IS インフィニット・ストラトス~偽りの翼~   作:のろいうさぎ

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第4話~転校生はチャイニーズ~

 

かく言う僕も、一夏は箒と僕はセシリーにそれぞれレクチャーを受けている。

受けているのだが・・・。

 

「だからこう、クイッと言う感じだ!なぜわからん!!」

「違いますわ!良いです事、アル。先ほどの機動では接近されたときにあまりに無防備。

ロール角は三十五度を維持、そしてそのままピッチ角を・・・だから違いますって!」

僕と一夏は互いに顔を見合わせると、口をそろえてこういった。

「「ごめん、わからん」」

見事なハモりっぷりに二人の顔が引きつる。

「大体、箒そのクイッて感じってどんなんなんだよ・・・」

「セシリー、細かすぎる・・・・」

さっきからレクチャーを受けているのだが、イマイチ分かりにくい。

だがまだセシリーは具体的な数値を上げてくれるだけでも本当は感謝しないといけない。

箒に至っては・・・

「クイッて感じで動いて、ズガーンと当てて、スパッと行く感じだ」・・・・

暗号だろうかこれは・・・。

「全く、よく見ていろ一夏!こうだな・・・こうして・・・クイッて感じだ」

箒が〝打鉄〟を使って実演してみせる。

「おぉ、そこのクイッて感じか、俺の想像とは違ったよ」

僕もそのクイッて感じだったのかと納得するが、今はそれどころじゃない。

こっちはこっちで・・・

「どこを見てらっしゃいますの!?ほらもう一度やりますわよ」

「あぁ・・・はい」

渋々従うが、やっぱり分かりにくい・・・。

もう一度浮上して、スラスター角を細かく調整する。

バシュッバシュっと細かく姿勢制御をスラスターが行っているのが分かる。

はじめて使ったあの時は、一夏にまだ直線的な動きが混ざっていたからそれほど難しく感じなかったが、

セシリーを、仮想的としてやってみると、全く狙いが定まらなかった。

まぁ、代表候補生相手だから当たり前と言えば当たり前だけど。

全方位特殊機動旋回。通称〝フレキシブルターン〟。

その機動をマスターしない限りこのISを使いこなしたとは言えないとセシリーにも言われたが、それはそうだと思う。

〝ストライク・バーディ〟は前も言ったが固定砲台色の強すぎるISだ。

そのためにも、回頭速度の向上は至上命題だった。

何が難しいかって、普通の砲台なら横に三六〇度で良いのだが、僕の場合は上下左右に三六〇度なのだ。

二次元から一つ次元が増えるだけでここまで難しくなるのか。

まぁ、何にしてもやってみよう。代表候補生の言うことだ。

下手な事は言わないはずだからね。

「それでは行きますわよ、私の今から言う角度にISをあわせてくださいな」

「うん・・・」

しばしの沈黙の後、セシリーの声が響いた。

「ロール四五、ピッチマイナス十!」

聞こえた通りに、機体を制御する。

セシリーは僕が、角度を合わせるのを待たずに次々に角度を言い放っていく。

「次ロール十、ピッチプラス三五、続いてロール二四六、ピッチマイナス七六!」

バシュッバシュンッ!

小刻みに角度と姿勢を制御し角度を合わせていく。

矢継ぎ早に発せられるセシリーの指示を、ひたすらに追う。

そして何十回それを繰り返し、セシリーがひと際大きな声を張り上げる。

「最後ですわ!ロール一五九、ピッチプラス八七!」

「っく!!」

しまった、噴かし過ぎた!!

ここまで来て失敗したくはない。

僕は反動で行きすぎた機体を、小型バーニアの全噴射でなんとか止め,

最後は両スラスター全部で勢いを殺して、なんとか範囲内で機体を制御させる。

「くっはッ!どうかなッ!?」

バッとそのままセシリーを見やる。

セシリーは少し何かを考えている。

・・・・まさか、ダメ?

「ま、及第点ですわね」

その言葉を待っていた・・・。

僕は、地上へおりるとISを待機状態にしてそのまま地面に座り込む。

「はぁはぁッ・・・つかれた・・・」

「もう、このぐらいで、へこたれてしまわれても困るのですけれど・・・」

「そうは言うけどね・・・大きさを・・はぁッ、考えてよ・・・」

〝ストライク・バーディ〟はISにしては非常に大きな部類に入る。

一夏の白式と比べても、その大きさは一回り半ぐらい・・・そのぐらい違う。

その分巨大なスラスターを備えて入るが、大きさの質量分はどうにもならない。

いくらPICで、操縦者への負担を軽減しているとはいえ、機体の重量分はごまかしようが無いのだ。

「それを使いこなしてこそ、一流ではなくて?」

「一流ね・・・」

「それぐらいになっていただきませんと、流石に不釣り合いですわ」

「不釣り合い・・・何に?」

「・・・・い、いえ、何でもありませんけど・・・・」

急にそっぽを向いてしまうセシリア。・・・・なんだろうね。

「そ、それよりももうすぐお昼ですわ。食堂へ行きません事?」

「あれ?もうそんな時間なんだ・・・そうだねおなかも減ってきたし」

「ん?飯か・・・箒、俺たちも切り上げて食いに行こうぜ!」

「話を反らす・・・・む、むぅまぁお前が行くというのなら・・・仕方がないな行くとしよう」

素直に行くと言えばいいのになぁ・・・

 

 

食堂は、今日は休みと言う事もあり、出掛けている生徒も多いのか、

それほど混みあってもおらず、僕たち一行は奥のテーブルへ腰かける。

ちなみに、僕と一夏は日替わり定食。箒は和食御前Aそしてセシリーは・・・・サンドイッチ?

「セシリー、流石にあれだけ動いてサンドイッチって言うのは少なすぎないかい?」

「い、良いのですわ、私は・・・・その・・・そうエコな女なのです!」

え、エコな女!?

初めてそんなフレーズを聞いたけど、具体的にはどんなんなんだ?

「大方無理なダイエットで、倒れるパターンだな」

「ちょ、っちょっと箒さん?変な事おっしゃらないでくださいな」

「何がエコだ、言い訳としても苦しいな」

「食べた養分を全部胸に回してらっしゃる方に言われたくありませんわ!」

味噌汁をすすっていた箒が盛大に噴く。そしてむせる。

「おいおい、箒、大丈夫か?」

一夏が心配そうにのぞきこむが、回復した箒はそれを気にも留めず、セシリーに詰め寄った。

「お前、言って良いことと悪いことがあるだろう!!」

「なんですの!本当の事ではありませんか?!」

「まぁまぁ、二人とも・・・・」

「そうだってお前ら落ち着けって」

ワイワイ騒いで食べる事はいいことだと思う。

ただ流石に僕らを挟んで、睨みあうのはやめてほしい。

・・・・その・・だから。

色々と・・当たるところとかあるわけで。

「大体、箒さんは!」

「セシリアだって!」

バシン!バシン!バシン!!!バシンッ!

「黙って食え」

「「「「はい」」」」

織斑先生・・・・。まさかいらしたとは。

ちなみに殴られた順に、箒、一夏、僕、セシリー、の順番だった。

なぜだが一番強く殴られた。

 

 

 

昼食を平らげ、ラウンジでくつろいでいた時。

「そう言えば一夏、転校生の噂は聞いているか?」

箒が唐突に口を開いた。

転校生か。

まず間違いなく女子だろうが、はてさてどんな子なのか。

「・・・・何か?」

「別に何でもありませんわ」

ジトーっとこちらを見ていたセシリアだったが、

言うや不機嫌そうにそっぽを向いてしまった。

いや、別に変な事は考えてないよ。

「転校生ねぇ、でも珍しいな。箒が噂話に興味を示すなんて」

「別に興味があるわけではない、たださっき近くにいた生徒達が話をしているのをたまたま、耳にしただけだ」

「それを興味あるっていうんだろ?」

「ふん、屁理屈をこねるな」

「だけど、この時期に転校生かぁ、つい先日僕が来たばかりなのにね」

先日と言っても、もう数週間前だけど。

そんな、僕にセシリーが意見する。

「アル、確かにあなたが来たばかりですけれど、ここはIS専門の育成機関なんですのよ?

今こうして私たちが、くつろいでいる間にも、各国ではIS学園入学のために代表候補生やそれを目指す操縦者が切磋琢磨しているはずです。

そう考えても、今回の転校生も間違いなく代表候補生が来ると思って間違いなさそうですわね」

なるほどね。

確かにこの学園にIS操縦者を入学させる意味は大きい。

この学園は日本に存在するが、原則どの国家機関にも分類されていない。

そのため、新技術の開発・試験であったり、多くの国の代表候補生たちが集う学園なだけに、

各国とのIS比較が容易に行え、かつ、操縦者は本国に関係なくこの学園で育成されていくので、

〝入学した人数分のIS操縦者の育成費用が浮く〟これは国にとっても大きいことだ。

ISだけでも国家予算の何割かを割いて行われる一大事業だし、当然国家代表、代表候補生の選出や育成にも、莫大な予算が必要となる。

だがこのIS学園に一度入れてしまえば、その心配はほとんどなくなり、国は技術の開発だけに専念できるのだ。

これほど使い勝手のいい〝実験施設〟は無い。

「まぁ、今それを考えてもねぇ、今日は休みだし入ってくるとしても明日でしょ?」

「そうだな、気にしても明日になればわかることだし」

「一夏は・・・その・・・気になるのか?」

「そうだな、まぁ気にならないって言えば嘘になるけど」

「・・・・そこは気にならないと言ってもらわないと・・・だな・・その」

箒も・・・・大変だなぁ。

一夏がここまでトウボクヘ・・・・ん?

「唐変木ですわよ、アル、この前織斑先生に言われたばかりじゃありませんか」

あぁ、そうだそうだ。それそれ。

「・・・・あなたも似たような、ものなんですけどね」

「ん?何か言ったかい?」

ボソッと何かセシリーが言った気がしたけど気のせいかな?

セシリーは何でもありませんわと口をとがらせ、無造作にコップを差し出す。

注いで来いってか。

はいはい、いきますよ、お嬢さま。

僕はコップを受け取ると、サーバーまで足を運んだ。

 

 

 

そう言えば一夏達が何を飲むか聞いてこればよかったね。

・・・・水でいいだろう。

箒は緑茶でよさそうだし。

セシリーは・・・・。なんだろう。

紅茶かな?

僕は、セシリーからしか貰ってなかったコップに加えて、備え付けのコップ三つを取り、

それぞれの液体を注いでいく。

そして整理されていた、トレーを取ってその上に乗せる。

それを片手で器用にバランスを取りながら、もといた席に向かう。

途中すれ違った女子に「わッ、まるでウェイターだね」と言われたが・・・・。そんな風に見えるのだろうか。

席に戻ると、そこでもやはり席の周りの女子から同じような事を言われた。

そうかな、と少し苦笑いしてそれぞれの前に、飲み物を置いていく。

その姿をセシリアは、ほうっとした顔で見ていた。

きっかけはさっき、誰かが言った〝わぁ、まるで給仕さん?いや執事さんみたいだねぇ〟という一言。

(アルの執事・・・・悪くありませんわねぇ・・・)

目の前には普通の制服姿のアルディがいるのだが、セシリアの目にはフィルターが掛かり、その服装が制服から燕尾服へすり替わり、「どうぞ、お嬢様」と幻聴まで聞こえていた。

(お嬢様・・・・・いい、良いですわ!)

そんな事を考えているとはつゆ知らず、アルディがセシリアに声をかける。

「あの、セシリー、今更だけど紅茶でよかったかな?」

「良いですわ!!」

ガタッと勢いよく立ち、言い放つセシリアに対して、アルディは苦笑いで、「そ、そう・・・」と驚きを隠せずにいた。

 

 

 

その夜、僕と一夏はアリーナ使用ギリギリの時刻まで自主練に励んでいた。

コーチは変わらずセシリーと箒だったが、箒もセシリーも今回はより実践的にと箒は一夏と手合わせ。

僕はセシリーと、射撃訓練に勤しんでいた。

これがまた結構忙しい。昼間やっていた練習は角度をただ合わせるだけでよかったのだが、今回はそれに射撃が追加される。

自分で言うのもなんだが、射撃自体は苦手ではない。

姉も射撃部門で世界一に輝いているし、その姉からある程度の手ほどきは受けている。

だがそれでも、ハイパーセンサーによる瞬時捕捉、スラスター角調整、照準、射撃。

これだけの事を一度に行うのは至難の業だ。

だがそうは言っても、お手本と言ってセシリーは〝フレキシブルスラスター〟を持たない〝ブルー・ティアーズ〟で〝フレキシブル・ターン〟を行い見事にすべての的の中心を捉えていた。

セシリーによると

「私の〝ブルー・ティアーズ〟には〝フレキシブル・スラスター〟はありません、じゃあその機動は出来ないのかと言ったらそれは違う。

まったく同じことができないのなら、それに似たことのできる方法で、再現すればいいだけの話。

私が使ったのは、〝アブソリュート・ターン〟スラスター角を完璧に制御できるからこそ、可能な特殊旋回機動ですわ」

そう考えると、〝ストライク・バーディ〟にはこの〝フレキシブル・スラスター〟が付いている。

お手本を見せた相手が、いくら代表候補生とはいえ、こちらはその機動が確実に出来る機体なのだ。

僕は一通りの的に打ち終わると、体勢を立て直して、セシリアの横へ移動する。

成績は・・・・・・これまた酷いな、ほとんど的の外側じゃないか。

そのデータを見てセシリーは何か少し考えている。

「うぅん・・・・ちょっと〝ファイアーフライ〟貸していただけます?」

「え、いいけど」

僕はそう言って、右用の荷電粒子砲〝ファイアーフライ〟をセシリーに渡す。

受け取ったセシリーは、持ったり、構えたりして感触を確かめ、

試しに表示されている的へ向かって一発撃つ。

当たった的が衝撃音と共に弾け、手元のモニターにデータが表示された。

「・・・・やっぱり」

そう言って〝ファイアーフライ〟を僕に返し、顎に手を当てまた何やら考え始めるセシリー。

僕は意図を測りかね、その顔を覗き込む。

「何がやっぱり?」

「先ほどからの、射撃訓練を見て思っていたことですわ。難しい角度なら仕方が無いにしても、簡単な角度射撃でも、的を外しかける。

初めは腕かとも思いましたが、そうか思うと別もな的にはしっかり当てたりする。

これはおかしいと思って見ていましたが、先ほど一度撃ってみてその謎が解けましたの。

だから〝やっぱり〟なのですわ」

「えぇと・・・つまり?」

「簡単に言うと、あなたのISは細かな射撃には向いていないと言う事ですわね。この〝ファイアーフライ〟も反動が大きすぎますし・・・。

高火力で狙いもつけずに辺りに砲撃をまき散らす。広域せん滅型と言えるでしょう」

確かに、あの時一夏に撃った〝アヴァランチ〟も一夏に直撃したものの、多くが地面や、アリーナのシールドに当たり爆散していた。

正確に誘導できるミサイル以外は、細々しく狙いを定めて・・・というISでは無いらしい。

・・・・待てよ、じゃあこの訓練はもう・・・

「今、この訓練は無駄だからもう終わりで良いと考えませんでした?それは違いますわ。そう言ったISだからこそ、このような訓練が必要なのですわ、さぁまだもう少し時間はありますし、私がその・・・・・・て、手取り足とり・・・・その」

「また、何かボソッと・・・」

「な、何でもないですわ!さ、再開しましょう!!」

それからもしばらく。セシリー教官の鬼のような訓練が続いた。

 

 

 

◇◆◇◆◇◆◇◆◇◆◇◆◇◆◇◆◇◆◇◆◇◆◇◆

 

 

あぁ~もう受付どこよッ!!

無駄に広いわねぇ~~~ほんとに!!

電気の消えた通路を受付を探しさまよう少女が一人。

ツインテールで髪をまとめた小柄な少女は、小さなボストンバック一つを持って見るからに、いらついている。

ついさっき、探せばいいんでしょ!と何も考えずに足を踏み入れた自分を呪いたい。

外見から想像した以上に中が広かったのだ。

ほんとにもぉぉ~~~ッ!!あぁぁぁぁぁぁぁ!!!

わしゃわしゃと、自分の頭を両手で勢いよくかく。

こうなったらISで空から・・・・・。

とふと思ったが、その考えはまずい。

特にまだ受付も済ませていない状況で、ISを機動させれば国家問題に発展する。

本国政府の官僚たちが、〝頼むから軽率な事はしないでくれ〟と頭を下げられるのは気持ちよかったが、それ以前に、少女の中にも流石にまずいという考えはあるようだった。

すぐにその考えを、ゴミ箱へ放り投げ、ため息をついて足取り重くトボトボと歩きだした。

しばらくすると、どこからか声がする。

それは彼女にとって誰よりも聞きたい声だった。

「結局、お前の擬音講座だったじゃねぇか・・・」

一夏だ!彼女はIS学園に編入が決まった時、確かに実力が認められたその嬉しさはあったが、

何よりその学園に彼がいたという事が何よりもうれしかった。

一年ちょっと会っていない彼としかもこんなところで再開できるなんて・・・。

これはもう運命だ。明日にでも式場の予約を入れなければ!

そこまで興奮しきった、彼女の頭を一人の女子の声が一気に冷やす。

「一夏の想像力の無さの問題だ!」

「想像力とかの次元じゃねぇよ、宇宙人でも首かしげるぜ!・・・・って聞いてんのか箒!!」

少女は、物陰に身を潜めさっきとは打って変わって冷めた目で男女を見送る。

・・・今の誰?なんで〝あたしの〟一夏となれなれしく話してんの?

親しそうに一夏も話してるし。

少女はスクっと立つと、本来の目的であった受付を探す。

程なく受け付けは見つかり、手続きも滞りなく済んだ。

「以上ですね。はいこれ生徒手帳です。ようこそIS学園へ、凰鈴音さん!」

そんな明るい声も鈴音には届いていない。

バッと身を乗り出すと、事務員に詰め寄り一方的に質問を投げかけた。

「織斑一夏って何組かわかります?」

「え!?あ、織斑君ね。転校生にまで知られてるなんて有名人ねぇ」

「それで、何組なんですか?」

「一組よ、あなたは二組だから、お隣ね。そう言えば彼、クラス代表になったらしいわ」

クラス代表・・・・あ、そーだ!

鈴音の頭にピコーンと電球が灯る。

「二組のクラス代表って決まってますよね?」

「えぇ、この時期ですからね・・・それが何か?」

「いえ、別に」

そう言って、受付を離れた鈴音だったが、別にでは無い。

ちゃんと頭の中では考えている。

待ってなさいよ一夏・・・・・。

あたし以外の女の子と、仲良くしてるツケは大きいからね・・・・・。

足取りは軽かったが、顔は反して引くぐらい怖かった。

 

 

◇◆◇◆◇◆◇◆◇◆◇◆◇◆◇◆◇◆◇◆◇◆◇◆

 

 

いやぁ、今日の昼にもここにいた気がする。いや、いたね。

チラッと、壁に掛けられた横断幕を見るそこにはこう書かれていた。

〝織斑一夏クラス代表就任パーティ〟

ここは寮の食堂で、セシリーの特訓後二人でアリーナのロビーにいたところを、

一組の女子に半ば拉致されて食堂まで連れてこられたのだ。

それにしても騒ぐのが好きだなぁ・・・僕も嫌いじゃないけどネ!

「織斑君おめでとう!」

「一組の未来は君に任せた!」

などと、盛り上がっているが・・・。

「セシリー、君一夏に勝ったよね、なのになんで彼が?」

「そうだぞ、セシリア!俺は負けたのになんで代表になっているんだよ!」

僕の質問に便乗して、ガバッと、焦りの表情で迫る一夏にセシリーはさらりと答えた。

「辞退したからですわ、代表を」

「「どうして?」」

思わず声が重なるが、一夏は納得できていない声だった。

「ど、どうしてと申されましても・・・・その・・・・そう!あの試合は確かに結果私の勝ちでしたが、内容はどう取っても私の負けでした、だからですわ!」

腕を組んで、フイッと違う方向へ顔を背けるセシリーに、女子が横から茶々を入れる。

「え~。アルディ君のためじゃないの~?」

「セシリア、嘘は体に悪いのよ?」

「う、嘘ではありません!というかはじめて聞きましたわよ、そんな理論!!」

顔を真っ赤にして、大げさなアクションで否定するが、周りの女子のニヤニヤは止まらない。

「セシリアは愛くるしいなぁ~」

「可愛いなー可愛いなー」

「もうッ!やめてくださいな!!それにほら今日の主役は一夏さんでしょう!」

あーセシリアが怒った~っと最後まで茶化しながら、女子は一夏の方へと集まっていく。

まったくもぅ!と鼻を鳴らしながら着席すると、カップに入っていた紅茶を飲む。

「にしてもさ、本当にどうして辞退したんだい?あんなに自信満々だったじゃないか」

「先ほども言いましたでしょう、あれは私の負けだったと」

「本当にそれだけかい?」

「本当にそれだけです!・・・・・それにほ、本当の事など言えるはず無いではありませんか・・・」

「ん?」

セシリアは、何でもないですわとアルディの追及を、そこで切らせると、昼間と同じようにアルディへカップを差し出す。はぁ・・・とため息をつくアルディだったが、受け取るとサーバーへ向かって歩いていく。

(ま、気を取り直して、お嬢様気分を味わうとしましょう)

セシリアの目には、また再び燕尾服のアルディが映っているのだった。

 

 

 

翌日。

結構みんなグッタリとしていた。

それもそのはず。昨日のパーティで騒ぎ過ぎたのだ。

だがそんな事を言っていては、織斑先生にどやされるのは目に見えている。

皆重たい身体をなんとか引きずって、表面上は明るくふるまっていた。

そんなクラスだったが、妙に皆ソワソワしている。

他でもない転校生の事だ。違うクラスだが、やはり気になるようだった。

「そう言えば今日か、転校生のくる日って」

「僕が来る時もこんな感じだったのかな?」

「あぁ皆、騒いでいたな」

「私も、あの日は教室に入ってから、その話を幾度となく聞きましたもの」

僕と一夏の周りには、セシリーと箒のいつものメンバーが立っている。

「何でも、中国の代表候補生らしいね」

「へぇ、中国人か」

「そう言えば二組のクラス代表は代表候補生では無かったな」

「でも、もう一度決まってしまったものを、覆せないでしょ?」

時期が時期だしね。僕は、箒にサラッと意見を述べる。

流石に転校生が代表候補生でも、決まってしまったものを・・・・。

にしても中国ねぇ。

いい時だけ先進国、途上国を使い分けるあの国に、正直言って良いイメージはしないかなぁ

なんてのを考えていたら、唐突に大きな声が一組を揺らした。

見るとそこには、全身から活発そうなオーラを放ったツインテールの女子が立っていた。

「覆せるんだなぁ~これが!」

効果音をつけるなら、〝ドーン!〟と言うのが正しい。

腕を組んで仁王立ちするその少女は、自信たっぷりの笑みをもらし、一夏を指さす。

「あたし、今日から二組の代表になったんだからね。一夏、今度のクラス対抗戦覚悟なさい!」

どうやらその口ぶりから、一夏の知り合いの様だ。

そして対する一夏も、彼女を見て気さくに笑う。

「お前・・・鈴、鈴なのか?久しぶりだなぁ~、にしても何やってるんだ、全然似合わないぞ?」

それを見て、箒の顔が一瞬曇ったのは内緒だ。

「あ、あんたねぇ、もうちょっと言う事考えなさいよ!」

「おい・・・・」

その声に、クラス中の顔が引きつった。だが怒り心頭の鈴にはその変化に気づけない。

「大体、あたしがせっかく来てあげてるのに、喜びそれだけ!?」

「おい!」

「こっちが、どれだけびっくりしたと思ってんのよ!TVつけたらあんたがニュースになってんのよ!」

「おい!!」

「あ~もうさっきから誰よ、うっさいわっねっ!?!?」

振り返りざまに鋭い出席簿アタックが顔面にクリーンヒット。当然、織斑先生だ。

手加減などするはずもない。その衝撃でようやく鈴も我に帰り、自分のやらかした事に顔をひきつらせ冷や汗をダラダラ流す。

「ち、千冬さっぶ!!」

「織斑先生だ、馬鹿ものが・・・・邪魔だ、とっとと自分のクラスに戻れ」

「っく、一夏!卑怯よ、織斑先生を呼ぶなんて!!」

「私はここの担任だ、もう一発食らいたいのか!」

鋭い声に、鈴の戦意も粉々に砕け散ったようで、「逃げないでよ!」と捨て台詞を吐いて、ようやく嵐は去った。

それを見送って、織斑先生は鼻を鳴らす。

「・・・・・ふん、朝から元気のいいことだ。それに引き換えお前らは」

どうやら、織斑先生には何でもお見通しの様だ。

「騒ぐなとは言わん、時にはな必要だからな。だがそれを翌日にまで引っ張るな。

・・・・丁度いい今日は、一時間目からIS実習だぞ」

織斑先生の口元が緩む。だがそれを決して優しさととらえている生徒はこのクラスにはいない。

「叩き直してやろう、五分で用意し第五アリーナへ集合しろ良いな?」

うげっ!?第五アリーナぁ!?

しかも五分の制限時間付き。っていうかここからアリーナまでが大体全速力で走っても五分ぐらいかかる。

「あぁ、そうだ言い忘れていた・・・・遅れたらその分数×アリーナ十週の褒美を出してやろう」

それは褒美じゃない。

僕が辞書を開いて調べた時そういうのは罰って言うって書いてあった。

完全に鬼だよ・・・。

って、こうしてる場合じゃない!!

「い、一夏!急ごう!!」

「あぁ、そっか、俺たちは更衣室が別だから遠いんだった!!」

僕たちに続いて、女子群もバタバタと教室を後にしてアリーナへ急ぐ。

それを織斑 千冬は実に楽しそうに笑うのだった。

 




何気に鈴は良いキャラだと思いますw
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