私の住む街にやって来た死神のハルヒコくんは他の人には見えない幽霊をひっそりと浄霊している。年齢的に中学三年生か高校一年生のはずだけど。
いつもジャージだから分からない。
「ウケる。ねえ?あんたもそう思うでしょ?ねえ」
「ありえないよね?おい、むしすんなよ」
ゲラゲラと頭がいっぱい生えた幽霊の問いかけを無視してスマホを見つめる。ハルヒコくんも「大抵の悪霊化した幽霊は見えるひとに憑いていくから無視は正解だ」って言っていたし。このまま無視すればいい。
ぐるりと私の身体に巻きつこうとする幽霊の首に抵抗しそうになるのを我慢するためにイヤホンを耳につけ、スッと目を瞑ることにした。
見えるなら見なければいいんだ!
「四谷みこ。お前は幽霊を引き付ける特殊な体質なのか?まあ、それよりも彼女に取り憑くのはやめろ。俗名『ウケるねギャハハ女』および『あり得ないよね問い掛け女』よ」
ハルヒコくんの声が聴こえる。
でも、今は寝たふりに徹する!あと幽霊を引き付けるなんて怖いこと言わないでくれない!?と心の中で文句を言いつつ、スパスパと鎌で斬る音が聴こえてきた。
やっぱり、幽霊は怖いけど。ハルヒコくんのおかげで怖い思いはしない。……いや、怖いものは怖いという事実は消えないのが難点だった。
「ハルヒコ様、流石にみこお姉さんに幽霊避けの道具を差し上げるべきではないでしょうか?」
「むっ。だが、アレを買えば三ヶ月はお前にごはんを買えなくなってしまうぞ」
そんなステキなアイテムがあるの!?黒猫には申し訳ないけど、私も幽霊避けのアレっていうものを買ってもらえると嬉しいかな。
「こ、今回は見送りましょう…!」
「だそうだ。すまないな、四谷みこ」
「ま、待って!お金は私が払うから買いに連れていって!」
「……まあ、前例はいるし。連れていくことに問題点はないが、あの世だぞ?」
「正確にはあの世の数歩手前です。死にませんし、肉体はそのままなので平気ですけど」
あの世。
幽霊やおばけがたどり着いて、来世に向かっていく輪廻の輪がある場所だとハルヒコくんは簡単に説明してくれた。そんなところで買い物できるの?
「そろそろ降りるバス停だな」
「ハルヒコ様、お金は払って下さいね」
「…………………………わかっている」
すごい葛藤してたな今。
シクシクと泣いて250円を支払ったハルヒコくんはバスを降りていく。あのまま幽霊になれるっていう羽織を着て降りれば良かったのに。
そんなことを考えながら、私は幽霊に悩まされなくなるアイテムを買いにいけることに喜ぶあまり、少しだけテンションも高くなっていた。