IS インフィニット・ストラトス~偽りの翼~   作:のろいうさぎ

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第15話~疑惑のジャパニーズと白き鳥~

・・・・・はぁ。

やっぱり断ればよかったのでしょうか・・。

いやいや、もうここまで来たわけですし・・・。

朝日がIS学園を照らす。まだ時間も早い関係で誰もいない校門前で、

一人の少年はIS学園の制服に身を包み一歩足を出しては、その足を引っこめる。

そしてその後、また何かを考えるという行動を繰り返していた。

これが普通の学校なら、警察を呼ばれても良いレベルの怪しさだった。

それにしても・・・なんでこんな事。

少年は頭の中でひとりごちる。

だがそれで何が変わると言うわけでもない。

少年は息を深く吸い込むと、ゆっくりと吐く。

さて・・・行きますか。

少年は意を決した顔で、IS学園の門をくぐるのだった。

 

 

◇◆◇◆◇◆◇◆◇◆◇◆◇◆◇◆◇◆◇◆◇◆◇◆

 

 

「ねぇねぇ、また転校生らしいよ?」

僕はもうその話を聞いても何も驚かないぞ。

だってラウラ以上の転校生なんてそうそう居ない。

それにだ、転校してくると言っても今回は僕たちのクラスじゃない。

それでも・・・

「どんな子だろうね?」

「また代表候補生かなぁ」

「絶対そうだって、どこの国の子かな!」

これだ。

本当に噂話が好きだねぇ。

って言うか毎度思うんだけど、女の子の情報網って言うのは一体どれほどのものなんだろう。

ひょっとしたら、一国家機関の情報網に匹敵するぐらいあるんだろうか・・・・・・

それは言い過ぎ?

いやでも、ねぇ。

「お前、さっきから何ブツブツ言ってんだ?」

「え? 声に出てた?」

一夏に言われてハッとする。

自分じゃ分からないもんだねぇ。

「いやね、転校生の話」

「お前も気になるのか、やっぱり?」

「もう誰が来たって言っても驚かないよ、大体ラウラであの騒ぎでしょ。慣れたよ」

本当に、あれ以上の転校生騒ぎがあってたまるもんか。

・・・まぁ僕からペットボトル投げたんだけど。

「私がどうかしたのか?」

そこへラウラがやってくる。

どうやら聞こえていたらしい。

「いや、一夏がね。ラウラ可愛いって」

「なっ!!お前そんな事一言も・・・・・・ッほ、ほうき」

この手の会話にはすぐに飛んでくる箒。

僕はそれをニヤニヤしながら見つめる。

あ、ちなみに今の箒の顔は、真正面から見ると子犬なら死んでしまいそうなぐらい怖い。

「お前・・・・」

「お、おう・・・」

「その、なんだ。やっぱりききき、キスとかしてほしいのか!?」

「はぁッ!?」

うわぁ、予想外の爆弾発言だね。

これは面白くなりそうだ。

「全く・・・アル、またやってますの」

そこへ小声でセシリーが声をかけてくる。

「だって、ねぇ・・。見る分には楽しいし」

「はぁ・・・やられてる側は地獄でしょうけれど」

僕とセシリーは再び一夏を観察する。

現在一夏は、箒に詰め寄られ変な質問をされた後、ラウラがそれに異を唱え、おまけにシャルロットまでその話に参加してきたから、種をまいた張本人が言えた事じゃないが小規模なカオスだった。

「お、お前、急になんてこと言ってんだよ!!」

「そうだぞ、一夏は私の嫁だ。よって好き勝手にしていいのは私だけに決まっている」

「あぁもう、二人とも何言ってるの!大体一夏とのキスだったら僕だって――――――――――あ」

え!?

更に予想外のカミングアウトに僕だけじゃないクラス全体が驚きの声を上げた。

「「「「「「「ええぇぇぇぇぇぇぇぇぇぇぇぇぇぇぇぇぇっ!?!?!?!?!?!?」」」」」」」

声でクラスが揺れるのなんて久しぶりだ。

えぇと・・・前に揺れたのは・・・。

あぁシャルロットがシャルルとして転校してきた時だったっけ?

・・・いや違うラウラがキスした時だ。

なんだ、つい最近じゃないか。

などと僕はのんきに構えているが、周辺はもうカオスを通り越して若干暴動である。

「シャルロットあんた抜け駆けしたの!!」

「あぁぁ!そう言えば二人ともしばらく同じ部屋だったし・・・・」

「そ、そんなぁ~」

皆口々にシャルロットを責め立てる。

これには流石のシャルロットもあわてていた。

何せ自分の失言からの暴動だ。

気持ちは分からなくもないけど・・・。

「あ、その・・キスって言うか・・そのうぅ・・なんて言ったらいいのかな」

「む、シャルロット。言い淀むほど凄いキスだったのか?」

その上で更にラウラが火をそそぐ。

今気が付いたけどこの子って戦闘時は恐ろしいけど、普段はこんなにも空気が読めない困ったちゃんだったんだね・・・。

こりゃ一夏は大変だ・・・。

「お前今、他人事みたいに言わなかったか・・・・ってこら、箒引っ張るな!」

「えぇい、黙れ!! 大体なぜ私が最初ではないのだ!!」

「色々意味がおかしい事に気づけ!!」

「離さんか!先に誰が何をしていようとこの男は私の嫁だッ!」あぁ・・・平和って良いね。

今の状況はこんな感じだ。

僕の右側で、シャルロットに詰め寄る女子たち。

そして僕のすぐ目の前で箒、ラウラの主要メンバーを筆頭に一夏を残りの女子たちが取り囲む。

そしてその中で唯一、僕とセシリーがいる所だけぽっかり平和な空間が開いている。

ほんと・・平和って良いなぁ。

「悪いが、その平和はもう終わりそうだ」

へ?

刹那、僕の頭は出席簿の餌食となった。

「朝から元気なのは良いが、クラス全体で何を騒いでいる!とっと席につけSHRを始めるぞ」

織斑先生の声を聞くや、さっきまでの喧騒がうそのように静まり返る。

そしてものの数秒で皆が席についた。

それを確認して何事も無かったかのようにSHRを始めようとする織斑先生。

「ハイ、質問があります」

「なんだ、サウスバード」

「どうして僕は叩かれたんでしょうか?」

「・・・・・分からないのか?」

「・・・・・すいませんでした」

あー下手な質問はするもんじゃない。

 

 

「以上だ。それでは今日もしっかりとな」

今日も特にこれと言った連絡はなし・・。

まぁ、臨海学校について二、三あったけど、そんなに覚えておくような事柄でもなかった。

荷物を手早くまとめると教壇をおりていく。

だがその織斑先生を女子が呼びとめた。

「あの、山田先生は今日どうされたんですか?」

「ん、あぁ。山田先生は臨海学校の下見で現地へ飛んでいる。

なに心配するな、今日一日山田先生の仕事は私が担当する。

自習だと思って喜んだやつは・・・覚悟しておけ」

一瞬喜びかけた女子のかをがみるみるしぼんでいく。

・・・にしても臨海学校か。

ってことは、やっぱり海があるんだよね。

・・・あんまり海には良い思い出が無いけど。

まぁ、ここから海を見ても大丈夫だし。

海に入らなかったら、大丈夫だよね。

こうして、今日も一日平凡で変わり映えのない一組の日常が始まった。

 

 

 

・・・・始まらなかった。

昼休み。

一組に飛んできた鈴が言った一言がちょっとした問題を起こす。

鈴は僕たち主要なメンバーを集めると声をひそめる。

「ここだけの話なんだけどさ、今朝うちのクラスに転校生が来たんだ」

「どんな方ですの?やっぱり代表候補生でしょうか?」

「いやさ、代表候補生うんぬんよりも・・・男子なのよ」

男子?

はぁ~それでよく今まで騒ぎにならなかったものだ。

・・・流石に慣れたのかな。

だが、その疑問はすぐに晴れた。

鈴が聞かなくても答えてくれたのだ。

「ま、うちのクラス全員で口裏合わせたしね・・・。

一夏やアルディの時みたいになるのはウチの先生も恐れたみたい」

・・・そりゃそうだよね・・・あ、でも。

「もうばれてるんじゃないの?」

「・・・昼休みは、どうしようもないじゃない」

あぁそこら辺は、もう割り切ってるんだね。

だがそうは言っても、男子は男子。

その事について、箒が腕を組んだ。

「しかし、男子か・・。女にしか扱えないISを扱える男子が三人も・・・」

「まぁ特異なケースと言うのは、あながち少なくないのかもしれんな」

「でも、ねぇ」

確かにラウラの言うとおり、ひょっとしたら世界にはもっと居るんじゃないんだろうか。

って言うかISもなんか、そこらへん適当だなぁ・・・。

「でね、問題はここからなのよ」

騒ぎにならなかっただけで、意外と男子の転校って言うのは重大な問題だと思うんだけど。それをシャルロットも感じたようで、鈴に尋ねる。

「まだ何かあるの?」

「あいつの使ってたISが、あたしたちを襲撃したのにそっくりなのよ・・・」

「「「「え!?」」」」

一夏と僕、そして箒とセシリーの声が重なる。

一方シャルロットとラウラは、あの時は居なかったから、

何について話しているのかよく分かっていないようだった。

「ねぇ一夏、何の話なの?」

「あぁ、鈴が転校してきた時にな、ちょっとした事件があって・・・その話なんだけど」

「まぁ詳しい事は大方、かん口令がしかれているのであろう。私たちも詳しくは聞くまいが・・」

ラウラの意見にシャルロットも賛成のようで、それ以上一夏に聞こうとしなかった。

・・・でも。

どういう事だ?

仮に襲撃者だったら・・・・わざわざ自らこの学園に入ってくる事なんて。

「ねぇ、鈴。本当にそっくりなの?」

「えぇ、まぁ色は真っ白だったけどね」

「それだと私たちが見たものと、違うな」

「ラウラ。お前ドイツ軍に居たんだろ? ISの塗装とかって簡単に塗り替えられるもんなのか?」

軍ではよく、パーソナルカラーなどで隊長機を塗り分けたりするし、

作戦によって頻繁にカラーリングを変えることもしばしばだ。

ラウラは軍人。その辺の事には詳しいはずだ。

「ふむ、そうだな。まぁ難しくは無いぞ。極端な話、

作戦行動中に手持ちの油性ペンキやスプレーで塗装する事もあるぐらいだからな。

以前も、僚機をアグレッサーカラーにして偵察任務をこなした事がある」

なるほど。

体験者は語るじゃないけど、流石は現役軍人・・・。

具体例まで挙げて実に分かりやすい説明だよ。

ふむ・・・。

「鈴、彼に会えるかな?」

「会えるけど・・会ってどうするの?」

「確かめたい事があるんだ」

鈴は一瞬怪訝そうな顔をするが、何も言わずに居場所を教えてくれた。

ありがとう、鈴。

さて・・・それじゃ噂の彼に会いに行くとしよう。

 

僕は二組のドアの影からひょっこり顔を出して、転校生君を見る。

その転校生は、黒髪に青色の目を持つ少年で恐らく日本人だろうか。

噂の彼は、ごく普通に二組でISの教科書に目を通していた。

そう、ごく普通に。

彼だけ。

多分彼自身意識しないようにはしてるんだろうか。

いくらなんでも、ねぇ・・・。

だってさ。

僕は辺りを見渡す。

そこはもう黒山の人だかりだった。

もちろん女子で、その目的は噂の彼を一目見ようとである。

僕は再び視線を彼に戻す。

・・・ふむ。

まぁ、遠巻きに見てても仕方がない。

僕はスッとドアの陰から立ち上がると、噂の彼のもとへ。

少し・・・いやかなり目立ってしまうがしょうがないね。

「どうも」

気さくに声をかける。

すると相手も若干ぎこちなく、それなりに気さくに応じてくれた。

「ええと、こんにちは」

「あぁ、そんなに固くならないで。とりあえず自己紹介をしよう」

僕は開いていた、椅子を引いて彼の向かいにこしかける。

「僕は、アルディ・サウスバード。君と同じ男のIS操縦者ね」

「はじめまして、アルディ。僕は一条 聡也。よろしくお願いしますね」

「聡也か。良い名前だね」

僕は自己紹介を済ませると、聡也を一組へ呼ぶ。

すると今度はクラス前の軍団が一組へ移り、元々一組にいた女子たちも急な転校生の登場に湧きかえる。

「あれが、転校生!?」

「え、なに!? 男の子だったの?」

「だからみんな見に行ってたんじゃん。気づいてなかったの!?」

一気にざわつく教室の女子たちを、聡也は不思議そうに見つめる。

「皆、何をしてるんですかね?」

「・・・あれ?気が付いていたんじゃないの?」

「そう言えば、廊下にも人がたくさん・・・」

なんだろう、同じ臭いがする。

親近感を覚えると言うか。

「あなたほど、鈍感では無いと思いますが・・・」

唐突ににセシリーの声がする。

あれぇ、僕口に出したかな?

「だから、前にも申したでしょう・・・わかりやすいと」

どうやら、ちょっと本気でポーカーフェイスを学びに行ったほうが良い気がしてきた。

・・・通信教育でも出来るのかな。

「で、そいつが二組の転校生か」

僕がそんな、ばかばかしい事を考えていると転校生に興味を持ったラウラが口を開く。

ラウラってさ、刺々しさは抜けたけどそれでも言葉遣いが・・・。

もう少しフレンドリーにした方が・・。

「はい、二組の一条 聡也です、その・・・よろしくお願いします」

「あぁ、ラウラ・ボーデヴィッヒだ。そしてコイツは織斑 一夏。私の嫁だ、覚えておけ」

サラッと結構凄い事をのたまうラウラに箒たちが噛みつく。

「また、お前は! 別にそれは必要ないだろう!! それに一夏はお前の嫁では無いッ」

「そーよ、あんたねちょっと美味しい思いしたからってつけ上がらないでよね! 一夏は私のなんだから!」

「ちょ、ちょっと鈴!? 勝手に私物化しないで!」

「・・・どうでもいいが俺は・・・その嫁なのか?」

一夏の疑問は最もだろう。

普通なら婿だね。

アメリカ人の僕でもわかる簡単な日本語な気がするんだけど。

また騒ぎを始める彼らを余所に、今度はセシリーが自己紹介。

「私は、セシリア・オルコット。イギリスの代表候補生ですわ。どうぞよろしく」

「ラウラに・・・セシリアですね。で・・・彼女たちは・・・」

指さし確認で名前を繰り返す聡也。

だがまだまだ収まる気配を見せない、騒動に聡也は少し戸惑ってしまう。

そこで僕が残りの四人に代わって名前を挙げていく。

「えぇと、まず彼女が篠ノ之 箒」

「よろしく頼む・・・・あぁ、だから何度言えばっ」

「で、その横が 凰 鈴音」

「って、あたしは知ってんでしょうが!!・・・だからさぁ一夏はあたしの幼馴染でぇ!!」

「そして、そのブロンド髪が、シャルロット・デュノア」

「あはは、よろしくね。・・・・んもう、いい加減にしてってば!」

そして最後に、なぜか騒動の原因の一つであるにも関わらず蚊帳の外状態の彼・・・。

ほんと、気苦労が絶えないねぇ。

「んでもって、彼が僕たちと同じISを使える男子、織斑 一夏」

「よろしくな、聡也」

一夏は、喧騒どこ吹く風で聡也に手を差し出す。

そして聡也もその手をしっかり握り返した。

「あなたの事はよく知ってますよ。ニュースで見ました」

「あー・・やっぱりか。大体のやつに言われるんだ」

世界で初めてISを動かせた男子、織斑一夏。

それにあの織斑先生の弟って言う事もあって、結構大々的に報じられたらしい。

何せアメリカでもやってたぐらいだしね。日本人の彼が知らないわけはないだろう。

さて・・・。

とりあえず全員の自己紹介が済んだところで。

「ところでさ、君今日放課後は開いてるかい?」

「え? 放課後、うん大丈夫ですよ」

「なら放課後さ、アリーナに行かないかい?」

「アリーナですか、良いですけど。何かあるんですか?」

そこへ一夏が、説明に入る。

「実はさ、今放課後、みんなで合同練習してるんだよ。

アルディはちょっとISが今は使えないんだけどな」

そう言えば・・・・僕のIS一度見てもらわないとなぁ・・・。

早くなんとかしないと、実戦経験もロクに詰めやしない。

・・・っとと、今はそんなこと言ってる場合じゃなかった。

「ま、確かに僕は見学だけどさ。ほらセシリーとか代表候補生だしラウラに至っては軍人。

学べることは多いと思うよ?」

「そうですわね、まぁ私の理路整然とした完璧な説明があれば、どんな操縦者も一瞬で代表候補ですわ」

凄い自信だけど、正直いって僕はすぐに理解できなかったけど・・・。

そんなセシリーの自信に押されたかどうか分からないが、聡也は少し考えてやがて申し出をを受け入れた。

「・・・まぁ、確かにそうですね。良いですよ、じゃぁ放課後楽しみにしてます」

聡也はチラッと時計に目をやると、それだけを言い残して自分のクラスへと戻っていく。

ありゃりゃ・・・もうこんな時間か。

さて次の授業の用意をしないとな。

僕はまだまだ終わりそうにない、四人を尻目に次の授業の用意を鞄から取り出す。

あ~あ・・知らないぞ~。

次の授業は織斑先生なのになぁ~。

そして案の定、織斑先生に一発づつ出席簿アタックを貰った四人。

だから、言ったのに・・・・。

いや、言ってないか。

ちなみにだが、放課後その四人から僕は理不尽なげんこつを一発づつ貰う羽目になった。

言ってくれればってねぇ・・・。

理不尽すぎでしょ。

 

 

さてさて放課後。

僕たちは、アリーナに来ていた。

既に皆ISスーツに身を包んでいる。

僕はISを使えないから、制服のままだけど。

「さて、今日も始めるか」

一夏の掛け声に、ピクっと四人が反応する。

「そうだな、よし一夏今日も軽く打ち合いから始めよう」

「そうね、早速中近の総合機動を始めるわよ」

「一夏、今日はこれを撃ってみようか」

「良い心がけだ。お前にはどうも高度な機動戦術が足りていないようだからな。

わたしがみっちり教えてやろう」

一度に四人が全く別々のメニューを提示する。

そしてその誰もが、〝当然自分とやるよね〟という無言のメッセージが感じとれるから断りにくい。

差し出される四通りのメニューに一夏が恐る恐る、聞き返す。

「ちなみに・・・・誰か一人選んだら怒る・・・よな?」

「「「「当然!」」」」

「どうしろってんだよ!!」

あはは、流石に同情するよ一夏。

ま、向こうは一夏に任せてこっちはこっちで始めちゃおう。

「さて、聡也。こっちはこっちで始めようか」

「はい。それで・・・何をしましょうか?」

「そうですわね、まずあなたのレベルを見たいですわ」

「レベルですか・・・はぁ、まぁ良いですけど」

セシリーいわく、教える側としても現状でどのぐらいのレベルにあるのか

知っておくことは重要なことなのだそうだ。

それを知らない事には、どうやって何を教えればいいのかさえ組めないらしい。

既に鈴からの情報で自分のISを持っているという事を知っていた僕たちは、

セシリーが先に〝ブルー・ティアーズ〟を展開して聡也にもISの展開を促す。

「さ、まいりましょう」

「分かりました、少し待ってくださいね」

聡也は、鉄製の白いカードにキーシリンダーが付いたものを取りだす。

どうやらあれがISの待機状態らしい。

そのシリンダーに聡也がキーを差し込む。

するとキーが霧散して、それと同時に光に包まれ真っ白いISがすがたを現した。

・・・・・確かに。

確かにそれはあの時見た黒いISに酷似しているデザインだ。

工業的で角ばったシルエットに、バックパックには四門の砲。

そして顔にはバイザーが備わっている。

だが、色は白い。

黒じゃない。

さっきまで言い争っていた一夏達も、そのISに釘付けになっていた。

聡也はゆっくりとセシリーの高さまで浮上する。

「さて、準備は良いですよ、いつもどうぞ!」

聡也はバックパックから二門の砲を選びそれを手に取り構える。

「・・・・では、行きますわよ」

こうして、セシリーと聡也の模擬戦がスタートした。

 

 

◇◆◇◆◇◆◇◆◇◆◇◆◇◆◇◆◇◆◇◆◇◆◇◆

 

 

あのIS・・・。

どうやら色は違いますが、基本的な装備はあの黒いISとほぼ同じ様ですわね。

セシリアは一人心の夏でつぶやきながら、こちらへ砲を構える聡也を見やる。

さっき〝ブルー・ティアーズ〟のライブラリを参照したがあのISに関する情報は登録されていなかった。

原則この学園には新技術の情報開示義務は無いとはいえ、

IS本体のデータまで無いと言うのは少し疑問だった。

アルディの〝ストライク・バーディ〟も見たすぐ後に検索をかけたから、

まだ識別番号が有効になっておらずデータを見ることはできなかった。

しかしその後再び検索をかけたらそのデータはしっかりと登録されていた。

つまり、ISを起動してそれが有効になった時点で各関係部署や各ISにそのデータが送られるはずなのだ。

だがあの白いISだけはどうしてかそれが出来ない。

とにかく・・・妙なISですが・・・。

今は頭を切り替えましょう。

セシリアは一つ息を吐くとビットを展開。

更にそこへ〝スターライトMKⅢ〟の精密射撃を加える。

それを聡也は、スラスター角を調整しながら巧みに避けていく。

この前も確かこのような感じで避けられましたわね。

ふとセシリアの頭にあの黒いISの機動がよみがえる。

確かに聡也の機動はそれに類似してはいるが、それでもどこかが違っていた。

この違和感は・・・何でしょうか。

セシリアは頭の片隅で違和感を覚えながら、距離を取りつつ攻撃を続けた。

 

 

◇◆◇◆◇◆◇◆◇◆◇◆◇◆◇◆◇◆◇◆◇◆◇◆

 

 

「始まったわね」

「あぁ・・・・」

「機動自体は何となく似ている所もあるが、変な違和感があるな…」

地上から見守る僕達は独り言のように、つぶやいていた。

聡也の動きは、確かにあの黒いISににている。だが箒の言うように何か違和感を感じてしまう。

「ふむ・・・あれが襲撃したISに酷似した機体か・・・・私には別段おかしな所は見受けられんが」

「僕もだよ。やっぱり元々の黒いISを見てないからかな?」

そしてどうやらシャルロットとラウラには、特に違和感なく見えているらしい。

・・・・・とするならこの違和感はあの時、黒いISを見た人間にしか分からないようなことなのか。

僕は再び聡也を見上げる。

聡也の戦い方は距離の素早い切り替えと上下機動を組合せた耐狙撃機動ベース。

そこに自分の砲撃を組合せた比較的変則的なスタイルだった。

そしてその機動になってから、セシリーの手数が目に見えて減少する。

セシリーは紛いなりにも代表候補生、半端な機動や技術は通用しない。

つまりそのセシリーが攻撃の手数を減らしてまで狙わねばならないほどに、

聡也の実力は高いということになる。

さすがに実際戦っていないから正確な実力はわからないがそれでも、あの黒いISに肉薄するほどの実力に加えて、似たようなIS、似たような戦術・・・・。

細かく見れば疑うべき余地はいくらでもある。

「ねぇ一夏。君はどう思う?」

「・・・確かに、変な違和感はあるんだけど。でもさよく考えてみれば俺たちを襲撃した犯人が本当にあいつだったとして、のこのこと転校なんてしてくるか?」

「それはねぇ・・・・引っかかってるんだ僕も・・・」

そう。

そんなリスキーなことを冒してまで、何かを手に入れたいのなら別だが

これまで少し会話を交わした感じではそんな感じは見受けられないし。

・・・考えすぎなんだろうか。

何度も言うが、似ているだけで全く同じではない。

「まぁ、仮にそうだったらそんときゃそん時だろ? はなから疑ってかかるのはもうやめないか?」

「一夏・・・最近あんたアルディ化してきたわね」

失礼な鈴。

僕はこんなに神経図太くないよ。

「そうか? 俺は別に金髪じゃないぞ」

「・・・・そういうことじゃないよ、一夏」

さすがのシャルロットも呆れて苦笑いしている。

その奥では、箒とラウラも腕を組んでため息を漏らしていた。

ただ一人、その意味を分かっていない一夏だけがきょとんとした顔でキョロキョロと周囲の顔を見まわしていた。

 

 

◇◆◇◆◇◆◇◆◇◆◇◆◇◆◇◆◇◆◇◆◇◆◇◆

 

 

えぇと・・・・。

聡也は、セシリアと撃ちあいながら少し困惑していた。

なぜなら、下の皆は気が付いていないようだがアリーナに人が集まり始めていたからだ。

なんで、こんなに人が集まってくるんだろうか。

その理由がいまいちピンとこない聡也。

と、一瞬気を逸らした聡也をセシリアのビットが襲う。

「っとと!」

聡也はそれを、宙返りで避けると手持ちの荷電粒子砲をお返しとばかりに撃ち返す。

セシリアもそれは予期していた行動のようで、難なく避けた。

「私相手に、余所見とは。随分と余裕なんですのね!!」

セシリアは一度体勢を立て直して、再びビットとレーザーライフルでこちらに迫る。

ダメだダメだ!今は集中しないと。

聡也は、頭を切り替え一気にそのビットとレーザーの雨に飛び込む。

「なっ!? あなた、正気ですの」

「まぁ、もう大体分かりましたから」

その言葉。聡也に悪気は無い。

だが聡也には本当に分かったのだ。

セシリアの戦術が。

攻撃パターンが。

おおよその実力が。

それらが分かってからの聡也は速かった。

聡也はセシリアに肉薄すると、至近距離から左右の荷電粒子砲を二発。

そしてそれで吹き飛んだセシリアを、真上から蹴り飛ばす。

「っく、この速さッ!!」

「さて、仕上げと行きましょう」

聡也は一度両手に持っていた荷電粒子砲を背部へ戻す。

そして同時に四門の砲のロックが解除され、聡也はそのまま勢いよく宙を回る。

ロックが外れ自由になった四門の方がくるくると宙を舞う。

「な、何を」

セシリアはようやく体勢を立て直そうかという所で、聡也の行動が目に入る。

セシリアが見たものは、くるくると回りながら綺麗に横一列に並ぶ四門の砲だった。

そして次の瞬間、セシリアへほぼ同時に四発の砲撃が直撃する。

「あぁっ!!」

激しい衝撃を受けながら、アリーナへ叩きつけられるセシリア。

この瞬間、聡也の勝利が決定した。

 

 

◇◆◇◆◇◆◇◆◇◆◇◆◇◆◇◆◇◆◇◆◇◆◇◆

 

 

・・・ま、負けちゃった。

僕は信じられない物を見ている気分だった。

〝ブルー・ティアーズ〟はセシリーが地面にたたきつけられてからすぐに霧散する。

セシリーは、〝ブルー・ティアーズ〟が衝撃の大半を受け止めてくれたようで大きな怪我もなく、

すぐに立ち上がった。

僕たちは、セシリーのもとへ急ぐ。

「セシリー大丈夫!?」

「え、えぇ・・・少し腕を強く打ちましたが、問題ありませんわ」

「そう、良かった」

僕は、怪我が無いようだという憶測が、怪我が無いと言う確証に変わった事に安堵の表情を浮かべる。

そこへ、ISを待機状態に戻して不安そうな顔で聡也もやってきた。

「あの・・・・大丈夫でしたか・・?」

「えぇ、何ともありません。にしてもまさか私が敗れるとは・・・不覚でしたわ」

「油断するからよ、あんたって大体相手を甘く見て負けるタイプよね」

「それを言うなら鈴さんだって、一夏さんと初めてのクラス代表戦では危なかったようですけど?」

「ばっ、馬鹿言ってんじゃないわよ・・・あれは・・・そう、あそこから始まるあたしのターンだったのよ!」

セシリーの嫌みたっぷりな口調に、顔を真っ赤にして怒る鈴。

だが、他のメンバーはそんな彼女たちよりも聡也のISが気になるようだった。

 

「でも、すげぇよ聡也。セシリアに勝っちまうんだからな」

「いえ……そんな事は」

一夏の若干興奮気味な声に対して聡也は謙虚に振る舞う。

だがそこへ更にラウラが賞賛した。

「謙遜することはない。練習といえども、勝ちは勝ちだ。胸を張ればいい。

そしてセシリアはもっと精進すればいい。ただそれだけの事だろう」

ラウラは鈴と言い争うセシリーを横目で見て、ため息混じりに言った。

それを見て苦笑する聡也。次に口を開いたのは箒だった。

「そう言えばお前のアレは、どこ製のISなんだ?

どうもどこの国のISにも似つかんフォルムだが」

「専用機だからじゃないの?」

「だがシャルロット。お前のリヴァイヴのカスタム機だって原型を止めていないだろう?

そう考えるとコレもどこかの量産ISのカスタム機ではないのか?」

箒の疑問は当然だった。 黒いISもそうだが、明らかにISと言うには

メカメカしく工業製品のような無骨さがある。

全てのISがそうだとは言わないが、異質な外観であるのは事実だった。

聡也はあたかも、そんな質問を予期していたかのように何の言葉の詰まり無く饒舌に答えた。

 

「僕のは“ホワイトアウル”」

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

「世界でたった“二機”の、ISではないISです」




停滞していたので、移行作業を再開しますね。


サーバーも安定した用ですし…
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