ハルヒコくんのおかげで何事も無く学校は終わり、疎らに見える幽霊を避けて、私とハナはミセス・ドーナッツの列に並んでいる。
人気チェーン店のドーナッツの魅力をご高説してくれたハナに釣られてやって来たけど。さすがに列の人数が多すぎる気もする。
「おい、何をしてるんだ。四谷みこ」
「みこ、どこ行くの~?」
「え?」
いきなり肩を掴まれたことに驚き、スマホを見るのを止めて横を向けば鎌を肩に担いだハルヒコくんと黒猫、そして列に並んでいるハナが見えた。
「とりあえず、歩きスマホは止めておけ。もしもおれか彼女が話しかけなかったら、魂を食われていたぞ」
「あ、ありがとうございます」
ヒソヒソと感謝の言葉を伝えて私はハナの隣に戻る。まだ幽霊が見えるようになって二日目だけど、ハルヒコくんと遭遇する確率が高い。
「はっ!!」
スパスパッと鎌を振りかざして幽霊を退治したハルヒコくんは路地に入り、すぐに鎌と羽織を脱いで出てきた。あんな大荷物、どこに隠してるんだろ?
「あっ、今朝のにゃんこだよ!あの男の子が飼い主だったのかな?」
「ハルヒコくんのことハナにも見えるの?」
「ハルヒコくん?まさか彼氏!?」
「それは違うけど。多分、知り合いみたいな」
私は、被害者みたいな。
べつにハルヒコくんが加害者ってわけじゃないけど。ハナとお金を出し合ってドーナッツを購入し、公園のベンチで食べようかなんて話していると。段ボールを集めているハルヒコくんを見つけた。
しかし、黒猫じゃなくて別の猫を抱えてる。
「ねこ」
「ん?また、会ったな。四谷みこ」
「やっぱり知り合いなんだぁ~」
「ハナ、うっさい。今度はなにしてるの?」
ハナにも見えてるみたいだし。死神って、ほんとうになんなんだろうか?と疑問を抱く。……けど、知ったら知ったで怖いことが起こりそうなので聞けない。
「ねえねえ、ハルヒコくん!」
「なんだ。えっと」
「百合川ハナだよ、よろしく!」
「ああ、百合川ハナだな」
ふつうに握手している。やっぱり幽霊の見えないハナにも触れるし、見えるんだ。じゃあ、なんでハルヒコくんが学校にいたときは誰も気づいてなかったのかな。
そんなことを考えながら私の膝に移動してきた猫を見つめる。かわいい、ハルヒコくんの黒猫もかわいかったけど。白い毛の猫もかわいい。
「むっ。来てくれたか」
そう言うと立ち上がったハルヒコくんは猫を抱き上げ、ツカツカと古びたスニーカーでタイルを踏み締めて、ものすごい怖そうなオジサンに話し掛けた。
待って、状況が掴めない…!