ウェディング、家事をする
カノンの部屋は、軽いカオスだった。床には服が散らばり、デュエルカードが机の端からはみ出している。ベッドの上には、折りたたまれたはずのタオルがぐちゃぐちゃになって積まれていた。
「うう……いつの間にかこんなに散らかってるのだわ……」
カノンは額に手を当てながらため息をついた。とりあえず雑巾を持ち、掃除を始めようとする。すると――
「……カノン。非効率です」
背後から静かな声がした。振り返ると、ウェディングが冷静な目でカノンの手元を見つめている。
「えっ?」
「そのような手作業での掃除は、時間と労力が無駄です。もっと合理的な方法を採用するべきです」
「いや、普通に片付けるのが一番確実なのだわ……」
カノンは肩をすくめながら答えた。ウェディングは軽く首を傾げる。
「例えば――」
次の瞬間、ウェディングが片手を上げると、空間が揺れ始めた。
「えっ、ちょっと待つのだわ!! それ何をしようとして――」
瞬間、床に散らばっていた物が光に包まれ、異次元へと転送される。
シン……と静まり返る部屋。物が消えた床を見て、カノンは目を見開いた。
「……」
「処理完了です」
「どこにやったのだわぁぁぁぁぁぁ!?」
カノンは頭を抱えた。
「異次元空間へ送付しました。不要なものと判断したので」
「いや、服も! 本も! あとさっき買ったお菓子まで消えたのだわ!!!」
カノンは絶望しながらウェディングの肩を掴む。
「元に戻すのだわ! というか戻せるのだわ!?」
「……技術的には可能ですが、正確な座標を指定しないと、回収先が異次元のどこになるか分かりません」
「ちょっと待って、私のお気に入りの服が別次元に行くとか絶対嫌なのだわ!!!」
カノンは泣きそうな顔でウェディングを見上げた。だが、ウェディングは相変わらず冷静だった。
「ならば、次からはもっと計画的に部屋を片付けるべきですね」
「そもそも異次元に送るとかいう発想をやめてほしいのだわ!!!」
***
カノン、ウェディングに料理を教える
「料理ができるようになれば、好きなときにおいしいご飯が食べられるのだわ!」
カノンはキッチンでウェディングに向かって力説する。ウェディングは腕を組んで考え込んだ。
「……食糧補給の手段として、合理的ですね。では、学びましょう」
「うんうん! じゃあまずは簡単な卵焼きなのだわ!」
カノンが卵を取り出してウェディングに手渡す。
「まず、卵を割って――」
ウェディングは卵をじっと見つめる。
「……卵とは、加熱によって固形化するタンパク質ですね」
「まあ、そういう風に言えばそうなのだわ……?」
ウェディングは卵を手のひらに乗せた。
「ならば――最適な加熱方法を」
次の瞬間、ウェディングの手のひらが光を帯びる。
「ちょっ、まっ――」
ジュワッ……!
その場に焼け焦げたにおいが漂った。カノンが目の前の光景を見て絶叫する。
「ぎゃああああああ!!」
そこには、黒焦げになった卵の残骸があった。
「ウェディング!? なんで直接加熱するのだわ!? フライパンを使うのだわ!!!」
「……?」
ウェディングは淡々と首を傾げる。
「わざわざ間接的に熱を伝える理由は?」
「味が違うのだわ!!!」
「……非効率ですね」
「効率の問題じゃないのだわ!!!」
カノンは泣きながらフライパンを用意し、ウェディングの手をそっと掴んで正しい手順を教えた。