PREDATOR the LOAD   作:犀宮寺東

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 地球から遠く離れたひとつの星。ヤウージャのとある氏族が、この地で儀式を執り行おうとしていた。

 

 成人の儀式。武装したヤウージャとも対等に闘えるよう、遺伝子操作されたゼノモーフを用いた、ヤウージャに伝わる通過儀礼。

 

 

 

 儀式に参加したのは3名の若き戦士達。贄となったのはこの星に生まれた知的生命体。彼らは文明を授けたヤウージャを神と崇め、自ら進んで生贄となった。

 

 儀式が始まってから凡そ半日。戦士達はまだ血を見ぬ者から、血塗られた者へと昇格していた。

 

 彼らは日々の鍛錬に明け暮れた「模擬戦のスペシャリスト」であり、その技術はゼノモーフを軽く屠るに充分だった。

 

 だが、儀式のトリガーとなる聖櫃に納められていたのは他の氏族が用意する武器、成人の象徴たるプラズマキャノンの他にもうひとつ。それは蠢く液体の詰まった容器だった。

 

 狩りの技術もさることながら、彼らの氏族が他の氏族と一線を画す力を持つのには、この液体……「シンビオート」の存在があった。

 

 儀式の始まりに、挑戦者は小瓶のようなそれを握り割る事でシンビオートとの同化を目指す。この時点でシンビオートが拒絶反応を示し、宿主を喰い殺す事もある。

 

 だが今回の挑戦者達は、全員がシンビオートとの融合を果たした。ある者は支配される形で。ある者は共生として。そして最も強い個体は、シンビオートを屈服させて我が物とした。

 

 シンビオートに支配された者は猪武者の如く力を振るい、共生した者は期を伺い臨機応変に立ち回り、屈服させた者は初めからそれが自らの力であったかのように、手足のように扱った。

 

 捧げられた贄は8人。ゼノモーフに個体数が限られている事から、3名は最奥区画へと進んだ。最も名誉である、クイーンの頭蓋をトロフィーとする為に。

 

 

 

 ピラミッドの最奥、クイーンの閉じ込められた部屋に辿り着いた3名の戦士達。

 

 クイーンは鎖に繋がれ、産卵管からオボモーフを産み続けている。2人はプラズマキャノンで鎖を撃とうとしたが、猪武者の戦士は我先にとクイーンへ直行した。

 

 その胸が、鈍色に輝く長い触腕に貫かれた。挑戦者の中でも最も強い個体は、自身の背から伸びた尾のような触腕で猪武者を眼前に持ってくる。

 

「何のつもりだ」

 

 その声には強い怒りがこもっていた。至高の獲物を無抵抗なままに屠るなど、誇りの欠片も無い行為。

 

 ヒュー、コヒューとマスク越しにも聞こえる臆病者の掠れた息遣い。その臆病者からシンビオートを吸収すると、全身を鈍色のシンビオートで包み込んだ戦士は臆病者の頭を喰い千切った。

 

 床を濡らす緑色の粘度の高いヤウージャ特有の体液。屠った同族には興味を失い、その個体は骸を壁に投げ捨てる。

 

『ふむ。同族というのは実に美味だ』

 

 ドレッドヘアを更に伸ばしたような首を回し、隣の同族を見遣る。

 

 相手の動きは素早かった。鎌状に変形させたシンビオートの横薙ぎの斬撃を腰を落として躱し、緑のシンビオートを纏いながらスピアで突く。

 

 軽く身を捩って躱し、プラズマキャノンのみを露出させてゼロ距離射撃。マスクが弾け飛び、緑の戦士もクイーンの真下へと吹き飛ばされた。

 

『……ふむ』

 

 鈍色の戦士が傍観する。散乱したオボモーフの体液で焼け爛れる宿主から、シンビオートが離れていく。そして気絶した戦士の傍らにあるオボモーフ、エイリアンエッグが開口していた。

 

『凡庸な相手ばかりで退屈していた所だ』

 

 シンビオートを体内に戻し、一際大きなプラズマキャノンを数回撃つ。クイーンの鎖が弾け飛び、残った鎖はクイーンが自らの力で引き千切った。

 

 フェイスハガーが同族の顔を覆うのを見届けながら、残った戦士はマスクに付いたチューブをひとつずつ外していく。

 

 直接一体を、間接的にもう一体、同族を殺した戦士の思考が分からず、クイーンは警戒しつつも咆哮を挙げて威嚇する。

 

 ゴト、とマスクが床に落ちた。次いで、クイーンのそれよりも低く声量のある咆哮が部屋に響き渡る。

 

 圧倒的気迫。それに気圧されたのがクイーンのひとつめの敗因。

 

 戦士が闘ってきた我が子らから、相対する敵の戦闘能力を測りかねていた事がふたつめの敗因。

 

 戦士は純粋な脚力のみでクイーンの眼前へと瞬時に現れ、王冠を被ったようなその頭部を蹴り飛ばした。

 

 あまりの力に、石柱はおろか産み落としたオボモーフらをも踏み潰してクイーンが地に伏せった。

 

 刹那、巨大な槍のようなクイーンの尾が戦士へと向かう。しかしその一撃は虚空を突いたに過ぎず……

 

 次いで、クイーンの尾が根本から断ち切られた。激痛に身を捩るクイーン。酸性の血が床を溶かす音が一際大きく聞こえた。

 

 オボモーフが潰れる事など既に気にも止めず、立ち上がったクイーン。その視界が反転した。

 

 至高の獲物と捉えていたクイーンのあまりの呆気なさに、戦士はトロフィーとしての価値をもはや見出していなかった。

 

 崩れ落ちるクイーンの巨体。押し潰され、気絶していた戦士は即死してしまった。

 

 静寂が部屋に満ちる。トロフィーとして、プレデリアンの首をと欲を張った自身の高望みを悔いながら、戦士は再びマスクを装着した。

 

 

 

 数時間後、最奥部にやって来たヤウージャ達は凄惨な虐殺現場を目の当たりにして……歓喜した。

 

 クイーンの首と尾は持ち出され、ピラミッドの頂点にて新しい戦士に掲げられている事だろう。

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