桃井タロウは楽園行き 作:トナカイ
さて一方そのころ、瓦礫の山の向こう側。
「__いぃ、よいしょぉっ!」
ドンモモタロウは襲い来るゼノオーガの巨体を、合気の技でもって翻し、地面に押し付けた。ゼノオーガの巨体が地面に転がるが、すぐさま地をたたいて起き上がる。ゼノオーガはタロウに拳をたたきつけようとする。
「くらえおらぁっ!!」
がしかし、タロウはそれを身を翻しては飛んで避け、空中に舞う。更に、回転しながらゼノオーガに一太刀を浴びせかけた。強靭な皮膚をサングラスをかたどった専用の大太刀、ザングラソードが切り裂く。
が、ゼノオーガには通じていない。その体は人間のものより頑丈で、痛みにも強い。
しかしそんなことは問題ではない!
ドンモモタロウはゼノオーガの追撃が遅いのを見越して、さらに斬撃を放った。浴びせるように腕に、返しで昇って首元を一閃。さらに飛んで、相手の顔面目掛けて斬撃をおまけする。
最後の一撃にはさしものゼノオーガも悲鳴を上げた。空気をも食い破るようにして放たれる剣閃は、常人の放つそれをはるかに超えている。その超人的破壊力を持って繰り出される一撃は、そのどれをとっても並みの淫魔では耐えられないもの。
ゼノオーガとて強靭な体を持つが、何度も受ければ耐えられはしない。
だがしかし、ゼノオーガも一塊の上級魔族。脳みそが小さくとも、戦いにおいて考えねばならないことはわかっている。
「ぐおりゃあああああっ!!!」
「……ほう?」
タロウが感心の声を漏らしたのは、ゼノオーガがタロウを弾き飛ばしたと同時に、近場の瓦礫から柱を抜き取って武器にしたからだった。風を巻き起こすように振られるその巨大こん棒は、ひとたび食らえば無事ではないだろう。
「はぁ、はぁ……てめえ、叩き潰してやるッ!」
だがタロウは、その危険性をしっかりと分析しつつも、マスクの下の口元に笑みを浮かべて言い放った。
「面白い! いいだろう、やってみろ!」
「後悔しても遅いぞッ!」
振り下ろされる柱。タロウに影がかかるや、次の瞬間には凄まじい轟音が響き、がれきと粉塵を舞い上がらせた。
仕留めた! あの憎たらしい邪魔者をつぶした手ごたえが、ゼノオーガには確かにあった。
だからこそ、粉塵の中より聞こえる足音には全く気付いていなかった。
「そおらぁっ!」
「げっ⁉」
斬撃一閃、額めがけて放たれたザングラソードの一太刀が、見事こめかみを勝ち割った。
「良いパワーだ! だが目測が甘いな! 十五点だ!」
悲鳴と絶叫、怒りの声を上げるゼノオーガの顔面を蹴りつけ、その体を押し倒す。
倒れたゼノオーガが粉塵を巻き上げると同時に着地。そこから間を置かず突進。立ち上がったゼノオーガに乱撃乱打。
ゼノオーガは何とか持ったままの柱を武器に、タロウを叩き潰そうと横へ縦へと振りまくる。が、タロウは一歩ごとに迫る驚異的な攻撃を、時にザングラソードの刃で反らし、時に人間かどうか疑うほどの体の柔らかさでもって身を反らし、時に迫る柱そのものを踏み台に跳躍。
ありとあらゆる術でもって、その妙技をまるで見せつけるかの如く、タロウは攻撃を完全に避けて見せた。怒り狂ったゼノオーガが、全身に血管を浮き上がらせ、柱を振りかぶる。まともに食らえば、ドンモモタロウの装甲であっても砕け散ってしまうことだろう。
柱はもう、タロウの目前に迫っていた
__しかしその瞬間こそ、タロウが最も待ち望んでいた瞬間であった。
「そこぉ!」
ザングラソードを抜き放つ。手から離れた刃が、なんと柱を受け流した。衝撃をそのままその刀身に宿すザングラソードの威力は、ゼノオーガが思わず柱を放してしまうほど。そして勢いそのまま、弾丸のように放たれたザングラソードは、ゼノオーガの肩口に突き刺さった。
針のごとしの威力。ゼノオーガは敵が得物をなくしたことに笑うや、腕を振り下ろすが、タロウはその攻撃をかいくぐり、ザングラソードの柄をしっかと握った。
そして__
「さあ、トドメだッ!」
無慈悲とも思える宣言ののち、ギアディスクが回転。
ザングラソードが声高らかにトドメの宣言。輝けるレインボーフラッシュが刀身に満ち満ちる。
軽快な音声が響く中、受肉召喚術による淫魔と人間のつながりを断ち切るために、タロウはザングラソードを振り下ろす__
その、時だった。
「__ぐぬおおおああああああああっ!!!!」
ゼノオーガの全身が震えた。次の瞬間には稲妻が放たれ、ザングラソードの一撃よりも早く、タロウはゼノオーガから離れた。
ゼノオーガの体は幾度も震え、収縮していく。背中に突き刺さっている杭も、ブルブルと震えるやその形を変えた。
「……ほう?」
そしてタロウの目の前で、ゼノオーガは変化を遂げた。
それは、タロウに敗れるその寸前に、彼が感じた一つの思い。このまま何もできずに負けたくないという思いを、一つの欲望と受け取って誕生した存在だった。
金色のリングと真っ赤なクレスト。刻まれた「
俺より強いやつなど許さない。真っ赤なその姿を血に染めてやる。
青い姿に辮髪を備えた、拳法家のようなその姿__
「オレガ! イチバン! ツヨインダアアアアアアッ!!!!」
そうして、この世界で最初のヒトツ鬼は__五星鬼は、誕生した。
♢ ♢ ♢
セシリィとシグルドたちが、瓦礫の向こうへと足を踏み入れた時だった。
鉄を断ち切る轟音とともに、ドンモモタロウの体が近場の家屋へ突っ込んだのが見えた。
「タロウさん⁉」
思わず叫ぶセシリィの隣で、シグルドはタロウを吹き飛ばした敵の姿を見た。
真っ青で筋肉質な体を、紫色の体の上にまとっている、不可思議な出で立ちの怪物だ。ゼノオーガとは対照的に小柄だが、感じられる魔力の量はゼノオーガよりも圧倒的に多い。
まさかあれが大将格か。ゼノオーガがいないのは、タロウが倒したからだろうか。
「いったい、あれは……「あれはヒトツ鬼だ」キャッ……た、タロウ?」
ぬっと横から現れたタロウに、シグルドは小さく悲鳴を上げた。どうやら無事のようだ、攻撃はザングラソードで受けたらしい。
タロウは気にした様子もなく、高笑いの後、剣をふるい、その切っ先をヒトツ鬼に向けた。
「良い攻撃だ、追加で二十点をやろう!」
「……お前は敵にまで点数をつけるんだな」
「タロウさんらしいね……」
「とにかく、タロウさん。あの怪物が何か、知っているんですか?」
セシリィが問う。タロウは「そうだ」と言い、答えた。
「一度戦ったことがある。奴のパワーはなかなかのものだ。正面からでは、俺も受けきれはしない」
「タロウさんがそこまで言う相手ですか。なら、油断は禁物ですね……!」
そうしている間に、五星鬼がタロウたちに気づいた。
「フンッ!」
その瞬間、タロウは地をけって駆け出し、セシリィもまたそのあとを追いかける。
タロウと五星鬼は空中で交差。五星鬼の放った蹴りは、ザングラソードで受け止められた。刀を翻し、峰が五星鬼を打ち据え、地面にたたき伏せる。
そのまま両者は着地、タロウは足から、五星鬼は全身で地面に落ちた。すぐさま立ち上がり、五星鬼はタロウに向かおうとする。が、背後に感じた刃の気配に振り返った。
リッター・ルシフェルが魔聖槍ルミナークの切っ先を向けている。
二対一だ。
五星鬼は自分を挟んで並び立つ両者を何度か見比べた後、迷わずタロウのほうに駆け出した。理由は簡単、奴が自分よりも強いからだ。先ほど翻弄された屈辱を、五星鬼は決して忘れてはいなかった。
「ハイィィーーッ!!!」
辮髪を振り乱し、右腕に込めた力をそのまままっすぐと解き放つ。両腕に備えられている五星鬼専用の装備、
「甘い!」
が、ザングラソードを団扇代わりに振りかざし、巻き起こった突風が炎を弾き飛ばした。
負けじともう一発拳を放つ五星鬼だが、タロウは片手でそれを受け止め、ザングラソードを一撃。五星鬼は死に物狂いでその攻撃を受け流す。
そこに、ルミナークの一撃が炸裂する。五星鬼は悲鳴を上げて吹き飛ばされた。
ななめに振るった愛槍を構えなおすセシリィ。タロウはその隣に並び、油断なくザングラソードを構えた。
「強い、ですね……!」
「はっはっは! なかなかやるな!」
五星鬼はタロウたちをじっと見たまま、「ハイィ……!」とうなりを上げる。
と、何を思ったか、五星鬼はタロウたちの後ろを見た。そこに立ち、戦いを見守る、シグルドたちを見た。そして次の瞬間、体から下げた数珠を引きちぎるように取ると__
「ハイイィィーヤァッ!!」
数珠が光球となり、シグルドたちに迫った。
「なっ……⁉」
シグルドは、それが何かを理解してはいなかった。
すぐに妹たちを守らなければと体が動き、イルヴィナと、彼女が抱えているクレセアを守るように、覆いかぶさった。
しかし光球は、そんな彼女たちを捕まえはしなかった。なぜなら……
「ッ、タロウさん!」
ドンモモタロウが、シグルドたちを守るように立ちはだかり、光球に包まれ消えてしまったからだ。光球はもとの数珠に戻り、五星鬼の首元に収まる。
邪魔者を片付けた! 五星鬼は口元を見にくくゆがめ、ほくそ笑んだ。
後は、残る一人を片付けるだけだ!
その最後の一人は、怒りを瞳ににじませて、ルミナークの切っ先を五星鬼に向けている。
五星鬼はそんな彼女に先ほどの数珠を振り回して見せ……
「ハイィィーーッ!!!」
彼女の動きが止まると同時。
強烈な発勁を叩き込んだ。
♢ ♢ ♢
まずい。
シグルドは五星鬼に押されるセシリィを見て、より一層そう感じていた。
まさか、タロウが倒されるとは思ってもみなかった。
何せ彼は、毎度のごとくセシリィたちの救援に現れては、自分が主役だとばかりに敵を倒して去っていくのだ。今回も大丈夫だと、勝手に思っていた。
自分がいたせいだ。あのヒトツ鬼とやらは、自分たちを人質にするつもりだったのだ。それから守るために、タロウは自分の身を犠牲にしたのだ。
なんとかタロウを救い出さなければならなかった。
だが、どうやって?
シグルド自身には、戦う力など全くない。真正面からあの鬼を相手にすれば、骨を折られてそれで終いだ。イルヴィナは戦闘力こそあるが、セシリィとともに戦わせるとなると心もとない。
なら、私に何ができる? 自分には、何がある? シグルドがそう考えたとき、彼女の眼には、自らに手に収まった、聖遺物が映った。
境界門ネメシス。
世界と世界の間をつなぎ、有り得ざる縁をつなぐ秘宝。
(だが、何度も起動させようと試みて、これは起動しなかった)
あてにはならない。
だが、今のシグルドにはこれしかなかった。
彼女はそでから境界門を取り、手のひらの上に乗せる。
クレセアとイルヴィナが、彼女が何をしようとしているのか理解し、何事か言おうとするが……
「……大丈夫だ」
シグルドはその一言で一蹴してしまう。
息を吸い、吐き。何度も唱えたその言葉を、シグルドは唱える。
だが、最初の詠唱一つでさえ、境界門は何の反応も示さない。
もう一度、もう二度、もう三度__
「動かない……なぜだ、理論は間違っていないはずなのに! なぜ動かない!」
叫ぶ。自分の頭脳を総動員して研究を重ねた。だが、なぜ境界門は動かないのだ。
エデンズエナジーを結晶したエデンズマテリアルを使ってなお、門はいまだに反応を見せない。
その間にも、リッター・ルシフェルが五星鬼によって追い詰められてる。タロウを助け出そうと数珠に攻撃を集中させているせいで、思うように戦えていないのだ。本来なら避けられるはずの攻撃を受けて、膝をついてしまっている。
なんとかしなければ。
しかしシグルドには、彼女を救う力がない。
「……お姉さま!」
その時だった。
クレセアが、シグルドに声をかけたのは。
クレセアはイルヴィナに願って、シグルドの隣へ行って、境界門に手を触れる。
「……大丈夫。今度は、うまくいくはず」
「……そんなわけがない。何度違う方法を試しても、こいつは動かないんだ……」
「ううん、今のお姉さまなら、きっと動かせる。力が足りないなら、私が、手伝うから!」
クレセアのその身には、エデンズエナジーと呼ばれる魔力が宿る。リッターの力の源だ。
彼女に聖痕を与えた神は、リッターにとって必要不可欠なそれを、クレセアに与えていた。しかし彼女はその力を扱えない。体をむしばむ毒となっている。
だから、無理だ。お前が力を貸してくれても、できないものはできない。
シグルドは首を振って否定したくなった。すると今度は、イルヴィナがその手を重ねてきた。
「イルヴィナ……」
「諦めちゃダメでそ、ご主人様! きっと、今なら動いてくれますよ!」
二人の声は明るかった。シグルドを、どこまでも信じていた。
シグルドは二人を、セシリィを見る。
この場において、妹を、イルヴィナを、自分を疑わないあの姫を、そしてタロウを救えるのなら。
例え、絶望的な状況でも、シグルドは__
「……わかった」
再び、詠唱を重ねる。
その心の内で、皆を救いたいと、少しでも助ける力になりたいという願いを、誰かに捧げながら。
「__宛転たる
境界門に、光がともった。それはクレセアからもたらされた、エデンズエナジーの輝き。
文字の刻まれたリングに、一つずつ緩やかな輝きが満ちていく。
「そこにあってそこになく、何者でもあり何者でもない、界神ネメシスよ……」
祈りをささげるのは、セフィロトでも淫魔王でもない。
この聖遺物を作り上げた、異世界と通ずる唯一の神。
「有り得ざる
あの男が、いつも言っている言葉にすがるように。
縁を。
この場において、家族を救う縁を。
今、ここに__!
「
瞬間、境界門が浮き上がり、すさまじい光と共に世界に穴を開いた。
境界門は空中でくるくると回り、そのリングの中に、いくつもの世界を映し出す。シグルドは驚きながらも、決意を固め、映し出された世界に手を伸ばした。
「汝、時と世界の狭間を揺蕩う者よ! 境界門ネメシスとの契約に基づき、我が盾となれッ!」
__ゴウッ
その時、シグルドは風が吹くのを感じた。その突然の突風は、しかし風のようでいて風ではなかった。冷たくも暖かくもない純然たる揺れ……空気ではなく、
世界の壁が消え去った。破るのではなくねじるように、その扉はシグルドの手首の回転に合わせて徐々に砕かれていく。そうして一つの世界のメタファーに生まれたひずみの奥。自身を待つ死にゆく手を__シグルドは、掴んだ。
二つの世界が今、一瞬の間繋がり、その世界における縁の一つを、今ここに呼び出すのだ。
__極光が輝く。純白の光があふれ出す。
シグルドのカバンから飛び出したいくつものエデンズマテリアルが、召喚された魂の像と結びつき、人の肉と形を与えた。境界門は静かに力をなくし、シグルドの腕に収まり。
そして、光の中にあった一つの影が、ゆっくりと、一歩歩みだす。
「……ふむ」
その白い影は、青い髪をたなびかせる女の騎士だった。
彼女は周囲に目を配り、鬼と戦う天使と、自らを呼び出した賢者をその目にとらえた。
そしてシグルドに、イルヴィナに、柔らかな笑みを見せる。
「随分と長い間、海の中を揺蕩うような様子だったのだが……なるほど、その様子だと、召喚に成功したようだな」
シグルドとイルヴィナは、彼女のその姿を見るのは、二度目だった。
金色の馬上槍を携え 、同じく黄金の輝きを内包する盾を手に持つその姿は、しかし以前に相まみえたその時よりも、格段に力強い。
「久しいな、主よ。そこの使い魔も。名乗りは必要か?」
「あ、アウローラちゃんですよね!」
イルヴィナが声を上げた。アウローラと呼ばれた彼女は若干眉根をひそめたが、すぐさま「ああ」とうなづいた。そして、戦いの場へと目を向け、自らの、もう一つの名を宣言する。
「__我が名は、アウローラ。エデンズリッター・ロード……アルシエルッ! 人々を苦しめる世界の澱みは……この私が一掃するッ!」
告げるや、彼女は力強く大地を蹴り、跳躍。すさまじい速度を伴った重撃が、五星鬼に炸裂した!
ようやく、ようやく境界門が起動した。
私の理論は、間違っていなかった!
クレセアに目を向けると、彼女もまた笑顔でうなづいた。
その間に、たくさんの人がこの場に集まってくる。
戦場に鉄と鉄を打ち合う音が響く中、イルヴィナがいの一番に、誰にも負けないほどの大きな声で、叫んだ。
「がんばれっ! アウローラちゃんっ!」
♢ ♢ ♢
二人のエデンズリッターは、言葉を交わすこともなく、すぐにお互いを味方だと断じた。
そして何者よりも早く、五星鬼目掛け刺突を見舞う。
「ハアアアアアッッ!!!」
飛び出したアウローラが、砲弾のように五星鬼に迫る。その手に持つ馬上槍、至聖槍ロンギヌスの威力をもってあらゆる障害を貫き崩す、
五星鬼はすぐさま鬼険拳にて攻撃を受け止めるが、その威力をまともに食らってしまえば受けきれるはずもない。ものの見事に吹き飛ばされ、瓦礫を吹っ飛ばして地面を転がった。
これではまずい。そう考えたのだろう、五星鬼は手をグルグルと回し、霧を放った。あたりを包み込むそれの中に、隠れてしまう。
しかし、セシリィとアウローラは慌てずに敵の出方をうかがった。
二人の後ろに回った卑怯な鬼は、再び炎を__「後ろだッ!」
「はぁっ!」
「てぇぁっ!」
二人が同時に突きを放つ。
火花が散り、五星鬼は吹き飛ばされ瓦礫に頭をぶつけた。先ほどの声は、戦いを見守るシグルドの発したものだった。目線で礼を言いつつ、セシリィは今度こそ油断せず、五星鬼を見る。もう先ほどのように、賢者様を人質に取られるわけにはいかない!
「ハイィィ……!」
五星鬼はドンモモタロウを閉じ込めた桃色の玉をさすった。
ここにタロウがいる限り、トドメを刺されることはない!
少しひびが入ったが、まだまだ__
「甘いなッ!」
__なんだ、今の声は。
聞き覚えのある、いやに耳障りな声……まさか!
いやまさか、ただヒビが入っただけだ!
そう簡単に、この天宝来来の玉から抜け出せるはずが__
「__狂瀾怒桃」
そう、五星鬼が考えている間であった。
玉に閉じ込められてなお暴れまわり、ついにセシリィの攻撃でヒビが入ったのを、タロウは見ていた。故にこそ、この隙を逃す手はないと考えたのだ!
『イヨォ~ッ!』
「ブラストパーティーッ!」
大爆発! 大音声の『どんぶらこぉ~!』が響き渡るや、五星鬼の数珠が爆裂し、吹き飛ぶと同時、タロウがその中から飛び出した。
高笑いと同時にセシリィ、アウローラの立つ場所へ降り立つや、やはり真ん中で仁王立ち。
突然敵の中から現れたタロウを、アウローラは怪訝な目で見て、何事か言おうとした。が、それより早くタロウは彼女をじろりと見て。
「今、俺を見たな? これでお前とも縁ができた!」
「……はぁ?」
「誰だか知らんが、今日からお前も俺のオトモだ!」
「た、タロウさん、初対面の人にそれは失礼ですって、何度も……」
セシリィがたしなめようとするが、それを聞くタロウではない。
彼の頭は新しい縁を結んだことと、倒し助けるべき敵が、大きな隙をさらしていることでいっぱいだった。
タロウはセシリィの声を遮るや、ザングラソードで五星鬼を指し示す。
「さぁ、オトモ達__必殺奥義だ!」
「……おい、こいつは何を言っているんだ?」
「すぐわかりますよ……さ、えと、騎士様! あちらに!」
タロウがザングラソードのディスクギアを回す。と同時に周囲の景色が一変。
金色の空が浮かぶ屏風のようなもの包まれ、巨大な矢倉が現れたのだ。
セシリィはすぐさまその端っこに移動し、アウローラも彼女に倣って別の端っこへ。
そこにあるギアをぐるぐると回す。
そしてタロウは中心で仁王立ち、立ち上る矢倉の上で__
「桃代無敵__」
『__DON!
DON!
DON__!』
「__アバター乱舞ッ!」
タロウの声が響き__
「今です騎士様!」
光が二振りの槍に吸い込まれ、暗闇が到来し__
「……何だか知らんが、心得た!」
二人の騎士が、その槍にすべての力を込める。
暗闇に、閃光がひらめくと、同時に。
タロウが、矢倉の上から飛び出した!
瞬間、五星鬼は自らの体が二つの極大閃光に貫かれ、一振りの刃に幾重もの傷を刻まれるのを感じた。
反撃などできない苛烈な超連続攻撃は最後までやむことがなく、そしてトドメの一閃が、今__
『必殺奥義ィ__』
__振り抜かれた。
五星鬼の背後に立ち、ゆっくりと見栄を切るドンモモタロウ。
まだだ、まだ終わってなどいない! 手を伸ばす五星鬼の体は、しかし無情にも地面に向かっていく。
その体が完全に倒れ伏し、虹色の斬撃痕から赤い火花が噴き出ると同時。
『__モモ!
タロ!
斬ッ__!』
「オレノ、マケアアァァァアアアッ!!!!!??」
__大、爆発!
五星鬼はその体内のギアを吐き出し、淫魔体を形作った杭も砕かれ、元の人間へと戻り。
タロウはいつものように呵呵大笑。
バッと扇子を掲げるや__
「ドン!」「……ん?」
「ドンッ!」「えと、ドン!」
『ドンブラザァーズッ!』
__そうして。
夜のやってきたセフィラムの町に、人々の喝采が響き渡ったのだった。
____________________________________________
・きょうかいもんが ひかりかがやく!
・シグルドは アウローラをくりだした!
・アウローラは やるきまんまんだ!
*コマンド*
たたかう
がりゅうそうじゅつ
きょくだいかんつう
まもる
アバターらんぶ ←