IS インフィニット・ストラトス~偽りの翼~   作:のろいうさぎ

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第7話~あのサクラメントの夕日~

クラス対抗戦だけに、アリーナの観客席は満員御礼だった。

そりゃ当然だろう。

今日戦うのは、中国の代表候補生の鈴と、世界で二人だけISを動かせる男の一夏なのだ。

否が応でも、注目が集まる。

一応リザーブで待機しておけと言われ、ISスーツに着替えて、ピットで待機しているものの、

今日、出番はないだろうね。

僕の祈りが通じたのか、一夏は大きなミスもなく無傷で今日までたどり着いたのだから。

・・・それに今僕はそんな事を心配してる場合じゃないんだよなぁ・・・・。

僕は、セシリーの事を思い浮かべる。

今思っても、タイミングの悪さと、運の悪さの二つに頭が痛くなる。

・・・まるでドラマ見たいじゃないか。

流石はセシリー狙いは外さないってか?

・・・冗談じゃないよ。

そんな狙いは外してほしかったなぁ・・・。

僕は、ため息交じりにチラッと時計を見やる。

もうそろそろ、来てもいいことなんだろうけど・・・・。

と思っていた矢先。

「あれ、アルディ準備早いな」

選手がピットへご到着だ。

「まぁ僕の場合、ただISスーツ着て待ってるだけでいいからね、一夏みたく出場選手じゃない僕は気楽でいいよ」

「自分で言うなっての」

ははっと笑いあうが、全然気持ちが晴れません!!

一夏は早速、〝白式〟を展開し、準備を始める。

「一夏、お前以前アリーナで鈴のISを見ただろう?」

一緒にいた箒が、一夏に聞く。

「あぁ、あの赤っぽい奴だろ、見た見た」

「今回は、どうやら接近戦になりそうだな、セシリアの時とは違って。」

「だな、流石に俺も、毎日お前に鍛えてもらってるんだ。

代表候補生相手とはいえ、女に遅れはとらねぇよ!」

力強い返答に、箒も満足そうにうなずく。

「でも、一夏気を付けなよ。鈴のISのパワーは本物だからね」

「そういや、お前吹っ飛ばされてたな」

地味に恥ずかしい・・・。

「と、とにかく、僕の〝ストライク・バーディ〟を一撃であの高さからたたき落としたんだ、注意するにこしたことはないだろ?」

「まぁな・・・」

パワータイプは、組み付かれると振りほどけない。

僕のはまだ重さや装甲分の厚さがあったから、ほぼ無傷(痛みはかなりあったけど)で済んだけど、あれが〝白式〟だったら、流石に無傷とは行かないだろう。

更に鈴には、それなりのスピードがある。

それにあれは、全然本気じゃなかった。

それを思うとやはり代表候補生と、そうでない人との、

実力差は月とすっぽん並みに離れているのかもしれない。

言うまでもなく厄介な相手だ。

『聞こえているか織斑?』

スピーカーから織斑先生の声がする。

一夏はそれに、ISのオープンチャンネルで答えた。

「はい、聞こえています」

『そろそろ、時間だ。準備は良いな?』

「・・・大丈夫です」

『よし、サウスバード、篠ノ之お前たちは、管制室に来い。特別に特等席から見せてやる』

特等席だってさ。

まぁ、立ち見やピットのリアルタイムモニターよりは、鮮明に見えるだろう。

「一夏・・・・」

「なんだよ、箒。その顔は」

「前にも行言ったが、負けるなよ?」

「あぁ!」

一夏の力強い肯定の声が聞こえたと同じぐらいのタイミングで、

ピットの通路ハッチは閉じられた。

「まぁ、大丈夫だって」

「・・・ふん、し、心配などして・・ないぞ!?」

今さら、言い訳しても遅いよ。

 

◇◆◇◆◇◆◇◆◇◆◇◆◇◆◇◆◇◆◇◆◇◆◇◆

 

セシリアは、多くの観客が詰めかけた客席の最上段から、アリーナを見降ろしていた。

ただ、そこに明確な理由はない。

ただ、なんとなく。

本当になんとなくそこにいた。

あの時見た光景。

誰がどう見ても、彼は被害者だった。

彼は悪くない。

ただの事故なのだから。

でも、どうしてもセシリアは、その状況を見て事故だから仕方ないと割り切ることができなかった。

相手が鈴だったから?

自分じゃ無かったから?

分からない。

何度考えても・・・。

もう、そんなこと考えても仕方がないというのに。

彼は・・・そう・・・もう私を必要としていない。

初めから誰でもよかったのだ。

でなければ、鈴との模擬戦の時もあんな楽しそうな顔はしない。

自分の時には、あんな顔見せたこと無かったのに。

セシリアは焦点の定まらない目でボーっと、アリーナを見ている。

何も、感じず。

何も考えずに。

 

◇◆◇◆◇◆◇◆◇◆◇◆◇◆◇◆◇◆◇◆◇◆◇◆

 

「逃げずに来たじゃない!」

鈴の自信と余裕の声が、ISのチャンネルから聞こえてくる。

「誰が逃げるかよ、誰が!」

「覚悟なさい。今日のあたしは、初めっから何もかもが振り切れちゃってるんだから!!」

どうやらその言葉に嘘は無いらしい。

目の色が違うし、何より手に持っている、〝双天牙月〟が今にもへし折れそうだ。

一夏は、若干冷や汗をかきながらも気合を入れ直す。

目の前にいるのは、代表候補生なんだ。

鈴とはいえそれは変わらない。

「鈴!俺が勝ったら、約束の事説明してもらうからな!!」

「大丈夫よ、その必要はないわ。だって・・・」

鈴は大きく両手の〝双天牙月〟を振り回すとそれを柄の部分で連結させて一本にする。

そしてそれを大きく振りかぶって、こちらへ投擲してきた。

「あたしが勝つから!!」

高らかな勝利宣言と共に、試合開始のブザーが鳴る。

鈴の攻撃は若干早かったが、到達がブザー後だったため有効だ。

「鈴!頭に血が上って、血迷ったのか?自分の武器放り投げて・・・丸腰だっ!!」

一夏は一気に間合いを詰めると、丸腰の鈴に切りかかる。

「もらった!」

「あんた、馬鹿ね・・・あたしは代表候補生よ!!」

その時、一夏が衝撃音と共にアリーナの側壁へ吹き飛ばされる。

かろうじて、体勢を持ち直せたものの、アリーナ側壁への直撃。

痛いでは済まない激痛が体を走る。

い、一体なんだ!?

 

◇◆◇◆◇◆◇◆◇◆◇◆◇◆◇◆◇◆◇◆◇◆◇◆

 

一夏が吹き飛んだ映像は、管制室のモニターでも確認できた。

「なんだあれは!」

箒が思わず叫ぶ。そりゃそうだ僕も何が起きたのか分からない。

すぐに、鈴のISのデータを閲覧し山田先生が、答えた。

「〝衝撃砲〟ですね・・・空間圧縮兵器の一つです」

「空間圧縮・・・?」

聞き返した僕に答えたのは、織斑先生だった。

「空間に圧縮をかけ砲を形成し、その余波で生じる衝撃波を砲弾変わりに打ち出す、第三世代兵器だ。

ウェイトがある分、即対応時の射撃には向かんが・・・」

一度目をつむり、そして勢いよく目を開く。

「その砲弾は目に見えない」

目に見えない、砲撃・・・・。

そんなもの積んでいたのか。

やっぱりあの模擬戦、ただ遊ばれただけだったんだ、僕は。

チラッと箒を見やると、手をきつくグッと握っている。

これが安全の考慮された、命の危険の無い模擬戦であってもやっぱり、心配なんだろうね。

「それに、あの〝衝撃砲〟には砲身傾斜の制限が全くありません・・・」

つまり、見えない砲撃を三六〇度制限なく撃てるということか。

・・・・本当に厄介な相手だ。

と、急に一夏の飛び方が変わる。

何かするつもりなのか?

初めの、間合いを詰める方法から一転、鈴から距離を取り始める一夏、

一夏に射撃武器はないし・・・・離れて良い事なんて・・・。

「〝イグニッション・ブースト〟を使うつもりだな・・私が教えた」

「イグニッション・ブースト?」

また聞き慣れない単語が出てきたぞ。

それに人差し指を建てて山田先生が、説明する。

「慣性エネルギーを使用した、特殊加速技術ですね、外部エネルギーを一度取りこんで圧縮。

それを一気に放出する事で、一瞬でトップスピードに到達するテクニックです」

「あの馬鹿でも、出しどころさえ間違わなければ、代表候補生と互角に渡り合えるテクニックだが・・・・チャンスは一度きりだ」

一度・・・。

代表候補相手にたった一度の少なすぎるチャンス。

ものに出来るのか・・・・。

モニターを見上げる僕の手も箒同様、グッと握られ手汗で、びっしょりだった。

 

◇◆◇◆◇◆◇◆◇◆◇◆◇◆◇◆◇◆◇◆◇◆◇◆

 

距離を取るんだ。

チャンスは必ずある・・・。

いくら、砲身傾斜が無制限って言ったって、打ち出す所は一つしかないんだ。

ランダム機動を繰り返せば、必ず追いきれない角度ってやつが出てくる。

一夏は、ひたすらその機会を待つ。

鈴の衝撃砲〝龍砲〟は今も確実に自分をとらえている。

だが、どうやらそれを鈴はオートにしているようだ。

狙いだけ定めてタイミングだけ鈴が指示している。

それなら!

機械は正確だ、驚くほどに。

だがその正確さがアダになることがある。

一夏は方向転換から〝イグニッションブースト〟の移行を、絶え間ない訓練の成果で完璧にこなす。

一瞬、本当に一瞬だが、〝龍砲〟が一夏をとらえきれず砲身が一夏からそれた。

今だ!!

それと同時に、圧縮されたエネルギーは一瞬で〝白式〟を、一夏を、トップスピードまで押し上げる。

「ぜあぁぁぁぁぁぁぁ!!!」

「ッ!?」

刃がもう一歩で鈴に届く、その時だ。

アリーナは、轟音と巨大なクレーター、そして砂煙に包まれた。

 

 

◇◆◇◆◇◆◇◆◇◆◇◆◇◆◇◆◇◆◇◆◇◆◇◆

 

 

何だ!?

モニターから一夏達が見えなくなって、次に見えた時には何やらクレーターの中心に機械的な〝何か〟がいた。

「試合中止!織斑、凰!すぐにピットへ避難しろ!」

織斑先生の、切迫した声が緊急事態だという事を、否が応でも認識させる。

「IS・・・なのか?」

「アリーナにはシールドがある。それを突き破ってきたんだ。少なくとも通常兵器じゃないね」

冷静そうに言う僕だけど、前以上に手汗は凄いし、冷や汗だって止まらない。

その時、耳を疑いたくなるような言葉が一夏の口から飛び出した。

『いや・・・・俺達でなんとか抑えよう』

何だって!?

そう思ったのは箒も同じだったようだ、山田先生のインカムをひったくると声を張り上げる。

「一夏!もうすぐ、教師陣が到着する!早くピットへ戻るんだ!!」

『箒・・・でも、それにはまだ時間がかかるんだろ?』

「そうだな・・今三年の精鋭がシステムクラックを実行中だがすぐと言うわけにはいかん」

腕を組んだまま、淡々と述べる織斑先生。

それを聞き、だったらと続けた一夏。

『少なくとも、その時間分稼いでみる・・・・大丈夫さ、こっちには代表候補生もいるしな』

そう言って鈴を見る一夏。

鈴の顔も、今までと比べ物にならないほど真剣だ。

でも・・・相手が相手だし・・・。

「・・・・・分かった。その代わり無茶はするな。少しでも身の危険や命の危険を感じたら、すぐにピットに戻れ、良いな?」

『・・・はい』

力強くうなずいて、通信が切れる。

沈黙の訪れた管制室に、次に響いたのは山田先生の声だった。

「織斑先生!」

「大丈夫だ・・・本人たちがやれると言っているんだ・・・・任せてみようじゃないか」

全く弟も、弟なら姉も姉か・・・・。

あれ・・・それはひょっとして、僕が言えない?

 

そして再びモニターが開くと、そこには一夏・鈴のペアが、アンノウンと戦っている姿をがあった。

アンノウンは、上半身と下半身のバランスが明らかにとれていない、奇妙な形をしていた。

頭部には複数のカメラが動き、動きもどこか〝人工的〟だった。

それでも、一夏の〝一撃必殺〟のザンゲキはことごとくかわされ、隙を縫って攻勢に転じる姿は確かに人間っぽい動きのようにも見える。

・・・・・なんだろう、この変な感じ。

僕はその違和感の正体をいまだつかめていなかった。

そうこうしているうちに、一夏達が追い込まれていく。

アンノウンの放ったレーザーが、よけきれなかった一夏のスラスターに当たり、体勢を崩す。

それが絶望的な隙を生む。

その時誰もが思った。

・・・・・まずいと!

しかし、またもアリーナは、轟音に包まれてしまった。

二度あることは三度あるとはよく言うが、これは一度あることは二度あるだ。

砂煙が晴れると、一夏とアンノウンの間に、入るようにして一機の黒いISが立っていた・・・。

 

 

 

◇◆◇◆◇◆◇◆◇◆◇◆◇◆◇◆◇◆◇◆◇◆◇◆

 

 

なんだ、何か起こったんだ!?

それに、コイツは一体。

俺の目の前に立つ〝ソレ〟工業的な角ばったフォルムに、

バックパックに二門の荷電粒子砲を背負っている。

顔はバイザーで覆われており表情を確認する事は出来ないが、男と言う事だけは分かった。

「お、お前は・・・・」

「・・・・・・」

無言でこちらを、一瞥したあと、両手に構える荷電粒子砲がアンノウンに向けて放たれる。

その威力はすさまじく、〝龍砲〟の直撃にも耐えたアンノウンが、いとも簡単に吹き飛ばされる。

体勢を立て直す暇さえ与えず、〝ソレ〟はアンノウンに砲撃を浴びせていく。

それはどれも正確で無駄が無い。

もはやそれは、戦闘ではなかった。

あれだけ俺達を苦しめたアンノウンがただの動く的になり下がっている。

両腕を吹き飛ばされても尚、攻撃姿勢を取るアンノウン。

だが、両手に多くの兵器を集中させていたアンノウンは、ほとんど丸腰に近い状態だ。

それに対しても、なんの躊躇なくトリガーを引いていく。

程なく、すべての武装をつぶされただ立っているだけになったアンノウンに、とどめの一撃が放たれる。

「・・・・・・・鉄クズですね」

冷たくつぶやき、頭部・胴体・脚部のすべてに一瞬で荷電粒子砲の雨が降り注ぎ、大爆発を起こして吹き飛ぶアンノウン。

そこで一夏はハッとする。

「お前!操縦者は!」

「・・・・・大丈夫です、これは無人のISですから・・・それより・・・」

〝無人のIS?〟

そんなものがあるのか?

普通ISは人間が乗りこまないと動かない。

ISとはそういうものだ。

だがこれは無人・・・。

呆然とする俺に、〝ソレ〟が近寄ってくる。

助けてくれたはずの相手に対して、嫌な汗が流れる・・・。

コイツは・・・・コイツは!!

「君も、鉄クズにしてあげます・・・」

敵だ!!!

「一夏下がって!!!」

「っ!」

鈴が〝龍砲で牽制すると、予想外の攻撃だったのか一瞬隙が生まれる。

スラスターがうまく稼働しない〝白式〟に鞭打ち、無理やり浮上して、追撃の荷電粒子砲を回避する。

まずい・・・これはまずい・・・。

シールドエネルギーは、ほぼ底を尽きかけ、鈴も、アンノウンに片側の〝龍砲〟を破壊され、

満足に火力を発揮できない状態だ。

そんな中で、あれだけの火力を持つISを相手になど出来るわけもない。

・・・・どうする!!

 

◇◆◇◆◇◆◇◆◇◆◇◆◇◆◇◆◇◆◇◆◇◆◇◆

 

ぼうっとしていたセシリアだったが、この非常時にまで呆けているような人間では無い。

これでも、腐っても候補生なのだ。

すぐに頭を切り替え、情報を整理する。

進入してきたISは一機・・・。

装備はあの四門の荷電粒子砲ですわね・・・。

荷電粒子砲は、一発単価は高火力だが、その反動の大きさや狙いのつけにくさ、連射速度などは

以前アルディの〝ファイアーフライ〟を撃った時に分かっていた。

先ほどの戦闘で、セシリアの目は、あの正体不明機が射撃の際に砲身がブレ、わずかに

狙ったところへ撃てなかったことがあったのを見逃していなかった。

一方こちらの装備は、反動の少ないレーザーライフルに自立機動のビット〝ブルーティアーズ〟がある。

大丈夫だ。やれる。

そこまで考えて、こんな事を考えられたのはアルディのおかげだ、と言う事に気が付く。

アル・・・・。

あんなに拒絶反応を見せていたセシリアだったが、正直彼に会うのが怖かった。

本当に今度こそ、彼の口から〝もういいよ〟と言われてしまうのではないかと。

自分はまた、失ってしまうのか大切なものを・・・。

って、いけませんわ・・今は集中しないと!!

かぶりを振って沈みそうになった気持ちを切り替え、セシリアは〝ブルー・ティアーズ〟を起動し、

さっきあのISが撃ち抜いたアリーナのシールド破損部へ機体を躍らせた。

 

 

◇◆◇◆◇◆◇◆◇◆◇◆◇◆◇◆◇◆◇◆◇◆◇◆

 

 

一体何なんだ、あいつは・・・。

目の前で信じられないものを見ている。

僕は、あのISの介入と同時にロックが解除されたピットへ来ていた。

当然、ロックが解除され田と言う事は教師陣ら制圧部隊も駆けつけるということだ。

ようやく、終わった。そう安堵しかけたが、どうだ?

国家の代表や、代表候補だったこの学園の教師陣がハエのごとく叩き落とされてくる。

既にアリーナの地面には、何十体という〝打鋼〟が行動不能状態で墜落している。

・・・・まずい。

あれは本当に。

「織斑先生!」

「無理だ・・・もう機体が無い・・・」

苦虫をかみつぶしたような顔で、告げる織斑先生。

一夏達も、なんとか逃げ回っているが、もう機体も人間も限界だ。

僕も出ていきたいが、あの実力差では・・・。

諦めかけたその時アリーナの上空で何かが、きらめいた。

それは鋭角的なデザインを持つ、イギリスの専用機。

〝ブルー・ティアーズ〟・・・セシリー!!

程なく、ブルー・ティアーズの攻撃が始まる。

流石の黒いISも、エネルギーを使い過ぎたのか、攻勢に転じることなくその攻撃の回避に専念している。

その間に一夏達も距離を取って一番近いピットへ避難する。

一夏達の無事に安堵しながら、セシリーの攻撃をことごとく回避する黒いISに恐怖と戦慄を覚えた。

凄い・・・・一発も当たらない。

エネルギーが無いにしても、あの機動力は・・・。

だがそのエネルギーが無いのだろうという考えは、黒いISの取った次の行動で疑問に変わる。

黒いISが、地上でまだ動けるISが構えた、銃に向かって荷電粒子砲を撃ったのだ。

なぜだ・・・?

今のは別に撃たなくてもよかったはずだ。

反応できていたのだから・・・・・。

まさか!!

僕は、ISを展開して一気に飛ぶ。

セシリーが・・・セシリーが危ない!!

ハイパーセンサーが射撃に集中するセシリーの後ろから急速に接近する紫色のISをとらえる。

頼む!!間にあってくれ!!!!

必至で重い機体を加速させる。

スラスターも悲鳴を上げるが知ったことじゃない!

むしろ馬鹿でかいんだから、もっと加速しなよ!!

そのISは、手に槍を持っている。

それを構え、今まさにセシリーに切りかかろうとしている。

やめろぉぉぉぉぉぉっ!!!!!

そして槍は振り下ろされた。

 

 

 

◇◆◇◆◇◆◇◆◇◆◇◆◇◆◇◆◇◆◇◆◇◆◇◆

 

 

あ、当たらない!!

この私を遊んでいらっしゃいますの!?

黒いISは、セシリアの攻撃を、あれよあれよと回避し、エルロンロールやインメルマンターンなど〝曲芸飛行〟まで入れるほどの余裕ぶりを見せつける。

それは、プライドの高いセシリアにとって耐え難い屈辱だった。

ライフルを持つ手が、怒りで一層強くなる。

絶対に当てて見せますわ・・・・!

ビットのけん制で動きを制限しつつ、ライフルの照準を合わせる。

ハイパーセンサーによる補正で敵ISの操縦者の顔まではっきりと見える。

当てる!!

そう強く念じ、狙いを定めトリガーを引こうとした時、相手がこれまでにないぐらい不敵に笑った。

「・・・・ッ!!」

ハイパーセンサーの警告音と共に顔を上げる。

そしてそこでようやく後方からくるISに気が付いた。

完全に致命的なミス。

〝射撃時における周囲の安全確認不良〟

こんなところで終わりですの・・・・。

セシリアはそう思った。

せめて彼と、仲直りだけはしたかったですわね・・・。

ゆっくりと目を閉じる。

・・・・だが、身を切り裂くような痛みも、何も感じなくなるという死の感覚も、何も訪れない。

セシリアは、疑問に思って目をあける。

そこには、仲直りしたいとたったいま思った少年がいた。

「あ、アル・・・・」

「諦めるなんて・・・・らしくない・・・・・・こういう言い方するとまた、叩かれる?」

ハハっと笑う彼だったが、その顔は苦痛にゆがんでいる。

見ると相手の槍が、深く腕のアーマーに突き刺さっていた。

ISは、より操縦者が扱いやすいように手で持った感覚。

つまり柔らかいや固いとかそう言った感覚をフィードバックする。

そしてそれは痛覚も例外ではない。

恐らく今、彼は気が飛びそうなほどの激痛に耐えている。

そう、拒絶を示した、あんなにふうに言ってしまった自分を守って。

その彼が、苦しみながらも声を出した。

「せ、セシリー・・・・正直言って僕はまだ、どうしてセシリーが怒ってるのか・・・・

はぁっ、見当もつかない。でも・・・でもね・・・これだけは言えるんだ。

君は僕にとって必要な存在だから・・・。

怒らせといて、都合のいいこと言ってるかも知れないけど、

これからもさ・・・色々教えてほしいこといっぱいあるんだ」

あぁ・・・自分は本当に馬鹿だ。

あの時もそう思ったが、あのとき以上に自分は大馬鹿ものだ。

初めは変な嫉妬心からだったのかもしれない。

アルが鈴と笑顔で模擬戦をしている所見て、なんで自分じゃないのかと思った。

そして一方的に拒絶して、気付いてくれないことにいら立って、彼を叩いて。

そのまま自分で勝手に、もう私は必要ないんだと決めつけて・・・・。

彼も自分を残してどこかへ行ってしまうのだと。

でも、それは違った。

彼はどこへも行ってなどいない。

彼はそこにいる。

「物分かりの悪い僕だから・・・・何言っても一回じゃ、よく覚えられない僕だから・・・

だからその度に、セシリー、君が・・・・はぁはぁっくぅ・・・君がその度に僕に言ってよ・・・

いつも見たいに笑ってさ、怒ってさ・・・ね・・・」

そう彼は、ここにいる。

私の目の前に!!

セシリアは先程までの動揺など毛ほども見せずに、目にも止まらぬ速さでビットをコントロールして、紫色のISに攻撃を加える。

「てめぇッ!!」

女性の乱暴な口調が聞こえるがセシリアはそんな事気にも留めずに、

いつもの気丈な声で言い返す。

「よくも人の殿方に、手を出してくださいましたわね・・・・その代償は大きいですわよ!」

ビットの攻撃に、気を取られた一瞬の隙を突いて、

セシリアのレーザーライフル〝スターライトMkⅢ〟が火を噴く。

「ちいぃっ!!この!!」

その閃光は、またたく間に紫色のISを切り刻む。

主兵装であろう、槍も貫かれて爆散した。

味方の危機を察して、離脱する紫色のISを援護すために黒いISが救援に駆けつけるがそれには、体勢を立て直したアルディのISが迎え撃つ。

「君の火力と、僕の火力・・・・どっちが上だろうね?」

息をなんとか整え、いつもの口調で話すアルディにセシリアは安堵した。

あの黒いISの圧倒的な実力を見ても、セシリアにはアルディが、

負けることなど想像できなかった。

それは、アルディを信じているから。

それは、アルディを認めているから。

そして何より、

アルディが好きだからである。

「まいりますわよ、アル!」

「蹴散らそう!!」

互いに自信たっぷりに頷くと、黒いIS目掛けてトリガーを引いた。

 

◇◆◇◆◇◆◇◆◇◆◇◆◇◆◇◆◇◆◇◆◇◆◇◆

 

よかった。

本当に・・・。

間にあって。

そして何より、セシリーと仲直りできて。

アルと呼ばれた時、それがたまらなくうれしくて、そして心強かった。

負けるわけにはいかない!

いや違う。

セシリーがいるのだ。

負けるわけがない。

黒いISは一旦距離を取ると、背面にラックしていた荷電粒子砲に持ちかえ、

再び狙いを定めて撃ってくる。

ケーブルが見えていることから、どうやら荷電粒子砲は充電式のようだ。

とすると、再充電されると厄介だな。

「セシリー!」

「即攻ですわねッ!」

〝ブルー・ティアーズ〟のビットが舞い、黒いISの周りにレーザーの花を咲かせる。

「っく、悪あがきを!!」

言いながらも、的確な操縦でレーザーを避けるのは流石だが、ならこれはどうかな。

僕は〝ウェポンスクエア〟のミサイルハッチを開き小型ミサイルを発射させる。

そのミサイルを神業とも言うべき、タイミングとコントロールでセシリーのビットが不規則に

爆破させていく。

「これは!?」

不規則な爆発に対応しきれずに、思わず攻撃と機動をやめる黒いIS。

その隙を待ってたんだ!

背部の〝ウェポンスクエア〟が前にせり出し、小型スラスターが高度を維持する。

爆煙が晴れた時、相手が見たものは、自分の方へ向けられた絶望的な火力だった。

「Power is justice!・・・アメリカ人に喧嘩売ったこと後悔するんだね」

「っく、させるかぁ!!」

相手は素早く、機体を立て直し一気に間合いを詰めてくる。

・・・・・かかったね。

黒いISの射線上に鮮やかな青色のISが躍り出る。

「なっ!?」

「フィナーレですわ!」

セシリアのビットが僕の行動に気を取られ、完全に無防備となった黒いISの真後ろから

スラスター部を正確に攻撃する。

制御を失った、ISはセシリアの上を通過。そして補助スラスターの点火と

PICのおかげでようやくその動きを止めることに成功し、僕の高圧荷電粒子砲に耐えるべく〝頭部を中心に防御する〟。

「見かけにだまされちゃだめだよ?」

「何といいましても彼は・・・」

「「嘘つきだからね」」

ズガァァァァァァァァンッ!!!!!

「ぐあぁぁぁっ!!」

敵にとどめを刺したのは、腹部への荷電粒子砲の一撃だった。

この作戦はこんな感じだ。

まずミサイルとセシリアのビットで弾膜と煙幕を貼り、視界を遮った後

僕は〝アヴァランチ〟の準備をしてセシリアはその影へ。

そして、相手が隙のでかいこの〝アヴァランチ〟を阻止すべく突貫してくる。

そこでセシリーのビット攻撃が役に立つ。

周囲に気を配れるだけの実力があっても、それは常にと言うわけではない。

追い込まれればそんな余裕など、どこかへ消し飛んでしまうものだ。

そうして、ビットでスラスターを破壊した後は、ご覧のとおりである。

僕は小型スラスターだけで、ゆっくりと旋回。

見た目で大きいのが来ると思わせておいての、ハッタリ攻撃だ。

いやぁにしても、面白いぐらいに旨くいったね。

墜落していく黒いISを紫のISが、再び降下して素早く回収していく姿を見ながら、僕は満足げに笑う。

ふぅ・・・・・。

色々あったけど、本当に仲直りできてよかった・・・。

ほんと、記念に花火でも打ちあげたいぐらいだよ。

ボンッ!

そうそう、そんな感じの音でさ。

バンッ!ボンボボンッ!

ん?なんだかやけに近いな。

バゴォォンッ!!

ひと際大きな音にびっくりするのもつかの間、スラスターが炎を吹いて自壊する。

「うぇうそっ!?」

多分あの時だ。

セシリーを助けるために、無理な加速を行ったあの時。

悲鳴上げてたもんなぁ・・・・ってそんな事言ってる場合じゃない!

この高さから落ちたら死ぬ!!

って、あれ!

IS自体も限界だったらしい。エネルギー切れでリミット・ダウンが始まる。

いよいよまずい!!

僕は、目をつむるが、いつまでたっても地表に叩きつけられないし落下感も無い。

むしろ何か、暖かいものに包まれているような感覚を覚えた。

ゆっくりと目をあけると、僕はセシリーに優しく抱きかかえられていた。

しかも・・・・その・・・。お、お姫様だっこで・・・助けてもらって言うのもなんだけど、

もの凄く恥ずかしい・・・・。

顔を真っ赤にする僕に、セシリーは悪戯っぽく肩目を閉じて微笑みかける。

「全く、女性にエスコートさせるのはマナー違反でしてよ?」

「き、緊急時はOKってことにしよう」

「ま、仕方ありませんわね」

満面の笑みで笑いかけられ、更に僕の顔は熱くそして赤くなったまま、地上へと降りて行くのだった。

 

 

 

ピットへ降り立つと、そこには織斑先生と山田先生そして、先にピットへ避難した一夏達が僕たちを出迎える。

「アルディ!怪我大丈夫なのか!?」

怪我?・・・あ。

今さらになって痛みが、よみがえってくる。

右腕に走った激痛に再び顔をゆがませる。

みると、アーマーを突き抜けた敵の槍は肘のあたりを、深く切り、血で真っ赤に染まっていた。

うわぁ・・・・こんなのでさっき、僕は荷電粒子砲を撃ったのか。

「サウスバード、先に治療して来い・・・変に細菌でも入ったら厄介だ」

織斑先生がしれっと、言い放つ。

・・・・もう少し心配してくれてもいいのに・・・。

トボトボとセシリーに促されて、治療室へ向かう。

それに一夏達も追随した。

ピットのハッチをでる時、背を向けてだが織斑先生がぶっきらぼうに言い放った。

「まぁ・・・なんにしても、全員無事でよかった」

それを見て、クスクス笑う山田先生が印象的だ。

それにつられて、皆の顔も笑う。

チラッとこちらを一瞥した、織斑先生の顔は照れて少し赤くなっていた。

 

「はい、これでよし!」

包帯を巻き、患部をポンと叩く保健室の先生。

「いっつ・・・・」

た、叩かないでくださいよ・・・。

痛みで体が、ビクッと反応する。

「これぐらい我慢なさい、男の子でしょう?」

これぐらいって・・・こっち切られてるんですけど。

はぁ・・・。

僕は礼を言って、保健室を後にする。

保健室の前のベンチには、皆が待っていた。

「それで、怪我はどうだったんだ?」

「腕を数針ね・・・ま、逆にそれだけですんだんだから、運が良かったよ」

「あんた意外と頑丈なのね、また吹っ飛ばしてあげようか?」

鈴が前と変わらず、だが前よりもどこか柔らかい言い方で、冗談交じりに言う。

冗談でも怖いよ・・・。

いまやられたら、それこそ体がバキバキになりどうだ・・。

目に見えた外傷はこの腕だけだったけど、見えない所のダメージも結構あるらしい。

保健の先生にも、しばらくは無茶は絶対にだめだと言われた。

・・・できても無茶なんてしたくないよ。

「そうか、よかったな・・・。あぁ~・・なんか安心したら、急に腹が減ってきた・・・着替えて食堂でも行かないか?」

一夏、君って・・・・

本当にずぶとい神経の持ち主だね・・・。

まぁ僕もお腹は減ってたし行こうかな・・・・。

僕も行くと言いかけた時、これまで一度もセシリーが口を開いていないことに気が付く。

見るとセシリーはどことなく、申し訳なさそうな、でも怪我が大したことなくて安心もしているような、そんな複雑な表情を浮かべていた。

・・・ふぅ。

「一夏、ちょっと用事があるから〝僕たち〟は遠慮するよ」

それを聞き自然に、そうか、それなら仕方無いと流す一夏と、ニヤニヤした目で見る鈴と、

そして、やれやれといった顔をする箒。

三者三様の顔で、僕たちを残して更衣室へと消える。

「セシリー、着替えたら・・・シャワー浴びた後でもいいけど、ロビーで待ってるからね」

「え、あの・・・アル・・」

そう言い残し、僕も更衣室へ消えた。

 

 

制服に着替えドカッと、更衣室の椅子に腰を下ろす。

・・・・今日のあれは何だったんだろう。

・・うまく撃退できたものの、実力は目に見えて違ったよな。

もっと、強くならないとな。

〝ストライク・バーディ〟だってまだ完全に使いこなせていない現状で勝てたのは、

やはりセシリーがいたからだろう。

誰かを守るって柄じゃないし、セシリーよりも弱い僕がそんな事思ってもしょうがないんだろうけど、何時か、何かを守れるぐらいには強くなろう。

いつしか、僕の中にはそんな気持ちが芽生え始めていた。

・・・・ってわッ!

意外に時間が経っちゃってたのか!!

遅れたら、セシリーに悪いし、急ごう。

僕は手早く荷物をまとめると、足早にロビーへと向かった。

 

 

夕焼けが世界を橙色に染め上げる。

僕が、ロビーに着くとそこには既にセシリーが立っていた。

橙色の光に照らされるセシリー。

ブロンズの綺麗な髪を、白い肌を、夕焼けが染め上げる。

・・・・綺麗だ・・・。

何か映画の一部分でも切り取ったかのような光景に心を奪われる。

「どうかしましたの?」

「え、あ・・・あはは・・」

セシリーが不思議そうに、訪ねてくる。

笑ってごまかしたが、セシリーにはどうやらお見通しだったようだ。

フフフっと笑って、悪戯っぽく手を差し出してくる。

「それで、私をどちらへエスコートしてくださいますの?」

「・・・こちらですよ、お嬢様」

僕はその手を取ると、ある場所へ向かって歩き出した。

そこは、僕が偶然見つけた、穴場のスポットだ。

見つかりそうで見つからない。

僕は校舎の上へ、どんどん階段を昇っていく。

そして到着したのは、屋上だった。

「ここが、連れてきたかった場所ですの?」

「違うよ、ここからもう一個上るの」

これ以上どこへ登ると言うのか。

疑問符を頭に浮かべたセシリーを、〝ストライク・バーディ〟の腕部のみを

部分展開させヒョイッと抱き上げる。

「ちょ、ちょっと!?」

「あーはいはい、暴れないでねー・・・」

まるで赤子をあやすように、言いながら、セシリーを屋上の出入口の上に乗せる。

それに続いて僕もフェンスを使って、そこへよじ登る。

「・・・・ちょっと汚れてるけど、ここ座って」

セシリーは促されるままにそこへ座る。

背中には給水塔があるが、それが丁度いい背もたれになる。

「セシリーあっちを見て・・・」

僕の指さす方向へ、セシリーが目を向ける。

それでも、イマイチ、ピンと来ていないセシリーに僕は指で枠を作ると、セシリーの目の前に置いた。

「あ・・・・」

「綺麗でしょ・・・まるでサクラメントみたいに・・・」

セシリーが見たものそれは、まさしくあの時見せた、サクラメントの光景だったに違いないと、

僕は確信する。

遠くに見える街並みと、眼前に広がる海と山。

それを、こうして指の枠で切り取ってやると、不思議なもので海は川に、

山は川岸に、そして市街地はサクラメントの摩天楼に見えてくる。

セシリーも僕が手をどけた後も、指で枠を作って、それを懐かしそうに眺めたいた。

「本当に・・・綺麗ですわね・・・」

「君と、どっちが綺麗かな?」

「・・・・・・クスッ、そうですわね、今は私ですわ」

「くさいって言わないんだね」

「だって、それアメリカでは、まだ、主流なのでしょう?」

あ、あはは・・。

これは、取られちゃったな。

二人が眺めるその先で、〝あのサクラメントの夕日〟はゆっくりと沈んでいくのだった。

 

 

 

◇◆◇◆◇◆◇◆◇◆◇◆◇◆◇◆◇◆◇◆◇◆◇◆

 

 

「・・・・どうだ、山田君、解析の方は」

「ダメですね・・・無人機と言うことぐらいしか・・・こうまで破壊されては・・・」

織斑千冬と、山田真耶は薄暗い部屋の中で今日回収された、

無人ISと襲撃した二機のISの解析に追われていた。

だが無人機の方は、コアの損傷も激しく、あの黒いISが粉々にしてくれたおかげで、

解析は難航していた。

しかし無人機とは穏やかな話では無い。

現在も、無人機の開発は行われているものの、どの国も開発に成功したという話も聞かないし、ましてやそれがスタンド・アロンで戦うなど想像も出来ない。

ふむ・・・・。

「あの二機のISはどうだ?」

「アレについての方が、まだ情報はつかめてます」

片方だけですけど・・と続け真耶や千冬に端末を渡す。

そこには、交戦する紫色のISが移っていた。

「紫香楽・・・・か」

紫香楽家《しがらきけ》。つい最近自前のISを一機試作したという、元々武芸の名家だ。

ISを製造するには、莫大な資金や設備が必要だ。

いくら名家とはいえ、単独でそれを実現するのは難しいはずだ。

「しかもこのISは、しっかり国籍を持っています。登録されたコアをもとにして製作された

正規のISですね・・・」

真耶が端末を操作すると、その情報が千冬にも転送される。

・・・・〝紫燕《しえん》〟か。

黙り込んで、思考する千冬に真耶が声をかける。

「あの・・・織斑先生?」

「まぁ、何にせよ・・・面倒な連中が出てきた事は確かだろう・・」

そう言う千冬の目は、かつて世界一の座に君臨した時の、鋭い眼光だった。

 

 

 

 

 

 




筆者は、アメリカ大好きです。
行ったことありませんけどw
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