというのならば喜んで甘えさせてもらう。
「ご無沙汰しております。ストレイクス様、こちらはアレク様の紹介でお連れしたお客様でユータ様になります。ユータ様、こちらがボンデ商館の店主ストレイクス様になります」
「ベリルのアレク殿からの紹介だ。今日はよろしく頼む」
「こちらこそよろしくお願いいたします」
そうして受付に案内された先でガレドから紹介されたのはエルフにしてはちょっとぽちゃめだが、それでもイケメンな金髪碧眼の奴隷商だ。
ストレイクス ♂ 41歳
奴隷商人Lv9
装備 身代わりのミサンガ
この見た目で四十超えだというから種族差というのは侮れない。ドワーフは耳の細さがどうたらとか言っていたけどエルフはどこに加齢が表れるのかね。
「これがアレク殿より預かった紹介状だ」
「確かに。確認させていただきます。どうぞおかけになってお待ちください」
ストレイクスに勧められた椅子に俺が腰を下ろすと、双子はさすがに初めての奴隷商で隣に座る訳にはいかないと俺に着席を勧められる前に後ろに立った。むぅ、まあ仕方ないか。そしてそのタイミングでガレドが口を開く。
「ストレイクス様、ユータ様、私の役目はここまでとなりますが、ご希望があればクラタールまでの移動もお手伝いするように主人より申し付けられています」
「いや、さすがにそこまで世話になる訳にはいかない。ここまで助かった、アレク殿にも細やかな気遣いに感謝していたと伝えてくれ」
「かしこまりました、それではストレイクス様、ユータ様、失礼いたします」
部屋を出ていこうとするガレドに軽く手を振って見送ると、紹介状に目を通したままのストレイクスが「主によろしく伝えてくれ」とだけ声を掛ける。
奴隷に対する態度としてはこんな感じか、いまのところ人族やドワーフ族を侮蔑するような言動はないが、どこか線を引かれているような雰囲気はある。別にこちらは商談さえうまくいくならどう見られているかなんて気にしない。ちょっと嫌な相手の方がむしろ心置きなく三割引きが使えるってもんだ。
「まずは改めて自己紹介をします。ボンデ商館の主人をしているストレイクスと申します。この度は当商館がお勧めする奴隷の購入をご希望されているということでありがとうございます」
おお、そうくるか。やっぱり商人というのは油断できない。
「迷宮探索者のユータ・ハセ、自由民だ。ベリルの商館主アレク殿よりこちらの商館で持て余している奴隷がいるということだったのでな、アレク殿に世話になった経緯もあって話を聞きにきた次第だ。よろしく頼む」
「……ええ、こちらこそよろしくお願いします」
しれっと俺がノリノリで奴隷を買いにきたように話を持っていこうとしたストレイクスに、俺は自由民であり自力救済権があるから舐めたことすると決闘すんぞ、ちゃんとアレクからしっかり事情は聞いているぞと釘を刺した形になる。
「なんでも悪魔の一族と言われるダークエルフだとか?」
「いえ、そんなことはありません。それはあくまでもおとぎ話ですよ。奴隷としては見目麗しく処女であり、夜伽も了承しているのですから、価値は些かも落ちていません」
「それは苦しいのではないか、ストレイクス殿。ならばベリルに流すのではなくここで売ればいい」
「ぐ、それは……」
悔し気に顔を歪めるストレイクス。この様子では奴隷商としてはまだまだアレクんには及ばない。そもそも他所に話を持っていった時点で、あわよくばなんて考えは通用しない。当然足元を見られることを覚悟のうえで損をしないことを考えるべきだろう。そうでないならば、自力で売りさばくしかないがエルフ領内ではそれが出来なかったからこそのこの状況だろうに。
「こちらとしても悪魔と言われるような人材を買うかどうかは悩ましいところだ。アレク殿からの話でなければ一考にも値しない。その点も踏まえて話を進めさせてもらうが、まずはそのダークエルフとやらと面会をさせてくれ」
「そ、そうですね。わかりました、しばらくお待ちください」
僅かに肩を震わせつつ部屋を出ていくストレイクスを見送ってから、俺は大きく息を吐いて背筋を伸ばす。ついでに伸ばした手で二人の胸を揉み揉みっとしてヒーリング。
「ユータ様! こんな所でダメです」
「ご、ご主人様。誰かが来るまでですよ」
反応はそれぞれだが、二人とも拒絶はしないところが最高だ。ファンナは耳がいいから誰かが来れば教えてくれるので、それまでは揉み放題。まあ、お互いに収まりがつかなくなったら困るのであくまで緊張をほぐすための息抜きだ。
両手に幸せを感じながら、さっきまでのやり取りを思い返す。ちょっと強気に出すぎたかも知れないが、向こうもちゃっかり利益を追求しようとしてきたし商談としては問題ないだろうし、相手の対応を見るにこの商館で扱いに困っているというのも間違いないのだろう。それならそのダークエルフさんの素養次第になるが、値段については俺たちにとっていい話ができるかもな。
「ご、ご主人様」
「おっと、了解」
ファンナの声に両手を戻そうとするが、その前にセリナは俺の手を取ると軽く俺の手をつねってから離す。軽く睨むようにしているセリナの顔がちょっと赤いのは、うん、そういうことだろう。すまん、ちょっとセリナだけ先っちょの方とか重点的に揉み過ぎた。
「お待たせしました。こちらがご紹介したい奴隷、メイラです」
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