IS インフィニット・ストラトス~偽りの翼~ 作:のろいうさぎ
翌日。
おぉう。
目の前で朝っぱらから。
ここは教室。
現在SHR中。
今日は驚く事が朝から多い。
まず、シャルルが意を決したのか、シャルロットとなって再転入してきた。
女子として。
うん、どうやら自分で選択したみたいだね。
良かった良かった。
それは・・・良かったんだけど。
もう一つが問題だ。
・・・・。
あ~・・・・。
どーも目のやり場に困ると言うか。
実はシャルル・・・いやシャルロットが戻ってきて、彼女を女と知らないはずがないって理由で
現在は意外と修羅場だったりする。
一夏がね。
二組からはISを展開した鈴が乱入し、箒は真剣をすらりと抜き放っている。
で、鈴が一夏に〝龍砲〟をぶっ放したんだっけ。
でもそれを、何を思ったかラウラが止めて・・・・
「んんっ・・・・ん」
「・・・・・・・・!!!!!????」
このあっついキスだ。
アメリカでもまぁ、中学生辺りはもうしてたよ。
僕は経験ないけど。
もう一分はこうしてる。
そしてようやく口を一夏から離すとラウラは、叫んだ。
「織斑一夏!お前を今日から私の嫁とする、異論は認めん!!!」
それは朝っぱらから、地獄の宣告だったよ。
修羅場のSHRが終わり。
・・・今日はすべての一組と二組の授業が自習になった。
理由は簡単だ。
鈴が、箒が、ラウラがそして良識あると思っていたシャルロットまでが、教室を壊しに壊してしまったからである。
さて・・・自習って言っても結局まるっと休みになったのと変わんないんだよなぁ・・・。
ちなみに今僕はひとりだ。
他の人たちは、こってりと織斑先生に絞られ、いま教室の修復作業を手伝っている。
それも人力でだ。
・・・・良かった、僕に飛び火しなくて。
それでなくても、レポートと反省文があるっていうのに。
「あら、アル」
「あぁセシリー」
廊下でばったりと遭遇する僕たち。
偶然って言うのは、あれだね凄いね。
「どこへ行かれますの?」
「うん、いや別にぶらぶらしてただけだけど」
本当にぶらぶらしていただけなんだよね。
行くあてもないとはこのことだ。
だからと言って教室には戻れないし、部屋に行っても・・・・部屋?
「セシリーは?どこか行く予定あるのかい?」
「いいえ、私も暇を持て余していたところですわ」
ふむ、だったら丁度いいね。
「セシリー僕の部屋に来るかい?」
「はいぃッ!?」
声を裏返しながら叫ぶ。
そんな驚かなくても・・・。
ん、驚いたのかな。
セシリーの顔がなんかゆでダコ見たいなんだけど。
「あの、セシリー?」
「あ、いや、でもほら、何事にも順序と言う物がですね、あって。だからその・・・・・」
どんどんなんでかパニックになっていくセシリー。
どこに、パニックになる要素があったのだろうか。
そうして何秒か、矢継ぎ早に言葉を発した後、セシリーの頭がオーバーヒートしたようだった。
「きゅう~~~~」
ボンっと言う音が聞こえてきそうなほど真っ赤になった顔でその場で気を失うセシリー。
うわッ!
僕は倒れるセシリーの身体を支える。
・・・・と、とりあえず。
保健室・・・・はぁ・・・・。
・・・あの目で見られるのか。
急にあの保健の先生の目が思い浮かぶ。
あの目はいやだなぁ・・・。
よし、部屋に運ぼう。
僕は、セシリーをお姫様だっこで持ち上げると部屋まで急いだ。
途中、何人かの女子に「あーーーーー!!!」って言われたけど、今はそれどころじゃないんだ!
◇◆◇◆◇◆◇◆◇◆◇◆◇◆◇◆◇◆◇◆◇◆◇◆
あ、ううん・・・。
額に何か冷たい物がのっている感覚がある。
ゆっくりと、目をあける。
まだ視界はぼやけているが、どうやらどこかのベッドらしい。
そう言えば私は・・・。
アルに部屋に来るかと言われた後の記憶が無い。
えぇと・・・・私は・・・一体。
「あ、目が覚めたセシリー」
この声は・・・・アル?
・え!・・・アル!?
急速に覚醒していく頭。
それと同時に頭が多くの情報や記憶を整理していく。
・・・・・まさかここは!!
ガバッと身を起こす。
それと同時にまた頭がクラッとした。
「あぁ、いきなり起きあがっちゃだめだよ。血が頭までしっかり回らないから貧血症状が出るよ?」
「あぁ、あの私は・・・その」
セシリアは、ポスッとベッドに横になるとアルディが布団をかけながらセシリアの疑問に答えた。
「びっくりしたよ、急に倒れちゃうんだから。放置するわけにもいかなかったし部屋まで運んだんだ」
「そ、そうですの」
平静を装ってはいるが、はっきりってまた頭の中はパニックだった。
運んだ!?
私・・・重くなかったかしら・・・じゃなくて!!
えぇと、そのだから・・・はぁ。
にしても、なんて言うことでしょうか・・・
まさかそんな失態を・・・。
セシリアは恥ずかしさのあまり布団を両手で上に引っ張り、顔半分うずくまる。
ふぅ、でも部屋まで運んで・・・・部屋?
・・・・あれ?
「アル・・・よく私の部屋が分かりましたわね、鍵開いてました?」
「何言ってるさ、よく見てごらんよ。ここは僕の部屋だよ。
セシリーの部屋に無断で入るわけにいかないでしょ、相部屋の人もいるわけだし」
「なっ!?」
で、ではここここ、これはあ、アルの・・・ふ・・布団!?
セシリアはまた顔が真っ赤になる。
今うずくまっている、この布団がアルの布団・・・・。
そう思うと、セシリアは急に恥ずかしさですぐに出なければと思う気持ちと、でももう少しアルの布団にくるまっていたいという気持ちがせめぎ合う。
「まぁ、体調がすぐれるまで横なっててよ、別に今日は二人とも用事ないわけだしね」
その言葉が、セシリアの後者の気持ちを後押しし、セシリアは結局その後しばらくアルディのベッドで布団にくるまり続けることにした。
◇◆◇◆◇◆◇◆◇◆◇◆◇◆◇◆◇◆◇◆◇◆◇◆
セシリーがまだ起きないけど、仕方がない。
準備だけは先にやっておこう。
・・・・準備って言ってもね。
繋ぐだけなんだけど。
僕はPCを起動させる。
そしてネット通話を起動する呼びだすのは姉さんだ。
程なくして姉さんにつながる・・・・って、おい。
映し出された画面では姉さんが・・・・・寝ていた。
・・・・・いくら今日が休みだって言ったって、気を抜き過ぎじゃないかなぁ・・・。
僕が言えないけど。
そこに写っていたのは、おおよそ世界二位の座をつかんだISのパイロットとは、
思えないあられもない姿の姉さんだ。
映像の壁紙からして自宅でこれは寝室だろう。
姉さんは、昔から下着姿で寝る。
今回もその例にもれず下着姿でしかも、かぶっていたんであろう布団をまぁ見事に蹴飛ばしていた。
姉さん・・・・。
これは何が何でも起こさねばならない。
少なくとも、起きたてのセシリーが見たら僕は間違いなくまた吹っ飛ばされる。
「・・・・ね、姉さん!」
とりあえず出来る限り大声で姉さんを呼ぶ。
反応が無い。
えぇい、クソ!
「姉さん!!」
今度は少し大きな声。
『ううん・・・・うあ・・?』
あ、少し反応した。
よし、もう少し・・・・。
「起きてよ、姉さんってば!」
『うぬゅう・・・・もう少し・・・』
うぬゅうって何!?
いいからもう起きてよ!!
「姉さん、起きてって!!」
くっそーーー起きない・・・・!!!
画面越しだから、何もできないが目の前にいたら叩いてるところだ。
流石にイライラして来た僕は、思わず大声で叫んでしまった。
「起きろーーーーーーーっ!!!!!!」
「何をしてますの?」
「いやだから、起きなく・・・・・・・・・せ、セシリー」
しまった・・・。
あまりに起きないから、セシリーが立っている事に気が付かなかった。
そしてセシリーがモニターを確認する。
・・・うわぁ・・・・良い笑顔。
その血管さえなければ、見とれてたところだ。
スッパァァァンッ!!!
・・・案の定叩かれた。
『あはは、あなたも大変ねぇ』
誰の所為だい!?
ってか、起きてたのか・・騙された。
「信じられませんわ、私が寝ている間に、そ、そのアルがそのような映像を!」
セシリーは腕を組み、ムスッとした顔で椅子に座っている。
「だから、これには深いわけがあるんだ」
「どんな理由がおありですの?」
うぅ・・・こ、怖い。
下手な事言っちゃだめだな。
って言うか、別に隠すことじゃないよね。
「・・・はぁ、セシリー。これ僕の姉さんなんだ」
「・・・・え?」
一瞬できょとんとした顔になるセシリー。
そして、画面に向かって問いかける。
「お姉さんなんですの?」
『違うわよ』
「・・・・アルゥ~~!?」
何言ってんだよ!!この状況でその嘘はいらないんだってば!!
僕はあわてて、セシリーにフォローする。
「違う違う!本当に姉さんなんだってば!!!」
『私、こんな人、しらない』
知ってるでしょう!!
更に眼光鋭くなるセシリーに半分涙目の僕を見てようやく姉さんが本当の事を言ってくれた。
『ウフフッ、面白いわねやっぱり。弟弄りって癖になりそう』
「え、じゃあやっぱりあなたは・・・」
『えぇ、私はローラ・サウスバード。アルディの姉のね』
ようやく納得したようなセシリーを見て、僕はホッと息をつき、ヘナヘナと部屋の床に座り込む。
全く、何だってこんなに疲れなきゃいけないんだ・・・。
っていうか姉さん・・・頼むから上の服ぐらい着てよ。
そんな事を考えいるうちに、察しのいいセシリーが気付いたようだ。
「あの、アル?私を連れてきた理由ってひょっとして・・・・」
そう、彼女を僕の部屋に招待したのは、姉さんと会わせるため。
まぁ連れてきた方法はともかくね。
前にセシリーの話をした時、言われたんだよね。今度紹介してくれって。
『あたしがあなたに会いたいって言ったのよ。それであなたがセシリアちゃんね』
「は、はい」
『ふぅん・・・・』
姉さんはまじまじとセシリーの顔を見ている。
実のところ姉さんは、セシリーがあの女性実業家についてきた少女と言うことぐらいしか覚えていないらしい。
それも幼いころだから、今の成長したセシリーは初めてみるのだ。
「あ、あの・・・」
『綺麗ね、アルディもそう思わない?』
「え!?」
いきなり話を振られてびっくりしてしまう。
完全に油断していた・・。
『アルディ、失礼よ』
「ご、ごめんなさい・・・」
姉さんはセシリーの方を向くと、なぜかしみじみとした顔で腕を組んだ。
『あなたも、苦労するわね・・・』
「・・えぇ、それはもう」
なんで?
なんであの二人は、そんなところで共感しちゃってるの?
互いにうんうんと頷きながら、話はまたセシリーの事へと戻っていく。
『そう言えば、セシリアちゃんアルディのISコーチしてくれているそうね、どうかしら弟は』
「そうですわね・・・」
これは僕も興味あるね。
顎に手を当ててしばらく考えているセシリーの横顔を僕は、ジッと見つめる。
そしてセシリーコーチの短評が始まった。
「アルは基礎的な事、つまり射撃に対する適正は高いと思いますわ。
ただ、ISの特徴をつかんだり、何かを感じ取ったりという感覚的な部分はまだまだ未熟と言わざるを得ないかと・・・まぁ、このあたりは経験を積んでいくしかないと思いますけど」
・・・・なるほど。
つまり
『応用の効かない鈍感男ってことかしら』
「・・・ま、まぁ簡単言ってしまえば・・・・そう・・・ですわね」
姉さんのド直球な物言いに若干濁すセシリー。
あのね、僕だって傷つくんだよ。
『でもまぁ、基礎がそこそこしっかりしているのなら、まぁ良しとしましょう』
一応姉さんから及第点のコメントは出たが、次の発言が僕を焦らせる。
『それと、アルディ。最近〝ストライク・バーディ〟からデータが送られてこないんだけど・・・・
何かあったのかしら?』
これにはセシリーも僕同様にビクッと身体が反応した。
「あ、いやぁ~・・・その」
「えぇと・・・・」
僕はセシリーと、一旦姉さんのモニタリング出来ない位置へサッと移動すると、声をひそめる。
「どうしよう、セシリー・・・僕のこんなのなんだけど」
「そうした責任は私にありますけど・・・さ、流石に開発者に見せる・・・勇気が出ませんわね・・・」
こんなのとはそう、ラウラによって真っ二つにされているのだ。
実際まだ起動できるかさえ、教師陣でさえわからない状況だ。
確かに開発者の姉さんに見せれば、何かしら分かるかもしれないが、かと言ってこの愛機の惨状を見せるのも気が引ける。
『アルディ、セシリアちゃん?どうしたのかしら。あ、ひょっとしてメンテナンス中とかだった?』
一瞬これは使えるとも思ったが、ダメだ相手はあの姉さん。下手な嘘は簡単にバレるに決まっている。
でも、見せるには・・・・。
あぁ・・・
はぁ・・・・ふぅ・・・。
くそ。
僕は観念して姉さんに、〝ストライク・バーディ〟をかざしてみせる。
それを見て姉さんは、やはり驚いていた。
『アルディ、それ・・・・真っ二つなのはなぜ?』
「あ、いやこれは・・・・・その、ちょっとした事故で・・ねぇ」
「え、えぇそうですわね・・・事故でその・・おほほほほッ」
一気に怪訝そうな顔になる姉さんだったが、僕は次の言葉を言われる前にと、
ほとんど間髪いれずに姉さんに尋ねた。
「姉さんこれ、使えるかな?」
一瞬ジト目で睨むが、姉さんはすぐに頭を切り替え少し考えた後、予想通り難色を示した。
『はっきり言って、分からないっていうのが実際のところね。まぁ下手に起動しないっていうが一番安全でしょうけど』
要するに、どうなるのかは分からないが、出来れば安静に置いておいた方がいいってことか・・・。
『はぁ・・・にしてもねぇ・・。これは予想外だったわ』
「僕だってそうだよ・・」
「申し訳ありませんわ」
実際ISが待機状態で破壊されると言うのはかなり稀なケースらしい。
そりゃそうだろう。
たいてい戦闘ぐらいでしか破壊されない代物だ。
それが展開もせずに、真っ二つ。
見た感じ姉さんも、このケースは初めてっぽいね。
『とにかく、そっちで一度見てもらってこっちにもう一度連絡ちょうだい。対策は考えておくから』
「うん、ありがとう姉さん」
「お願いしますわ」
『さて・・・と。アルディ、あなたはちょっとどこか行ってなさい』
急にそんな事を言い出す姉さん。
どこかって・・・・。
「あの僕の部屋なんだけど・・・」
『良いから、ここからはちょっと、女の子同士の話よ』
女の子って・・・。姉さんもうすぐ・・
『ん?』
・・・・・何でも無いです。
凄い笑顔でこっち見られた。
やめようトラウマになりそうだ。
『ほらほら、変な話はしないから、ね』
姉さんは更に僕をせかす。
こりゃ出てかいかないとアレか。
言いあっても、時間の無駄だね。
僕は渋々立ち上がると、部屋を後にするのだった。
◇◆◇◆◇◆◇◆◇◆◇◆◇◆◇◆◇◆◇◆◇◆◇◆
『さて・・・・邪魔者が出いったところで』
邪魔者って・・・とセシリアは思う。
どちらかと言えば、自分が部屋にお邪魔してるのだから、その言葉は自分に当てはまるのではないだろうか。
だがそんな事気にも留めずにローラは言葉を続ける。
『さて・・・ふ~んズバリ聞くわね』
「は、はい・・」
セシリアは少し緊張する。
部屋の主を追い出してまで自分に話とは一体何なのだろうか。
『あなた、アルディの事好きなの?』
「えぇっ!?!?」
思わず大きな声を上げてしまい、すぐに両手で口元を押さえる。
『ウフフッ、どうやら図星っぽいわね』
「うぅ・・・は、はい」
セシリアはゆっくりと、頷くと恥ずかしさのあまりうつむいてしまった。
『あなたって、本当に可愛いわね。外見とのギャップが特に』
外見との?
そんな事初めて言われた。
それにローラは、女性が見ても見とれてしまうぐらい魅力的な女性だ。
そんな女性に可愛いと言われて、嬉しくないはずはないがセシリアの顔はますます赤くなってしまった。
『まぁ・・好きなのはわかったけど。お姉さん気になるのはあの子のどこが好きなのってことなのよね』
「はぁ」
『その人を好きになるってことは、少なくともどこかに魅力を感じたからだと思わない?』
「それは、確かに」
会話しながらセシリアはふと考える。
今まで考えたこともなった。
アルディのどこが好きなのか・・・。
・・・ぜ、全部という答えはアリなのでしょうか・・・。
はっ、いやでもそう答えると節操のない女と思われるかもしれませんわね・・・。
実際セシリアはアルディのここの部分と言う物に惹かれたわけではない。
会った時は忘られていて少しショックだったがすぐに昔の事も思い出してくれて、そしてふたを開けてみれば、彼は昔から何一つ変わっていなかったという事がたまらなくうれしかった。
彼の声、彼のちょっと嘘つきな性格、彼の笑顔、彼が手を握ってくれた時の温もり。
そのすべてがセシリアにとってはアルディ・サウスバードであり、彼女が好きな男の子なのだ。
だからどこが・・と言われても中々困ってしまう。
『う~ん答えられない?・・・魅力ないのかしらあの子』
「い、いえ違います、そうではありません!」
答えに窮していたセシリアにローラがわざとらしくせかした。
セシリアも釣られてしまったと思いながらも、それを必死で否定する。
顔を真っ赤にして声を張り上げる、セシリアの様子を見てローラは笑っていた。
『フフフッ、やっぱりあなた可愛いわ』
「・・あぅ」
セシリアは少しはしたなかったかなと自問自答する。
だが、そんなセシリアの考えとは裏腹にローラは優しく言葉を投げかけた。
『ちゃんとわかってるわ。あの子をちゃんと見てくれてありがとう・・・』
「・・・・いえ」
『あの子、あたしの影響とはいえ結構難儀な性格してるでしょ。それが少し心配ではあったのよね』
「大丈夫ですわ。アルは意外と人気者ですのよ」
それが少し、悔しかったりする。
本当なら独り占めしていたいのだが。
『あなたも大変ね、あの子鈍感だし。振り向かせるのは骨が折れるかもよ?』
「大丈夫ですわ、私こう見えて我慢強いんでしてよ」
セシリアは自信ありげにはっきりと言う。
ローラはそれを黙って、それでいて優しそうな目で見つめていた。
◇◆◇◆◇◆◇◆◇◆◇◆◇◆◇◆◇◆◇◆◇◆◇◆
あぁ~あ。
部屋を出されたはいいけど・・。
どうしよう。
部屋の前で立ってるのもなんか変だし。
かといってセシリーを置き去りにどこか行くのもなぁ。
僕は若干手持無沙汰に、寮の廊下を歩いていく。
文字通りあてのない旅である。
・・・ふぅ。購買でも行こうかな。
商品を見てるだけでも時間はつぶせるだろうし。
と、言う事で僕は行先を購買に決めた。
「いらっしゃいませ~」
ここの学園の購買は、しっかりとしたチェーンがテナントとして入っているのが特徴だ。
そこら辺は作画は国立だろう。
僕は中をぶらぶら見て回る。
そうだ、ジュースでも買おう。
僕はスッと、冷蔵ケースの取っ手に手を伸ばす。
すると、丁度そこへもう一人の手が重なった。
「おっ?」
「む?」
僕はその手の持ち主を、目で追う。
するとそこには、銀髪、眼帯の少女が一人。
「ラウラ?」
「アルディか。すまない、先に開けてくれていいぞ」
その口調に、初めて会った時の刺々しさは無い。
何があったかは知らないが・・・・いやって言うかどんな心境の変化なのだろう。
あんなに、嫌っていた一夏に口づけまでして・・・。
でもまぁ・・いいや。
フレンドリーに接してくれてるのに、こちらからそれを壊すこともないだろう。
「そりゃ、どうも・・」
僕は一番上の棚から百パーセントのオレンジジュースをセシリアの分も合わせて二本取ると、
ラウラに場所を譲った。
さて、お会計お会計~。
レジへ行く途中でチラッとラウラを振り返る。
すると・・・
「ん~~ッ・・・んんん~~~!!!」
ラウラは背伸びをして一番高い棚に手を伸ばすが、後少しの所で届かない。
・・・・まぁ小さいからね。
最初はまぁ頑張ってとそのままレジへ足を運びかけたが、後ろからするラウラの声に後ろ髪を引かれてしまう。
あぁ・・・っとに・・。
僕は何度か迷った挙句、ジュースコーナーに戻るとラウラに尋ねた。
「何が取れないんだい?」
「べ、別に取れないと言うわけではないぞ・・・その少し高いだけで」
「それが取れないっていうんでしょ。ほらこれでいいの?」
僕はヒョイッとリンゴジュースを取るとラウラに手渡した。
「あ、あぁ・・・すまない」
ラウラはそれを戸惑いながら受け取ると、礼を言う。
ほんと、どんな心境の変化だろうね。
また同じような疑問が頭をよぎるが、こんなところで聞くわけにもいかない。
それに、ま、何にせよ大人しくなったならそれでいいじゃないか。
僕は今度こそ、レジへ足を運ぶ。
そしてお金を支払って、購買を出る直前。
「お、おい!待て」
ラウラに呼びとめられた。
僕はふりかえる。
するとそこにはリンゴジュースをこちらに向けてポーズを決めるラウラがいた。
ポーズだけ見れば、結構面白いが顔は真剣そのものだ。
「お前に話がある。今日のそうだな・・二〇時頃に寮の中庭まで来てくれ」
・・・・これは何?
・・・やっぱりあのペットボトルの件許してませんよって遠まわしなアピール?
・・・でも、あの真剣な顔は。
僕は少し考えた後、ラウラに答えを返した。
「二〇時だね」
「あぁ」
「分かったよ」
互いに短く答え、その場を後にした。
・・・にしても、話ねぇ。
ラウラからの話か・・・。
まぁなんか良い話じゃなさそうだよね。
僕は嫌な予感にかられつつ、セシリーの下へと急いだ。
流石にもう、話終わってるだろうし。
ガチャッ
部屋を開けるとそこには、まだ会話を続けるセシリーと姉さんがいた。
・・・・本当に女の人ってよく喋るなぁ。
って僕、アメリカから画面越しに出てけって言われたんだっけ?
今考えるとえらい遠距離から言われたんだね。
とりあえず僕は、入ってしまったものは仕方がないから、〝二人〟におずおずと聞いてみる。
「あの、もう大丈夫だよね?」
「あら、アル、いつ帰ってきましたの?」
『話に夢中になっちゃったわね』
どうやら二人とも、そもそも僕に気が付いていなかったようだ。
・・・なんか、凹むなぁ・・。
「それで、話はもう済んだの?」
「えぇ、ほとんど」
『アルディ、セシリアちゃんの事大事にしなきゃだめよ?』
「・・・・え?」
「ああぁぁッ、それは以上はぁ~~!!」
あわてて姉さんの口をふさごうとするセシリー。
ただまぁ、モニター越しだから、姉さんは喋れちゃうけどね。
だが、姉さんも姉さんで、話せるのにニコニコ笑ってそれ以上口をはさまない。
・・・何なんだ?
『あぁ、そう言えばアルディ』
「ん、なに?」
僕はセシリーに場所を変わってもらってPCの前に座る。
画面越しの姉さんの顔はいつになく真剣で、一体どんな話が飛び出すのか分からないぶん、
変に背筋が伸びてしまう。
『・・・・あなた・・・もうすぐ臨海学校ですってね』
「え、あ、あぁうん」
そう言えばそんな事書いてあったなぁ。
貰ってからほとんど確認してない、年間計画表をなんとか頭に思い浮かべる。
・・・・なんとなく・・書いてあった気がする、うん多分。
『もう、色々買い物には行ったの?』
「買い物?特に必要なものは・・それに色々旅行鞄に詰め込んできたからだいじょう・・」
『甘いわ!!!』
うわ、びっくりした!
多分イヤホンしてたら、鼓膜破れてたね多分。
姉さんは、腕を組んで頭を左右に振って今にも〝やれやれ〟と言う声が聞こえてきそうだった。
『やれやれ・・・・我が弟ながら情けない』
ほら聞こえた。
って言うか、何か必要なものがあったかなぁ。
水着は・・別に良いし・・・。
日焼け止め?
僕そんなの気にしないし。
「別に欲しいものなんて何も」
「・・・・・でも、セシリアちゃんはあるわよね?』
唐突に話をセシリーに振る姉さん。
一瞬の戸惑いの後、何かを感じ取ったのかセシリーは勢いよく首を縦に振った。
「はい、はいッ、それはもう!買う物が多すぎて、どなたかの手を借りたいぐらいですわ!」
そ、そんなに・・・!?
女の子って、色々準備が凄いって聞いてたけど臨海学校行くだけでもそんなに買い物するものなのか。
『あらら、それは大変ね』
「はい、大変ですの」
なんとなくわざとらしく感じるのは気のせいだろうか。
まぁ、考えすぎも良くないか。
『と、いう事よ』
「・・・・はぁ、荷物持ち?」
『まぁ、当たらずとも遠からずよ』
姉さんはウィンクすると、そろそろ切るわと言って一方的に電話を切ってしまう。
・・・よくよく考えれば、なんだか色々凄く強引に決まったような決まってないような・・。
僕は、チラッとセシリーの顔を見る。
その顔は、買い物へ行くことへの楽しさからか、凄くニコニコしている。
まぁ、荷物持ちでも何でも・・。
僕は覚悟を決めると、机の片隅に置いてあったスケジュール帳を取りだす。
「えぇと・・・・今週末が良いかな?」
「あ、あの、本当に一緒に行ってくれるんですの?」
さっきのニコニコから一転なぜか、微妙に不安そうな顔でこちらを見る。
女心と秋の空って言う言葉が日本にはあるらしいけど、それはそれでとてもうまい例えだと思う。
あ、ちなみにセシリーの母国イギリスでは〝Awoman`s mind and winter wind change often〟女心と冬の風って言うんだって。
まぁそれはさておき。
「何言ってるのさ、さっき誰かの手も借りたいって言ってたばかりじゃないか、まぁ僕はそんなに力持ちじゃないけど、荷物持ちぐらいなら出来るさ」
「アル・・・・・・。フフッそれじゃ、お願いしますわ。
日程ですが先ほどので大丈夫です。それと集合は何時にしましょう?」
「ん~~・・どうせ街に行くんなら、他のところも見て回りたいよね・・・、じゃあ十時ぐらいに部屋に迎えに行くよ」
「えぇ、それではお持ちしておりますわ」
セシリーは立ち上がるとドアノブに手をかける。
「あれ、もう行っちゃうのかい?」
「え、ええ。その・・ちょっと用事を思い出しましたの」
「あれ、暇を持て余していたんじゃ・・・」
「と、とにかく、買い物楽しみにしておりますわッ!」
セシリーは叫ぶようにして言うと、足早に部屋を後にした。
・・・・う~ん。
やっぱり女の子って〝Awoman`s mind and winter wind change often〟だね・・・。
◇◆◇◆◇◆◇◆◇◆◇◆◇◆◇◆◇◆◇◆◇◆◇◆
こ、これって・・・デート・・・ですわよね!!
セシリアは表面上いつも通り上品な足取りで部屋に向かっていたが、
今にもうれしさで、叫びたい衝動にかられていた。
ローラさんがせっかく作ってくださったチャンスですもの、必ずモノにしなければッ!
セシリアはその衝動をなんとか抑え込み、
心の中で大声チャンピオンも真っ青なほどの声で叫んでいた。
あ~~~~、でもどうしましょう!そ、その、そうですわね。
人生何があるか分かりませんものね・・・じゅ、準備はちゃんとして行かないと!
セシリアは自分の部屋に戻るとベッドの上に滑りこむ、
どうやら相部屋の女子はいないようで部屋には自分ひとり。
それを確認すると、セシリアはさっきまで我慢していた喜びを爆発させる。
「あ~~~~~もうどうしましょう!!これは間違いなくデートですわ!!
アルから、誘われたわけではないのがちょっと残念ですが、でもこれは絶好の機会ではありませんか!!」
もうはたから見れば救急車を呼ばれかねない。
だがセシリアはそんな事お構いなしで、右へ左へベッド上を転がる。
「うまく行けば、あんなことや・・・こんな事まで・・・・キャーーーーアルそれはダメですわーーー!!」
その時だった。
ガチャッ!
っは!!
セシリアは我に返る。
どうやら相部屋の女子が帰ってきたようだ。
セシリアは周囲を見渡す。
さっきまでの自分の行動の所為で、きちんとベッドメイクされた自慢のシーツはしわくちゃになり、
掛け布団もずれ落ちかかっている。
仮に平静を装っても、このベッドの乱れ具合は明らかにおかしい。
「と、とにかくすぐに直しませんと・・・ってきゃぁッ!」
セシリアは、あわてて起きあがろうとするが、
足にシーツが絡んでそのままベッドから転げ落ちてしまった。
それに引っ張られてシーツが自分の上に覆いかぶさる。
「・・・・何やってんの?」
そして丁度そこを相部屋の女子に見られてしまった。
「いえ・・・特に意味はありませんわ」
その女子はシーツから返ってくる返答に、どうしたらいいのか分からずしばらく互いに無言の時間を過ごした。
◇◆◇◆◇◆◇◆◇◆◇◆◇◆◇◆◇◆◇◆◇◆◇◆
時刻は二〇時。ラウラとの約束の時間だ。
僕は中庭まで流れてくる海の風に心地よさを感じながらラウラを待つ。
しばらくして無音の中庭にドアの開く音が響いた。
「すまないな、遅れた」
「いいや、僕も今来たところだから」
二人とも形式的なあいさつを交わす。
そしてまた沈黙。
・・・にしてもラウラの話ってなんだろう。
やっぱり、あのペットボトル?
・・・だとすれば、相当根に持つタイプだなぁ。
「・・その、今日はお前に謝らなければと思ってな」
ん?
僕は想像していたのと違う答えに思わずキョトンとしてしまう。
どうやら本当に僕は姉さんがセシリーの言うように、想像力とかの感性が欠如してるのかもしれない。
「謝る、なんで?君何か僕にしたかな」
「お前の姉の事だ」
それでようやくピンと来たぞ。
そうだ、ラウラは姉さんの事を馬鹿にしたんだ。
もう踏ん切りもついて、自分の中じゃ片付いた事だっただけに思い出すのに時間が要ったけど。
「本当に、すまなかった」
まっすぐに、素直にラウラは頭を下げる。
その思いに嘘偽りはない。それはいくら鈍感な僕でもすぐにわかった。
「きょうか・・・織斑先生から聞いたのだ。お前の姉の事を」
「織斑先生から?」
思いがけない経路だな。
確かに姉さんの事は知っていて当然だとは思うけど、織斑先生が自ら姉さんの事を話すとは意外だった。
「織斑先生も認めるほどの人物だったのだな」
「・・・そうなんだ」
「ん、お前は何も聞いていないのか?」
「まぁ、聞いてはいたけど、そういう肯定的な意見は久しぶりかな。
ほら織斑先生って凄く人気もあるし、聞く事聞く事ほとんどが良い意見ばっかりじゃない。でも、僕の姉さんの事聞くと、大抵は知らなかったり知っていても悪評がほとんどだったから少し驚いちゃってね」
この学園に入ってからと言うもの、織斑先生の凄さや人気は目を見張るものがある。
前にも行ったが、この学園の教師陣は、ちょっとは名の知れた元国家代表なんてごまんといるのだ。
だがその中でも、飛びぬけて高い実力と人気を持ち合わせているのが、織斑先生だった。
まぁ、他国の代表なんて優勝でもしない本国以外じゃ、注目されないんだろうけどそれでももう少しは知ってるかと思ってた。
僕たちは話しながら、中庭にベンチに腰掛ける。
「そうか、でもお前はそんな姉が好きなのだろう?」
「まぁね」「だとしたら、やっぱり私はお前に悪い事をしてしまった」
「もう良いけど、確かにあの時はカッと来たけど・・・もう終わった事だしね。
フフッ、僕は根に持つタイプじゃないんだ」
僕は背もたれと肘かけに身体を預け、ラウラに半身の体勢になる。
リラックスした体勢でラウラに微笑みかけるがラウラの顔は晴れない。
「・・・織斑先生から他にも色々と聞いたんだ。お前があのイギリス人に自分の思いを託してトーナメントを欠場したと言う事も・・・」
「そうなんだ」
「そして、その事を私なりに色々考えてみたんだ。でも、答えはいつも同じだ。私ならトーナメントにも無理やり出場していただろうし、ましてや自分の思いを他人に預けるなんて事出来なかった」
ラウラはうつむきながら、一つ一つ言葉を選んで紡いでいく。
これがあの、初日に騒動を起こした少女だとは到底思えない変わりっぷりだ。
ラウラは僕の方を向き直ると、困惑したような表情を浮かべる。
「なぁ、教えてくれないか? お前はどうして、そんな事が出来たんだ?」
「どうして・・か。う~ん・・・強いて言えば信じていたから・・かな」
僕は自分の思いを意志をセシリーに預けた。
セシリーを信じていたから。
ひょっとしたら、それが出来たから僕は、今ラウラとこうして話せているのかも知れない。
思いを人に預けるのって一見すると無責任な事かも知れないけど、相手を信じなきゃ出来ない、
意外と大変なことだと思う。
任せた方も。
そして任された方も。
「信じる・・」
「そう、信じる。まぁ嘘つきな僕が言っても説得力は無いけどね」
「ではそれが、お前の強さなのか?」
「どうだろ・・・強さとは違うかなぁ」
うん・・・・・強さとは違う気がする。
これはただ単に、ぼくがセシリーを信じていただけだし、僕の力でも何でもない。
「・・・お前は強くないのか?」
唐突にラウラがそんな事を聞いてくる。
僕はそれを全力で否定した。
「強くなんて無いよ、多分主要なメンバーの中じゃ一番弱いんじゃないかな」
実際これまでだって、なんとか戦えてきたのは〝ストライク・バーディ〟の性能によるところが大きい。
多分イコールコンディションでやりあえば、僕なんて瞬殺だろう。
「そうか」
「っていうか大体なんでそんな話に・・・。さっきの質問はどこに飛んでったのさ」
「いや、実は話したかった事と言うのは。これが本題なのだ」
「え?」
「実は、あのトーナメントの時・・・・」
・・はぁ~なるほどねぇ。
不思議な事もあるもんだ。
ラウラが言うには、どこか暗い空間で一夏と話をしたらしい。
そしてそこで一夏が言った強さの理由。
それがラウラには気になって仕方が無いらしいのだ。
「一夏は、他にも強さは色々あると言っていたのだ。
だからとりあえず・・・謝らねばならんとも思っていたから、丁度いいと思って・・・お前に」
だんだん最後の方は、声がしぼんでいってしまったラウラ。
だが主要な部分は聞き取れたし、大丈夫だ。
「ふ~ん・・・そっか。強さねぇ」
僕もそんな事、考えるのは初めてかもしれない。
何を持って強さと言うんだろう。
力?
意志?
仲間?
それとももっとほかの何かだろうか?
よくわからないが、とりあえず言葉にまとめてみた。
「僕は、強さって言うのはその人自身だと思うな」
人自身?」
「うん、そう。結局強さって言うのは力を使わないといけないでしょ。
でも力は力じゃない? でもそこへ使う人が出てきて初めて力は強さになるんだと思う」
「よくわからないな」
「わからなくていいのさ、そんなの」
開き直ったような僕の声にラウラは驚いたような顔になる。
「わからなくて・・・いい?」
「あぁ・・えっとだから・・・やっぱり人それぞれな訳だし。答えは無数にあるわけでね・・・
なんて言ったらいいのかなぁ・・・アハハ、ごめんね一夏みたいに旨く説明できないや」
やっぱりそれをしっかり、考えられている一夏は強いんだろうな。
僕は頭をかきながら笑う。
多分僕にも、強さって言うのはこれだ!っていえる時は来るんだろうけど。
それがいつなのか・・。
ふむ、まぁ来る時には来るでしょ。
ラウラは僕の話に耳を傾けた後、ゆっくりと立ち上がり、二歩三歩歩いたところで止まる。
「そうか・・・そういう考え方もあるのか」
「それに、うだうだ考えていたってね。やっぱりほら、人生は楽しくなくちゃいけないでしょ。たった一度の人生なんだからさ」
「・・・楽しく・・・そうか・・そうだな」
ラウラは振り返らない。
表情はうかがい知ることは出来ないが、声色でなんとなく落ち込んではいないと言う事はわかる。
するとラウラは、そのまま上を見上げ言った。
「フフッ、お前と話せて良かった。そうか、やっぱり一夏の言ったように色々あるのだな・・・。
私はもっと知らねばならんのかもしれないな」
「この手の問題に、答えなんてある意味、一つもないんじゃないかな」
「そうかもしれん・・・。おぉ、そういえば、お前も専用機持ちだと聞いたぞ。
今度暇を見つけて模擬戦でもどうだ?」
模擬戦・・・あぁ・・。
模擬戦ねぇ。
僕は、真っ二つの愛機を思い浮かべて、さっきまでとは一転肩を落とす。
・・・そう言えば、これ直るのかな・・。
「ん?どうした、都合でも悪いのか?」
「いや、都合って言うより・・その・・・・」
どうしようか・・・本人に直接言ってもいいものか・・・。
僕が迷っていると、ラウラが近づいてきて僕がポケットに隠している物を興味深そうに見つめる。
「何を持っている?」
「あ、いや別に・・・何をってほどのもんじゃ・・・」
「見せろ」
「いやだから・・・」
ラウラは半ば強引に僕の腕を引っ張る。
すると僕の手に握られた〝ストライク・バーディ〟が姿を現した。
「これは・・・」
ラウラはそのネックレスに見覚えがあるようだった。
てかむしろ、見覚えがあってもらわないと困るのも確かなのだが。
「あーえと・・・これが僕のIS・・・・見事に真っ二つでしょ」
僕は観念して、気まずい気分で告げる。
何で僕が気まずい気分かって?
決まってる。
壊した張本人が無理やり引っ張り出した物が、その張本人が壊した物だったら、
誰だって互いに気まずくなるでしょ。
少なくとも僕はなる。
「あ、あぁ・・・かさねがさね・・すまない」
「まぁ・・・良いけど」
ラウラは若干顔をひきつらせながら、謝罪する。
まぁ、確かに気まずいっちゃ気まずいけど、もうそれは良い。
終った事だしね。
僕はあまり根に持つタイプじゃないってのは言ったでしょ。
つまりそう言う事。
だがラウラにとってはそうでは無かったらしい。
ラウラは再び僕の横に腰かけると、しゅんっとなってしまった。
「それにしても、お前のだったのか・・しかもISだったとは」
「そんなに気にしないでって、もうやっちゃったもんは仕方ないよ」
「だが・・・」
「さっきも言ったでしょ、人生は楽しくなきゃ。
まぁIS学園でISが使えないっていうのは笑えないけど、
別にそれだからどうだっていうのもないしね、逆に変に気を使われる方が僕はいやだな」
「そうか・・そう言ってもらえると助かるが」
さてと・・・・良い感じかな?
僕は携帯の時計を確認するともう二一時を回っていた。
ラウラとの会話も一区切りついたし。
「それじゃ、そろそろ部屋に戻ろうかな」
「あぁ、そうだな・・・・わざわざ呼び出してすまなかった」
「さっきから、謝ってばっかだね」
「フフッ、元々そのつもりで呼びだしたのだ」
僕らは軽く二言三言話して互いに分かれる。
僕は部屋に向かう道中少し考えた。
・・・ラウラ・ボーデヴィッヒ。
初対面での、イメージは最悪だったけど・・・。
このIS学園にまた一人。
個性的な生徒が〝本当の意味〟でクラスの仲間になったのは確かだろうね。
さてさて、どうなる事やら・・・。
主に一夏が。
何にせよ、人生は楽しまなきゃね。
誰もいない廊下。
そこに僕の足音だけが軽快に、そしてどこか楽しげに響いていた。
ここまででこの二次創作小説の第一章が終了です。
後日今度は第二章を移行していきますのでよろしくお願いします。
H.24 7/24