Fate/R.D. 作:鴨田屋 町人
私の願いは、ささやかで穏やかな生活をおくることだった。
暖かな春の風が頬を撫でて、私――フレックス・スミスは、ふと窓から外の庭を見た。
空は一面に晴れているのだろう。目も眩むほどの陽光が屋外を照らしている。
「ダディ! まだお外に来ちゃだめよ! 私のフラワーショップは、まだ開店前なのだから!」
愛娘のエリザが、いたずらっぽく呼びかける。その姿が、何よりも愛おしい。
妻に先立たれ、あるいは絶望の淵に立たされかけた私が、こうして今も生きていられるのは、なによりエリザのおかげだった。
天真爛漫で、少しお転婆がすぎる性格にはいつもハラハラさせられていたけれど、それでも彼女の明るさに救われた日が何度あっただろうか。
金のウェーブがかった長髪。そばかすが頬に浮かび、けれどスッと整った鼻筋などは、まさにどこかの王女のようで。
だが、どうしてだろう。元気な彼女の姿が、どうしても、ぼやけた。
目を凝らしてみるが、よく見ようとすればするほどに、輪郭が空に溶けていってしまう。
「ダディ、まだよ。まだだからね」
そんなことを言わずに、もっと近くにおいで。どうして、離れていくんだい。どうして、私を一人にするんだ。
「だって、ダディはまだなんだもの。ダディには、譲れないものがあるのでしょう」
何を言っているんだい。まだとは、どういうことなんだ。それに、譲れないものなんて、私にはそんな高尚なものはないよ。エリザ。君以外にはいないんだ。
「ああ、だから、まだなのよ。ほら、目を覚まして。あなたの戦いはこれから始まるのだから」
ああ、嫌だ。いかないでくれエリザ。
例えこれが儚い白昼夢だとしても。
エリザ、君とのささやかで穏やかな生活をおくるためなら、私は――。
〇
まどろみから目が覚めると、もう外は深い夜だった。
どれくらいの時間眠っていたのだろうか。椅子に預けた背が僅かに痛む。カーテンを開けたままの窓から、月光が室内を差していた。
窓辺に置かれたベッドには、高校生ぐらいの少女がスゥと穏やかな寝息をたて眠っている。表情は柔らかく、呼吸も規則正しい。
エリザ・スミス。私の可愛い一人娘。五年前、スクールバスに乗車中、トラックの追突事故に巻き込まれて以来、目を覚まさなくなった我が子。
処置に当たった医者は「脳の一部が欠損しており、もう目覚める希望は無い」と言っていた。
病棟を追い出され、自宅での緩和ケアを始めてから三年。エリザはもう二度と目覚めることはないらしい。このまま緩やかに死を迎えるだけなのだとか。この大量の生命維持器具も、その時間を引き延ばすだけの代物らしい。私自身、あらゆる手段を探し、エリザを救おうとしていたが、とうとうその方法は見つからなかった。
誰に言われずともわかっている。もう、私が娘と別れる決心をするだけなのだと。
だが、そんなものは認められなかった。往生際が悪かろうが、娘はまだ生きている。悪魔でも
エリザがもう一度目覚めるのならば、どんな戦いにだって挑む覚悟があるんだ。
だから――。
「
ジッと、エリザの寝顔を見つめていた私に、部屋の隅で控えていた少女が声をかけた。
視線を向ければ、彼女は既に
「そうか。すまなかったな。私は、どれくらい寝ていた」
「三時間と三十分ほどです。マスターは疲れていたようだったので、声をかけませんでしたが」
彼女は凜とした表情を変えずに答える。そのなんでもない言葉一つ一つに、しかし張り詰めた覇気と圧を感じて、寝起きの頭が
「ありがとう。よく休めた。娘の夢を見たんだ」
「ご子息の夢……。確か、
「ああ。
自嘲気味に笑う私に、しかし彼女はかぶりを振る。
「いいえ、そんなことはありません。手にした者のあらゆる願いを叶える、
「……そうか。ありがとう。つくづく、あなたを召喚できて良かった。
「マスター。確かに私は、かつて王として戦い、歴史に名を残しました。しかし、今は聖杯を手に入れるため、マスターの召喚に応じた、ただのいち
私の言葉に、彼女はキッパリと告げる。
その威風堂々とした振る舞いは、紛れもなく王の風格を体現していた。私はそれに対する敬意でもって彼女を「王」と呼んだのだが、それはマズかったらしい。
「悪かった。そうだな、しかし、心強いよ、セイバー」
「安心して下さい。私のマスターになったからには、敗北はありません。あなたの剣として、勝利への道を切り開くことを約束します」
彼女は、笑みも浮かべずに言い切った。それは傲慢でもなんでもない。騎士としての、王としての彼女の心が、私にそう誓った言葉だった。
「ああ、この聖杯戦争。勝つのは私達だ。――おっと、遅くなってしまった。他のマスター達に先んじられては困るからな。そろそろ、出かけよう」
一つ大きく息を吸って、立ち上がる。夜のとばりは降りた。壁にかかったコートに手をかけ、私は少女――セイバーを振り返ると、玄関へと向かった。
〇
魔術。古の時代から人々と共にあり、現代においては限られた者しか存在を知らぬ神秘の力。
フレックス・スミスは魔術師だった。
先祖代々続く魔術師であり、秘密の工房で魔術の研究を行う人生だった。
そんな彼に転機が訪れたのは、やはり娘の事故だった。
もう二度と目覚めない娘の姿を目の当たりにした彼は、あらゆる文献に目を通し愛娘であるエリザを回復させる魔術を探した。
しかし、現代において魔術とは「科学で出来ることを魔力を使って非効率的に行う」ものでしかない。まして最先端医療が匙を投げた重傷の患者を回復させるなど、神話の時代の魔法でしかなし得ない偉業。
もはや望む術はないと絶望しかけていた彼の耳に、ある噂が届いた。
それは、聖遺物である
――曰く、聖杯は膨大な魔力を持っており、手にしたものの願いを叶えるという。
――曰く、その聖杯は一人の願いしか叶えないという。
――曰く、誰が聖杯を手にするのかを決める争いが、行われるという。
あらゆる願いを叶える万能の願望器。聖杯。
そんな聖杯を巡り行われる魔術師達の殺し合い、
フレックスはその報せに、迷うこと無く飛びついた。
〇
夜の線路をセイバーと二人で走っている。
オーストラリア、ウィントウッド。二十世紀の終わりに新しい大陸鉄道が川の南部に敷かれてから随分と年月が経った。
フレックス達は、旧大陸鉄道の廃線になった線路を東へ向かって疾走していた。
決して美しいフォームではない。息は荒く、足は重い。手入れされていないためボロボロになった足下が、さらにフレックスの体力を奪っていく。
「マスター。まだ走れますか」
数歩先を行くセイバーが振り返り様子を伺う。青いドレスに鋼鉄の甲冑を身に纏い気品に溢れたその姿は、およそ現代の街にはそぐわず目立っているが、しかし気品に満ちあふれている。
フレックスは心配する彼女に、力なく右手をあげてみせた。
「ありがとう。大丈夫だ。中年の体には堪えるが、まだ行けるよ。それよりも、セイバー。本当に追ってきているのか」
「えぇ。間違いありません。数百メートル後方をサーヴァントが一騎。私達を追っているようです」
セイバーは言いながら、前を見据えた。
聖杯戦争一日目。敵のマスターを探しに街へ出たフレックス達は、その途中でサーヴァントらしき反応が自分達を追いかけていることに気がついた。
町中で迎え撃つことも出来たが、
「街の東部にある荒野へ向かいましょう。あそこなら、思い切り戦闘が出来ます」
というセイバーの一言で、荒野へと向かうことにした。
聖杯戦争は、通常の魔術師の戦いとは大きく異なっている。
それがセイバーを初めとする
サーヴァントとは、聖杯戦争において魔術師に召喚される使い魔を差す言葉だ。
彼らは全員が、かつて歴史上においてなんらかの偉業を残したり、伝説を作ってきた英雄達で、それ故に現代の魔術師たちでは太刀打ちできないほど強大な力を持っている。
偉大なる歴史の中で伝説を打ち立て英雄となり、人理の抑止力として世界の座に登録された英霊は、聖杯戦争において
――
――
――
――
――
――
――
七人の魔術師が、七騎の英霊を召喚し、最後の一人になるまで殺し合う。それこそが、聖杯戦争なのだ。
そしてフレックスの召喚したセイバーもまた、かつて歴史に名を残した一人だ。
彼女の真名はアーサー王、またはアルトリア・ペンドラゴン。
イギリスはブリテンのコーウォールにおいて、アーサー王伝説と聖剣エクスカリバーに名高い、伝説の騎士王である。
百戦錬磨の彼女の表情は、しかし曇っていた。それは、自分自身を追ってきているサーヴァントの気配があまりに異質だったからか。
「マスター。少し急ぎます」
セイバーは、フレックスにそう告げると、彼の手を握り、荒野へと、戦いの場へと足を急いだ。
〇
オーストラリアの荒野は、広く、乾いている。周囲に建物はなく、誰かを巻き込む心配も無い。
セイバーはそれを確認すると、マスターを自らの背中に隠し、背後へと向き直った。
未だ、眼前には誰の姿もない。だが、しかし――。
「隠れているつもりならば無駄だ。貴様の気配は、感じ取れている。諦めて姿を現せ」
虚空へと向かい声を投げた。剣を抜き、構える。目線は正面から外さない。
セイバーは直感していた。敵は目前だと。
緊張を張り巡らせるセイバーに、フレックスが恐る恐る問いかける。
「セイバー。誰もいないようだが」
「マスターは下がって。決して私の背中から出ないように」
セイバーはなおも虚空を睨む。目の前には誰の姿もない。だが、立ち上る膨大な魔力はそこに何かがいることをありありと報せてくれた。
「――そうか。来ないのならば、こちらから行くまでだが」
剣を握る手に力を込める。魔力の高まりを感じてか、そこでようやく、敵が姿を現した。
「いや、すみません。戦うつもりはなかったんですよ」
闇からヌラリと出てきたそれは、しかしサーヴァントにしてはやけに現代風の格好をした青年だった。
顔つきはまだ幼い、歳は高校生ぐらいだろうか。手には日本刀を握り、白い上着は日本の学生服にも似ている。ミディアムヘアで、理知的な印象を受けるが、しかし、だからこそ、異質だった。
彼から立ち上っている魔力は、セイバーのそれと比肩するほどに膨大だったからだ。魔術師ならば、彼がおよそ人間離れした存在なのだと言うことがすぐにわかるだろう。
「あ、ごめんなさい。これでも、抑えている方なんですけどね」
にこやかな笑顔を浮かべる彼は、しかしその出で立ちに隙が無い。間違いなく、歴戦の猛者であることはわかった。
セイバーがずいと一歩前へ出て、厳しい目で彼を睨んだ。
「刀を持っているようだが、セイバーの私に、よもや刀で挑むつもりか」
しかし、彼はそんなセイバーの威圧をまったく問題にせず、穏やかな雰囲気を保ったまま、
「ん? あー、いや、これはですね。ちょっとした手違いでして。と言うか、勘違いなんですが」
「勘違い? どういうことだ」
「ええっとですね。まぁハッキリ言っちゃうと――――僕も
――――は?
「驚いてますよね。わかります。通常の聖杯戦争は七騎の英霊がそれぞれ違うクラスで召喚されるものですから。亜種聖杯戦争においても、クラスが欠いていることはあれど、被ることなんて、あまりないですからね」
そうだ。聖杯戦争において、
「マスター落ち着いてください。……貴様、どういうことだ。何が起こっている」
「それは僕も聞きたいくらいです。そもそも、
何か通常ではないことが、聖杯に起こっている。あなたも気になりませんか」
悠然と語る青年へ向けて、セイバーはしかし、まっすぐに剣を構える。
「敵前で武器も構えずにおしゃべりとは。私もずいぶんと舐められたものだな。……それとも、貴様は戦う覚悟がないのか」
その問いかけに、彼は少しだけ驚いた。
「いいえ。戦うつもりはありませんでしたが、戦う覚悟はしているつもりでしたよ」
「ならば、もはや、語ることなどありはしない。こないのならば、こちらから行くぞ」
セイバーのその言葉が、開戦の狼煙となった。
青年が剣を構える。膨大な魔力の高まり。うねりが、空気を巻き込んでいく。
そして一陣の風が西へ向かい吹き抜けた時、二人の姿がフレックスの視界から消えた。
次の瞬間、鋼の打ち合う音が弾ける。2人の剣士はフレックスには理解の追いつかない速度で、互いにぶつかり合う。
視界に捉えられるのはわずかな戦いの跡だけ。たった十数秒の間に、攻防は目まぐるしく巡り合間に火花があがる。
剣を振るう息遣いと、その風圧が戦いの余波となってフレックスに届いた。
目にも止まらぬ剣さばき。息もつかせぬ殺し合い。それでも、フレックスが自らのセイバーを見逃すまいとしたのは、彼には戦いの流れが見えていたからに他ならない。
——美しい。と、直感した。稲妻のごとき鋭さを誇るセイバーの一撃も、それをいなし、村雨のように降る青年の剣も。そこには華美な装飾などなく、ただ人を殺すために必要なもので満たされている。それが、たまらなく美しかった。
巻き込まれれば抵抗する間も無く死ぬ。アレはそういう物だ。わかっていながら逃げられなかったのは、やはりその美しさに目を奪われたからに違いない。
永遠に続くかと思われた激しい攻防は、その実、数分も続かなかった。
「——くっ」
セイバーの大上段からの打ち下ろし。それを正面から受けた青年が、わずかに体勢を崩す。
「もらった!」
その隙をついて、セイバーが剣を斜めに切り下ろした。
すんでのところで体をのけぞらせ躱す青年。
だが、それすらも読んでいたセイバーの後ろ回し蹴りが青年の鳩尾に突き刺さった。
勢いのままに青年の体が後ろへと飛ぶ。荒野に体が転がりそれが凄まじい量の土煙を浮かべ、青年の体はその中へと消えてしまった。
「決まる——!」
次の一撃がとどめになると、フレックスは直感したが、しかしセイバーは剣を構えたまま微動だにしない。
「セイバー! どうしたんだ! 今がチャンスじゃないか!」
セイバーに強く訴えるフレックスの声を、しかし彼女は否定する。
「いいえマスター。今のは感触がおかしかった」
「感触……?」
「てて、よくわかりましたね」
声に驚き目をやれば、土煙の中からピンピンした様子の青年が顔を出した。
「今の名演技だと思ったんですが、追い打ちしてはくれませんか」
「侮るな。今、蹴りのインパクトと同時に背後へ跳んで威力をいなしたな」
「お見通しですか。やだなぁ」
青年はしかし、ノーダメージとは行かないようでわずかに腹部を抑えていた。
「さすがに、直撃は効きますね。普通の攻撃なら呪力————魔力の防壁に阻まれるはずですが」
「それはこちらのセリフだ。貴様、私と同等の魔力量を誇っているらしいな」
共に膨大な魔力量を誇る者同士。並の攻撃では有効打にならず、直撃も致命の一撃たり得ない。
二人は共に直感する。もっとも極力な一撃————すなわち宝具での攻撃を直撃させた方に軍配が上がると。
再び接近。セイバーは勢いよく地面を蹴り込み青年へと突撃した。
宝具。それは、英霊達が必ず持っている奥の手である。必殺技に近い。
セイバーも、そして青年もまた宝具を持っていた。
セイバーの宝具は、何よりその手にした聖剣、音に聞くエクスカリバーである。
青年もまた宝具を解放したのか、一層魔力を漲らせて前へ前へと踏み込んでくる。その力強い攻撃を前にして、セイバーは受けに回った。宝具を直撃させる隙を見定めるためである。
だが、
「こちらの隙を伺ってるようですが、その前に倒します」
青年の一撃は、時を経るにつれ速度を増していく。一撃の間が短くなり、自然受けに回るセイバーの表情も厳しい。
セイバーの宝具は高い魔力で敵を一刀する斬撃だ。しかしそのためにはわずかながら魔力をためる時間が必要であり、敵の攻撃はその隙を許してはくれなかった。
絶え間ない猛攻はさらに勢いを増して、もはや弾幕と呼べる。
セイバーは咄嗟に背後へ大きく跳んだ。
「逃がさない」
間髪入れずに追撃を試みる青年。だが——。
青年は突然バランスを崩し、その刀が空を切る。
足元を見れば、それは先の突撃の際に、セイバーが強く地面を蹴った場所で、セイバーの蹴りの威力によって地面がえぐれていたのである。
「足を取られた!」
青年が顔を顰めるも、その一瞬をセイバーは見逃さなかった。
瞬く間に膨れ上がる魔力。大上段に構えた剣は、振り下ろされる時を猛々しく待ち構え。
「“
青年のガラ空きの身体を、雄々しい咆哮と共に叩き切った。
「
爆風が巻き上がる。閃光が走る。激しい耳鳴りと砂埃に目を瞑る。
剣圧によって大気が切り裂かれ、砂漠一帯がごうごうと唸り声をあげていた。
衝撃に思わず身をすくませたフレックスが恐る恐る目を開ける。そして、呟いていた。
「どうして、立っているんだ」
圧倒的な一撃。直撃を免れ得ぬ状況において、しかし、青年はそれでも両足で立っている。
咳き込みながら、体のあらゆるところから黒煙をまといながらも、目には光を残している。
その状況の異常さには、誰よりも相対したセイバー自身が驚いていた。
「なぜ。直撃したはず。持ちこたえたのか」
「――いいえ。直撃していれば、きっと倒れていた。でも、僕にも
唖然とするセイバー。しかし、すぐさま気が付く。
「まずい!」
咄嗟に回避行動をとろうとしたが、青年はその隙を見逃さなかった。
「いくら高い耐魔力を持つあなたでも、この至近距離での攻撃なら致命になる」
瞬間、光があった。セイバーの右半身が肩を中心に吹き飛ぶ。セイバーを射抜いたのは、魔力を基にしたエネルギー砲だった。
「強かったです。最優のサーヴァント」
セイバーがその場に倒れこむ。退去はもう時間の問題だ。となれば、自然標的はフレックスへと移る。
フレックスは逃げ出した。背を向けて走り出した。息を切らせて、なるべく遠くへ。生きるか死ぬかの世界にいる自覚はあった。ここへきて、殺すか殺されるかの世界に迷い込んでいたことに気が付いた。
逃げるフレックスの背中を――。
――刀が、貫いた。
鮮血。心臓への一撃。
その場に倒れこんだフレックスは、空を見上げる。視界には先ほどまで殺し合いをしていた青年の顔が入り込んだ。
「ごめんなさい。あなたに恨みはありませんが、マスターの指示なので」
「――」
なにか言おうとするも、言葉にならない。もう痛みすら感じない。
青年は寂しげに笑うと、静かにその場を立ち去った。
――聖杯戦争。どんな願いでも叶えてくれる不思議な道具・聖杯を巡り行われる、魔術師たちの殺しあい。
オーストラリアの大地に不穏な影を落としながら、陰謀入り乱れる戦いの火ぶたが切られたのだった。
設定は原作準拠を心がけていますが、一部矛盾したり原作にない箇所があります。ご了承ください。