IS インフィニット・ストラトス~偽りの翼~   作:のろいうさぎ

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第8話~天使のフレンチ・悪魔のジャーマン~

あの一件以来、余計に学園内で目立つ存在になってしまったこの僕。

だが目立つのは嫌いでは無い。

別にそれはどうでもいい。

問題は、あのセシリーへ言った必死の告白が、ISのオープン・チャンネルを通じて

この学園内ほぼすべてに筒抜けだったことだ・・・。

あの時はもう、言葉さえ聞こえれば何でもいいと思って

チャンネルの切り替えなんてやってる暇なかったし、敵の目の前だったから、やってる余裕もなかった。

文字通り必死である。

だが、今になって考えてみると、これは非常に恥ずかしい・・・。

お姫様だっこでの地上帰還なんて、生易しいものだ。

あーーーくそぅ・・・。

すっごいやばい・・。

顔から火が出そうとはまさにこのことである。

更衣室前での鈴のあの笑顔はそういう意味だったのかと、今更ながらに理解する。

僕は、火照る顔を隠そうとうつむきながら、教室へ入った。

「君は僕にとって必要な存在だから・・・」

「きゃーーーー、あたしも言われてみたいなぁ~」

「あたしだったら、それ聞けただけで昇天しちゃいそう・・・」

女子が昨日の一件を、ものまねして騒いでいる。

くぁ~・・・。

やっぱり胴体切断覚悟で、プライベートチャンネルを開けばよかったかな。

・・・・死ぬけど。

にしても、本当に朝から皆その話で持ちきりである。

僕がいる、いない関わらずその話だ。

初めその話を聞いた時はもう、窓から飛び降りようかと思った。

僕で、こんなんだから、セシリーもさぞうんざりしているだろうと思ったが・・・

「ねぇねぇ!どんな気分だった!?」

「そうですわねぇ、覆っていたモヤが一気に晴れ、暖かな太陽が私を包み込むような・・そんな暖かい心持でしたわねぇ~」

「いいないいなぁ・・・・・・」

「そうでしょう、そうでしょう~」

・・・・うんざりどころか、今にもくるくる回りだしそうな雰囲気だった。

二年生の黛薫子っていう、新聞部のこまで来てたなぁ。

大方、良いネタを見つけたから記事にしようとしてるんだろうけど、それじゃただのワイドショーじゃないかな・・・。

「よう、俺にもばっちり聞こえてたぞ」

ニッと歯を見せて笑う一夏。

その前歯を全部折ってやりたい。

そう・・

「バキボキに・・・・」

「なんだ、どうかしたのか?」

つい本音が口に出てしまったようだ。

別にと手を左右に振って、合図する。

「面白い奴だなぁ・・・まぁ、元気出せって!別に悪い噂じゃないんだからさ」

「恥ずかしさって意味では、史上最悪だよ・・・全僕が涙するぐらいね・・」

現に今にも僕は泣き崩れそうだよ。

必死に小さな僕が、折れそうな心を支えてくれてるから良いけど、その噂を耳にするたびに、一人ずつ

その、ミニアルディが事故死していくのが分かる。

あ、作業場の足が・・・また一人か。

こんな具合で、僕のテンションは、朝からアメリカ空軍のアクロバットチームも

真っ青なほど超低空飛行だ。

あぁ・・・・もう何か障害物があっても避けずに突っ込もう。

砕けた方が、はっちゃけて面白い事になれそうだ。

ランナーズハイじゃないけどさ・・。

「諸君、楽しい授業の時間だ、用意しろ」

ガラッと、教室の扉が開き、織斑先生が登場する。

すると騒がしかった、教室は一瞬にして静寂に包まれた。

今日だけは、この人が僕の救世主に思えた。

・・・もう末期だろうか。

この授業中、五回は叩かれた。

織斑先生はあまり救世主では無かった。

 

 

授業が終わり、前の席の一夏が笑いをこらえながら、こちらに顔を向けた。

「くっくくぅ・・・お前・・・・あの間違いはないだろ・・・ッくく・・」

「し、仕方がないだろ!漢字は苦手だ・・・」

不覚だった・・・。

テンションダウンでボケーっとしていた僕に、織斑先生は問題を出した。

それはごく普通のIS関係でも何でもない単語。

〝一夏〟

答え:ひとなつ

僕の回頭:いちか

言うまでもなく、一夏は噴きだし、クラスにクスクス笑いが広がっていった。

そして、織斑先生には「もう少し日本語を覚えろ」ということと

「ボケっとするな」という意味を込めて二発の出席簿が僕の頭を襲った。

っていうか、織斑先生もあんな質問出すかね、普通。

もっと他の単語でもよか・・・・くないか。

他の単語なら最悪、読めないっていうのがあるし。

「だいたい日本が、漢字もひらがなもカタカナも使う変な言語だからいけないんだよ!」

「そんなお前に、良い言葉を教えてやろう。〝郷に入らば郷に従え〟その土地に行ったらその土地の習慣や風土には合わせた方がいい、という意味のことわざだ。やはり昔の人は旨い事を言うな」

気付けば箒が、横で腕を組みながら、日本のことわざとやらを教えてくれる

「郷?ごうってなんだい?」

僕は聞き慣れない日本語に、箒に聞き返す。

「郷とはふる里とか集落とかそういう意味だぞ」

・・・集落?あぁ村の事か。

村に入れば村に従えってことか。

「それなら、君たちにも教えてあげるよ。When in Rome, do as the Romans do.この意味わかる?」

お、考えてる考えてる。

一課も箒も、首をひねって色々考えているようだ。

でも・・・そろそろ。

「時間切れー」

「え!おい早いぜ」

「も、もう少し時間をくれ」

「ダメダメ、これはアメリカのことわざでね・・・」

「ローマにいる時はローマ人のする様にしろ・・・ま、郷に入らば~のいわば英語版ですわね。厳密に言えばそのまま同じような意味と言うわけでもないようですが」

僕の説明よりも先にセシリーが人差し指を立て、腰に手を当てながら得意げに説明する。

まぁセシリーは知ってて当然か。イギリスとアメリカ。発音やスペルに多少の違いはあれど同じ言語を使っていることに変わりはないわけだし。

「ところで、皆さん。いつまでこうして、いらっしゃるおつもりですの?」

「どういうことだよ、セシリア」

「いえ、もうお昼ですわよ。早く食堂に行かないと席が無くなってしまいますわよ」

見ると時計の針はもうすぐ正午になろうとしていた。

確かに、それで以前一夏に救われたことを考えても、早く行った方が良いね。

今回は、席が無くても助けてくれそうな人はいなさそうだし。

僕達は立ち上がると、食堂へ向け足を進めた。

 

 

あ、そう言えば鈴がいた。

食堂に到着して、思った通り席が無い状態の僕たちを、鈴が助けてくれた時ぼくは、鈴の存在を思い出した。

クラスも違うし、今日はもうあの地獄のような噂の所為で、すっかり存在を忘れてしまっていた。

そんな事を言えば何をされるかわかったもんじゃない僕は下手に口を開かず、ありがとうと礼の言葉だけ鈴に告げて、着席する。

僕のすぐ横にセシリーが座って、そこまではスムーズだった。

だが一夏が座る席で少し今もめている。

「なにやってんのよ。早く座んなさいよあたしの〝横〟あいてるんだから」

「一夏、出入りしやすいようにお前は一番外側に座るんだ、うんそれが良い」

「ちょっと、何勝手なこと言ってるのよ!」

「一夏には・・・そうだ、水汲みという大事な役目があるんだ、ゆえに一位番外側で良いのだ!」

こんな具合だ。

水汲みって・・・・ここが、水も出ないような場所なら確かに重要だけどさ・・・・。

ここは食堂だ。水はサーバーで簡単に出る・・・・・箒流石に苦しいよ。

とりあえず、今の状況を簡単に整理すると・・

〔ソファの端〕セシリー・僕・鈴・○・○〔ソファの端〕

この○のところでもめている形だ。

もう、どうでもいいじゃないか・・・。

この場で織斑先生が来よう物なら逃げようがないな。

まぁまだ僕の織斑先生レーダーに反応はないし大丈夫だろうけど。

・・・・時々誤作動を起こすけどね。

まぁ、感覚なんてそんなもんだろう。

結局一夏は、箒に押し切られ、ソファの端に自分のトレーを置き、

それを鈴がもの凄い目で見ていた。

 

ようやく皆が落ち着いて、ご飯を食べ始めた頃。周囲から何やら噂声が聞こえる。

ほんと、女子って噂が好きだねぇ。

大方今朝の延長線上だろうと思っていたが、聞き耳をたてるとどうも違う。

・・・・ん?一夏がどうたらって言ってないか。

「一夏、君、何か噂になるようなことでも?」

「そりゃ、お前だろ」

その返し、今日はダメだ・・・。

何気ないその一言が凶器になったりするんだよ・・・。

僕は、グサッと刃物が突き刺さった心を必死に支えつつ、一夏に言葉を返した。

ここで折れたら、ダメだ。本当に今日終わっちゃう。

「で、でも、噂になってるのは、現状では君みたいだけど?」

僕はクイッと声のする方向を指さす。

その方向を一夏が見やると確かに、そこでは身をひそめてヒソヒソ話す女子のグループがいた。

そのグループはまだ指を差されたという事を知らず、会話を続けていた。

「・・・でね、・・・らしいのよぉ」

「それ、ほんとなの、あの織斑君が?」

「ほんとだって、あたしの友達が直接聞いたんだから!」

 

「・・・・本当だな、俺の名前が聞こえた」

「だから言ったじゃない・・・・おや、どうかしたのかい箒?」

内容のつかめない、一夏に対して箒は明らかに目が泳いで動揺している。

キョロキョロと辺りを見渡したり、その噂が聞こえる度に顔が赤くなっているのが分かった。

「・・・・怪しいですわね・・・」

セシリーもその様子を見て疑問に思ったようだ。

食事の手を止め、ナプキンで口を拭きながら言う。

「そうだね・・・箒だけがあの噂で動揺するっていうのはおかしな話だし・・・

あ、セシリー頬に、まだ付いてる・・・動かないでね・・・・うん取れたよ」

「ど、どうも・・・」

頬を、箒と同じぐらい赤く染めるセシリー。

・・・頬についてたのが恥ずかしかったのかな。

まぁそれは良いとして。

「多分これ、箒と一夏がらみの噂だね・・・。なるほど一夏鈍感だからなぁ」

「・・・・あなたもですわよ」

え?

「何か言った?」

「別に・・」

ボソッと言うからよく聞き取れなかったけど、こういうのがダメなんだろうなぁ。

ちゃんと聞くって言ったばかりなのに。

「セシリー、本当になんて言ったの?」

その追求はセシリーにとってあまりに予想外だったようで、

そっぽ向いて水を口にしていたセシリーが、盛大にむせた。

「ゴホッ・・・ケホケホッ」

「あぁぁ・・大丈夫かい・・・」

トントンと優しくセシリーの背中を叩いてやる。

トントントントントントン・・・・

・・・・・やけに長いな。

トントントントン・・・・まだ?

トントントントントントン

「あー、アルディ。それ演技よ演技。とっくに咳止まってるって」

へ?

「鈴さん・・余計な事を・・・・・・!」

なんで咳の演技なんてしてたのか、分からないけど、とりあえず止まってよかったね。

で、止まったところ早速で悪いんだけど。

「で、さっきなんて言ったの?」

「ケホケホッ!!」

「あんたも、相当なもんだわ・・・」

鈴のため息がやけに大きく響いた。

 

◇◆◇◆◇◆◇◆◇◆◇◆◇◆◇◆◇◆◇◆◇◆◇◆

 

・・・・なぜだ。

なぜこんなことに、なってしまったのだ。

箒は、あの女子たちの噂が、昨日、自分が一夏に言った「トーナメントで優勝したら付き合ってもらう」という宣言の事だと言う事にすぐ気が付いた。

さっきキョロキョロ辺りを見回してみたが、アルディの噂にまじって、この噂をしている女子たちが意外に多いことに驚いた。

っく、勝っても付き合えるのは私だけに決まっているだろう!

私は・・・・その幼馴染だしな!

鈴はどうあれ、私の方が早いのだ。ファーストだからな。

そんなわけのわからない自信が箒を、奮い立たせる。

要は勝てばよいのだ。

それで万事うまくいく!

いつものように、自己完結するとうんうんと何度もうなずきながら、箒はご飯を口に運んだ。

 

◇◆◇◆◇◆◇◆◇◆◇◆◇◆◇◆◇◆◇◆◇◆◇◆

 

 

さて・・・時は過ぎて放課後。

今日からは、鈴も一夏の特訓に参加することになった。

まぁ、おおよそ鈴側から無理やりねじ込んだんだろうけど。

でも幼馴染とはいえ鈴は代表候補生だ。

流石に箒ほど、抽象的な表現はしないだろうと、一夏も期待を寄せていたのだが・・・。

「だからさっきから言ってるでしょ~。なんで分かんないのよもー、気合よ気合!!」

余計に酷かったようだ。

これならまだ、クイッとか言って実演して見せてくれる箒の方が分かりやすい。

「鈴・・・・気合いだっていうのは説明じゃないだろ・・・」

「何言ってんのよ一夏!これほど簡単な説明ないじゃない!!」

簡単だよ、そりゃ。

何でもかんでも、気合で説明が付くんだから。

あ、ちなみに今日は僕は見学者だ。

なぜなら・・・。

 

 

「はい?」

「だから、あなたのISはしばらく使えません」

「どうして?」

僕は、昨日セシリーと分かれた後、既に夜になっていたが

〝ウェポンスクエア〟の爆散によってダメージを受けた

〝ストライク・バーディ〟の簡易検査を山田先生にお願いしていたのだ。

その結果は今朝明らかになったのだが・・・。

「ダメージレベルがCを上回っていますからね。使用は許可できません」

ISは良くも悪くも成長する。その過程で多くの経験を積んで進化していくわけだが、当然その間の損傷時稼働もその経験内容に含まれる。

さっき先生の言ったダメージレベルCと言うのは、ISのダメージとしては相当のもので、そのまま無理に使用を続ければ、不安定なエネルギーバイパスを構築してしまい、後々重大な欠損を生む可能性があるのだ。

でも・・・・

「ただ、リアスラスターが爆発しただけですよ、それだけで堅牢な僕のISがレベルCの損傷ですか!?」

「はぁ、サウスバードくん。あなたのリアスラスターには何がありますか?」

・・・・あ。

そうだった。

〝ストライク・バーディ〟のリアスラスターの正式名称は〝フレキシブル・スラスター〟だが兵器名は〝ウェポンスクエア〟多くの火器を搭載したいわば〝ストライク・バーディ〟の武器庫だ。

そんなものが、爆発したら確かに流石の〝ストライク・バーディ〟も耐えられないよね。

「どうやら、引き金はスラスターの高付加によるオーバーブローの様ですが、

それが、他の火器の誘爆を引き起こしてしまったようですね」

だめじゃないっすか・・・。

 

 

って言う事があったのだ。

そのため、僕だけ一夏達から少し距離を取って、見学しているというわけだ。

なぜ、一夏達の声が聞こえるかと言うとセシリーのおかげだ。

僕が見学と知ると、なぜかセシリーまで見学と言いだしたのだ。

まぁだがそのおかげで、こうして〝ブルー・ティアーズ〟のモニターで一夏達の話し声を聞いたり、

こちらから話しかけたりできるわけだから、感謝しないといけない。

「にしても、本当によかったのかな、セシリー」

「何がですの?」

「いや、一夏達と訓練しなくて、良いのかなって。それに最近、全然自分の訓練とかできてないんじゃないの?」

「そう言うことは、一度でも私に当ててから言いなさいな。

一発も当てられていないアルが、心配なさることではありませんわ」

うぅ、まぁそれは本当なんだけど・・・・。

事実、様になってきたというだけで、セシリーには今日まで一発の、〝い〟の字すら当てた試しがない。

それを言われると、言い返せないんだよなぁ。

「とにかく、今日は私も見学しますの!」

強く言いきると、フンッと鼻を鳴らすセシリー。

僕はそれを見て、少し笑みがこぼれた。

アリーナの中で縦横無尽に飛び回る一夏達を見て、体がウズウズしながらも、

まぁ見学もまんざらじゃないかなと、思う僕だった。

 

 

翌日、人のうわさも七十五日とか日本では言うらしい。

意味は、世間のうわさも一時の事で、時が過ぎれば忘れられていくものと言う意味だそうだ。

なのに、昨日の噂はどこへやら。

今日の噂の対象はすっかり一夏へと移っていた。

対象になった人物は、昨日の僕と同じように机に突っ伏している。

言っちゃあ悪いけど、ざまぁ見ろだ。

昨日は、散々それで僕に精神的ダメージを与えてくれたんだ、今日は僕の番だよ・・。

「一夏、噂になってるねぇ~」

ニヤニヤしながら、一夏に言う。

だが返答が無い。

ほほぅ。

返事すらできないほど衰弱しているのか。

これは面し・・・・・面白いな。

「一夏聞いてるのかな?皆君の噂してるよ」

それでも返事が無い。

・・・ん?

「一夏?」

僕が呼びかけた時、ようやく一科が体を起こした。

伸びをしながら。

「ふあぁぁぁっ・・・あ、おはようアルディ」

「・・・・寝てたの」

「あぁ、ちょっと寝不足でな」

・・・・・そうだった。

一夏は超が付くほど自分の事に鈍感で、ずぶとい神経の持ち主だった・・・。

「ところでさ、アルディ。箒どうかしたのか?」

え?

指さす方を見ると、箒が机に突っ伏していた。

どうやら僕の攻撃は、一夏へ行かず、ブーメランのように戻って箒に当たっていたようだ。

・・・・・ごめん、悪気はないんだ。

少なくとも君には。

「諸君、今日も元気が良いな。結構結構。それではSHRを始める」

いつもと同じように、織斑先生が山田先生と共に教室部屋やってくる。

今日もいつもの日常が繰り返される。

「さて、山田先生からの話の前に私から一つ言っておくことがある。

本日よりISの実習もから授業は本格的な実践訓練に入って行く、各人使用するのは、専用気持ち以外は訓練機だが、ISはISだ。しっかり気を引き締める様に。ここまで言って怪我をしても私は知らんぞ。泣きついてくるなよ」

・・・・教師とは思えないね。いやまぁこれまでだって、教師?って思うぐらい理不尽だったけど、教師って思うぐらい身の危険を感じたけど・・・。

「あぁ、あとISスーツの申し込みも忘れずにやっておくようにな、それでは私からは以上。では山田先生、後は頼もう」

「はい」

そう言って、立ち位置を交換する二人の担当教員。

山田先生は、教壇に立つと第一声。

「えっとですね、おはようございます皆さん。今日は早速なのですが転校生を紹介します」

その瞬間クラス全員が一瞬凍りついたのが分かった。

噂好きの女子の情報網をかいくぐって、急に湧いて出た転校生。

驚かずにはいられないのだろう。そして直後、クラス全体が揺れた

「「「「えぇぇぇぇぇぇぇぇぇぇぇぇぇぇ!!!!!」」」」

「転校生、また!?」

「この前だって二組に、凰さんが来たばっかりなのに?」

「違うクラスじゃない」

「でも、ここまで頻繁にあるのも珍しいとは思うけど・・・」

以前セシリーに聞いた、話は本当だったようだ。

〝今こうして私たちが、くつろいでいる間にも、各国ではIS学園入学のために代表候補生やそれを目指す操縦者が切磋琢磨しているはずです〟

なるほどね・・・。だとすると今回も、代表候補生か。

「あ、ちなみに二人ですよ今回は!」

「「「えぇぇぇぇぇっ!!!」」」

再び湧く、教室。一気に二人も代表候補が?

確かにそれは驚きだ。

「うるさいぞ!驚くのは休み時間まで取っておけ」

パンパンッと手を叩いて場をなだめる織斑先生。

それに続くようにして、教室の入り口から転校生二人が姿を現す。

普段、あんまりこういうことじゃ驚かないんだけど、流石の僕も驚いたよ。

だってそのうちの一人が、男の子だったんだから。

 

 

 

「シャルル・デュノアです。フランスからきました。よろしくお願いしますね」

フランス人の貴公子は、ブロンドの髪を後ろで束ね、天使のような微笑みで、教室の女子たちに自己紹介する。

その笑顔は、僕たち男子でも、見とれるぐらいのものだったからその破壊力は相当なものだ。

「男の子男の子男の子男の子男の子男の子男の子男の子・・・」

「やばい・・やばいよぉ・・あの笑顔は反則だって~~~」

「織斑君やサウスバード君とはまた違うタイプだよね!」

なんだ・・・・男の子男の子唱えてる女子がいるが・・。

なにかの発作なのか。

そんな騒ぎ立てる生徒たちを余所にもう一人の転校生は、瞳を閉じ静かに佇んでいる。

・・・雰囲気が。

明らかに一線を画するその少女は、左目に黒い眼帯をした、白銀の長い髪の毛をたたえている。

軍人・・・?

姉が元々アメリカ軍関係もあって、昔その仕事を見せてもらったことがあったのだが、

その時基地で見た軍人の鋭い刃物のような、触れたら切れてしまいそうな雰囲気。

彼女がまとっていたものはまさしくそれだった。

「黙り込むな、お前の番だラウラ」

「はい、教官」

・・・・教官か・・・。

間違いないあの子は軍人だ。

どんな経緯で織斑先生を教官と呼んでいるのかはわからないが、雰囲気そして今の口調。

僕の中で、仮説が確信へと姿を変えた。

「ラウラ・ボーデヴィッヒだ」

・・・・・以上?

「それだけですか?」

言った山田先生は、中々勇敢だと思う。

ラウラは、山田先生を一睨みする。

その鋭い眼光に、委縮する山田先生だったが、流石のラウラも教師にたてつくことはしない。

「以上だ」

そう言って、なにやら辺りを見回す、ラウラ。そして一人の人物に視線を合わせた。

それは・・・

「貴様か・・・」

「え!?」

一夏だ。

僕は、ひそひそと一夏に声をかけた。

「何?あの子と知り合いのかい、あんなきっつい子と」

「知らねぇよ・・・千冬姉を教官って読んでたからドイツ人って事は、

なんとなく想像はできるんだけどさ」

「うん?織斑先生ドイツで何かやってたのかい?」

「昔、向こうで教官やってたんだ・・・色々あって・・」

ふむ・・・なるほど。その時に何かしら関係のあった人物と言うことか。

僕と声をひそめていた、一夏の前に立つラウラ。

明らかに友好的な目じゃないよね。

ラウラに気が付き一夏も、前を向く。

そして手を振り上げて・・・

 

 

パコンッ!

ペットボトルが直撃した。

一夏にではないラウラにだ。

「・・・・貴様、どういうつもりだ」

「ごめんね、手が滑っちゃったみたい」

投げたのは僕なんだけどね。

あのまま行けば一夏殴られてたし。

投げたペットボトルは僕が今朝、購買で買ったものだ。

丁度取り出しやすい位置にあって助かった。

「ふざけるなよ・・・」

「わぁ、ほんとごめんね。いや実はペットボトルがちょっと濡れててね、

仕方ないじゃない・・・不慮の事故だよ」

「くぅッ!!!」

ガッと胸倉をつかむラウラに僕は笑って言う。

「だから、謝ったじゃないか」

「どうやら、痛い目を見んと分からんらしいな」

「凄んでも無駄だよ・・僕は、君を舐めてる」

「貴様!!!」

「いい加減にしろ、ラウラ、サウスバード!」

そこへ織斑先生が来て、ラウラを引っぺがす。

「きょ、教官!これは正当防衛で!!」

「いつまで軍人気分だ、貴様は今日から私の生徒だ、黙って従え、不服でも従えいいな」

「しかし!」

「初日から問題を起こすな!」

ピシャリと言い放つ織斑先生に、ラウラは尚も不服そうな顔をするが、渋々それに従う。

ふぅ、作戦成功。

作戦と言うかまぁ、ただ騒ぎを起こせば織斑先生が必ず止めに入るだろうから

それを狙って騒いだだけなんだけど。

「サウスバード」

「はい?」

「教師をコマとして扱うとは、お前もいい度胸だ」

「い、いやですねぇ・・・こ、コマだなんて」

その後、問答無用で一発を貰った。

 

「はぁ・・・ガキはこれだから・・・まぁ良い、織斑。

早速だがデュノアの面倒を見てやれ、これから実習だからな、まだ右も左も分からんだろう」

「はい、わかりました」

「では、各人はISスーツに着替えてアリーナに集合!今日は二組とお合同で模擬戦闘を行う、急いで準備しろ!」

今日は合同なのか・・・。

・・・・って。

「ボサっとしてる場合じゃなかった!」

「そうだった、シャルル!急ぐぞ」

「え、どうしたの?」

いまだに、要領のつかめないシャルルは、少し戸惑っているが、その手を一夏が引っ張る。

「一時間目、お前も聞いてただろ。これから織斑先生の授業なんだ、遅れたら何やらされるかわかったもんじゃないッ!」

「確かこの間は、遅れた分数×アリーナ十周だったねぇ」

あんな思いはしたくない。

「「悪いけど、慣れて!」」

僕と一夏の声が重なる。

それほどまでに、織斑先生と言うのは恐ろしいのだ。

そんな僕たちを見て、シャルルはクスッと笑うのだった。

 

にしても、ラウラにシャルルね・・・。

ま、何にしたって人生は楽しくなきゃいけない。

ここ最近はセシリーの件もあって下降気味だったが、その件もなんとか収まったし、

これからは、色々楽しくなるよね。

僕はそんな事を考えながら、女子包囲網をかいくぐってアリーナへと向かうのだった。

 

 

◇◆◇◆◇◆◇◆◇◆◇◆◇◆◇◆◇◆◇◆◇◆◇◆

 

 

 

っちぃ!!

とある場所の遥か上空で、二機のISが火花を散らしていた。

「貰った!」

「まだだ!!」

その二機のISはほとんど形状は変わらない。

背部に計四門の荷電粒子砲を背負う。

それはまさしく、あの日IS学園を襲撃したISだった。

操縦者も声も背丈も全く一緒。

しかし色だけが違う。

片方は黒だったが、もう片方は真っ白だった。

互いに、砲を打ち合いそして動きが止まる。

「はぁはぁ・・・・君は・・・君は!!」

「僕が、僕であるために・・・・はぁ・・」

その時、白い機体のセンサーが上空から飛来するISの反応をとらえた。

「っな!!」

「下がりやがれぇッ!!!」

それは紫色のIS〝紫煙〟だ。

高速強襲型の機動力と近接での高い戦闘能力を備えた紫香楽製のIS。

「っう・・!」

「触んじゃねぇよ・・・・」

〝紫煙〟の操縦者はワインレッドの髪を風になびかせながら、

怒り狂ったように赤目で相手の白いISを睨む。

「・・・っ!姉さん、何で分からないの、それは僕じゃない!!」

「うるせぇッ偽物!!総也の顔でぬりぃこと言ってんじゃねぇぞ・・・」

総也と呼ばれた少年は、バイザーで覆われた顔をゆがませる。

「Nの技術を奪ってまで、することが本当に正しいの!」

「そのための技術だろうが!!」

一気に〝紫煙〟は距離を詰めると、戦槍〝大蛇〟で切りかかる。

それを手に持つ荷電粒子砲でなんとか受け止める。

そして動きが止まったところで、黒いISの援護射撃が入り、その一発は確実に総也をとらえた。

「ぐはっ!!」

その一瞬のすきを突いて、〝紫煙〟は黒いISを回収し、超高速で離脱する。

次に総也が目を開けた時には、何もないただ青い空が広がっているだけだった。

「あぁ、くそっ!!!!」

やりきれない悔しさが彼を包む。

その時通信が入った。

そこには白衣の女性が写っている。

「すいません、逃げられました・・・」

『仕方ないわ、二対一ですもの』

「また追わないといけませんね」

『もう、やみくもに探しても時間の無駄ね・・・。こうも逃げられては』

自分の失態だ・・。

くそっ、せめてあの黒いほうだけでも落とせれば・・・っ。

『だから、方法を変えましょう。実はあの二機が最近とある施設を襲撃したの』

「え!?」

『その施設名はIS学園』

IS学園・・・・。

『でね、あなたにはそこへ行ってもらいます!』

「え?」

いきなり何を言って・・・・行く?

誰が??

「僕ですか!?」

『あたしに、ヒラヒラのミニスカートが似合うとでも?』

「それはそうですけど」

『否定しなさい馬鹿!』

性能のいいISの通信機器でもハウリングする程の声で怒鳴られ、頭がキーンとする。

『まぁすぐにじゃないから、それなりに準備ってものもあるし』

「いやでも!」

反論しようとしたがとにかく、これは決定事項よ!

とだけ告げられ一方的に通信を切られてしまった。

「・・・・・IS学園か」

ボソッとつぶやき。総也はひとまず、帰還の途へついた。

・・・・これからどうなるんだろう、ただただ不安だけが総也の心に積っていった。

 

 

 

 

 




僕はオルコッ党です。
そこは譲れませんw
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