IS インフィニット・ストラトス~偽りの翼~ 作:のろいうさぎ
えぇと・・・・1029、1029と・・・・あったぞ。
僕は渡された部屋割表と照らし合わせ、番号と同じ扉をあける。
一夏から聞いた話では、2人部屋ってことらしいけど。
そうなるとやっぱり僕は男同士一夏と相部屋なのだろう。
そう思い、扉を開くと・・・。
・・・・・狭っ!
どこからどう見てもコレ一人部屋じゃないか。
大体大きさは四畳半。そこに机とベッド、小型の冷蔵庫が押し込まれており、
実質動ける範囲はもっと狭い。一応シャワールームはあるようだね。
同室者を気にしなくていい利点はあるにしても、まさかの一人部屋とは。
・・・・・でもこれはこれで気を使わなくてやっぱりいいか。
僕は、自室の片隅に旅行鞄を置くと、中からノートPCなどを取り出し机の上に置く。
電源を入れ確かめたが、どうやらネット環境は整っているようだ。
よかったよかった。
ひとまず、それを確かめたかっただけなので電源は落としておく。
シャットダウンを確認すると僕はドサッとベッドへ仰向けに倒れこんだ。
IS学園か。
何にしても入学初日はあっという間に終わった。
慣れていないと言うのもやっぱりあったんだろう。
それに今日、なんくせ付けられたあのイギリス代表候補生。
セシリア・オルコット。
姉さんを知っているみたいだったけど。
っていうか、僕自身彼女をどこかで見た気がするのは気のせいだろうか・・・・。
わかんないなぁ・・・・思い出せない。
ただ、あの顔どこかで見たような見てないような・・・。
ま、いいか。
人生は楽に行かなきゃ楽しくない。
楽しいと言えば、今度あのセシリアと一夏がISで決闘をするらしい。
・・・・・・これは面白そうだ。
やっぱり人生は楽しまないと損だな。
そう、楽しまないと・・・・・そ・・・ん。
流石に疲れたようで、急激な睡魔に襲われる。
僕はその睡魔にあらがうことなく身をゆだね、深いまどろみへ落ちて行った。
「そしてこのざまか、転校二日目にして早くも遅刻とはな、やってくれる」
「予鈴とほとんど、ギリギリで滑りこんだんですけどっ!?」
ついつい返してしまうこの口を、今はとても恨みたい。
そのおかげで、僕は主席簿で頭を殴られる羽目になったのだから。
「今後気をつけろ、良いな?今度やってみろ、反省文を書かせるからな」
「・・・・気をつけます」
僕は叩かれた頭をさすりながら、自分の席へ着いた。
一夏の何とも言えない、目が凄く痛かった。
「さて、諸君それではSHRは終わりだ、山田先生それでは授業の方を」
「はい、それではみなさん、前回の福州から始めましょうか」
山田先生がそう言うと、皆が一斉に教科書を開く。
僕もゆっくりと、教科書を開く。
教科書の内容をスキャミングしていくと、一つの項目に目がとまる。
篠ノ之 束・・・・。
会ったことも見たこともないが、ISの開発者として名は広く知られている人物だ。
世の中には凄い天才もいたものだ。
たった一人でISのコアを開発してしまったのだから。
そういえば、篠ノ之っていう名字このクラスにいたような・・・・。
「山田先生、質問です」
唐突に後ろの方の席から声が上がる。
「篠ノ之さんって、もしかして・・・」
その問いに答えたのは山田先生ではなく織斑先生だった。
「そうだ、篠ノ之は束の妹だ」
その返答に質問をした女子を含めた数名が、驚きの声を上げた。
「凄い凄い!このクラスに織斑君以外にも凄い人がお姉さんの人がいたよ!」
「そう言えば、篠ノ之博士っていま行方不明なんだよね?」
「篠ノ之さんどこにいるのか知ってるんじゃないの?」
次々に浴びせられる、予想だにしない質問の集中砲火。
確か彼女を一夏は箒と呼んでいた。
その集中砲火に対して箒は、鋭い声で一閃した。
「あの人と、私は・・・なんの関係もない、だから教えられる事など何もない!」
はっきり、そう言いきられてしまっては、流石の女子も黙るしかない。
というよりも、発せられた言葉の鋭さに、言い返せなくなったというのが正しいのかな。
まぁ・・・・なんていうか、気の強そうな子だ。
そんな感じで、授業は進んでいった。
休み時間。
一夏と箒が、さっきの件で話をしていた。
「箒、さっきの言い方は流石に無いぞ?」
「別にかまわないだろう、私とあの人は本当に関係が無い。あんなことを聞かれるだけいい迷惑だ」
「でも姉じゃないか」
「だから、関係ないと言っている!」
また声を張り上げてる。思うに、いや確実に、箒は篠ノ之 束を嫌っているんだろう。
理由は分からないが。
「やぁ、相変わらず大きい声だ」
気さくな声で話しかけたが、内容は箒の気分を害するには十分だったらしい。
キッと睨む目は、それだけで小動物なら死んでしまいそうだ。
「まぁまぁ、悪気あって言ってるんだから」
「余計にたちが悪いだろう、お前・・・・アルディといったな馬鹿にしているのか!」
「いやいや、こういう性格なものでぇッ!!!」
見るものを魅了する動き、全く無駄のない動きで、教科書が刀のごとく振り下ろされる。
僕はなんとかそれを寸でで避けることに成功したが、あの速度でしかも背表紙。
加えてISの教科書は僕の街の電話帳のごとく分厚い。出席簿アタックよりも威力は高そうだ。
「あ、危ないなぁ!」
「馬鹿もの、避けるやつがあるか!外れたじゃないか!」
「アメリカ人でも分かる、言葉のおかしさに気付こうね・・・!」
言葉のキャッチボールという言い方がある。
これはまぁ、その名の通り言葉とは投げかけて相手に受け取ってもらって、またそれを返す、
事を繰り返すことから名づけられたものだが、今の会話はどっちかって言うと言葉のドッヂボールだ。
しかもアウトになっても外野から生還できないと言う、鬼ルール。
すなわち・・・・死。
これで死んだら死因は教科書とかなんだろうなぁ・・・・体裁を気にする人間ではないが、
それは流石に格好が悪すぎる・・・・。
「まぁまぁ、箒落ち着けって。アルディもなんだかんだ言ってお前の事を
気に掛けてくれてるんだからさ」
「むむぅ・・・・」
「まぁ、そう言う事に」
「ふん!」
腕を組みとドカッと腰を下ろす箒。
そう言えば気になると言えば、この二人の関係だ。
随分中がよさそうだけど。
「君たち、付き合ってるの?」
何気なく聞いてみた、これには悪気はない。サラッと。
本当にサラッと聞いただけだ。だがその言葉に、箒の顔は真っ赤に染まり、
周囲の女子は撒き餌に群がる魚のごとく集まってきた。
「えええええ!!やっぱり織斑君と、篠ノ之さんってそういう関係!?」
「やっぱり、怪しいと思ってたんだよねぇ・・・入学初日も一緒にどっか行っちゃったし」
「それに、篠ノ之さんも織斑君も、互いに親しみこめて下の名前で呼び合ってるし・・・」
「これは決まりじゃないの・・・・あたし新聞部の先輩に連絡してくる!」
やいのやいの騒ぎ立てる女子。
・・・・これは予想できなかった・・・・本当にごめん。
箒も、さっき見たいに怒って集まった女子をを散らすのかと思ったけど、
見るからに動揺を隠せない。
「べ、別に私は、そういう関係では・・・その」
「そうだぞ、お前ら俺と箒はただの幼馴染で、そういう関係じゃいからな」
「・・・・むむぅ・・ッ!!」
動揺から一変少し不機嫌な顔でそっぽを向く箒。
だが一夏がそれに気づくことはなく、必死に周囲をなだめ、
騒動を鎮静化させていく。
うぅん・・・・・なるほど。
片思いってやつなのかな。
僕も語るほど恋愛には詳しくないし、そもそも誰かを好きになったことが無いからよくわからないが
さっきの表情の変化からそれぐらいは素人の僕でも分かった。
というより普通の感性もってれば大体気が付くと思うのだが・・・。
えぇと・・・・なんていったかな。そういう人の事を。
と・・・とう・・・・。
「トウボウヘン?」
「唐変木だ、馬鹿もの」
そうだそうだ、唐変木だ。
って今の誰?
僕は声の方向を振り返る。
そこには、腕を組んで黒いスーツをビシッと着こなした織斑先生が立っていた。
「あ、どうも」
「早く席につけ」
僕は、出席簿がピクリと動くのを確認すると、身の危険を感じ足早に自分の席へ戻るのだった。
・・・・・日本では本で叩くのが習慣・・・いや流行りなのかな。
結局あの時叩かれなくても、授業で当てられて答えられずで1発貰った僕は、まだ痛みの残る頭を
気にしながらSHRで壇上で話す織斑先生を見ている。
「以上が、諸君への連絡事項と・・・あぁそうだ。織斑とオルコットの試合の日程が決まった。
生でISの戦闘を見られるいい機会だ。これから諸君も同様の機会は増えるだろう。
率先して見学するように」
「あの、織斑先生。俺の・・・そのISは・・・」
「前も言っただろう、専用機だけに時間がかかると安心しろ、試合までには間に合わせるさ」
その時、教室の後ろの席から嘲笑を含んだ声が飛んだ。
「あら、間に合わない方がよろしいのではなくて?みじめな姿を見られずに済むのですからラッキーではありません事?」
「負けるとはまだ、決まってないだろ」
「決まってますわよ。何せ私は代表候補生、セシリア・オルコットなのですから」
スッと立ち上がると腰に手を当てポーズを決める。
それが様になっているだけに、そして言っていることも間違ってはいないだけに、一夏も反論に窮してしまう。
「静かにしろオルコット、候補生なだけで偉そうな口を叩くな。あとお前も安い挑発に乗るな馬鹿ものが」
織斑先生にこう言われては、流石にセシリアも一夏も黙り込むしかない。
世界一の名は伊達じゃないってことだね。
「それでは以上だ。つまらんもめごとは起こすなよ」
言うが早いか織斑先生はさっさと壇上を降り教室を後にする。
それを追いかけるように、山田先生も続いていった。
放課後。
一夏と箒が、特訓をするというのでついていくことに。
ここは剣道場か。
剣道はよくわからないけど、手合わせ10分足らずで一夏が一本負けしたのだけは分かった。
「弱すぎる!一夏、お前いったいこれまで何をしていたんだ!!」
「じゅ、受験勉強!」
勤勉勤勉。勉強嫌いな僕からすれば関心するね。ただ、その答えは箒には納得できるものでは無かったらしい。
「受験勉強なら私もしていたぞ!」
「勉強時間の差じゃないか?」
「ふざけるな!」
バシーンっと竹刀が床を叩く音が剣道場に響く。
「えぇい、中学時代は何をしていたんだ!!」
「帰宅部だ。これでもエースだったんだぞ!」
それを聞きわなわなと、体を震わせる。
どうやらボルテージが突破したらしいね。
「軟弱者めがッ!!」
勢いよく振り下ろされる竹刀が防具をつけていない状態の一夏に振り下ろされる。
一夏はそれに素早く反応すると、竹刀でそれを受け止めた。
だが体制が悪い。
座っている一夏に対して、箒は上から両手で体重をかけているのだ。
当然いくら腕力で勝る男といえど、片手で体重を乗せた一閃を受けきることは不可能だ。
プルプルと震える腕で踏ん張りつつ一夏が必至の形相で懇願する。
「頼む箒、俺はまだ死にたくないんだ!」
「一度死ねば、強くなって帰ってくるかも知れんぞ!!」
一夏はサ○ヤ人か何かかい?
ちなみにどうでもいいけど、ドラゴンボールはアメリカでも人気の高い先品の一つだ。
「そんな超設定俺にはない!頼む箒今度何かおごるからさ!!」
「・・・・ふんっ!これから放課後三時間必ず空けておけ、私がお前を叩き直してやる!!」
鼻を鳴らし、軽蔑のまなざしで一夏を一瞥すると剣道場を一人後にする箒。
大きく肩でため息をつく一夏に僕は、壁にもたれたままの体制で声をかけた。
「大丈夫かい?」
「そう見えたら、お前の眼一度眼科で見てもらった方が良いぞ?」
「ははッあいにくと目は良い方だよ。まぁ色は分からないけどね」
「ん、どういうことだよ?」
「色盲なのさ。世界が毎日白黒映画なんだよ」
これは本当だ。
何でも数万人に一人という確率らしいが、見事僕はその一人にあたってしまったようだ。
個人差はあるらしいが、僕の場合は色が極端に言えば白と黒しか判別できない。
後はそれ濃淡で大体なに色かを判別するしかないのだ。慣れるまで凄く戸惑ったけどね。
まさに白黒状態。幸いにして視力は良いから日常生活で困ることはあまりない。
「あ、悪い・・・なんか変な事聞いちまって」
「ん?良いよ別に。僕も聞かれなかったし」
気まずそうに頭をかくが、僕は別に気にしていない。
こんなの言わなきゃ誰もわからないし。
そんな事よりもだ。今は彼の特訓の話。
「それはそうと、箒、三時間とか言ってなかった?」
「言ってたなぁ・・・・あいつ有言実行だから、みっちり本当に三時間しごかれるに決まってる」
「昔からああいう性格なのかい彼女は?」
「あぁ、まっすぐで芯の通った良いやつなんだけどな、まっすぐすぎて困るんだ」
融通が利かないってことかな?
「だけど、やっぱり凄いわ。剣道の全国大会で優勝した腕は流石の一言だったよ」
「優勝したんだ・・・・」
それは確かに凄い。
僕は頭の中で、自分が何か一つでも優勝したり表彰されたりしたことが無かったか記憶を探るが、
全くこれっポッチも浮かんでこない。というよりそんな経験無い。
楽観的とかで賞貰えないのかな・・・・。多分断トツなんだけど。
「まぁでも、俺も男。女に負けっぱなしって言うのは納得できないしな」
「フフッ、ま頑張ってよ・・・・そうだまた見学しに来ても良いかな?」
「おう、良いぜいつでも見に来いよ」
気さくに笑いかける一夏を、流し眼で見つつ僕は、寮へと足を向けた。
その後1週間みっちり、本当に三時間、一夏は箒と特訓に打ち込んでいた。
そして代表決定戦の前夜。僕はいつも通り、一夏と箒の特訓を見届けて寮の部屋に帰ってきていた。
・・・・・ふぃ~今日もつかれた。
手慣れた動作で習慣化していたPCを立ち上げる。
さてさて、何か情報は・・・。
僕はメールボックスを開いて、新着メールを確認する。
・・・・うん、今日もメルマガとかばっかりだ。
ツツーとスクロールバーを下げていくと、一通見慣れないアドレスからメールが入ってきていた。
(second place sister@・・・?)
セカンドプライスシスター・・・・?
こんなメルアド知らないけ・・・・あ。
まてよ直訳すると・・・・2番目の・・・姉妹・・・いや姉!
分かった、姉さんだ。
メルアドの差出人が分かったところで、そのメールをさっそく開いてみる。
〝親愛なる弟へ
元気にやっているかしら。あたしはいつもどおり元気にやってるわよ。
そうそう、ナターシャがあなたの事気にかけてたわ、今度連絡でもしてあげて?
連絡先はこのメールに添付しておくから。それはそうと、あなた以前、アメリカでパーソナルデータを取ったこと覚えているかしら。あの時は、ISを動かせるからその研究材料としてって言う理由だったけど、本当は違うの。あれにはちゃんとした意味があるのよ?
この意味わかるかしら。フフッ楽しみにしていなさい。明日か遅くても明後日にはあなたの所に届くはずだから。何かは来てからのお楽しみ♪
まぁそうね、姉さんからの贈り物だと思いなさい、それじゃ頑張って!〟
・・・・イマイチ、わかるかしらと言われても、分かんないとしか。
それに明日か明後日って、何が届くのさ・・・・。
・・・・まぁ良いか。今考えても、何が来るかなんてわからない。
それにだ・・・このメール自体が嘘の可能性だってあるのだ。
はぁ、我ながらややこしい姉さんを持ったなぁ。
そうも思ったがすぐにその考えを否定する。
そうじゃない、僕も似たようなものなんだから。
何にしても明日は一夏とセシリアの決闘の日か。
それだけは変わらない。
セシリアは代表候補生だし、一夏が勝てる見込みはあるのだろうか。
・・・っていうか、一夏ISの事箒から教えてもらってるのかな?
とたん嫌な考えが頭をよぎる。
で、でも流石に、教えてもらってるよね。
僕は嫌な考えを振り払うかのように、布団にくるまった。
「箒・・・・」
「なんだ」
「結局俺達、剣道場で打ち合っただけだったな」
「良いではないか。感覚も戻ってきたのではいか!?」
試合当日。
僕と箒そして一夏は、ピットに居た。
観客席でもよかったんだけど、せっかく特訓を見学したんだしお前も来いよとの一言でピットに案内されたのだ。
だが問題はそこでは無い、先ほどから一夏の質問に、わざとらしい大笑いなどで返答を誤魔化す箒。
そしてそれを見て、頭を抱える一夏。
どうやら、昨日の嫌な考えは当たったらしい。
一夏は、何も箒からは教わっていないようだ。
だってそうだよね。
僕自身も、剣道場で打ち合ってる姿しか見たことなかったし。
「おぃっ、どうしてくれるんだよ!!ISの事全く知らないまま当日迎えちまったじゃないか!!」
「し、知るか!・・・そ、そうだお前が予想以上に弱かったのだ!そのためスケジュールが狂ってだな」
「苦しい言い訳してるんじゃねぇよ!!」
ギャーギャーわめきあう二人と、それを静観する僕。
そこへ、織斑先生の鋭い声が飛ぶ。
「ピットでわめくな、やかましい!織斑!」
「あぁ、は、はい!」
ビシッと姿勢を正して、その声に反応する。
そして続いて山田先生が口を開いた。
「織斑君、お待たせしました!織斑君のISが到着しました!」
一夏のISが到着した。その声に僕を含めた三人の目つきが変わる。
そしてそれと同時に後ろのハッチが開き、一夏の専用機が姿を現した。
白い。
真っ白だ。
姿を現したISは本当に真っ白で、まぶしいぐらいだった。
それを見て一課が声を漏らす。
「これが・・・・俺の・・」
「はい!これが織斑君の専用機。その名も白式です!」
白式ね。名は体を表すと言うが本当だと思う。
その名の通り、こんなにも白い。
「織斑、すぐに準備をしろ。アリーナの使用時間は限られている、ぶっつけ本番でモノにして見せろ」
「いやでも、俺ISの事・・・」
「急いでください織斑君!」
「お前も男だろう、覚悟を決めろ!」
「い、いやあの・・・」
「「「早く!!」」」
「はいっ!!」
三人にせかされて、一夏は準備を始める。
搭乗者がISに乗り込むと、一夏に合わせるように装甲が閉じ膨大なデータがすさまじい速度で処理されていく。
程なくフィッティングの初期段階が終了し、ハイパーセンサーが起動。
敵ISのデータが表示されている。
「ハイパーセンサーの起動は問題ないようだな。気分はどうだ一夏?」
「あぁ・・・・・大丈夫行ける!!」
やっぱり姉弟だねぇ。
一夏を名前で呼ぶ所をはじめてみた。
力強い返答に、一同が安堵の表情でそれを聞き。
箒が一夏に力強く声をかける。
「一夏・・・・勝ってこい!」
「・・・・・あぁ行ってくる!!」
言い残しカタパルトが一夏と白式を勢いよく打ちだした。
さてどうなる事やら。
僕はモニターが見える位置に移動するとモニターを見上げる。
なにやら二、三言葉を交わして先制攻撃を行ったのはセシリアだった。
主な武装は、大型の特殊ライフルだ。
さてどうなるか・・・・と観戦を決め込む僕の首根っこを織斑先生が引っ張る。
「さてちょっと来い。お前に用事がある」
「え!?いや、あの一夏の戦闘を・・・」
「お前に関係あることだからだ。山田先生後を頼む」
そのまま僕を引きずって、織斑先生は別のピットへ僕を連れてきた。
別のピットとはいっても、解放されていないだけで別のアリーナというわけではない。
「今朝がた、空輸でIS学園に一機のISが届けられた」
「はぁ」
「差出人は・・・・これだ」
織斑先生は、伝票らしきものを僕に見せる。そこにあった名前は・・・。
「姉さん」
「そうだ、ローラだ」
そう言えば姉さん昨日のメールで何か送るって言ってたけど・・・・。
ま、まさかIS!?
「フフッローラらしいと言えばらしいな。朝からそれでちょっとした騒ぎになってな」
「すいません」
「まぁそれは良い。サウスバード、お前も感づいているとは思うがこれはどうやらお前のISのようだ」
「はい・・・多分そうでしょうね」
「今すぐフィッティング作業に入れ」
「え?」
「聞こえなかったのか、フィッティングを開始しろといったんだ」
なんで?
今すぐに!?
僕は今日別に戦わないし、保管して別の機会でも・・・・。
「いつまでも搭乗者未登録のまま放置しておくわけにもいかんだろう!!」
「あ、なるほど」
「今からそのISを出す。早く準備して来い。着替えはアリーナの更衣室を使え今はだれもいないからな」
僕は織斑先生から、IS用のユニフォームを渡されと言われるままにアリーナの更衣室へ急いだ。
ISスーツに身を包みピットへ戻ると、そこには大きなISが折り畳まれた状態で鎮座していた。
「あの・・・・大きくないですか?」
先ほどみた一夏の白式と比べてもふた周りぐらい大きい。横に織斑先生がいるからその大きさがより分かりやすかった。
「このでかさも、騒ぎの要因の一つだ、ほら急げ」
僕は先ほど一夏がやったみたいに、ISへ体を預ける。
装甲が閉じ目の前のモニターには、様々な情報が処理され、その詳細が表示されていく。
そして、顔には大きなバイザーが取り付けられる。
「・・・・これは!」
バイザーを通して見た世界は、これまで見たことのないほど鮮やかなものだった。
白黒映画から、一気に現代の3D映画に進化した気分だ。
バイザーのモニターの端には〝Direct color adjustment〟の表示。
直訳すると直接的色彩調整。
どうやらこのバイザーが、視覚に働きかけて欠落部分の色彩を補ってくれているらしい。
なるほど、確かにこれは僕専用のISの様だと今更になって実感する。
初期設定が終了し、ハイパーセンサーが起動する。
不思議な感覚だ360度見えていない所まで、何があるのかはっきりとわかる。
これが・・・・IS。
まだ初期設定が済んでいないため、本来の形は分からない。だがどうやら使用者の登録は済んだようだ。
「どうやら機体の設定は終わったようだな、では待機状態に戻しておけ」
織斑先生の言葉に従い、ISを待機状態に戻す。鮮明だった世界が一瞬にして白黒へ。
・・・もう少し見ていたかったなぁ。
僕は名残惜しいかったが、叩かれることを思えば、白黒でも見えた方が痛くないし良いや。
待機状態の僕のISはどうやら銃弾のネックレスになるらしい。
ライフルの銃弾ぐらいの大きさで、その大きさに似合った重さがある。
こんなの首からぶら下げてたら、この国じゃ大問題なんだろうなぁ・・・。
注意しよ。
そして考えを切り替えると、頭のなかでもう一つの疑問が首をもたげた。
・・・そう言えばこのISの名前なんて言うんだろう。
モニターには表示されなかったけど・・・
「何をしている?戻るぞ。あの馬鹿が心配だ」
「ああぁ、はい」
織斑先生に連れられ、ピットへと戻る。
その最中もずっと、名前やらなんやら色々な事を考えていた。
ピットへ戻ると、あれ?一夏のISの形が違う・・・。
「ファーストシフトだな、あれが本来の白式の形なんだ」
「先ほどから一夏は刀しか使っていないようですが、白式にはあれしか武装が無いのですか?」
箒が織斑先生へ尋ねる。刀しかないっていうのは大変だけど、良いんじゃないの。
一夏って剣道の特訓してたし。
「そうだ、白式にはあの刀・・・雪片しかない」
そしてセシリアのISがモニターへ映る。セシリアのISは見ただけでわかる射撃特化型のIS。
そんなの相手にに刀一本で、戦っていたのか・・・。
「だが、あれ一本あれば十分なのさ・・・・あれには特殊な能力もあるしな」
言っている間にも戦闘は続く。
セシリアのビットを一夏が正確な一振りで破壊していく。そして一瞬のすきをついて肉薄。
「とりあえず、俺は千冬姉の名前を守るさ!」
モニターから聞こえた自信たっぷりな声に、誰もが勝利を確信した。
だが・・・・
『試合終了、勝者 セシリア・オルコット!』
試合終了の声とともに、頭を抱える織斑先生と、ポカンとした一夏をはじめとする面々がそこにいた。
「あそこまで言ったら普通は勝つだろう・・・」
「面目ない」
箒に呆れた声で言われ、情けなく頭を下げる一夏。
「でもさ、何で負けたの?」
僕の疑問は一夏をはじめとする皆の疑問だ。
それに織斑先生が答える。
「バリア無効化攻撃を使ったからだ。雪片の特殊能力がそれだ」
「でも一気に俺のシールドエネルギーがゼロになったんだけど」
「その特殊能力をお前は、何のの代価無しに使えると思っているのか?お気楽な奴め」
「なるほど、つまりその能力を行使するためには、自分のエネルギーを攻撃に転化する必要があると言う事ですね?」
箒が得心したと言うようにうなずき、織斑先生もそれを肯定した。
中々厄介な武器だな。もろ刃の剣じゃないかそれ・・・。
出しどころを間違えなければ、最強なんだろうけど。
「さて・・・馬鹿の自爆の所為で思いのほか時間が余ってしまったな」
「馬鹿って・・・というか、織斑先生一つ聞いていいですか?なんでアルディはISスーツにみを包んでいるんです?」
その問いに織斑先生は、チラリと僕を見て、ふむとうなずくと、再び一夏へ向き直った。
「丁度いいな・・・織斑、まだ行けるか?」
「え?体力は大丈夫ですけど」
「よし、すぐにエネルギーを補充しろ。これより予定外だがエキシビジョンマッチを行う!」
「「え?」」
そこに僕と一夏の抜けた声が響いた。
のろのろとですが移転作業を進行中です。
今日は時間も遅いので第二話だけですが順次、移行してまいります。
今更ですが、この偽りという言葉には本編の中でも触れていくのですが結構色々な意味合いを持たせています。
そのあたりも楽しんでいただければ幸いです。