ハルヒコくんのおかげで私の生活は少しずつ安全なものに戻り始めている。幽霊は見えたままだけど、退魔結界ヘアゴムと除霊砂時計の相乗効果で家にいる幽霊はお父さんだけだ。
お父さんも鎌で攻撃するのかと思ったら「お前は四谷家の守護霊になってるのか」と納得したのに、お父さんが「お前にみこは渡さんぞーーーっ!!」と勘違いして、ポルターガイストが起こった。
「(はあ、お父さんってばハルヒコくんは年下の男の子なんだから恋愛に発展するのは難しいよ。そもそも死神みたいな、ハルヒコくんって寿命とかあるのかな)」
そう考えてみるとハルヒコくんは不思議な男の子だ。颯爽と、とは言いがたいけど。私が幽霊に困っていたら、すぐに助けてくれるし、幽霊避けのヘアゴムもプレゼントしてくれた。
なぜかハナの近くにいると周囲を警戒するのは気になるけど。確かにハナの近くに寄ってくる幽霊は、その、エッチな事に執着しているように思える。
「お待たせ~!」
ハツラツとした声を出して、私のところに駆け足でやって来たハナに視線を向けた瞬間、ハルヒコくんに貰ったヘアゴムが弾け飛んだ。
恐る恐る、ゆっくりとハナを見上げる。
」かゆい、かゆい、かゆい、かゆい「
「えっ、また見つめられてる?やだーっ」
「…………」
麻袋を頭にかぶって、なにか見えないものに首を引っ張られている幽霊がいた。叫びそうになるのを堪えるために唇をキュッと噛み締めて、ゆっくりと立ち上がる。
ハルヒコくんに連絡……あの子は貧乏だからスマホ持ってない!最悪の事実と最悪の現状に頭の中がぐちゃぐちゃになる。まず、まずは落ち着こう。
「みこ?」
「だ、大丈夫。ちょっと立ち眩みがしただけ」
「それ大丈夫じゃないじゃん!?」
「それより買い物行こ?」
ハナの手を握って、早足でお店を出る。
つ、憑いてきてる。やっぱりハナに取り憑いて、あっ、あのカップルにもすごい取り憑いてる。なんか悪霊のバーゲンセールみたいになっちゃった。
「ハルヒコくん、早く来て…!」
「すまない。霊道が不安定で遅れた!」
「ハルヒコ様、手前の麻袋の悪霊は2000円の大物です!その後ろの奴らもかなりお金になります!!」
「俗名『痒み訴え肥満男』と『イケメン独占したい女』ならびに『未恋愛弱者男』達よ、迷わず輪廻の輪に向かってくれ!!」
黄泉の羽織を靡かせて現れたハルヒコくんは大きな鎌を真横に振り抜いて、さっきまでハナやカップルに取り憑いていた悪霊を一斉に浄霊してしまった。
「ハルヒコ様!ハルヒコ様!一度に5000円も稼いでしまいましたよ!」
「ああ、今日は豪勢にお弁当が買えるな!」
「はいっ!」
私の見ている前で嬉しそうに笑うハルヒコくんと黒猫の姿に思わず笑ってしまう。さっきまで、あんなに怖かったのに彼が来たら笑わされるなんて反則だ。