IS インフィニット・ストラトス~偽りの翼~   作:のろいうさぎ

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第3話~射撃の妖精とセシリア~

え?

え!?

なにエキシビジョンマッチって・・・。

 

エキシビジョン:英語表記〝exhibition〟

意味:公式記録に残らない、公開演技や模範試合

 

・・・って言葉の意味を考えても仕方がないじゃないか!!

そうじゃない、そうじゃないよ。

いきなりなんで?

「何をしている、サウスバード。織斑は既にエネルギーの補給に入ったぞ。お前も準備しろ」

ちょっと一夏!なんで素直に従ってるんだい?

思わず一夏に詰め寄ろうとしたが、一夏の顔を見てそれをやめた。

一夏の顔が、〝お前、また殴られたいのか?〟という事を物語っていたからだ。

うぅ・・・。

再度織斑先生を見る。

うわっ、箒の睨みなんて足元にも及びそうにないほどの、蛇睨み。

・・・はぁ。

まだ初期設定しか済んでないのになぁ。

僕は渋々、ISを起動させる。弾丸型のペンダントが光り一瞬で装甲を展開。

一気に視点が高くなり、周囲に本来の色が塗られてゆく。

バイザーのモニターには、いまだに先ほどの段階では処理しきれなかったデータが

次々に処理されていき、装甲やインターフェースのフィッティングが行われていく。

「大きいな・・・」

ぽつりとこぼした箒の声も、ISのハイパーセンサーは拾ってくれる。

「僕も思うよ、一夏の白式に比べても明らかに大きいからね」

「でもそれ、まだファーストシフト前の形だろ?本当の形はどんなだろうな」

確かに一夏の言うとおりまだファーストシフトへ移行していない。

モニターに残り時間が表示されているが、まだ少しかかりそうだ。

そのため背部の大型スラスターも動きが怠慢で、多分今飛べば機動力は皆無だろう。

「準備はできたのか織斑?」

「あ、はい終わりました」

「サウスバードは?」

「動けますけど、まだそこまで激しくは・・・」

「・・・・そうか、織斑先に出ていろ、サウスバードは後どれぐらいかかる?」

僕は再びモニターで確認する。インストールバーの下に予想終了時間が表示されている。

「えぇと・・・あと3分ぐらいです」

「よし、織斑出ていろ、準備している間にこちらも終わるだろう」

「分かりました」

待ってるぞと、言い残し一人ピットから飛び出す一夏。

はぁ、ここまで来たら覚悟を決めよう。

 

 

◇◆◇◆◇◆◇◆◇◆◇◆◇◆◇◆◇◆◇◆◇◆◇◆

 

 

自分が勝ったと言うのにどこか釈然としないセシリアは、スポーツドリンク片手に

汗をタオルでぬぐい、ロッカーのベンチに腰をおろしていた。

この感覚が何なのかはわからない。

いつも勝った後にはこんな感覚は無かった。

あくなき勝利への渇望。

そして今回も、過程はどうあれ自分は勝利を収めた。

でも・・・・その気持ちは沈んでいた。

だがそれは、一夏に対するものでは無かった・

アルディ・サウスバード・・・・。

私と戦っていないあの男。

でも過去に一度私たちは・・・・

・・・・・忘れてしまったのかしら。

でも名前を覚えていてくださいましたし・・・・。

セシリアはかぶりを振って考えを切り上げる。

このままこの考えをつづけたところで、気分が沈んでいくだけでプラスにはならない。

・・・ふぅ、まぁ今はそれよりもシャワーですわ。

浴びてスッキリすればこの気持ちも晴れるでしょう。

そう思い立ち上がった時だった。ロッカールームにまで聞こえるほどの歓声が上がる。

なんですの?

今日の試合はもう終わったはず。

いったい何が・・・・。

気になったセシリアは、自分のピットへ急ぐ。

ここからならそちらの方が近いからだ。

ピットのハッチから、何を騒いでいるのかを確認する。

辺りを見渡すと、そこには織斑一夏のIS〝白式〟がいた。

・・・何をやっていますのしかも一人で?

間違いなく先ほどの歓声は、あの男が再び出てきたことだろうが、何をしに出てきたのだろうか。

勝ったなら凱旋で、再び出てきてもおかしくはないが、彼は負けた。

だがその理由はすぐにわかることとなる。

あの男が出てきたピットから、もう一機見たことのないISが飛び立ったのだ。

なんですの、あの機体は!?

セシリアはブルー・ティアーズのモニターを起動させ、データを照合させるが結果は・・・。

〝該当データ無し〟

一体あれは・・・・。

 

 

◇◆◇◆◇◆◇◆◇◆◇◆◇◆◇◆◇◆◇◆◇◆◇◆

 

〝A format and a fitting were finished. Please push the Confirm button.〟

(フォーマットとフィッティングが終了しました。確認ボタンを押してください)

 

「織斑先生終了しました!」

「よし、行け!」

勢いよくカタパルトが、僕とISを打ち出す。その最中ようやく戦闘用のOSが起動したようだ。

そして、モニターには次のような文字が躍る。

〝Welcome to strike birdie!〟

 

ストライクバーディ・・・それが名前。

良いじゃないか、良い名前だ!

射出されると同時に僕は、翼を広げた。

それと同時に光に包まれ、〝ストライク・バーディ〟は本当の姿へとその形を変える。

元々大きかったスラスターは長方形のおおきな物に姿を変え、更に外観が武骨さを増す。

そして色は鮮やかな青色に縁どりとしてオレンジのラインが走り、両手には大型の荷電粒子砲が握られている。

腰部には・・これはプロペラントタンクだろうか、菱形の大きなエネルギータンクが取り付けられている。

これで、僕専用になったって言うわけか。

「派手だな、アルディ!」

プライベートチャンネルを通じて、一夏の声がする。

「一夏の程じゃないよ。ただ大きいだけだしね」

あいさつ程度に、軽口を言いあい、互いに戦闘態勢を整える。

さて、行こうか!

 

◇◆◇◆◇◆◇◆◇◆◇◆◇◆◇◆◇◆◇◆◇◆◇◆

 

アルディのISのデータは、教師陣の、端末にも送られてきていた。

「ストライク・バーディだと?」

「織斑先生ご存じなんですか?」

意味深につぶやいた、行動に疑問を感じた山田君が尋ねてくる。

「確か、記憶が正しければ、私がモンド・グロッソの決勝であいつの姉と戦ったときに使用したいたISがそんな名前だった気がする」

「えぇぇぇ!じゃ、じゃあ、あれヴァルキリー機じゃないですか!ローラさんって確か射撃部門で優勝してましたよね!?」

確かに、ローラは総合優勝こそ逃し、〝ブリュンヒルデ〟の称号は得られなかったが、射撃部門の部門別では優勝し〝ヴァルキリー〟の栄誉が与えられている。

だが、と私は思案する。

〝ストライク・バーディは果たしてあんな形だったか〟と。

もっとシャープだった気がするし、あそこまでゴテゴテしていなかったはずだ。

それにあれはアルディの専用機。ローラのとは・・・・・・

あぁ、あぁ、そうか。そう言うことか。

「ふふ、山田君あれは確かにストライク・バーディだが、当時のものとは違うよ。

おそらくはあれを元にして、新しくISを組み上げたんだろう」

「え?」

何事でもそうだが、一からすべてを作るには莫大な予算と時間が必要だ。更に人手も。

だが、なにか既存の物がありそれをチューンなり、カスタムするのは、

一から作るよりも遥かに簡単だし時間も費用も下げられる。

「つまり、延長線上という事ですか?」

「そういう意味では、さっきいったヴァルキリー機というのは正しいかもしれないが、

まったく同じというわけではないさ。それに戦いはISで決まらない」

そうだISがいくら優れていようとも、操るのは人間。

乗り手がヘボでは、性能を生かしきれないだろう。

フフッ、さて見せてもらおうか。

 

◇◆◇◆◇◆◇◆◇◆◇◆◇◆◇◆◇◆◇◆◇◆◇◆

 

先制したのは一夏だった。

先のセシリアとの戦闘の際に学んだのか、直線的な動きではなくランダムに

飛行軸を変えて接近。ヒットアンドアウェイで正確に攻撃を当ててくる。

当ててくるのだが・・・。

「ちょ、お前のIS固すぎるだろ!!」

「見た目通りで・・・」

そうさっきからほとんど、一夏はシールドエネルギーを削り取れていないのだ。

だが、いずれにしてもこれでは攻撃に転じられない。

僕は、展開可能な武装一覧を呼びだし、一夏の攻撃を最小限避けつつそれに目を通す。

そこにあったのは、三つ。

現在両手に構える、荷電粒子砲〝ファイアーフライ〟

背部火器内蔵スラスター〝ウェポンスクエア〟

そして、特殊音響兵装〝ハウリングエコー〟

ん、火器内臓?

僕はアイ・タッチでウェポンスクエアを選択。

その詳細が表示される。

「こりゃぁ・・・」

その内容に驚いた。

左右合わせて六門のミサイルポットに更に威力の高い、高圧荷電粒子砲とそして内臓の小型バルカン。

これに手持ちの〝ファイアーフライ〟を合わせた全砲門射撃まで可能とある。

・・・・つまりこのISは機動力を全く考えていない、重装甲重砲撃戦仕様の特化タイプということか。

だとすると現在の状況はかなりまずい。

ただでさえ距離を取らなければいけないのに、機動力不足と特性把握の遅さから、一夏に接近を許してしまっている。

「余所見するとは、余裕じゃないか、アルディ!」

「余所見じゃない、理解してただけだよ、このISを!」

僕は、両手の〝ファイアーフライ〟を狙いもつけず無造作に放つ。

別に狙っているわけじゃない。要は牽制だ。

「おっと!」

一夏が、身をひるがえして、その射撃を次々に回避する。

かかった。

僕は口元を緩め、射撃によって次第に動きを制限していく。

自分の行動範囲が狭められているということは一夏も気づいたらしい。

ハイパーセンサーの映像からも焦りの色がうかがえる。

同時に、僕は〝ウェポンズスクエア〟のミサイルポットを展開。

「lock-on」の表示が出るや、全弾を発射する。

「全部当たれば、流石に落ちるよね?」

 

ドガァァァァァンッ!!!!

爆煙が、一夏と白式を飲み込んだ。

 

・・・・やったかな?

――――ッ!?

 

いやまだだ!!

黒煙の中から、真っ白な機体が光を受けて輝く。

「避けたの!?」

「流石に同じ手はくわねぇよ!」

同じ手とはおそらくセシリア戦の事だろう。

どうやったのかは見えなかったが、一夏のISに損傷らしい損傷は見受けられない。

つまり全弾回避されたという事。

っちぃ!

「今度は俺の番だ!」

一夏は今度は突っ込んでくるのではなく、僕の周囲を一定の距離を取って回る。

「お前のIS確かに、攻撃力と装甲は大したもんだけどさ、機動力では俺の方が上なんだよな!」

っく、てかはっきりってこのIS。大きいし、機動力もない。

単機運用を前提にしてないことない!?

それとも僕がまだ何か使いきれてないのか?

だが武装は大体見たし、機動性能だって・・・。

待てよ。

僕は背部の巨大なスラスターを見やる。

・・・・これって結局、荷電粒子砲とか打つ時は前にせり出すんだよな。

ってことは・・・・、これひょっとして・・・・。

〝360度どの角度にも動いたりする?〟

試してみる価値はありそうだ。

僕は一夏を見やる。

いや正確にはハイパーセンサーでその位置を見ると言った言い方の方が正しい。

縦横無尽に動く一夏の位置を確認しながら、慎重にスラスター角をイメージする。

そのイメージに従いスラスターが、任意の方向へ動き始める。

やっぱり思った通りだ。

そして、一夏がある方向で向きを変え一気に距離を詰めてくる。

「そこかぁ!!」

その瞬間一気にスラスターに火がともり、方向転換。

逆さになりながらも、一夏を素早く正面にとらえることに成功する。

「いぃ!」

「もらった!!」

今度は狙いをつけて、〝ファイアーフライ〟が放たれる。

真正面から受けてしまった一夏は、体勢を崩しながらも、その後の追撃をなんとか回避したが、

もうこちらのターンだ。

そうか・・・・だんだんわかってきた。

〝ストライク・バーディ〟の戦い方が!

この機体は、動いて狙い打つチャンスをうかがう戦法ではなく、

フレキシブルに動く巨大なスラスターを利用して、高度を固定し自分が素早く360度旋回しながら

狙いを定め、強大な火力に物を言わせて戦う戦法が有効なのだ。

万一攻撃を貰っても、堅牢な装甲がそれを守ってくれる。

言ってみれば、固定砲台か・・・。

同じ要領で、確実に正面に一夏をとらえ続け射撃を続ける。

回避もだんだん苦しくなってきたんじゃないかな?

僕は〝ファイアーフライ〟とミサイルで十分にタイムを稼ぐと、

〝ウェポンスクエア〟を全展開させる。

スラスターが前両肩の上か前にせり出し、それまでスラスターのサポートをしていた部分が更に前に突き出しマズルサポートの役割を果たす。

そしてスラスターのバーニア下部に取り付けられた高圧荷電粒子砲と小型バルカン、マズルサポートの上部に取り付けられたミサイルポットに加えて手持ちの、〝ファイアーフライ〟を加えた強大な火力が一気に放たれた。

 

全砲門一斉射撃〝アヴァランチ〟

そして雌雄は決した。

 

『試合終了、勝者アルディ・サウスバード!』

 

・・・・あ、あはは。

これ使いどころ間違えると危ないかも。

使っておいて何だが、この一斉射撃。どうやら何度も使える代物ではなさそうだ。

気付くと、余裕だったエネルギーは底を尽きかけ、シールドエネルキーも半分ほど無くなっている。

つまり、これエネルギーとシールドエネルギーの両方を使うのかぁ。

恐らく、最低限飛行や本体維持に必要な余力分のエネルギーを残して、それでも尚足りない部分はシールドエネルギーで補うという方法で、この攻撃は行われるのだろう。

それにだ。一回使っただけで、〝ウェポンスクエア〟から嫌な音がする。

どうやら本体にも、かなり負担を強いる攻撃の様だ。

・・・・って、はッ!!

一夏は!?

直撃だったけど・・・・。

「一夏大丈夫かい?」

「踏んだり蹴ったりだぜ・・・」

わ、悪かったね、ほんと。

僕はせめてもの償いに、一夏をピットまでえい航した。

 

ピットで待っていたのは、箒と織斑先生、そしてセシリアだった。

僕と一夏がISを待機状態に戻すや否や、一夏には箒が、僕にはセシリアが詰め寄ってきた。

「あなた、やっぱり私に嘘をついていましたのね!」

「えぇ?流石に僕が嘘つきって言うことは自覚していても、セシリアに何か嘘ついたかな・・・」

「つきましたわ!!あなた専用機はないと、おっしゃっていたではありませんか、それがこれはどういう事ですの!!」

あぁそのことか。

いやでもあの時点では本当に無かったし、それに〝ストライク・バーディ〟が届いたのだって急すぎた。

少なくともあの時点では本当に、僕はISを持っていなかったのだ。

そこへ織斑先生が助け舟を出してくれた。

「そう言うなオルコット。今日急に届いたんだ」

「む、むうぅ・・・」

それでも納得がいかない、セシリアだったが、織斑先生の言ったことということもあり、

追求をやめる。・・・・そうこの場では。

「ちょっと来てくださいな!」

「ま、また!?」

今度はセシリアに首根っこを捕まれピットを退場する羽目になった。

 

とりあえず着替えを済ましてからという僕の提案に、首を縦に振ったセシリアと分かれ僕は着替える。

ジャラ・・・。

弾丸のネックレス型をしている待機状態の愛機。

専用機か。

姉さんはどうして、僕にこれを届けたんだろうか。

何か理由があるのかな。

・・・・・・・・まぁいずれわかるだろう。

それよりも今はセシリアだ。

待たせて何を言われるかたまったもんじゃない。

・・・まてよ。

セシリア・オルコット・・・・?

なんかどこかで、その名前を。

・・・・・えぇい、良いや。とにかく行こう。

僕はセシリアの待つ、アリーナのロビーへと急いだ。

 

「遅いですわよ?」

「はぁ・・・すいません」

「で、どういうつもりですの?」

どういうと言われても・・・。

セシリアの意図を測りかねる僕は、答えに窮する。

「あなた私に嘘をついていますわよね?」

「いやだからISの事は本当に・・・」

「違いますわッ!」

ひと際大きい声に、少し驚き後ずさってしまう。

一体なんだって・・・・・。

「本当に思い出しませんの?」

「思い出す?」

・・・・・嘘の事じゃなかったのか。

嘘の事じゃ・・・・・ん?

待て待てさっきも、同じような考えが浮かんだが、あの時軽く流して軽口を言いあったが、

教室での会話には不審な点がいくつかある。

まずなんでセシリアは僕の姉さんを知っていたんだ?

そりゃ有名人だし、どこか雑誌か新聞で見たのか。

だがそこから、弟がいると言う事まで想像が及ぶだろうか?

そして何より〝僕はなんで彼女を知っていたんだろう〟

スッと口をついてでてきた名前だったが・・・・。

そしてさっきから、頭の隅に引っかかっているような気持ち悪さは?

・・・・・・セシリア・オルコット。

オルコット・・・・・・。

その時ひとつの単語がぽつりと口をついた。

「・・・・セシリー」

その単語にセシリアの顔がはっとなる。

そして確信する。

セシリー・・・・まさか

「セシリーなのか?」

「ふぅ、ようやくですの・・・」

「あ、いや・・・・・」

驚いた、そうか、そうだ。

僕たちは、子供のころ一度〝会っている〟

昔からアメリカで、ISの操縦者として抜きんでていた姉は、各国の企業が勧誘に訪れるほどの人材だった。

そしてあるとき、イギリスからIS関係の会社を経営しているので、是非ともわが社へ来てほしいという女性が現れ、その女性と共に訪米したのが、セシリアだった。

交渉は意外に伸び、二週間近くその女性はアメリカで粘りの交渉を行っていた。

結局交渉は決裂に終わったが、その間色々カリフォルニアのサクラメントの地を案内して回った記憶がある。案内と言っても、裏路地や秘密基地チックな所を連れまわしただけだったが、

彼女はとても楽しそうだった。

毎晩僕は、服を彼女は綺麗なドレスを汚しに汚しまくって帰っては怒られてたっけ。

確かその、初日に名前を言いあったんだ。

「あなた、名前は何といいますの?」

「僕?僕はアルディ。アルディ・サウスバード。君は?」

「セシリア・オルコットですわ」

「じゃあセシリーだね」

「ま、まぁ良いですわ特別に許しましょう、ではあなたは、

アルディ・・・・・そう、アルですわね」

こんな風に。

「そうか、すっかり頭から飛んでたなぁ・・・・」

「それもお得意の嘘ですの?」

「いや。ほんとに」

「ま、思い出しただけでも良しとしましょう」

さっきまでの雰囲気はどこへやら。

フフッと笑う。セシリーはいつも通り自信たっぷりの顔だった。

「あの時、あなたに戦いを吹っ掛けたのは、あなたが私の事を忘れていたからですわ。

名前は覚えてらしたのに・・・。結局戦えませんでしたが」

「だから・・・・悪かったよ」

「冗談ですわ、もう怒ってなどいませんわ」

またクスリと悪戯っぽい笑みを浮かべるセシリー。

・・・・なんて言うか、見ないうちに綺麗になったよなぁ。

まぁ、会ったのはもうだいぶ前の事だし、それから互いに月日が流れた。

成長するのは当たり前か。

「あら、私に見とれてましたの?」

「違う・・・・いや違わない・・・?」

「あら、あなたらしくない返答ですのね、あいまいな返答を返した罰ですわ、

これから一緒にご飯を食べに参りましょう」

「それが罰なの?」

「もちろんおごりですのよ?」

そ、それは、確かに罰だ・・・・。

ふぅ・・・まぁ良いか。

それじゃあと・・・ロビーの出口を見やる。

・・・・・そして絶句した。

 

そこに群がる女子女子女子女子・・・・・。

な、なんだこれ。

「あ、私達はお構いなく」

「良い感じだったよね今、しかもアルディ君セシリアの事セシリーとか呼んでたし!」

「これは何かあるよ、絶対・・・」

「米英二国間同盟だ~」

中々旨いこと言うな・・・・じゃなくて。

またこのパターンだ。

最悪だよ、さっきの全部見られた。

「ねぇねぇ、セシリア、アルディ君とどういう関係よ!?」

「まさかのまさかで・・・・」

唐突な問いに、驚くかと思いきや、セシリーはにこやかに笑うと、女子たちに意味深な言葉を残した。

「さぁ、どうでしょうね、それでは待っていますわよ、アル」

今ここでその名前で呼ぶのは、まず過ぎる・・・・・。

絶対わざとだ・・・・。

そして当然その呼び方は、普通じゃない。

ごく親しい間柄であるという事を悟った女子群が先ほど以上に騒ぎ立てる。

「聞いた聞いた!?いまセシリア、アルって呼んでたよ!?」

「これは間違いないわ・・・・間違いない!」

「専用機持ちのビックカップル・・・・」

色々誤解があるようだ。

流石の僕もこの場を切り抜ける打開策が、口をついてでてこない。

今僕に出来ることと言えば・・・・

「あぁ・・・えぇと・・・さよならッ!」

逃げることだけだった。

 

 

◇◆◇◆◇◆◇◆◇◆◇◆◇◆◇◆◇◆◇◆◇◆◇◆

 

アルディのISが起動したその日の夜。

アメリカではすでに朝日が昇り多くの労働者たちが仕事に励みだす。

そしてローラも例外ではなく、〝ストライク・バーディ〟の稼働データに目を通していた。

ローラが自動転送するようにプログラムを指示したもので、これは今後の研究開発に活かされていく。

「うん、初稼働にしては上出来だわ」

一人、つぶやいたのだが意外に大きかったらしい。

「朝っぱらから、うるせぇなぁ」

「それはあなたもでしょ、イーリ」

「あら、ナターシャもいたのね」

アメリカの国家代表IS操縦者イーリス・コーリングとナターシャが軽口をたたきながら研究室に入ってくる。

「もって、何よもって。私はおまけ?」

「ありがたく思えよな、あたしのおまけなんて光栄じゃねぇか」

「十セントチョコのおまけぐらいかしら」

「てめぇ、流石に安すぎだろそれ・・・」

「おまけの方が高くなっちゃったわね」

クスッとナターシャは笑うと、それを見てイーリスも口をとがらせてフンと鼻を鳴らす。

私はそれを横目で見つつ、データに再度デーダに目を落とす。

「フレキシブルターンは成功、あら、あの子〝アヴァランチ〟を・・・」

ブツクサ言う、ローラに興味を持ったイーリスとナターシャが、軽口をやめデータを覗き込んでくる。

丁度机に座っていたので、ナターシャは椅子越しに、イーリスはデスク越しにそれぞれデータを眺める。

「これ、ひょっとして例の機体の実戦データ?」

「例の機体?」

イーリスの頭に疑問符が浮かぶ。

それを見てナターシャが補足説明を続ける。

「ここで開発されてた、〝ストライク・バーディ〟の事よ。ほらアルの専用機で造ってたじゃない」

「アル?・・・・あぁ、ローラの弟か。にしてもストライク・バーディねぇ。このデータを見る限り

原形無ぇじゃねぇか」

「仕方ないわよ、そのまま使うにはクセがありすぎたし」

元々〝ストライク・バーディ〟は射撃特化型とはいえ、有り余るほど高い機動性能がウリの第二世代ISだった。だが、それがあまりにクセのある代物で、特に360度どの方向にも回る特徴的な、〝フレキシブルスラスター〟は慣れるまでに相当な時間を有し、最悪の場合扱いきれないという事態になりかねないものだった。

そのため、アルディの専用機ベースとして本機が選ばれた時、初めはこのスラスターを外す方向で開発がすすめられたのだが、あまりの重装甲銃火砲の所為で機動性が確保できなくなった為に、急きょこのシステムを方向転換用に組み込むことになったのだ。

「第二世代つっても、火力だけ見たら第三世代に迫るんじゃね?」

「火力だけ見ればね。第二世代機の初期型のISとしてはトップクラスの火力だから」

おっかねぇの。とイーリスは続け、黙ってまたデータを見やった。

・・・・・しっかり、あの子を守ってあげてね、〝バーディ〟

ローラは心の中でそう呟きながら、自分の仕事に移っていく。

 

今日も仕事に忙殺される日常が始まっていった。

 

 

 




完全移行までもうしばらく掛かりそうです(汗
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