IS インフィニット・ストラトス~偽りの翼~ 作:のろいうさぎ
全く、踏んだり蹴ったりだ・・・
あれ、この言いだし似たようなのを前回も・・・・まぁいいや。
踏んだり蹴ったりとは鈴の事である。
ドアパンチされて拉致された後、流れで模擬戦に突入。
結局最後は、鈴の〝双天牙月〟という青龍刀の餌食になって、地面に叩きつけられてしまった。
大型の〝ストライク・バーディ〟をいとも簡単に・・・・。
なんてパワーだ。
一夏のそれが、スピードだとすれば、鈴のそれは、近接は近接でもかなりのパワータイプだろうか。
アリーナの更衣室を出て、ロビーまで出ると、フラフラと歩くセシリーを見つける。
ん?
な、なんだろう、凄く危なっかしいな。
そう思っていた矢先、段差につまづいて転ぶ。
あぁ、もうなにやってんだか・・・。
「セシリー大丈・・・!?」
セシリーは差し出した手を乱暴にはらうと、これまでにないほどきつい拒絶のまなざしで僕を射抜いた。
とっさの事に、少し茫然としてしまった僕だったが、その態度が気になって既に一人で立ち上がりさっさと歩きはじめていたセシリーを追う。
「ちょ、ちょっとセシリー!」
僕は腕をつかむ。だがそれをセシリーはまたも振り払った。
「触らないでくださいな」
「ひょっとして、怒ってる・・・・よね」
当然のことと思いつつ、そんな言葉しか出てこない僕のボキャブラリーの無さに呆れてしまう。
「怒る、何に対してでしょうか?私、別に怒ってなどおりませんけど」
「いや、あの・・・」
明らかに怒ってるじゃないか・・・・。
この上ないほどに。
やっぱり、あの教室での事を・・・
「あの事でしたら、別にもう何とも」
僕が今想像しようとしたことを先読みされて否定される。
あれ?じゃあ何をそんなに。
「もう良いですわ」
話を切って、再びスタスタと歩いていくセシリー。
待て待て、全然意味がわからないぞ!
「セシリー、一体何なのさ!言ってくれなきゃ分からない!!」
「言ってましたわよ、これまでも!」
「え!?い、言ってないだろ、何がだい?はっきり言わないなんてセシリーらしく・・・ッ!」
言いかけた刹那、僕の右頬に鋭い痛みが走っていた。
状況はすぐにわかった。
セシリーが僕の頬を叩いたのだ。
流石に叩かれることを予想していなかった僕は、困惑のまなざしでセシリーを見る。
え、泣いて・・・・。
「私らしい!?何も知らない、何も気づいて無い、あなたにそんなこと言われる、筋合いありませんわ!!」
ブロンドの髪を振り乱しながら、かぶりを振ってヒステリックに叫ぶとそのまま背を向け走り去る。
「あ・・・・」
僕はなぜか、セシリーの名を呼ぶことも、追いかけることも出来なかった。
僕は部屋に戻ると、いまだにジンジンする頬をさすりながら、PCの電源を入れる。
・・・はぁ、一体何をしたって言うんだろう。
セシリーは、教室での一件は、どうでもいいって言ってた。
じゃあ、他に何が?
全く訳がわから・・・・・ん?
PCの電源を入れると同時に、画面端に、ネット通話の着信通知が来ていた。
アドレスは・・・姉さんだ。
着信時刻は、もうほんの数分前。
僕はすぐに折り返し発信の準備をする。
僕のPCには既にカメラとマイクが内蔵されているので、周辺機器は必要ない。
数秒の呼び出しの後、画面に姉さんが映し出された。
『アル、少し・・待って』
ヘッドホンの調子を確認する姉さんそして、最初少しノイズがかった声が次第に鮮明になっていく。
『あーあー・・・聞こえてるわね?』
「うん、大丈夫だよ、それで何の用?」
『酷い言い方ねぇ、遠く離れた異国での生活に心を痛めてないか、心配で連絡してるのに』
「・・・嘘だね、大方ISの事でしょ」
『ンフフッ、ま、それぐらい察し付くわね・・・・ってその頬どうしたの?』
僕はとっさに右頬を隠す。だが時すでに遅し。
入学一ヶ月で、女の子にひっぱたかれましたなんて、恥ずかしくて言えるわけがない。
「ま、まぁ・・こ、転んじゃってね」
『・・・嘘ね、姉さんに嘘を吐こうなんて、百年早いわよ』
流石は〝裏切りのローラ〟なんておっかない二つ名をつけられただけの事はある。
嘘やはったりで、姉の右に出る日は、おそらく姉生きている限り無いだろう。
「あぁ・・うん」
『何があったのか、姉さんに話してみなさい、解決にはならないかもしれないけど、
糸口ぐらいなら見つけられるかもよ?』
「・・・実は」
僕は今日、あったことをありのまま話す。
包み隠さずだ。隠してもしょうがない。どうせ見透かされるのだから。
「・・・・と、言うわけなんだ」
『セシリア・・・セシリア・・・どこかで聞いたような名前ねぇ』
姉さんも、セシリーの事を微かにだが覚えているようだ。
だが、中々名前と顔が一致しないのか、首をかしげて考えている。
「ほら、昔姉さんを、勧誘に来た女性実業家の人がいたでしょ。あの人と一緒に来た女の子だよ、ブロンド髪の綺麗な・・・」
それでようやく思い出したらしい。ポンっと手を打ち、笑顔になる姉さん。
『あぁ、居たわねぇ。あの子かぁ・・・それで、あなた本当に心当たりないの?』
「教室での一件以外、怒る要素が分からなくて・・・」
『ふ~む・・・・いい、アルディ。女の子って言うのは意外と小さいこと、自分が何気にやってることでも気になって、嫉妬とかしちゃうもんなのよ』
「嫉妬って・・・それは、好きな人にやるもんでしょ」
『・・・・アルディそれあなた、本気で言ってるの?』
姉さんの顔がい一気にジト目へと変貌する。本気も何もないんだけどな・・・・。
だって事実だし。
『はぁ・・・もう少し物分かりが良いと思ってたけれど・・・』
「どういう意味さ」
『まぁいいわ、そうね・・・もう一度よく、これまでの自分の行動、
そして相手の行動や言ったことの意味をしっかり考えなさい。絶対その中に答えは有るはずだから』
言い聞かせるように僕に言う姉さん。
よく考えろって言ったって・・・。う~ん・・・・。
『女の子は、いつでも本当の事を言われると弱いものなのよ。
あなたも嘘ばっかり言ってないで本当の事言ってみたら?』
最近は嘘は言ってないし、言う暇もないに等しいんだけどなぁ。
だって最近はセシリーとの訓練に忙し・・・・訓練?
なんだろう、何か引っかかって・・・。
『後は自分で考えなさい。・・・・ハイッこの話はここまで!本題に移るわよ』
パンッとてを叩いて話題を切り替える姉さん。
その後ISの事を色々聞かれたが、僕の頭は〝そんな事〟など全く考えていなかった。
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我ながら馬鹿だと思う。
まさか戦いに夢中になって本来の目的を忘れるとは・・・
鈴は意気消沈していた。
そう、、鈴の〝自然に一夏接近作戦〟は失敗したのだ。
「はぁっ!!」
「しまっ!?」
鈴はアルディの射撃の一瞬の隙に間合いに入ると、軽快なフットワークを駆使して〝ファイアーフライ〟を左右に蹴り飛ばす。
そして無防備になった胴体に蹴りの回転そのままに青龍刀〝双天牙月〟を叩きこむ。
元々重い〝ストライク・バーディ〟だったが鈴の突貫の移動エネルギーも相まって威力は充分。
そのまま、地面にたたきつけられた。
「ふんっ!舐めんじゃないわよ、こう見えてもあたしは中国の代表候補生なんだからね!」
高笑いをして、アルディを見下す鈴に、唐突に声が掛かる。
「おぉ、鈴じゃないか、相変わらずやることが派手だなぁ」
しまった・・・・。
この時、鈴の顔は多分誰にも見せられないほどに〝しまったぁぁぁぁぁっ〟という顔になっていたに違いない。
鈴の頭の中で、小さな鈴たちが自分をパカパカ叩いているのが分かる。
あたしの馬鹿馬鹿馬鹿馬鹿!!
本来の予定では、アルディのISが長距離戦仕様と言う話は聞いていたので、わざとらしく攻め手にかけるふりをして、距離を離し
「あら、一夏自主練?」
「鈴もか、精がでるな」
「クラス対抗戦負けないわよ!」
「俺だって!」
となって、模擬戦を中断するはずだったのだ。
それが、夢中になった挙句、トドメまで・・・。
当然周囲からも注目されるし、気付かれずに一夏に近づくことも出来なくなってしまったのだ。
今回は、一夏から声をかけてくれたからよかったが、かけてくれなければ完全に詰んでいただろう。
だが、何にしてもだ一夏に声をかけられたことには変わりない。
意気消沈するのは、いつでもできるが、一夏と話せるのはこの機会しかないのだ。
そう考えを改め、鈴は更衣室へ消える一夏ともう一人・・・(名前忘れた)を追いかけて行った。
「ふぅ・・・」
一夏達が更衣室へ戻った少し後をつけて鈴が、更衣室へ入る。
あの女も一緒だ。
あの女は既に、着替えを終わっていたが、一夏はまだ着替えておらず、額には汗が滲んでいる。
ふっふっふー・・・鈴は、自分のロッカーから持ってきた、
スポーツドリンクとタオルを手に不敵に笑う。
そしてタイミングを見計らって、飛び出した。
「一夏、お疲れ」
出来るだけ、スマートに。一夏と話せる喜びを押し殺して鈴はあたかも、さらりと言う。
そして持っていたスポーツドリンクとタオルを、一夏に投げ渡した。
「お、っと・・・サンキュー鈴、丁度喉が渇いてたんだ」
「いいわよ、別に」
いい、良いねあたし!超自然じゃん!初めっから、こうすればよかったかのかも。
「ぷはッやっぱり、運動した後のスポーツドリンクは格別だな、そういえば鈴お前自分のは無いのか?」
「え!?」
そうだった、一夏にあげることしか考えていなかったから、
一本しか用意しなかったが、よく考えれば当然の疑問だ。
ど、どうしよう・・・何か・・何か言わないと・・・。
だがその時、鈴にとってそして後ろで、ジト目睨みをしていた箒にとっても爆弾発言が一夏から発せられる。
「・・・じゃあこれ飲むか、お前も喉乾いてるだろ?」
「「え!?」」
待って待って・・これって・・・これって・・・間接キスなんじゃ・・・・!!
当然鈴に断る理由など無い。むしろ早く欲しいぐらいだ。
だが、それを無言で済ませる箒では無い。
「ば、馬鹿もの!!そ、そんな事が許されると思っているのか!!」
「ちょっと、何勝手なこと言ってんのよ、えーっと・・・なんとかさん。一夏はあたしにくれるって言ったんじゃない、一夏の許可があるんだから、あんたには関係ないでしょ!」
「なんとかさん!?」
箒は名前すら覚えてもらえていないことに、そして鈴のあまりの態度に、いつもの怒りボルテージが二倍早く上がっていくのが自分でもわかった。
それを鋭く察すると、鈴はまた言葉を続ける。
「もー、いい加減引っこんでてよ、そこ通行の邪魔だよ」
「き、貴様いい加減にしろ!!」
箒は声を張り上げ、一夏の手からスポーツドリンクをかっさらうと、鈴の見上げる先で、
スポーツドリンクを一気に飲み干す。
それを見て今度は鈴の怒りが一瞬で沸点に達した。
「あぁぁ、あんたね何やってくれてんのよ、あたしのよ、それ!!」
「ふんっ、そうだ一夏、今から代わりに何か買ってきてやろう」
鈴の夢も希望もすべてを打ち砕いた箒が、勝ち誇った顔で更衣室を出ていく。
それを、悔しさで歪む目で、睨む鈴だった。
・・・くっそぉ・・あの女~~~・・・。
戻ってきたら覚えて・・・・ん?戻ってきたら・・・。
鈴は、急激に冷めていく頭で辺りを見回す。
・・・・あたしと、一夏だけじゃん!
そう、さっきのやり取りの間に、ほとんどの利用者は更衣室を去り今は一課と鈴しかいない。
あのバカ女、やったことは許せないけど、いいタイミングで出て行ってくれたじゃない。
「全く、箒も・・・悪いな鈴。あいつも悪い奴じゃないんだけど、ちょっと色々不器用なんだよ」
「別いいわよ、そんなに喉乾いて無かったし」
「でも、結構、欲しそうな・・」
「大丈夫よ!・・・・それより・・・さ」
急に打って変わってもじもじと、しおらしくなる鈴。
それに一夏はほんの少しだけ、心を揺さぶり一夏の頬を少し赤く染めていた。
い、一夏が、その赤くなってる・・・。
一夏が少しなりとあたしを女友達ではなく、
女の子として見てくれているという事が、分かっただけでも鈴はうれしかった。
だが、鈴はあえて、それよりも少し踏みこんで質問をする。
「その、一夏は・・あたしが居なくなって、さみしかった?」
「そ、そりゃ、遊び相手がいなくなったわけだしな」
う~ん、でもこういう所はやっぱり鈍感だ。まぁそういう所も含めて好きなわけだが。
「そうじゃなくてさぁ~・・・なんて言ったらいいのかなぁ」
聞き方に困っていると、足早にスポーツドリンクを買いに行った箒が帰ってくる。
・・・・っち、こいつ早い・・。
箒はダンッと、ベンチにスポーツドリンクを叩きつけるように置くと、チラッと鈴を見て余裕の笑みでこう言った。
「今日は、シャワーは先に使って構わん、ではまた後でな」
それだけを言い残して帰って言ったのだが、鈴には気が気では無い。
し、シャワー!?なに、あの子とどういう関係なの!?
そんな気も知らず一夏は、明るく助かるぜと、手を振っていた。
「い、一夏!!あの子と・・・シャワーって何の話!?」
「え?何のって、シャワーの先か後を決めて・・・」
えぇい、そう言うことじゃないのよ、この朴念仁!!
「だからなんであの子と、どういう関係よ!!」
首をゆさゆさゆすって、問い詰める鈴に一夏は、
ようやく意味を理解した一夏は、鈴を諭し落ち着かせると説明した。
「箒とは、部屋が一緒なんだよ。それでシャワーの順番とか言ってたわけ」
「一緒!?じゃああの子と、寝食を共にしてるってわけ?」
「まぁな、でも箒で良かったよ、幼馴染だし気心も知れてるからな」
そうか・・・・・なるほど・・・。
ふーん・・じゃあ
「幼馴染なら良いのね・・・フフフ・・・幼馴染ならいーんだ・・・フフフフッ」
「り、鈴・・・お前怖いぞ・・・」
あの女見てなさいよ!!!
鈴は不敵な笑みを絶やさず、一夏の不安を余所に次なる作戦を考えていた。
◇◆◇◆◇◆◇◆◇◆◇◆◇◆◇◆◇◆◇◆◇◆◇◆
う~ん・・・わからん。
あれからずっと、セシリーの怒った理由を考えていたけどさっぱりだ。
姉さんは、これまでの事を全部考えてみろって言ってたけど、考えても糸口すらつかめない。
あ~~~もう・・・・。
僕は、何か飲み物を飲もうと冷蔵庫を漁る。
「あれ?」
あいにく冷蔵庫には飲み物は全く入っていなかった。
入っていたのは、食べかけのスナック菓子とゼリーのみ。
・・・・・そう言えばこの前、全部飲んじゃったんだっけ。
仕方がない、購買に行こう。
僕は財布と、カギを持って部屋を後にした。
丁度、階段を降りる直前だったかに、誰かのどなり声がする。
・・・この鋭い声は・・箒?
気になった僕は、その声がした部屋を探そうと思ったが・・・すぐに見つかった。
なにせドアの前が黒山の人だかりだったのだ。嫌でもわかる。
僕は手近な生徒に声をかけた。
「何の騒ぎだい?」
「あ、アルディ君、よくわかんないけど篠ノ之さんと、今日転校してきた子が騒いでるっぽいよ」
ふむ・・・よくわからないシュチエーションだな・・・。
僕は女の子の間を縫って、部屋にたどり着く。
その間、色々当たるものがあったが、邪神よ去れ、信ずる者は救われるのだの精神で乗りきった。
ドアの前に立つと、扉に耳を当てて中をうかがう女子三名と目が合う。
「アルディ君、中々面白いことになってるよ!」
「・・・・君たちもまぁまぁ、面白いと思うけど」
「まぁね~」
褒めてないっていうのに。
「で、何が起きてるの?」
「それがね、あの鈴って子が篠ノ之さんに部屋変わってって言いに来たみたいなのよ!」
あ~なるほど・・・。
そりゃそうだよなぁ、一夏を好きなわけだし自分以外の女の事相部屋なんて聞いたら黙ってられないよね。
僕も、習って耳を当ててみる。
「アルディ君だってやってるじゃん」
「・・・いいの」
耳を澄ませ中の音を聞く。
どうやら鈴と箒が激しく言いあっているようだけど・・・・。
一夏は?
・・・・あぁ、聞こえた。
箒と鈴から選択肢を突き付けられているみたいだ。
・・・ある意味究極の選択だよな。
と、突然
バッシーン!!!
耳をつんざくような衝撃音が中から。
流石の女子たちも、驚きを隠せない。
僕だってそうだ。
急いで部屋のドアを開ける。
幸い鍵は開いているみたいだ。
「今の音、大丈夫!?」
バッと勢いよく中に入ると、そこには〝甲龍〟を部分展開した鈴が、
箒の一閃を受け止めているという、中々ハードなシーンが展開されていた。
「今の、普通の人が相手だったら本当に危ないよ・・・・」
真剣なまなざしで、鈴にそう告げられる箒。
確か箒は全国大会で優勝したと、一夏は言っていた。
そんな箒の一閃だ。鈴の言うとおり普通の人が相手ならまさに凶器だろう。
そしてそのことを、指摘されて気まずい顔で竹刀を収める箒。
なんとかなったみたい。
・・・・・っていうか、僕は言った意味無いね。
まぁ、開けてどうするつもりでもなかったけどさ。
箒を退けた鈴は、一夏に詰め寄る。
そう言えばさっき、ドア越しの会話では約束がどうたらこうたら言ってたな。
「で、鈴・・・約束の事なんだが・・・」
あぁ、やっぱり今からその話なんだな。
「うん、一夏!覚えてるよね!!」
期待に満ちた笑顔で一夏の返答を待つ鈴。
そして一夏がゆっくりと、その内容を口にする。
「えーっと・・・・確か、鈴の料理の腕が上がったら・・・・」
「そうそう!」
「毎日酢豚を―――――おごってくれる・・・・だったか?」
「・・・・・え?」
鈴の顔が固まる。
どうやら違う見たいっぽいけど・・・?
「だから、料理の腕が上がったら毎日酢豚をごちそうしてくれるって約束だろ?」
腕を組んで、確信の顔でうなずく一夏。
目をつむっているから多分、鈴の変化に気が付いていない。
鈴はわなわなと体を震わせ、その瞳には涙も見える。
・・・なんだかデジャヴだなぁ。
そんな事を思っていた直後・・・。
パァンッ!
乾いた音が、部屋に響く。
僕も、そして箒も、もちろん叩かれた一夏本人も。
みなが唖然とする中、鈴の怒号だけがその場を支配する。
「最っっ低!!!女の事の約束一つ覚えてられないなんて、男の、いや人間の風上にも置けないやつねッ!!今度のクラス対抗戦、覚えてなさいよ・・・・・」
冷たく一夏を睨む鈴。そしてボソッとそれでいて背筋の凍るような声で言い放つ。
「殺す・・・」
僕に言われたわけじゃないのに、この迫力・・・。
鈴はそれから足元にあった、ボストンバックを乱暴に肩にかけると、目を覆って出口へと走る。
・・・・・ん?出口。
こっち!?
普段ならすぐに気付くだろう。当然だ。
目で見えるからね。
でも、いま鈴は、涙を一夏や周りの生徒に見せまいと目をふせている。
僕の予想通り、鈴は僕に気付かず、そのまま突っ込んでくる。
「わっ!?」
「とっ!」
僕もそんな事、考えていたのが悪かった。
避けるのが遅れて、鈴に押し倒されてしまう。
「いったぁ・・・あんたねぇ、ボケっと突っ立てんじゃないわよ!!」
「そんなこと言ったって、そっちだって突っ込んできたじゃないか・・・」
ていうかちょっと鈴、暴れないで!
て言うかむしろ早く立って!!
ドアも開いてるし何より、状況が状況だ。
こんなとこ、セシリーにでもみられたら、ますます状況が・・・。
「全く何を騒いでいらっしゃいますの?」
・・・・うそぉ・・・。
今一番聞きたくない声が、後ろからする。
・・・終わった。
そして、セシリーが姿を現した。
「・・・・・・」
「あ・・・・・」
それしか、声が出なかった。
向こうは、そんな声すら出ないらしい。
一瞬だがセシリーの顔が、苦虫をかみつぶしたように歪んだのを僕は見逃さなかった。
だが次の瞬間には、いつも通りの調子で、鈴に手を差し伸べ鈴を立たせる。
「何があったのかは知りませんけれど、お気をつけなさいな」
「うぅ・・・まぁ、ありがと」
それだけ言い残し、セシリーはすました顔でドアの視界から消えた。
だめだ、追いかけないと。
でも追いかけて何を言えば・・・
えぇい、そんなの後で良い!
「セシリーッ!」
大声でセシリーを呼ぶ。
そのまま行ってしまうかと思ったが、意外にも足を止めてくれた。
「何でしょう?」
「あ、いやその・・・」
だがその次が出てこない。
頭が真っ白になるっていう言い方は、あながち間違っていないようだ。
「何もないのなら、呼ばないでくださいまし。〝アルディさん〟」
「え・・・・!?」
あぁ・・・・・くそ・・・。
アルではなくアルディさんと呼んだ。
それはつまり・・・・そう言うことだ。
完璧な拒絶。
・・・・これは、大変な事になった。
話するとかしないとかの次元じゃないぞ・・・。
結局、セシリーと話すことができないままクラス対抗戦を迎えてしまった。
◇◆◇◆◇◆◇◆◇◆◇◆◇◆◇◆◇◆◇◆◇◆◇◆
「バイパス安定。どう調子は?」
薄暗い部屋。
PCのモニターが発する光だけが、人の表情をかろうじて映し出す。
映し出された表情や、体の形状から判断するに、声の主は女性の様だ。
「大丈夫です・・・・ちょっとまだ重いですけど」
「大丈夫、すぐになれるわ。もうすぐ、システムも着床するころだから」
女性の声に、少年の苦笑をはらんだ声が反応する。
闇に浮かぶシルエットは鋭角的で、バックパックに四つの砲をラックしている。
一見するとISの様だが、その姿はどことなく工業的で、ISの様なスタイリッシュさは見受けられない。
「フフ、これを見たら、なんて言うかしらね。皆やっぱりISだって言うのかしら」
「外見そうですもんね」
「でもこれは、そんなものじゃないわ・・・・。
篠ノ之束・・・・。世界を馬鹿にしたツケは大きいわよ・・・私たちが見せてあげるわ・・その大きさを・・」
女性は、いったん言葉を区切り不敵に笑う。
「このIS-Nでね」